問題児たちが異世界から来るそうですよ? 悲報 お一人様追加です♪ 作:卍恭也卍
お楽しみください。
ギフトゲームが終わり、元の部屋へ戻ってきた。基本的に何も変わらない六人だが唯一変わった点があった。
耀と穹の距離がほぼゼロに近いほど隣り合って座っていた。
耀は常にニコニコしており、穹は少し困った顔をしていた。
「まぁいろいろあったがギフトゲームはクリアじゃ。」
ニコニコと笑う白夜叉に黒ウサギが発言する。
「今日は鑑定をお願いしようと思っていたのですが」
黒ウサギの発言に、気まずそうな顔で目を逸らす白夜叉。
「よりにもよって、ギフト鑑定か、専門外なんじゃがのう」
ゲームの賞品として依頼を受けるつもりだった白夜叉は、溜息をつき「仕方ないのう」と言って四人の顔を順に両手で挟み、目を覗いていく。
「どれどれ…ふむ……ほぅ…よし。四人とも素養は高い、がなんとも言えんの。おんしら自身は自分のギフトをどこまで把握している?」
元の位置に戻り、四人に白夜叉は尋ねるが
「企業秘密」
「以下同文」
「右に同じ」
「機密事項」
四人の流れるような拒絶に
「うぉい!…まぁ、今しがた闘った相手に教えるのは怖いかもしれぬが、それでは話が進まんだろう」
白夜叉は諭すように話す。
「鑑定なんていらねぇ。それに、人に値段貼られるのは趣味じゃない」
聞く耳を持つ気は無い。と言うような態度でいる四人に白夜叉は困った顔で悩んでいたが、ふと、妙案が浮かんだという顔をして笑う。
「何にせよ主催者としておんしらには恩恵を与えねばならん。少々高価なものだがコミ復興の前祝いにしてはちょうど良いじゃろ」
そう言って、白夜叉が柏手を二回打つと
四人の前に1枚ずつカードが現れた。
カードには四人の名前と所持するギフトを表すであろう名前が記されていた。
コバルトブルーのカードに
逆廻十六夜
ギフトネーム:"正体不明"(コード・アンノウン)
ワインレッドのカードに
久遠飛鳥
ギフトネーム:"威光"
パールエメラルドのカードに
春日部耀
ギフトネーム:"生命の目録"(ゲノムツリー)"ノーフォーマー"
ブラックオパールのカードに
鷹宮・L・穹
ギフトネーム:"傲慢の血統"(ブラッドコード・ルシファー)
"混血の悪魔"(ハーフブラッド・ディアボロス)
自分の前に輝くカードを手に取る。
黒ウサギは驚き、興奮して覗き込む。
「ギフトカード!」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「お誕生日?」
四人の流れるようなボケに黒ウサギは
「違います!というかなぜ皆さんそんなに息が合うんですか!?このギフトカードは顕現しているギフトを収納することの出来る超高価なカードなんですよ!」
怒りながらギフトカードの説明をする
「つまり素敵アイテムってことでいいんだな?」
「なんで聞き流すんですか!…はぁ、そうです。そうですよ!超素敵アイテムでございます!」
問題児達の聞き流しっぷりに、黒ウサギは自棄になり投げやりに答えるが、問題児たちは黒ウサギの話を一切聞かず、物珍しそうに自分たちのカードを眺めていた。
何も聞いていない問題児達を見て、黒ウサギは膝から崩れ落ちた。
一連の流れを見て白夜叉はくつくつと笑い
四人に声をかける。
「本来そのカードにはコミュニティの名と旗印も記されるのだがな。このカードのように」
そう言って白夜叉は懐から、双女神の紋の描かれたカードを取り出し、四人に見せる。
「おんしらはノーネームじゃからな…
少々味気ない絵になっておるが、文句は全て黒ウサギへ言ってくれ」
そう言うと白夜叉は自分のカードを懐にしまう。
「なぁ、…これ、水樹も収納できるのか?」
聞くやいなやすぐに水樹にギフトカードを掲げると、粒子となって十六夜のギフトカードに吸い込まれていった。
「へぇ、面白いなこれ。水も出せたりするのか?」
十六夜は楽しそうな声音で白夜叉に尋ねる
「あぁ、出せるとも。試すか?」
白夜叉はニヤリと笑い聞くが、
「駄目です!水の無駄使いは反対です!
