銀魂 SF時代劇の彼方者   作:時杜 境

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呼出

『オウ用心棒。テメェ今日暇だろ? 今日といわず毎日暇人かましてんだろオマエ? 3秒以内に屯所前に来い。1秒でも遅れたら頭ブチ抜くぞ』

 

 と。

 週末の朝っぱらから脅しの電話をかけてきたのは警察庁長官・松平片栗虎。

 大体この人からくるものは用心棒としての依頼。しかも報酬はかなり高額なもの。

 それでも3秒以内に移動しろというのは無理な話だ。頭はブチ抜かれたくないが、とにかく急げということだろう。

 

 

 

 

「おせーよ。3秒以内で来いっつったろうがよォ」

 

 

 屯所前まで最低走って10分弱。案外遠い。

 来るや否や例の如く発砲されて横の髪が数本どっか行った。

 

「無茶ですよ長官。で、用件はなんですか」

 

「あぁ。今日はオマエ、俺達の用心棒になれ。絶対に俺らを生きて帰せ」

 

 ……? そりゃあ依頼とあれば命がけでも護りますけど。

 そんなに深刻な用件なのだろうか?

 

「おっかね~人達に呼び出しくらっちまったのさ。何が何でも最低俺だけは護れ。家で可愛い娘が待ってんだよォ」

 

「ちょ、とっつァん! 俺は!? この際俺もでしょ!? ねぇ絶条サン!?」

 

「うん? 私は人間からの依頼は受けてもゴリラは受け付けてませんけど?」

 

 僕はゴリラじゃありませんよ! と珍しくツッコミポジションにいるのは真選組局長の近藤勲。

 この二人の呼び出しってことは……煉獄関(れんごくかん)の話が終わった後か。

 確かにあれはいい話だったけど、まさかその後日談に自分が巻き込まれることになるとは……

 松平さんの手駒、いや知り合いになった時点でこういう展開も予想はできたかもしれないが――今は帰りたい、というのが正直な感想だ。

 

「そりゃそうとオメー、『絶条』とかいう名前でかぶき町に留まってるらしいじゃねぇか。居住まですんなら先に言ってくれよ」

 

「え……何で?」

 

「何でってテメー、俺の手駒なら――」

 

 と、そこで近藤さんには聞こえないよう傍に近づき、小声に切り替え。

 

(警察庁長官の手駒なんてバレたら誰かに利用されんだろ。引っ越すときもまずオジさんに言えよ。住所とか偽造すんの大変だったんだぜ?)

 

 偽造したんかいィィ……

 つーかそれ職権乱用……以前に長官がやっていいことなのかソレ。

 

 

 助手席に座り、後ろに今回の依頼人達を乗せる。運転は松平さんの部下と思われしき人だ。

 

「天導衆?」

 

「て、天導衆って、あれでしょ? 将軍を取り込むっぽい事して裏から幕府の実権握ってるみたいなーっていう噂の!!」

 

「デッケェ声出すなや!! そうだよ! 将軍を取り込んで裏から幕府の実権握ってる奴等だィ!!」

 

 アンタも声デカいよ松平さん。つか断言までしちゃってるし。

 

 曰く、真選組が天導衆の仕切っていた「煉獄関」という殺人闘技場に手を出して、それで今回お呼びがかかったとのこと。局長である近藤さんは出張で知らなかったらしい。

 

 処罰されるのか、という問いに松平さんは、(おおやけ)にそんなことをすれば煉獄関と関わっていたことを自ら語るようなものとのこと。可能性は極めて低い。

 ま、攘夷志士の犯行にでもした方が都合は良いだろう。

 

「むしろ危険なのは今……城に来いとはただの名目で俺達2人揃ったところを『ズドン』なんてこともありえる……」

 

 松平さんがそう呟くと、近藤さんは「お家きゃえるうううう!!!!」と車のドアを開け放った。

 今朝のブラック星座占いか。確かに乙女座は最下位だったな。

 生きて城まで辿り着ければ私達の勝ち。そうなれば呼んでおいて消すのはナシ……というのが松平さんの案だ。

 

「助かる!」

 

「助かる!?」

 

「多分!!」

 

