八咫烏は勘違う(旧版)   作:マスクドライダー

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鈴が帰国する回。
やはり本格的な出番は原さk(ry





第16話

「アタシ、中国に帰る事になったから。」

「は……?はぁ!?」

 

 季節はもうすぐ春を迎えようとするこの頃、学校帰りの五反田食堂にて鈴ちゃんが唐突にそう切り出した。驚いた弾くんは大きな声を出して立ち上がるけど、そのせいで厳じっちゃんのフライングオタマの餌食となる。弾くんは頭を押さえながら、イッチーに話を進めるように促す。

 

「あ~っと……ほ、本当なのか?」

「こんな事で嘘ついてどうすんのよ。アタシだって、嘘だったら良かったっての……。」

「い、いったい何時だ?ってか、どうしてなんだよ!?」

「春休みには向こうに帰ると思う。原因は、まぁ……いろいろ……。」

 

 最近は諸々と忘れている事が多いけど、中二から中三に進級する間に鈴ちゃんは日本を去るんだったよな。帰る原因を弾くんに聞かれた鈴ちゃんは、少しばかり言い淀んでしまう。確か、ご両親のいざこざとかだったはず。そりゃぁなかなか言い辛いでしょう……。

 

「いろいろってお前……。……そっか、寂しくなっちまうよ。」

「なんか俺達、常に4人組だったしな。」

「アンタ達、気持ちは嬉しいけどしんみりし過ぎよ。ホラ、黒乃を見習って。」

 

 鈴ちゃんがそうやって俺に視線を集めさせると、思わず食事の手が止まってしまう。いや、別に何も思わないから食事を続けてたとかじゃなくって、喋れないから話しに混ざれないと思ったからで……。だ、だめだよな。混ざれるか否かは別として、真剣な話しなんだから手を休めるべきだった。

 

 妙に感心させられたような視線をイッチーと弾くんに送られて、そこで俺はようやく箸を休めた。するとどうした事か、いやいやいやと2人はどうぞ食事を続けてくれと言ってくれる。なんだその……そんな視線の最中に食事するって、ちょっとした苦行ですよ?まぁ……食べるけど。

 

「そうだよな、黒乃を見習おうぜ……弾。」

「おう。なんつーか……いつも通りに過ごして、いつも通りに鈴を送り出してやるよ。」

「は?なんでちょっと上から目線なのよ。」

「いや待て、そんなつもりじゃねーよ!」

 

 そうそう、この感じこの感じ……。先ほどまでの空気感は消え失せて、鈴ちゃんと弾くんが漫才を繰り広げる。でも……痛々しい気もするけど。なんだか、鈴ちゃんが無理して笑っているように見えてしまう。……そんな事は、考えない方が良いか。気にするだけ、俺の心にもダメージが入ってしまう。

 

 そうして残された時間の大半を、俺達はよりいっそう共に過ごした。俺はISの勉強とかで、休みの日とかは遊べなかったけど……。それでも、短い時間の最中に思い出を沢山刻んでおく事ができた。このまま、鈴ちゃんが笑顔で向こうに帰られたら良いけど。

 

 気温も次第に温かくなり、草木も徐々に芽吹き始める。今日も今日とてポカポカ日和、風も強くは無いし絶好のフライトコンディションだろう。俺、イッチー、弾くんの3人は、鈴ちゃんを送り出すために空港の国際線ターミナルまで足を運んでいた。ボストンバッグを肩に抱えた鈴ちゃんは、俺達の少し先を歩いている。

 

「アンタ達暇よねぇ、わざわざ来てくれなくったって良かったのに。」

「嘘つけ、絶対嬉しいだろ。特にいち……アダッ!」

「蹴るわよ?」

「蹴ってから言うな!」

「2人とも落ち着けって、他の人に迷惑だぞ。」

 

 それまで無言で歩いていた俺達だったが、鈴ちゃんがキュッと振り向きながらそう言った。それに対して弾くんが、一夏が来てて嬉しい癖にという趣旨の台詞を言おうとする。しかしそれは鈴ちゃんの軽い蹴りでキャンセルされて、相も変わらずなやり取りを見せてくれる。

 

 しかし、イッチーが随分とまともな事を言うな。なんか、ドイツから帰って雰囲気が変わった気がする。基本的には、俺の良く知っているイッチーだけど……なんだか纏っているオーラが違うと言うか。でもなんか、原作とは違ってイッチーが剣道を再開したんだよね。そのあたりが関係してるのかも。

