またしても短いです。
一応、次回はデュエルパートになります。
それではどうぞ。
【取材、乱入、大暴露】
「着替えはこれで……。よし、忘れ物はないな」
持っていく荷物の確認を終え、軽く首を回す。
今日はまだ木曜だが、早めに持ち物のじゅんびはしておかないと落ち着かないのだ。
とは言え店の準備があるのも事実。
荷物をまとめて俺は店に向かった。
「いらっしゃいませー」
店に入ってきた客に挨拶をし、席へと案内する。
平日の昼間と言うことであまり客の人数は多くなく、そこまでの大変さはない。
「はい。コーヒーにアイスとサンドイッチとナポリタン、ミルクレープにイチゴショートにガトーショコラ。お待ちどおさま」
魔力弾を浮遊させる要領で大量の注文を運ぶ。
(けっこう量があるけど食いきれるのか?)
注文を受け取ったのはどちらかと言うと細身の男性。
さらに言うならナポリタンは大盛りを注文している。
正直に言えば食べきれるとは到底思えない。
とは言えこちらも注文を受けた身。
男性がなにも言わないのであれば気にしなくてもいいだろう。
「いらっしゃいませー」
「すみません。店長さんはいらっしゃいますか?」
入ってきたのはイヤホンマイクを着けた女性。
店の外には色々な機材を持った人の姿も見える。
「俺が店長ですが」
「え……?す、すみません。ちょっと待っていてください」
そう言って女性は店の外にいる人達の元へと向かっていった。
一体何なのだろうか?
「先程は失礼しました。ええと、私たちは〝ミッドTV〟の〝ミッド散策〟と言う番組でして……。店内にカメラが入っても大丈夫でしょうか?」
「テレビ番組か……。まぁ、今の時間なら客も少ないんで大丈夫ですよ。ただし、写りたくないって言ってる人の要望は聞いてください」
〝ミッドTV〟とはその名の通りミッドチルダで配信されているテレビの局の1つで、〝ミッド散策〟はそこで放送されている番組だ。
ちなみにこの女性の名前はリーフ・アーオバで〝ミッド散策〟のリポーターである。
今のところ店の中にいる客も少なく、先程の大量の注文をした男性以外にはコーヒーを頼む客位しかいない。
これならそこまで迷惑になることはないだろう。
「ありがとうございます。スタッフさん達を呼んできますね」
再びリーフは店の外にいる人達の元へと向かっていった。
〝ミッド散策〟は昼間の生放送と夕方のその日の再放送があるほどの人気番組らしいからけっこうな店の宣伝にはなるはずだ。
まぁ、有名になったらなったで店員の数を増やしたりしなくちゃいけなくなるだろうから一概に嬉しいとは言えないが。
「お待たせしました。それでは店内の撮影をさせていただきますね」
「どうぞ」
機材を持った人達とともにリーフが再び店内に入ってくる。
(テレビだし記念に録画でもしておくか)
そんなことを考えながら俺は店内のテレビを操作していく。
今は店の内装を撮影しているだけなため、特には気にしていなくても問題はないだろう。
「けっこう店内は広いんですね。デュエルモンスターズも楽しくできそうです」
「テーブルデュエルはもちろん、デュエルディスクでのデュエルもできるようにスペースは広めにしているので」
一通りの店内の撮影は終わったのか、リーフは軽く辺りを見ながら話しかけてきた。
テーブルデュエルでは食べ物などを置いていてもデュエルができるような広さが良いと思ったためにテーブルはかなり大きく、デュエルディスクでのデュエルスペースも一組ずつとはいえ、楽しめるようにかなり広めに取ってある。
「ここまで設備に力を入れていて……。もしかして店長さんはデュエルモンスターズがお強いんじゃないですか?」
「あっはっは、そこまで強くはないですよ。負けることもありますから」
リーフの問いに軽く笑いながら答える。
自分が強いと断言するほど自惚れているつもりはないし、そんな証拠も今はないのだから構わないだろう。
「そうなんですか?では――」
「ししょおおぉぉぉおおおおーーーっっ!!」
リーフの話を遮るかのように勢いよく店の中へと1人の女性が駆け込んできた。
あまりの勢いにリーフやスタッフ達は目を丸くして言葉を失っている。
「エレナ……。何しに来た」
「デッキの構築が上手くいかないんです!やっぱりモンキー禁止とラスター、イグニスター制限じゃ大変なんですよぉ!」
駆け込んできた女性――エレナ・メイヘムは俺の問いに腕を振り上げながら答えた。
「えっと……、店長さん。こちらの方は?」
「ああ、こいつは――」
「師匠の弟子!エレナ・メイヘムです!テレビが来ているとは流石は師匠です!これはやはり師匠のデュエルの腕が認知される良い機会ですよ!さぁさぁ、私とデュエルをして早くプロになりましょう!なあに、師匠でしたらすぐに1位になれますからぁぁぁぁぁ!?頭が割れるように痛いぃぃぃいいいっ!?」