水はコミュニティのために使って下さい」
凹んでいた黒ウサギだが、二人の会話に割り込み抗議の声をあげる。
反対の声をあげる黒ウサギに舌打ちする。
黒ウサギはまだ安心できないと言いたげな様子で十六夜を見つめる。
十六夜達のやり取りの後ろで、穹はおもむろに、自分の持ってきた刀にギフトカードを掲げると、水樹と同じように粒子となって吸い込まれていった。
「え…?」
たまたまその様子を見ていた耀が声をあげた。
不意にあがる声に白夜叉や黒ウサギ、十六夜、飛鳥までもがこちらを向く。
「どうかしましたか?耀さん」
尋ねる黒ウサギに耀は
「穹の刀が…」
「刀?そういえば先程まで持っていたのに
どこにやったのですか?穹さん」
穹の手に刀が無いことに気づいた黒ウサギは穹へ尋ねる。
穹は自分のギフトカードを指差し
「この中」
答えた穹に、一番最初に声をあげたのは白夜叉だった。
「なんと!その刀はギフトであったか。
穹よ、おんしはその刀をどこで手に入れたのだ?」
白夜叉の質問に
「お父さんから貰った」
あっさりと答える。
「おんしの父は名の通った鍛冶師かなにかなのか?」
「違う、お父さんは………"観測者"…………」
穹の答えた職業に全員が戸惑う。
最初に尋ねたのは十六夜だった。
「宇宙関連の仕事か?」
「違う」
十六夜の問に穹は否定する。
これでは拉致があかないと思った白夜叉が
「では何の観測をしておるのだ?」
穹に尋ねると
「………世界」
(((((……………え?)))))
全員がまた固まる。
今度は白夜叉が先に口を開き、
「では、おんしの言う観測者とはあの"観測者"か?」
白夜叉が震える声で尋ねる。
「多分そう」
全員が固まる中涼しい顔で答える穹。
「おんしのギフトカードを見せてくれんか?」
手を差し出す白夜叉に穹はあっさりとギフトカードを手渡すと、すごい勢いで確認し出す。穹以外の四人も覗き込む様に穹のギフトカードを見る。
ギフト名
・傲慢の血統(blood code・ Lūcifer )
・混血の悪魔(half blood dhiaborosu)
・閃刀 紫電
・飛燕一閃
「傲慢、悪魔、そしてルシファーか、」
十六夜がつぶやく。
「おんしは何者だ?」
白夜叉が穹の瞳を見て、静かに尋ねる。
「人間だって言えば信じてくれますか?」
穹は冷えきった声で聞き返す。
「「「「「………」」」」」
穹の問いに全員が押し黙る。
(やっぱりこうなるのかな?ここなら、ありのままでいられると思ったけど………ダメみたいだ)
おもむろに穹は立ち上がり、白夜叉の手からギフトカードを抜き取ると、部屋の外へ向けて歩き出す。
「そ、穹さん!?どこへ行くのですか?」
嫌な予感のした黒ウサギは焦って声をかける。
「外…。………さよなら」
そう言って振り向いた穹の顔は涙に濡れていた。
再び全員が押し黙る中、十六夜は
「関係ねぇよ。お前が何者なのかなんてな。そんなことはどうでもいい」
穹の背中に投げかける。
十六夜の言葉に
「私は信じる。穹が人間だっていうなら私は信じるよ。友達だから」
耀が続き、
「十六夜君達と同じ意見ね。貴女が何者であろうと関係ない。貴方はノーネームの同士なんだもの」
飛鳥が締めくくる。
「私も穹さんのことを信じます。」
飛鳥が締めたにも関わらず自分の気持ちを語った黒ウサギに
「黒ウサギ、もうちょっと空気読め」
「そうね、黒ウサギはもっと周りの空気を読むべきよ」
「…黒ウサギ使えない」
問題児三人は流れるように罵声を浴びせる。
「んな。ちょ、それは酷いのですよ御三人様!黒ウサギもノーネームの同士でございます!」
いつも通りの四人の会話を聞いていた穹は肩を震わせ、笑い出す。
それを見た四人も笑い出す。
一人除け者にされた白夜叉は黙って五人を見守る。
(私はいらぬ心配をしておったようだの。
それにしても私の部屋で私を除け者にするとは…)