 

 そう思いながらイッチーを見ていると、鈴ちゃんは俺の事を見ていた。……なんだこれ?えっと、鈴ちゃんや……何か御用かね。と、そんな感じの視線で鈴ちゃんと目を合わせてみる。すると鈴ちゃんは、ビクッと身体を跳ねさせた。え~……?今になって、実はずっと怖かったんだよねとか言われんでしょうね。

 

「ねぇ黒乃、少し2人で話せない?」

「そういう事なら、俺達は少し離れてるよ。行くぞ、弾。」

「いや、盗み聞きとかはしねーからな……?」

 

 ぬぅ!?ちょっ、ちょっとタイム2人共……置いて行かんといて!くっ……まさか、想像していた通りの展開になるパターンじゃあるまいな……。俺としては鈴ちゃんは大事な友人だし、怖かったなんて言われたら引きこもりになるよ。俺が身構えていると、鈴ちゃんは聞きづらそうに口を開く。

 

「黒乃って、一夏の事……好き?」

 

 ほぇ?……あっ、なるほどね……そういった話題か。そりゃ心配か、イッチーと家族レベルの幼馴染を放置して、自分は故郷に帰らなくてはならないのは。どうだろうねぇ……まぁ、ぶっちゃけた話でドキッとさせられる事は普通にあるよ。なんか、魂は肉体に影響させられるとか言うじゃない……多分だけどそれがモロに出てる。

 

 時々だけど、アイデンティティーを見失いそうになる。俺はもはやただのオレっ娘なんじゃないかと思う時だっ

てあるし……。でもねぇ、女性に対して欲望が働くのもまた事実なんだよねぇ。なんだろ、結局のとこで俺は百合っ娘なのかね。まぁ……今回は、そういう難しいのは差し引いて話を進めようではないか。

 

 そうだな……ドキッとさせられる事はあっても、俺はイッチーに対して恋愛感情は抱いていない。うん……正直、油断してたらコロッと落とされちゃうかもだけど。でも現段階での話となると、毛ほども無いって奴だ。俺が静かに首を横に振ると、鈴ちゃんは難しそうな表情を浮かべた。

 

「……そう。黒乃がそう言うんだったら、それで良いわよ。ごめんね、最後なのに……変な事を聞いちゃって。」

 

 気にせんでも良いって、鈴ちゃんは恋する乙女って奴なんだから。俺なんて、見た目はJC中身はオッサンだもの。……なんか、言ってて悲しくなってくるな。そ、そんな事は後回しだ!鈴ちゃんのサポートをするために、一役買おうじゃない。俺は身振り手振りで、鈴ちゃんにそこへ居てくれと伝える。

 

「ん?黒乃、もう用事は済んで……って、な、何で引っ張って……!?」

「あ~……なるほどな、男前だよ……黒乃って。」

「黒乃……アンタ……。」

 

 俺は離れた場所に居るイッチーに近づくと、少し強引に鈴ちゃんの前まで連行した。イッチーは訳の解から無さそうな様子だったけど、鈴ちゃんと弾くんは事情を察したらしい。そして鈴ちゃんの目の前でイッチーを解放すると、鈴ちゃんの背中を少し押して2人の距離を縮める。

 

「なんだ鈴。今度は俺に何か話か?」

「え、その……くっ、黒乃……って、逃げんじゃないわよーっ!」

 

 弾くんが俺を男前と称したついでに、俺は振り返らずにサムズアップを見せてクールに立ち去った。フライト時間までもう少し……最後の最後は、イッチーと2人きりが理想だろう。イッチーと交代するように弾くんに近づけば、俺をハイタッチて出迎える。俺達の手がぶつかり合う音が、パチンと空港内に響く。

 

 それからしばらく、2人の様子を見守った。タイミング的に、私の酢豚を毎日食べてくれるって質問をイッチーに……あれ?もしかして、後にケンカの火種になる事をしちゃってないかな。……絶対そうだ!あぁ、どうしよう……いやでも、鈴ちゃんのプロポーズ級の告白だし……邪魔するのは……。

 

『皆様、大変長らくお待たせしました。国際線中国行の飛行機にお乗りの方は、搭乗ゲートまで――――』

「おっ、時間だな……。最後になんか言っとかないと。行こうぜ、黒乃。」

 

