八咫烏は勘違う(旧版)   作:マスクドライダー

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VSゴーレムⅠな回
とはいいましても、主人公の出番は添えるだけですが。





第33話

「クソッ!」 

「またハズレ!?アンタ、これで何回目よ!」 

 

 異形のISと足止めの意味を込めて戦闘継続中の織斑 一夏と凰 鈴音は、とてもではないが善戦しているよ言い難い。いや、厳密に言うなればチャンスはしっかりあったのだ。白式に備わっている零落白夜さえあれば、いくらだってチャンスはあると考えても良いかも知れない。

 

 しかしだ、単純に一夏自身の技量と、異形のISの性能とで問題が生じている。一夏はこれまで4度ほど一撃必殺のチャンスを逃している訳だが、単にヘタクソという理由で外したのではない。普通だったらまず回避は不可能。そんな角度と速度で攻撃を仕掛けているのだが、異形のISのスラスター出力が尋常ではない。

 

(……そう言えば、刹那に似てるのかもな。)

 

 全身にある大型スラスターを吹かして回避を取る姿は、どうにも刹那を思わせる。刹那の場合は翼で、連続して何度も瞬時加速しているわけだが……どちらがより変態かと聞かれれば甲乙つけがたい。とにかく、戦法が大型スラスターでの回避優先なために、鈴音の攪乱があまり意味を成さないのだ。

 

「ほら、外したならさっさと離脱!」

「わ、解ってる……!」

 

 これも厄介と言えば厄介で、異形のISは攻撃を回避した後は必ず反撃に転じる。しかも一撃もらえばアウトなところを、グルグルと回転しながらビーム砲を放つという凶悪極まりない攻撃をしてくるのだ。若干逃げ遅れた一夏だったが、鈴音の龍砲による支援もあってか事なきを得た。

 

 ぶっちゃけてしまえば、さっきからコレの繰り返し巻き返しが続く。そのおかげか、白式も甲龍もジリ貧状態。ここで最悪なのが、白式のエネルギーが尽きかけているという点だろう。白式は、長く戦えば戦うほどに戦況が不利になる。せっかくの零落白夜も、良くて残り一発使えるかどうかだ。

 

 このギリギリの瀬戸際で、一夏はある事が引っかかって仕方が無い。集中力を欠いているというほどではないが、こう……胸の奥で違和感のような物が渦巻いているのだ。その違和感の主は、もちろん異形のIS。一夏はまるで、独り言のようにポツリと呟いた。

 

「なんか、機械的……な気がする?」

「は?何かあるならハッキリ言ってよ。」

「いや、なんだろうな……。アイツの動きが、妙に機械的な気がしてならないんだ。」

 

 そんな一夏の言葉に鈴音は、ISは機械だと返す。そんな事は一夏も解っているが、言いたいのはそういうニュアンスではない。回避を優先して行動、回避に成功すれば反撃。それら全てが、淡々と……まるでパターンとして組まれているような。人が動かしているのならば、ああは単調にならないハズ……つまり―――。

 

「あのIS、もしかして無人機なんじゃないか?」

「……そんなのあり得ないって事くらい解るわよね。」

「人をカワイソーな目で見るな。それくらいは解ってる……けど。」

 

 一夏も、ISに関する基本中の基本くらいは抑えた。それだけに、自分の言っている事がありえないというのは理解が及ぶ。。しかし、こうして2人で会話をしていると攻撃が来ない。まるで自分達の会話に興味があるかのように、黙々とこちらを眺めるのみ。一夏……だけでなく、鈴音もその点に関しては思い当たる節があるようだ。

 

「じゃ、何よ。仮にアレが無人機だったら―――」

「手加減しなくて良い。それだけでかなり気分が違う。」

 

 そう言いながら、一夏はギュッと雪片弐型を握り締めた。零落白夜の威力を最大限まで引き上げたとして、人間相手に喰らわせるわけにもいかないのだ。絶対防御を発動させるまでなら良いが、それを通り越して生身に影響を与えかねない。そんな考えが頭の片隅にあった一夏は、知らぬうちに力をセーブしてしまっていたのだろう。