その後、五人は居住いをただし、ギフトについて、再確認しサウザンドアイズを後にした。
この時、十六夜のギフトについて人悶着あったがそれはまた別の話。
サウザンドアイズからの帰り道、最後尾を歩く穹が四人に声をかける。
「…あの、その、………」
四人がどうしたものかと振り返ると、顔を赤く染めた穹が立っている。
耀が穹に近づき、
「どうしたの?」
と尋ねると
「えと…さっきはごめんなさい。」
いきなりの謝罪に四人は面食らうがすぐに笑い。
「何のことだか知らねぇな」
「私も何について謝っているのかわからないわ」
「別に謝る必要なんてない。穹は何も悪いことなんてしてない」
三人はそう言って前を向く。
黒ウサギも微笑み、前を向くと
「「「黒ウサギが空気を読んだ!!?!?」」」
三人が驚愕の声を上げる。
「ちょ!御三人様!なんですかその言いようは!折角空気を読んだのに何故そのような反応をなさるのですか!」
「「「「空気の読める黒ウサギは黒ウサギじゃ無い」」」」
今度は穹も混ざり言い切る。
「この問題児様方!」
またも虚空からハリセンを取り出し、四人の頭を叩く。
頭を叩き終え肩で息をする黒ウサギを置いて四人は笑いながら歩き出す。
「ちょ、皆様方!黒ウサギを置いてかないで下さい!」
置いていかれそうになった黒ウサギは慌てて声を掛けるが
「「「「だが断る」」」」
四人は言い切り顔を見合わせまた笑う。
そして
「置いていかれたくなかったら」
「私達を捕まえてみなさい」
「もし日暮れまでに捕まえることが出来なかったら」
「俺達はコミュニティを脱退する」
そう言って四人は駆け出す。
「んな!………この問題児様方は!」
黒ウサギが肩を震わせブチ切れた。
青い髪を桜色に染め
「お待ちなさい!!!この問題児様方!」
と怒鳴り声をあげ全力で走り出した。
その日の晩なんとか全員捕まえた黒ウサギはノーネームの門の前に立つ。
「ここがノーネームのコミュニティでございます。ただ、本拠へはもう少し歩くことになりますので御容赦ください。この辺りはまだ傷跡が残っておりますので」
黒ウサギは俯き、片腕を抱く。
「丁度いいわ、箱庭最凶の天災が残した傷跡、見せてもらいましょう」
若干不機嫌になる飛鳥。
先程白夜叉に言われたことが気に食わないのだろう。
サウザンドアイズから帰る際、白夜叉に
「おんしらは今のコミュニティの状況、そして今後の目標について理解しておるのか?」
そう尋ねられた。
「あぁ、名と旗を取り戻すために魔王に挑むって話だろ?それは聞いてるぞ」
「そうか、ではおんしらは全て承知の上でコミュニティに加入するのだな?」
「えぇ、打倒魔王だなんてかっこいいじゃない」
白夜叉は飛鳥の言葉に溜息をつき
「かっこいいで済む話では無いのだがな…
まぁコミュニティに帰ればどれだけ無謀なことかは理解出来るであろう。それでも挑むというのであれば、おぬしら二人は確実に死ぬぞ」
耀と飛鳥を見つめ、白夜叉は断言する。
「そんなことは………」
飛鳥が言い返そうとするが、白夜叉の眼が反論を許さなかった。
「じゃが、先程も言うたように素養は高い。魔王に勝てぬにしろ、生き残るくらい強くなることはできるであろう。じゃから、強くなれ。魔王に挑むまでに、どれだけギフトゲームで経験を積むことが出来るかどうかが鍵になるであろう。」
白夜叉はそう言っていた。
プライドの高い飛鳥は死ぬと断言されたのが気に入らなかったのだろう。
「どうぞ…」
黒ウサギは躊躇いがちに扉を開き、四人を促す。
扉をくぐった四人に乾いた風が吹き付ける。
砂塵と共に吹き付ける風から四人は顔を庇い、風が止むのを待つ。
風が止み、視界に映ったのは荒れ果てた廃墟だった。
「っ……」
街に刻まれた傷跡を見て飛鳥と耀は息を呑む。十六夜は目を細め、木造の家屋に近づき、残骸を手に取った。穹はその場でしゃがみこみ、土を手に取る。