 タイミングが良いのか悪いのか、鈴ちゃんが乗る飛行機の搭乗案内がアナウンスされた。それを機に、弾くんと2人して鈴ちゃん達の元へ近づく。近づいてみて解ったけど、鈴ちゃんの顔は真っ赤に染まっていた。……ダメみたいですね。やっちゃったものはしょうがない……イッチー、すまんけど未来で鈴ちゃんにぶたれてくれぃ。

 

「お別れね……。アタシ、皆に会えて本当に良かった。」

「な~に言ってんだ。もう2度と会えないんじゃねぇんだからよ。でもま、楽しかったぜ……鈴!」

「鈴、弾の言う通りだ。絶対にまた会おう。それで、またこの4人で遊ぶ……だろ?」

「…………。」

「アンタ達……。うん、そうね!また会いましょう!」

 

 鈴ちゃんは涙腺にきたのか、目元を擦るような仕草を見せた。しかし、次の瞬間には満面の笑みを見せてくれる。それは無理してとかじゃなく、心からの笑顔だと自然に伝わってくる。良かった良かった……雨降れば地固まるって奴かな。1人で安心していると、鈴ちゃんは元気に搭乗ゲートまで向かう。

 

「それじゃ、またね!あ、そうだ……黒乃、アタシ……負けないからね!」

 

 本当の最後に、鈴ちゃんはそんな言葉を残してゲートをくぐって行った。負けないって、何の事だろうか。う~ん……あっ、もしかするとISに関する事かも。アタシも中国でISに乗るから、黒乃には負けない……って意味かな。困ったな、そんな事を言われましても……ガンガンいこうぜな甲龍とはなるべく戦いたくないんだけど……。

 

「黒乃、鈴と何か勝負してたのか?」

「お前死ねよ。」

「いきなりなんだ!?」

「帰ろうぜ、黒乃。あっ、俺んちで飯食ってくか?」

「おい、待てよ弾!」

 

 イッチーが俺にそう問いかけてきたのに対して、弾くんは簡潔に死ねと述べる。……?今の質問で、弾くんはなんでイッチーに死ねって言ったんだろう。それは良いか、とにかく……弾くんの誘いに乗るとしよう。俺は首を縦に振ると、弾くんの背中を追いかける。少し遅れて、イッチーは騒ぎながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

「アタシ、中国に帰る事になったから。」

「は……?はぁ!?」

 

 かなり突然だけれど、アタシは3人に対してそう告げた。こうやっていきなりじゃないと、本当はもっと前に解っていた事なのに……言えなかったから。でも、この3人にだけは知っておいてほしかった。だって3人は、アタシの大切な友達だから。驚かせたのは悪いと思うけど、その後弾におたまが飛んできたのはアタシのせいじゃない。

 

「あ~っと、ほ……本当なのか?」

「こんな事で嘘ついてどうすんのよ。アタシだって、嘘だったら良かったっての……。」

「い、いったい何時だ?ってか、どうしてなんだよ!?」

「春休みに、向こうに帰ると思う。原因は、まぁ……いろいろ……。」

 

 帰らないといけない理由なんて、人様に言えた事じゃないもん。アタシは思わず、意味ありげに呟いてしまう。アタシの様子からして、聞くべきじゃないって思ってくれたみたい。それまで動揺していた弾は、少しだけ大人しくなった。アタシとしては嬉しいけれど……。

 

「いろいろってお前……。……そっか、寂しくなっちまうよ。」

「なんか俺達、常に4人組だったしな。」

「アンタ逹、気持ちは嬉しいけどしんみりし過ぎよ。ホラ、黒乃を見習って。」

 

 アタシの事で、あんまり気落ちしてほしくはないものね……。それに、そんな事を言われると……アタシの方がもっと気落ちしちゃう。アタシは、皆の前では明るく元気な凰 鈴音でいたいから……。だからこそアタシは、黒乃へと話題を逸らした。だって、全然食事の手が止まる気配がないし。

 

 黒乃だって、悲しく思ってくれてる……わよね?……勝手にそう解釈しておくとして、それでも黒乃の調子はいつもと変わってない。それはきっと、アタシへの最大限の配慮のはずだから。一夏や弾も、黒乃に感心したみたいな台詞を呟く。