 振り出しに戻り、再び家に帰ると叫ぶゴリラ。

 やがて、落ち着いた近藤さんがおそるおそる松平さんに尋ねる。

 

「……とっつァんって、何座?」

 

「あん、乙女座だけど」

 

 純度100%で死に向かっていた。

 またも車から飛び降りようとする近藤(ゴリラ)。それを止める松平さん。

 私としては松平さんはヤク座、近藤さんはいっそのことゴリラ座の方がずっと似合っている気がするのだが。

 

「バカヤロー! だーから用心棒のこいつを呼んだんだろうが!! オイ絶条、この際だから一応確認しておく! テメーが刺客とかいう展開はねーよなァ!?」

 

「皆無ですね。私、客は選びますし」

 

「あ、絶条さん! 絶条さんは乙女座じゃないですよね!?」

 

「さぁ、誕生日なんてよく覚えてませんから可能性は無限にあります。もしかしたらここにいる全員が乙女座かもしれませんよ」

 

「4月じゃなかった!? ねぇ、4月って取調べで言ったりしてなかったけぇ!? トシからそんなこと聞いた気がする!!」

 

「いや、あそこで言ったの大半嘘だし」

 

「取調べなんだからちゃんと正直に言いなさいよォ!?」

 

 そう叫んだとき――車が目の前のトラックに衝突した。

 向こうの運転手はグラサンでおなじみのマダオである。相変わらず運が悪い。

 

『ちょっとどこ見て走ってんのォ!? 勘弁してよ~』

 

 抗議していたマダオだったが、松平さんに拳銃を向けられ一方的にトラックを撃ち抜かれ爆発炎上。

 とんだ理不尽である。さっきの偽造した発言といい、本当に警察なのかこの人。

 

「とっつァァん! 何やってんのォ!! アレどー見ても一般人だろ!!」

 

 近藤さんの声に構わず部下と運転をかわる松平さん。

 どうやら部下さんはここで帰らせるつもりらしい。

 

「バカヤロー。おめーアイツ、グラサンかけてたろ。殺し屋だ」

 

 松平さん曰くグラサンをかけている奴はほとんどが殺し屋らしい。アンタもかけてんだろーが。

 

 

「あの~すいません」

 

 

 ……いつの間にか、後ろにはさっちゃんこと猿飛あやめがいた。

 眼鏡が壊れている。さっきの爆発か。

 

「誰ェェェアンタ!?」

 

 そうツッコんだのは近藤さん。

 松平さんによると、今はフリーの殺し屋だが元お庭番衆(にわばんしゅう)のエリートとのこと。案外凄いんだぜ、始末屋さっちゃん。

 とどのつまり、殺し屋には殺し屋という戦法らしい。

 

「松平様、なんスかコレ? よく見えない」

 

 さっちゃんの手には拳銃。松平さんが渡していたが、眼鏡のない今の状態で持たせるのは危険極まりない。

 危ないと騒ぎ立てる近藤さんだが、引き金を引きまくるさっちゃんさん。

 窓が割れ、車内のあちこちに穴が開く。マジで洒落にならない。

 

「オイ静かにしねぇか。気が散るだろ――」

 

 松平さんが口を開くと同時、目の前にはオバQ的な白い何か。

 しかし車が止まることはなく――

 

「……あの、長官。何か今飛んでいきましたけど」

 

「ああアレも殺し屋だから」

 

 適当すぎる返答。絶対ウソだろ。後づけだろ。

 ……と、何やら車にトラックが近づいて来た。後ろの手すりに掴まっていたのは坊さんの格好をしたテロリスト。

 やっぱりさっきのエリザベスだったのか――……

 懐から爆弾を出す桂さん。ヤバイ、このまま漫画(げんさく)の通りだったら爆発に巻き込まれる。

 

 原作展開か? それともアニメオリジナルルートを通るのか――

 

 ……結果、アニオリルートではないのか、この時点で車内に爆弾が投げ込まれた。

 

 

「早く外へ投げてェェ!」

 

 叫ぶ近藤さんだが、さっちゃんは気付いていないのかじっと持ったままである。

 早く投げなくては。最低でも銀さんがここを通る前に!

 

「始末屋さん、爆弾貸せ!」

 

「いやメガネが……」

 

 メガネメガネと探すさっちゃんさん。んなことしてる場合じゃないって!!