十六夜が手に取った木材は、少し握るだけで崩れ、穹の手に取った土はサラサラと手から零れていった。
「「ねぇ(おい)黒ウサギ、魔王のギフトゲームがあったのは………何百年前の話(だ)?」」
「僅か三年前でございます」
十六夜は笑い、穹は無表情になる
「ハッ、そりゃ面白いな。この風化した街が三年前だ」
「三年でこんなに…」
二人の言う通り、ノーネームのコミュニティは数百年の時間を掛け滅んだような崩れ方をしていた。
三年前まで人が住んでいたとは思えないほどに荒れ果てていたのだ。
「…………断言するぜ、どんな力がぶつかってもこんな壊れ方はしない。この木材も、土も、膨大な時間をかけねぇ限り、こんな朽ち方はしない」
「一人、こんな壊し方を出来る人に心当たりがあるけど………こんな事は絶対しない。お父さんが………する訳ない」
穹の呟きに全員が唖然とする。
「ちょ、ちょっと待て鷹宮、お前の親父なら出来るってのか?」
「出来る………と思う。でもお父さんは絶対こんなことしない!」
十六夜の問いに穹は答えるが、やってないと強く否定する。
「あぁ、わかってるよ。聞き方が悪かった」
穹の言葉に十六夜は素直に謝る。
「………魔王との戦いはそれほど悲惨なものだったのです。彼らがこの土地を奪わなかったのも一種の見せしめでしょう。
魔王は力を持った人間が現れると、姿を現し、弄ぶように蹂躙し、二度と逆らう気が起きないほどに心を折り、屈服させます。実際に私達のコミュニティも、僅かに残された同士達も心を折られ、コミュニティ…
箱庭から去っていきました。」
黒ウサギは感情を殺し、風化した街を進む。飛鳥と耀もそれに続いた。
だが十六夜は瞳を輝かせ、不敵に笑う
「魔王…か。いいなぁおい!想像以上に面白そうじゃねぇか!」
「白夜叉もこれくらいできるのかな……」
二人はそれぞれ呟き、黒ウサギ達の後を追って歩き出す。
五人と一匹が廃墟を抜けると、外観の整った大きな館が見えてくる。その左右には
青々と茂る森林と大きな堀が見えた。
「あ、おかえりなさい!皆さん。少し遅かったですね。こちらの準備は整ってますよ」
堀を囲む石枠に腰掛けていたジンが立ち上り、黒ウサギ達を出迎える。
「ご苦労様ですジン坊ちゃん」
黒ウサギはジンに労いの言葉をかける。
「十六夜さん、これから水樹の水を貯水池に流し込むのであちらの水門の鍵を開けてきてほしいのですよ」
黒ウサギが十六夜に頼む
「ん?あぁいいぜ」
十六夜は二つ返事で了承し、水門の方へ向かう。
「皆さんは黒ウサギに付いてきてください」
そう言って貯水池に架かる橋の中央、屋根付きの台座へ向けて歩き出す。
「開けたぞ!」
水門を開けた十六夜が声をかけると
「はいな」
黒ウサギは返事をして、十六夜が戻る前に水樹を設置し、根を包む布を取り払った。
布の外れた水樹の根から、膨大な量の水が溢れ出し、激流の如く水路を流れていく。
水門の鍵を開け、一息ついていた十六夜は、流れる水の轟音に気付き叫ぶ。
「少しは待てやゴラァ!流石に今日はこれ以上濡れたくねぇぞおい!」
跳躍して、間一髪水から逃れた十六夜。
「濡れなかった?」
穹が十六夜の方へ来て心配そうに声をかける。
「ん?あぁ、問題ねぇよ」
十六夜はあっさりと言葉を返し、黒ウサギ達の元に向かう。
その後、貯水池に水が溜まっていくのを六人で少し眺めた後、全員で本拠へ向かった。
浴場にて、
「ちょっとした温泉気分ね。こういうお風呂は好きよ」
「私も。すごく落ち着く」
「あぁ………すごく癒されます」
水樹から引いた水を適温で沸かし、大浴場に流し込んで、飛鳥、耀、黒ウサギの三人はお風呂を楽しんでいた。
「穹さんも一緒に入れれば良かったのですが…」
「まぁ仕方ないんじゃないかしら」
「水が苦手って言ってたから仕方ない」
その後、三人でガールズトークに花を咲かせていた。
その頃、十六夜と穹は