「喋りすぎだ馬鹿が」
復活したリーフの問いに答えようとするとエレナが勝手に言葉を遮り、話し始める。
余計なことを話し始めそうだったので途中でアイアンクローで強制的に話しは止めたが。
エレナは何かとすぐに俺をプロデュエリストにしようとするため抑えるべきところは抑えておかないとならないのだ。
「ええと……店長さんのお弟子さんと言うことでよろしいですか?」
「ええ、まぁ」
エレナとは6年ほど前に出会って色々あって弟子にしたのだ。
(そういえば今の俺の肉体が11歳の時だったな……)
リーフの問いに頷きながら昔を思い出す。
出会った当時のエレナはいつもデュエルで負けて涙を流しており、強くなりたいと口にしていた。
当時はプロランクでもかなり下の方にいたのを覚えている。
弟子にするかわりに家に住ませてもらっていたから俺も助かっていたが。
ちなみに家と〝遊戯屋〟ができたのは4年前だったりする。
「まぁ、昔に比べたらかなり強くなったわな」
「はい!」
「師弟仲が良いんですね。ちなみにエレナさんは何をやられてるんです?」
「プロデュエリストですよ!」
「プロでしたか。ちなみにランクは……?」
「ランクですか?1位で……もがもがっ!?」
「余計なことを言うな!」
エレナは笑みを浮かべながら上機嫌で答えていく。
ランクまで答え始めて慌てて口を抑えたが、間に合っただろうか?
エレナの口を抑えたままゆっくりと周囲に目を向ける。
(あ、バレたわ……)
周りの人が浮かべている表情は全て驚愕に染められており、さらにはカメラもバッチリとこちらを撮影している。
そこまでを確認して、俺はただただ固い笑みを作ることしかできなかった。
「いっ、1位!?」
「むぐ」
驚きながら尋ねてくるリーフにエレナは口を抑えられたまま頷く。
スタッフ達にも動揺が走っているようでざわざわと話し声が聞こえてくる。
「1位が弟子!?」
「確かに
「だが、たかが喫茶店の店長が?」
「むしろ1位って言うのが嘘なんじゃ……」
スタッフ達も口々に好き勝手なことばかりを言っている。
ふと店の外に目を向ければ大量の人で埋め尽くされていた。
テレビの力を嘗めていたわけではないがここまで騒ぎになると流石に困ってくる。
「ええと……、何か1位だと証明するものはないですか?言葉だけでは少し信じられなくて……」
「はぁ……。エレナ、プロランクカードは持っているか」
「え。デッキの相談をするだけのつもりだったので持ってきてないですよ」
小さく溜め息を吐きながらエレナに問う。
俺の問いにエレナは表情を固まらせた。
「受け取ったときに常に持ち歩くように言われただろうが……」
「だって私、デュエルするときは仮面しているんで必要な時がなかったんですもん」
そう言ってエレナは口を尖らせる。
しかしこれではエレナが悪魔王だと言う証拠がない。
「ったく。明日だ」
「「はい?」」
短く発した言葉にエレナとリーフは首をかしげる。
他のスタッフ達も何のことか分からずに首をかしげている。
そんな彼らを無視して俺はいまだに写しているカメラの正面に移動した。
「明日、正午に悪魔王とデュエルをする。場所は……ミッド第3運動公園のデュエルコートだ。見に来たい奴だけ来い」
「ちょ、師匠!?そんな急な!」
「こう言うのは早めにハッキリさせておくんだよ。分かったらさっさと今日は帰ってデッキの調整をしてこい」
「うぐぅ……。分かりました」
エレナは項垂れながら店から出ていった。
(明日もプロランクカードを忘れてこないように朝連絡するか)
普段はいきなり転んだりするようなドジな弟子のことだ、なにも言わなければ明日もプロランクカードを忘れてくるだろう。
それだけは避けなければ大々的にデュエルをする意味がない。
「悪かったな。番組を台無しにして」
「い、いえいえいえ!むしろこんなネタを得られましたので十分ですよ!」
軽く謝罪をするとリーフは大袈裟なほどにて手を振って笑顔を浮かべた。
迷惑になっていないと言うのなら良いのだが。
「ちなみになんですが、店長さんはプロになるつもりは……」
「ないな」
「ですよねー」
リーフの言葉に短く答え、意識を明日のデュエルへと向けていく。
最近はエレナも忙しくてデュエルをする時間はなかった。
エレナの力がどれほど変わっているのかを知るには良い機会だろう。
「久々にお前の出番かもな……」
1体のモンスターを思い浮かべながら俺は小さく呟いた。
弟子の成長の確認と、フェイバリットモンスターの召喚。
2つのことを考えながら俺は喫茶店の仕事を再開した。
読了ありがとうございました。
次のデュエルは盛り上げ……られたらいいなぁ。
それでは。