 そしてやっと見つけたのかバッと外へ投げる構えをする。

 

「!!」

 

 車の横に銀髪の侍が通る。さっちゃんが見とれ、固まるその数秒のチャンスを私は見逃さない。

 

 ここで爆発されたらフツーに死ぬのだ。現実(リアル)だから。ギャグ補正とか期待するだけ無駄である。

 

 

「とうっ」

 

 

 車内に落とされる前に爆弾を回収。

 窓を木刀で突き破り、上空へと爆弾を力いっぱい投げ――爆発。

 

「……おぉ!」

 

 自分達が無事だと分かり、感嘆の声を上げる近藤さん。

 リアルなデッドオアアライブ。銀魂の世界ではしょっちゅうギャグに紛れた死亡フラグがあるので気が抜けない。

 

「……長官さーん、報酬値上げでよろしくお願いしまーす」

 

 横目で見た視界には静かに頷く警察庁長官の姿があった。

 

 

 *

 

 

「なかなかやるじゃない、アナタ」

 

 無事になんとか城(船)に到着。

 お前達はここで待っていろと言われ、松平さんと近藤さんが中に入っていくのを見届けた後のこと、何もするどころか迷惑しかかけていないメガネっ子がそう言った。

 

「まぁ、アンタよりはマシな働きしたと思うよ……ところでさっきの銀髪は?」

 

「ハッ!? 貴方銀さんのことを知ってるの!? まさか、その木刀も銀さんの真似をして……!?」

 

 恋敵!? と騒ぎ立てるさっちゃん。

 どういう基準で恋敵として認識するのだろうかこの人は。

 

「いや違うけど。全力で否定するけど」

 

 聞くや否やなんだ……とホッとしたように息を吐く納豆娘。

 ……これでなんとかさっちゃんを敵に回すことはなくなったか?

 

「ところでお宅、一体どこの組織に属しているの? お庭番衆ってワケでもなさそうだけど……」

 

「私は一応用心棒っつーのやってるよ。どこの組織の一員でもない」

 

「用心棒? この御時世に?」

 

 ……用心棒という職はそんなに珍しいのだろうか。

 まぁ護衛といってもこの世界には色んな組織があるから、今はそこから雇えばいいだけの話なのかもしれない。

 

「そーだよ。何か文句でも?」

 

「いえ……随分と腕に自信があると思って」

 

 ――そういえば。

 花見のときにも言われたが、なぜ私は用心棒なんて始めたのだろう。

 記憶をかすめたのはあのもっさんの声だけだが、何か攘夷戦争と関係でもあったのか?

 

 

 *

 

 

 夕暮れ時。

 土手の上に私達は立っていた。

 

「……なんとか生き残れたな。改めて礼を言うぜ絶条。報酬はキッチリ値上げしといてやらァ」

 

「そうですね。警察なんだから途中で何かはねたりするのはやめてくださいね」

 

 元はといえば松平さんがエリザベスをはねたのが原因で爆弾が放り込まれたのだ。

 大体長官のせい。

 

「すさまじい攻勢だったな。俺の人生ベスト5に入る死闘だった」

 

「とっつァん……アンタがいなきゃ何事もなく平和に城まで行けた気がするんだが」

 

 ごもっともである。よく言ってくれた局長。

 ちなみにさっちゃんはいつの間にか消えていた。流石はくの(いち)

 

 もうこんなことはこれっきりにしてくれという松平さん。それは私も同感だ。

 天導衆ね……いずれ私が直接戦うことはあるのだろうか。

 少なくとも、万事屋や真選組と関わっていれば何らかの形で衝突することはあるかもしれないが……絶対に(おぼろ)とかには目をつけられたくないな。銀さんでさえ苦戦する程の相手だし。

 

 

「とっつァん、絶条さん、色々迷惑かけてすまなかった。次はバレないようにやるさ」

 

 

 近藤さんの言葉に松平さんは分かってりゃいいんだよ、と言ってその場から立ち去る。

 その後、ゴリラもお妙さんを見つけて走っていったが、石につまづきチョップをかましてしまったことからボコボコにされていた。

 占いはそれほど間違ってもいなかったらしい。お気の毒に。

 

 

 

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