「一緒に入らなくて良かったのか?」
「水苦手だから、お風呂に入れない………」
と二人で貴賓室でゆったりとした時間を過ごしていた。
そこにジンが現れ、十六夜と少し話すと
「ちょいと用事が出来た。少し離れる」
そう言ってジンと共に部屋から出ていった。
穹は一人部屋でゆったりしていたが、ふと立ち上がり、貴賓室の窓から飛び降りた。
「!?」
飛び降りた先にはフォレス・ガロと思わしき紋の刻まれた鎧を着た獣人達が、突然のことに驚愕していた。
「ガルドの差し金?」
穹はそう尋ね、冷めた目で獣人達を見つめる。
獣人達は何も答えずその場で立ち尽くす。
苛立った穹がギフトカードから"紫電"を取り出したその時、別館の方から爆音が響く。
「こっちは囮…!」
目の前にいる獣人達の目的を察した穹は
苛立たし気に舌打ちし、駆け出そうとするが行く手を阻むように、獣人達が立ち塞がる。
お互いに動けずにいる中、別館の方から走ってくる人影が見えた。その人影は目の前にいる獣人達と何か会話をすると、人影とともにこちらに頭を下げ走り去っていった。
「………?」
一人取り残された穹は状況を把握しきれず呆然として立ち尽くしていた。
穹にとって慌ただしかった夜は過ぎていった。
翌日
問題児四人と黒ウサギ、ジンの六人はコミュニティで食事を取り、会場であるフォレス・ガロの本拠…居住区画へ向かった。
居住区画に辿りついた六人だったが、
ジンと黒ウサギは呆然とし、問題児四人は何とも言えない顔をしていた。
「………密林?」
「虎の住むコミュニティだからな、こんなもんだろ」
穹と十六夜の会話にジンが割り込む
「いえ、フォレス・ガロのコミュニティの本拠は普通の居住区画だったはずです。
………それにこの木は…………」
ジンが木に近づき、静かに触れると木から
生き物のような胎動を感じた。
「やっぱり鬼化してる…。まさか、でもそんなはずは」
ジンは一人で唸っていた。
「この木、脈打ってて気持ち悪い」
穹は木を見て寒気を感じていた。
「みんな、ここに契約書類が貼ってあるわ」
飛鳥の声に全員が集合する。
『ギフトゲーム:ハンティング
プレイヤー一覧:
久遠飛鳥
春日部耀
ジン・ラッセル
クリア条件:
ホストの本拠に潜むガルド=ガスパーの討伐。
クリア方法:
ホスト側が用意した特定の武具でのみ討伐可能。
指定武具以外でガルド・ガスパーを傷つけることを禁じる。
敗北条件:
降参か参加者が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
指定武具:
ゲームテリトリー内にて配置
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下"ノーネーム"はギフトゲームに参加します。
"フォレス・ガロ"印
』
「ガルドの身をクリア条件に、指定武具で打倒!?」
「これはまずいです!」
ジンと黒ウサギは驚愕の声を上げる。
「そんなに危険なゲーム?」
声を上げた二人に穹は問う
「ゲーム自体は単純です。ですが、ルールに問題があります。これでは飛鳥さんのギフトで操ることも、耀さんのギフトで傷つけることもできません。」
ジンの回答に穹はいまいち理解出来ないといった表情で首をひねる。
「ガルドは恩恵じゃなく、契約で身を守った。契約書類のルールは絶対だ。簡単な話、白夜叉でも傷つけることはできねぇってこった」
なかなか理解できそうになかった穹に、十六夜は説明する。
「そっか…わかった。ありがとう。十六夜」
「あぁ、気にすんな」
十六夜のわかりやすい説明にお礼を言う穹。
「すいません。契約書類を作る時にルールも決めるべきでした」
自分の落ち度だと、ジンは深く反省する。
「失敗は誰にでもある。気にしちゃダメ」
「耀の言う通りよ、今は反省じゃなく勝つ方法を考えましょう」
ジンを励まそうとする二人の言葉に