 

「手加減って……あのね、そもそも当たんないんだから別問題でしょ。」

「大丈夫、少し考えがあるんだ。」

 

 顔つきは真剣そのものだが、まず一夏の考えという時点でなかなかに乗る気が起きない。かといって、自分にはなにも策が浮かんでいない訳で……。鈴音は、頭は弱い方である己をとことん呪った。それと同時に、一夏に賭けてみたくなってしまっている自分の単純さも。

 

「はぁ……解かったわよ。で、アタシは何をすれば良い?」

「サンキュー、鈴。威力を最大限まで高めた衝撃砲をアイツに撃ってくれ。」

「良いけど、それこそ当たんないと思うわよ。」

「ああ、それで良い。アイツには当たらなくて良いんだ。」

 

 乗った以上は、時間稼ぎやら囮やら、何でもやる覚悟だったのだが……拍子抜けな頼みだった。一夏が妙に意味深な言い回しをしたのも気になったが、とりあえずは考えない事にしたらしい。それに、あまり考えている暇は無さそうだ。しばらく黙ってくれていた無人機は、ついに行動を開始する。

 

「じゃ、任せたぞ鈴!」

「ええ、そのくらいならお安い御用!」

 

 無人機は特に狙いを定めている様子もなく、2人へ向かって突っ込んでくる。本来ならば、迎え撃つか距離を取るかの2択だろう。しかし鈴は、頼まれたからには動かない。いつ発射されるかも解からないビーム砲すら恐れずに、衝撃砲を本当の本当に最大出力で撃つため、龍砲を前に押し出しドッシリと構える。

 

「よし……発っっっっ射……ぁ!?ちょっ馬鹿!アンタ何やって……!?」

「ぐうっ!?」

 

 龍が雄叫びを上げる予備動作かのように、鈴音は衝撃砲を溜めて、溜めて、溜めて、溜めて……いざ発射。……したと同時に、射線上へと一夏が割り込んできた。慌てて発射を中止しようとした鈴音だったが、既に発射シークエンスは完了している。いや、むしろ……一夏が絶対に中止できないタイミングを狙って割り込んだのだ。

 

 しかし、一夏の狙いはそこにこそあった。普通にやって避けられてしまうのならば、瞬時加速ならばどうだと一夏はそう考える。だが、単純に白式のエネルギーが足らない。さすれば、外部からエネルギーを取り入れてしまえば良いと。瞬時加速は、放出したエネルギーを取り込んで再放出するという原理だ。だからこそ一夏は、その背で思い切り衝撃砲を受けた。

 

「おおおおっ!」

 

 最大出力の衝撃砲は、想像を絶する威力だ。ミシミシと身体が悲鳴を上げているのがよく解かる。しかし……裏を返せばそれだけ凄まじいエネルギーであるという事。一夏は考えるというよりは、感覚的に瞬時加速を行う。そして白式に残っていたエネルギーを全て零落白夜に回す。

 

「でやああああっ!」

 

 雪片弐型へと集まったエネルギーは、オーバーフローして巨大な刃を形成した。この時の一夏は、初めてISに乗った際の……一体感を感じる。その感覚に身を委ね、一夏は雪片を振るった。瞬時加速も相まってか、無人機は今度こそ避けられない。一夏の斬撃は、無人機の右腕を斬り落とすに至る……が。

 

「ちょっと、まだ動いてるわよ!」

「考えがあるって言ったろ!なぁ……黒乃、セシリア!」

「…………。」

「仰る通りですわ!」

 

 一夏が急加速した時点で、鈴音はようやく狙いを悟った。そしてこれで決まり……かと思いきや、無人機の反応は死んでいない。焦った声で油断するなと告げるが、一夏にはもう心配の欠片もなかった。鈴音と作戦会議をしている最中、一夏はキチンと見ていたのだ……シールドをガンガンと叩く黒乃を。

 

『これを壊せ。』

 