 

「そうだよな、黒乃を見習おうぜ……弾。」

「おう。なんつーか……いつも通りに過ごして、いつも通りに鈴を送り出してやるよ。」

「は?なんでちょっと上から目線なのよ。」

「いや待て、そんなつもりじゃねーよ!」

 

 弾の発言に、アタシはすぐさま反応してみせた。もちろんアタシの言葉は冗談。こうやって、無理にでもいつもの感じにもっていかないとね……。皆と一緒にこうやってると、余計な事とか考えないで済むし。皆もきっと、そう思ってるはずだもん……。

 

 一緒に行動する事の多いアタシ逹だったけど、この日以来はますますその機会は増えた。そんなに優しくされると、逆に帰りたくなくなるんだけどなぁ。だけど、皆の厚意だしね……受け取っておかないと。そうして気がつけば、アタシが帰国する日が来てしまう。

 

「アンタ達暇よねぇ、わざわざ来てくれなくったって良かったのに。」

「嘘つけ、絶対嬉しいだろ。特にいち……アダッ!」

「蹴るわよ?」

「蹴ってから言うな!」

「2人とも落ち着けって、他の人に迷惑だぞ。」

 

 見送りに来てくれるとは思っていたけど、いざ来られたらアタシの口から出るのは憎まれ口だった。確かにその言葉は弾の言った通りに嘘。だけど余計な事を口走ろうとしていた弾は、お尻を蹴っておいた……軽くだけどね。ま、これもいつも通りのやり取りだし……結果オーライなんじゃないかしら。

 

 そう思いながら皆で笑い合っていると、アタシの眼には黒乃が映った。黒乃は……じいっと一夏の事を見ている。……こうやってふとした時、黒乃は一夏を見ている事が多い。それが何を意味するか、アタシには当然解る。だって、一夏の事が好きだから……。

 

「ねぇ黒乃、少し2人で話せない?」

「そういう事なら、俺達は少し離れてるよ。行くぞ、弾。」

「いや、盗み聞きとかはしねーからな……?」

 

 最後かも知れないから、アタシはしっかり聞いておきたかった。多分だけど、黒乃はアタシに遠慮してるんだと思う。黒乃の事だから、こんな自分は一夏にふさわしくないと考えているかも。アタシとしては、遠慮なんかしてほしくは無い。一夏が好きなら好きだって言ってほしかった。

 

「黒乃って、一夏の事……好き?」

 

 一夏と弾が離れたところで、アタシはストレートに黒乃へと質問をぶつけた。すると黒乃は、ピタリと……まるで時間が止まったかのように固まってしまう。いつもだったら、簡単な質問ならすぐに首を振って応えてくれる。すぐに行動を示さないと言う事は、アタシにとってはそれが答えであるのは明白だった。

 

 黒乃もきっと、一夏の事が好き。沢山の時間を重ねて、一夏と黒乃は互いに支え合う関係だってアタシは思う。それが今は、家族としてってだけの話で……。正直なところ、黒乃がその気になっちゃえば……勝てる気なんて微塵もない。それでも、もし一夏を奪い合うのならあくまで同じステージに立っていたい。

 

「…………。」

「……そう。黒乃がそう言うんだったら、それで良いわよ。ごめんね、最後なのに……変な事を聞いちゃって。」

 

 かなり長い間考え込んでから、黒乃は首を横に振った。それでも、認めてくれないのね……。黒乃もかなり頑固だもんね。もっと前から言っていれば、認めさせることができたかな。後悔先に立たずって言うか、まさか帰国する事になるとは思って無かったものね~……。しょうがないけど、諦めるしかないか……。

 

「ん?黒乃、もう用事は済んで……って、な、何で引っ張って……!?」

「あ~……なるほどな、男前だよ……黒乃って。」

「黒乃……アンタ……。」

 

 黒乃が掌を見せて、ここに居てくれとアタシにジェスチャーを見せた。すると黒乃は振り返って2人の元へと近づく。そしてそのまま一夏を引っ張って、アタシの元まで連れて来ようとしちゃってる。自分の感情を押し殺してでも、アタシにチャンスをくれようとするなんて……馬鹿よ、アンタ……。

 

「なんだ鈴。今度は俺に何か話か?」

「え、その……くっ、黒乃……って、逃げんじゃないわよーっ!」

 