「そうですね。反省は後からもできますし、今は先に進みましょう」
肯定し、三人はジャングルの中に入っていった。
入っていった三人を見届けた後、穹が不意に
「飛鳥のギフトは効くんじゃないかな?」
そう言い出した。
穹の言葉を聞いて、十六夜は溜息をつき
「俺の話が理解出来たんじゃなかったのか?」
「十六夜の話は理解出来た。でも契約書類には"傷つけることは出来ない"って書いてあるだけで"ギフトが効かない"とは書いてないよ」
穹の説明に十六夜と黒ウサギはもう一度契約書類を見直し、
「「あ………」」
と二人同時に声を上げた。
その後、ギフトゲームは着々と進み、
二人が落ち込んでいる間にゲームは終了した。
ゲーム終了と同時に木々が消えていく。
木々が閉ざしていた道が開いたと同時に、
黒ウサギが全力で跳躍していった。
いきなりの黒ウサギの行動に十六夜と穹は一瞬呆気にとられるが、急いで追走する。
「おい!そんなに急ぐ必要があるのか?」
「大ありです!黒ウサギの聞き間違いで無ければ、耀さんはかなりの重症のはずです」
黒ウサギの言葉を聞いた穹は、二人を置いて一気に加速する。
「あ、おい、鷹宮!」
「穹さん!?、場所はわかるんですか?」
二人の言葉は、焦る穹には届かなかった。
耀の気配を辿り、まだ消えきらない森の中を駆け抜け、ついに穹は見つけた。
「耀!」
雷の如く疾走する穹に、ジンが驚愕する。
「穹さん!?」
耀の元に辿りついた穹は、駆け寄り声をかける。
「耀?大丈夫?」
耀は目を閉じ、穹の問いに答えることは無かったが、微かに上下する胸を見て、穹は落ち着いた。
「そ、穹さん?」
穹が落ち着いた頃を見計らって、ジンは声をかける。
「あ、………ジン」
そこに、黒ウサギと十六夜が遅れてやってきて、寝かせてある耀を見ると
「すぐコミュニティの工房に運びます。」
黒ウサギは耀を丁寧に背負うと跳躍しようと膝を曲げる。
そこへ穹が近寄り、声をかける。
「黒ウサギ…耀をお願い」
俯き、不安そうな声で黒ウサギに頼む穹に
「はいな。お任せ下さい。新しく出来たばかりの同士を死なせるなんて、黒ウサギには出来ません」
黒ウサギは笑顔で答え、今度こそ跳躍してノーネームのコミュニティの方へ消えていった。
黒ウサギを見送った後周りを見ると、十六夜とジンが消え、飛鳥が帰ってきていた。
「おかえり、飛鳥。お疲れ様」
「えぇ、結構疲れたわ」
帰ってきた飛鳥は溜息をつき、ドレスに付いたホコリを払っていた。
「耀は?大丈夫だったの?」
周りを見て耀がいない事に気づいた飛鳥は穹に尋ねる。
「たぶん…今黒ウサギがコミュニティに連れていったから」
「そう…十六夜君たちは?」
「さぁ、でもあっちから声が聞こえるからあっちにいると思う。」
穹が指差す先には大きな広場があり、フォレス・ガロのメンバーが集まっていた。
その後穹の予想通り、広場の方からニヤニヤと笑う十六夜と疲れた顔をしたジンがやってきて合流し、ノーネームのコミュニティに帰った。
はい。今回はここまでになります。
長かった…今回は本当に長くなりました。
俺は悪くねぇ、俺は悪くねぇ
だって先生がやれって言ったんだ!
今回は本当に予想外のことになりました。
もう少し後に晒す予定だった穹の血縁関係が、気づいた時には書き込んでしまっていたので。
ノリと勢いだけで書くと大変ですねw
もっと深く話すのはお茶会の時にでも話すと思います。
あとは次回の話なのですが、少し書きたいものが出来たので少し遅れるかも知れません。作品自体は変わらず問題児のものなので、時期が来れば、書いた物も投稿します。
勝手な理由で遅れて申し訳ありません。
長いあとがきになって申し訳ありませんでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
それではまた次回会いましょう。
ありがとうございました。