 黒乃の行動から、一夏はだいたい何が言いたいか予想がつく。もちろん無人機を倒すつもりでの零落白夜だったが、アリーナの遮断シールドを破壊するという目的も含んでいたのだ。そうしてシールドが掻き消えたと同時に、セシリアはBT4基の同時射撃で無人機を射抜く。

 

「…………!」

 

 無人機がたまらずよろけている間に、更に黒乃が続いた。その両手に握られているのは、日本刀型の叢雨と脇差型の驟雨。黒乃は前方に短くQIB(クイック・イグニッションブースト)して無人機へと急接近……と同時に身体を丸めて縦回転。そのまま無人機の頭を飛び越すようにして、頭部を切りつける。

 

 飛び越えたと思ったら、今度は振り返って上昇しながら交互に叢雨と驟雨を振り上げる。それを連続して何度も繰り出すと、もはや無人機の背はズタズタだ。そして後ろ回し蹴りで無人機を蹴り飛ばしてフィニッシュ……かと思いきや、今度は身体をピンと張ってロケットのように無人機へ突っ込む。

 

 そこから単に叢雨と驟雨を突き刺すのではなく、器用にスラスターを用いてドリルのように錐揉み回転。叢雨と驟雨の切っ先は無人機へと触れ、火花を上げながら鉄の擦れる嫌な音を放つ。やがて錐揉み回転攻撃に耐えられなくなった無人機の装甲には……巨大な風穴が出来た。これにより無人機は完全停止し、力なく地面へ墜落する。

 

「…………。」

「すげぇ……なんかワチャワチャして良く解んないけど、とにかくすげぇ!」

「ど、どうやったらISであんな動きが出来んのよ……。」

「まぁ……黒乃さんですし?」

 

 無人機に風穴を開けた黒乃は、そのまま飛び出すように数メートル真っ直ぐ飛行する。そして動きを完全に制止させると、ゆっくりと叢雨と驟雨を腰の鞘へと仕舞う。何か必殺技っぽい一連の動作に、一夏は目を輝かす。それに対して鈴音は頬を引きつらせ、セシリアは黒乃だから仕方が無いと言い出す。

 

「ま、何はともあれ……どうにかなったわね!」

「そうですわね、皆さんご無事なようで何よりです。」

「ああ、本当にな。んじゃ、戻ろうぜ。黒乃、そいつはほっといたら先生が何とかするだろ。」

 

 そう、鈴音が言う通り過程がどうあれ事態は収束したのだ。完全に安心して良い状況に、アリーナ内の誰しもが笑みを浮かべる。そんな中……ただ1人、まるで浮かないかのような無表情でいる人物が居た。こう言えば解るだろうが、それは間違いなく黒乃だ。黒乃は地面に降りて、様子を窺うかのように無人機を眺め……そして―――

 

「…………!」

「く、黒乃……?ねぇ……もう完全に止まってる……わよ……?」

「…………黒乃さん。」

「黒乃、お前は……。」

 

 瞬時に左腰に下げている神立を抜刀、何を思ったのか無人機の左腕へと振り下ろした。さっきまで動き回っていた無人機だが、止めを刺したのは黒乃本人だ。何をそこまでする必要があるのか、そう言いたくなるように何度も……何度も……神立の刃を左腕の関節へ叩きつける。

 

 セシリアと鈴音が困惑する最中、一夏にはこれがどういう状況か見当が着いていた。表情はいつも通りの無そのものだが、これは……もう1人の方の黒乃だと。つまらない、もっと戦おう、もっと私と遊ぼうと……駄々をこねているのだと一夏は感じた。

 

(もう1人の黒乃って事は、これも……間違いなく黒乃なんだ。だから―――)

 

 否定して、押さえつけて、抑止して……果たしてそれで良いのかと、一夏は自分へ問い掛ける。一夏の出した答えは、断じて否。一夏は黒乃の背後へゆっくり近づくと、神立を雪片で止める。そしてすかさず黒乃を抱きしめ、まるで子供をあやすかのように語りかけた。