 気が付けば、一夏はアタシの目の前だ。あろう事か黒乃は、妙にアタシたちの距離を物理的にも近づける。そして黒乃の去り際には、親指を立てて行くもんだから……アタシはウガーッと叫ぶしかない。お、落ち着きなさい……アタシ。せっかく黒乃がくれたチャンスなんだから、しっかりやらないと申し訳が立たないわ。

 

「鈴、なんか言い辛い事なら別に無理して――――」

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!アタシだって予想外なんだから!」

 

 こいつ、雰囲気からして察しなさいよ……!何も解ってないみたいな顔して、ほんっと腹立つ!……けど、その何倍も……好きなんだろうなぁ。……って、アタシは何を恥ずかしい事を言ってんのよ!で、でも……ハッキリ言わないと、この唐変木には伝わんないわよね……。

 

「あ、あのね、そう……す、酢豚!アタシが料理上手になったら……い、一夏に毎日アタシの酢豚を食べて欲しいの!」

「本当か?それは嬉しいな。約束だぜ、鈴。」

 

 解ってない……絶対に解ってない!で、でもまぁ……こんなモンでいいわよね、うん……。ちゃんと好きって言えなかったアタシも悪いし。でも、単なる告白より恥ずかしい事を言った気がするわ……。冷静になったら、日本で言う毎日味噌汁を……って奴になっちゃってるじゃない……!

 

『皆様、大変長らくお待たせしました。国際線中国行の飛行機にお乗りの方は、搭乗ゲートまで――――』

 

 アタシが1人で悶絶していると、搭乗のアナウンスが鳴り響いた。我に返ると、黒乃と弾がこっちに歩み寄って来る。流石に飛行機に乗る寸前なら、そうなるわよね……。アタシも、皆に見送られる方が嬉しいもの。だけど、すぐに調子を取り戻さないと……こんな顔してたら、弾にからかわれちゃうわ。

 

「お別れね……。アタシ、皆に会えて本当に良かった。」

「な~に言ってんだ。もう2度と会えないんじゃねぇんだからよ。でもま、楽しかったぜ……鈴!」

「鈴、弾の言う通りだ。絶対にまた会おう。それで、またこの4人で遊ぶ……だろ?」

「…………。」

「アンタ達……。うん、そうね!また会いましょう!」

 

 弾のクセに、たまにはいい事を言うわね。確かにアタシは、どこか自分でもう会えないって思っちゃっていたかも。日本や中国が滅ぶわけでも無いんだし、休みとか見つけてこっちに来ればいいわよね。まぁ……アタシの財布が寂しくならない程度にしないと。

 

 それは良いけれど、早くゲートに向かってしまおう。いつまでもこうしてたら……本当に行けなくなっちゃいそうだわ。アタシは走ってゲートまで振り返らずに行こう……と思ったけど、黒乃に1つ言っておかないとならない事がある。アタシは振り返ると、遠くにいる黒乃に呼びかけた。

 

「それじゃ、またね!あ、そうだ……黒乃、アタシ……負けないから!」

 

 イタズラっぽくそう言えば、黒乃が少し表情を変えた気がした。アンタも少しは危機感を覚えないと、本当にアタシが勝っちゃうわよ。どうせ一夏を取られるんなら、アンタなら安心して任せられるもん。アタシはニコッと黒乃に微笑みかけると、今度こそゲートをくぐった。

 

 日本に住んだのは3年くらいかなぁ……?長いようで短い時間だったけど、一夏、黒乃、そして弾……他にも多くの人達に出会えて、本当に良かった。中国に帰ったら、アタシも黒乃みたいにISの勉強をして見ようかしら。そしていつか日本のIS学園に通って、黒乃のライバルになる……。

 

 うん、良いわね……それ。また日本に居られるし、IS選手になればアタシの年でもお金を稼げるだろうし……一石二鳥じゃん。そうと決まれば、お母さんに頼んでみないと。フフフ……黒乃、待ってなさいよ……。色んな意味で、本当にアンタのライバルになってやるんだから!

 

 

 




黒乃→イッチーをどう思ってるか?別にただ家族としか思ってないけど……。
鈴→やっぱり黒乃も一夏が好きかぁ……。

四六時中一緒に居たらそう思われても仕方が無い……のですが。
実のところを言えば黒乃が一夏に付きまとわれているだけと言うね……。

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