 

「黒乃、今回はもう終わったんだ。黒乃がそこまでする事は無い……。だから、皆で一緒に戻ろう。……な?」

「…………。」

 

 一夏が抱き着いた途端に、黒乃は少し体が強張った。だがその力も、一夏が優しく語りかけるにつれて収まっていく。そしてスルリと一夏の腕から抜け出すと、数歩の距離を置いて神立を鞘へ戻す。カチンと神立が仕舞われる音を最後に、アリーナ内はしばらく静寂へと包まれた。

 

「…………。」

「黒乃……。」

「ねぇ一夏、アレって……。」

「……鈴も、代表候補生なら知ってるよな?でも、それは鈴が思ってるようなのとは違うんだ。」

「アタシは別に、八咫烏がどうの言ってる奴らのつもりじゃないけど……解かったわ。また今度話してよね。」

 

 しばらくの間を置くと、まず動き出したのは黒乃だった。いつもの通りに、まるで何事もなかったかのようにアリーナを後にする。それに続こうとした一夏だったが、何か言いたそうな鈴音に阻まれた。鈴音が必死に言葉を選んでいる様子だったため、先に一夏が言いたい事を言っておく。

 

 すると鈴音は、その言い方で何か事情があるのだと理解した。その事に、鈴は大きな安心感を覚える。それならば、もうここには用は無いと思ったのだろう。鈴音もヒラヒラと手を振ってから、自身の戻るべき方向へ飛んで行った。一夏はそれを見送ると、セシリアに促されようやく動き出す。黒乃の暴走は抑えられた……が、やはり一夏の表情は晴れないままだった……。

 

 

 

 

 

 

(ん〜……この辺りで大丈夫かな?)

「はぁはぁ……く、黒乃さん……ここは観客席でしてよ?」

 

 セシリーの手を引いた俺が辿り着いたのは、彼女の言った通りに観客席だ。現状は、アリーナ外への道が断たれているわけで……。逆を言えば、アリーナ内の移動はそれなりに可能みたい。まぁ俺がここに来たには、一応の理由ってもんはある。

 

「安全に配慮して迅速な行動を頼む!……こらそこっ!無駄口を叩いている暇はないんだぞ!」

「あれは篠ノ之さん。なるほど、織斑先生並みに適任ですわね。」

 

 喋れないなりに、ここへと連れてきた理由を説明しようとした。すると、反対側の客席でモッピーが避難誘導をしているのが見える。だとしたら、モッピーが攻撃されかけるフラグは潰した……のかなぁ?良いや、モッピーが頑張ってんだから……俺も覚悟を決めよう。

 

「黒乃さん?おもむろに刹那を展開なされて……。」

「…………。」

「遮断シールド……一夏さん……。……なるほど、ようやく理解が及びました。」

 

 俺は刹那を展開してみせると、ドアをノックするみたいに遮断シールドを叩いた。そして、すかさずイッチーを指差す。どうやら俺の考えは伝わったみたいだな。別に原作に従って行動しているんだけど、作戦としてはこうだ。

 

 零落白夜にて、イッチーが無人機ごと……もしくは単品で遮断シールドを破壊。そうすれば、俺達の援護を阻む物は無くなる。俺もセシリーも、好きなように攻撃が可能って事さ。さて、イッチー達の様子は……あれが無人機か否かを話し合ってる最中かな。

 

 今を逃すと、他にタイミングはないかも知れない。そう思った俺は、イッチーに視線を送りつつ、遮断シールドを今度はガンガンと殴るくらいのつもりで叩いた。すると、チラッとイッチーがこちらを見た。オッケー……通じたね。モッピー達には悪いけど、イッチーと1番ツーカーが取れてるのは俺だろう。

 

「黒乃さん、状況にもよりますが……わたくしが隙を作ります。とどめは貴女が。」

「…………。」

 

 射撃型の機体であるブルー・ティアーズと、格闘型の刹那は相性がいい。セシリーの射撃が当たろうと当たらまいと、牽制さえできればそれでダメージ確定だ。何故なら、刹那は一瞬の隙さえあれば俺の距離へもっていける。寄らば斬ります、寄らなくてもこっちが寄って斬ります……な機体だからね。

 

 セシリーの返事へ頷くと、俺はいつでも競技場へと飛び込めるよう雷火を吹かす。セシリーもセシリーで、ブルー・ティアーズ及びBT4基を展開して、無人機に対して照準を合わせる。俺らとイッチー達の準備が整ったのを見計らったように、無人機も行動を開始した。

 

「でやああああっ!」

 

 イッチーは、鈴ちゃんの放つ衝激砲の射線上へ割り込む。無論衝撃砲は白式の背へと命中……。だが、単にそれだけでは終わらない。外部からのエネルギー……つまり衝撃砲をスラスターへ取り込んで、イッチーは瞬時加速を繰り出す。

 

 グンっとイッチーの身体が飛び出たと思った頃には、無人機の右腕が切断されていた。……やっぱり、イッチーで止めってわけにはいかないか。ただ、予定通りに遮断シールドも取り払ってくれた。さぁて、いっちょ出番ですかねぇ。

 

「ちょっと、まだ動いてるわよ!」

「考えがあるって言ったろ!なぁ……黒乃、セシリア!」

(おうよイッチー!)

「仰る通りですわ!」

 

 イッチーはカウンターを喰らわされそうになっているが、俺達を信じて動かないのだろう。結果的に、無人機を引きつける事になっているのだから。そしてセシリーは、BT4基による同時射撃を仕掛ける。言うまでもないが……射出されたレーザーは全て命中!

 

 さて、最後は俺だ!セシリーに言われた通り、QIB(クイック・イグニッションブースト)で一気に無人機との距離を詰める。そして今回俺が攻撃用に選んだのは、腰に装着してある叢雨、驟雨だ。俺はそれらを引き抜くと、身体を丸めて縦回転。そのまま無人機を飛び越えつつ、頭部を切り裂く。

 

 飛び越えると、すぐさま振り返って背中を攻撃。斜め下から切り上げる逆袈裟斬りで、叢雨と驟雨を交互に振る。それを連続して、6ヒット分くらい喰らわせ……お次は、そうだなぁ。最後の攻撃を再現するには、少し距離が短い。よって俺は、無人機を後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。よしっ、この距離なら……いける!

 

(天・地・空、(ことごと)くを制す!神裂閃光斬(しんれつせんこうざん)!)

 

 距離の空いた無人機目掛けて、錐揉み回転しながら突っ込む。もちろん叢雨、驟雨の2本は両手を前に突き出す事で攻撃に用いている。まぁ驟雨は脇差くらいの長さだから、ほとんど当たってないんですけどねー。だが、手ごたえは十分……このままいっけー!

 

(だっしゃ、貫通!)

「すげぇ……なんかワチャワチャして良く解んないけど、とにかくすげぇ!」

「ど、どうやったらISであんな動きが出来んのよ……。」

「まぁ……黒乃さんですし?」

 

 身体ごと突き抜けるのは無理だったが、ガリガリと叢雨、驟雨を押し当てていると、無人機の胴体を刃が貫通した。一連の動きを見て、皆は様々なリアクションをくれる。そしてセシリー……その言葉は正解だよ、俺だからこそできたんだ。

 

 今の連続攻撃は、とある名作RPGシリーズに登場するキャラが使用する技で、神裂閃光斬という。もちろん刹那自体は操縦してるけど、技のイメージがしっかり頭の中にあるからね……。ほとんどは、イメージインターフェースの補助で動かした。

 

 原作の流れからして、ここで無人機が瀕死なのは解っていたからさぁ。こういう時でもないと、アニメやゲームの技を再現するのは適当じゃない。とにかく、綺麗に決まったな!やっぱり技を再現すると、なんだか気分が良いや。今度はいつチャンスがあるやら。

 

 それにしても……本当に決着はついたんだろうね?というのも、原作じゃあ終わったと思ったらまた動き出して、それでイッチーが危ない目にあっちゃうんだよ……。俺は高度を下げ着地すると、地に落ちた無人機を観察してみる。う〜ん……心配し過ぎかなぁ?

 

「ま、何はともあれ……なんとかなったわね!」

「そうですわね、皆さんご無事なようで何よりです。」

「ああ、本当にな。んじゃ、戻ろうぜ。黒乃、そいつはほっといたら先生が何とかするだろ。」

 

 うん、まぁそれはイッチーの言う通りなんだろう。これを研究室かなんかに運んで、鷹兄あたりがバラす事になるはず。だったら……もう少し運搬し易いようにしておいた方が良い気がしてきた。うんうん、このままだと大人数を駆り出す事になっちゃうもんね。

 

(そんじゃあ早速……っと!)

「く、黒乃……?ねぇ……もう完全に止まってる……わよ……?」

「…………黒乃さん。」

「黒乃、お前は……。」

 

 俺は左腰から神立を抜いて、無人機の左腕を削ぎ落とそうと肩関節あたりに刃を叩きつける。鈴ちゃんや、それは言われんでも解るけどさぁ……説明できないから黙って見てなって。……それにしても、案外硬いな。さっきは胸部に穴開けたのに……ふんぬっ!

 

 ありゃ……?マジで切れないな、しつこいくらいに神立で斬り込んでるのに……。むぅ……いっそ、疾雷か迅雷で……いやいや、ダメだな。あの2本はレーザーブレードなんだし、焼き切ったらそれこそ鷹兄の作業を増やしちゃうかもだ。

 

 ならば、引き続き神立でゴーか……。そら、いい加減に斬れなさい。少しばかりヤケクソ気味に、頭上から神立を振り下ろす。しかし、それは無人機へと届く事は無かった。俺と無人機の間に、雪片が割り込んできたから……って、雪片?

 

「黒乃、今回はもう終わったんだ。黒乃がそこまでする事は無い……だろ?だから、皆で一緒に戻ろう。……な?」

(おおっ……ちょちょっ、ちょっとちょっと……抱き着く必要はなくないかねイッチー?)

 

 そんな事を言いながら、イッチーは俺を抱きとめる。いや、言いたい事は解るよ……。それはもう俺の仕事じゃないから、もう気にしないで帰ろうぜって話でしょ?……いや、解らんよ……なんで俺はこの流れで抱きしめられる必要があるのさ。

 

 解った……解ったから、そうだね……イッチーの言葉も一理ある。後は鷹兄が好きにするだろうし、少し余計なお世話だったかも。よぅし、それならイッチーの言う通りに帰ろうか。そう思って、イッチーの腕から離脱するが……誰1人として一向に動こうとはしない。

 

 え?いや……帰るんじゃなかったの?……先に帰っちゃうよ?俺は左腰の鞘に神立を仕舞うと、フワリと地面から足を離して飛行を開始する。しかし、イッチーも鈴ちゃんも俺を追って来ない。……なんで?どうして?俺、露骨にハブられてる……?

 

 そ、そんな事はない……はず。大丈夫、大丈夫……他はともかく、イッチー達は俺の友達……俺の友達……。ま、友達ほど安っぽい言葉も無いですけどね〜……ハハッ。……ダメだ、1人で勝手に拗ねてどうするよ。んじゃまぁ、気にせず帰る事にしようか……。

 

 

 

 




黒乃→後の為に解体作業っと……。
一夏→これは……もう1人の方の……。

神裂閃光斬(しんれつせんこうざん)
2007年に発売されたゲーム『テイルズオブイノセンス』より、アウトローな2刃流剣士『スパーダ・ベルフォルマ』の使用する秘奥義。無印版、多作品参戦版、リメイク版などで、技の見た目が大きく変わるのが特徴。黒乃は多作品参戦版をベースに一連の動作を行っている。


恐らく知っている人の方が少ないでしょうが、好きな技なのでつい……。
今後もこんな感じで、剣に関わる技は黒乃に使わせたいと思います。

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