魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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巴マミ偏
第二話 僕という存在


僕たちインキュベーターの末路を君たちに知ってほしい。

 

僕たちの報いを

 

僕たちの終わりへと続く物語を。

 

僕たちはそれだけの事を君たちにしてきてしまった。

 

押し付けて、押し殺してしまった。

 

だからみんな聞いてほしい。

 

お願いだから聞いてほしい。

 

罪滅ぼしなんてつもりはこれっぽっちもない。

 

こんな事で許して貰えるなんて考えていない。

 

ただ聞いてほしいだけなんだ。

 

僕たちは最後には結局狂ってしまう。

 

僕たちの狂ってしまった姿を君たちに見てもらいたい。

 

見て笑ってほしい。

 

嘲笑ってほしい。

 

ざまあみろ、とそんな風に思って貰えたならこれ以上嬉しいことなんてない。

間違っても情けなんてかけてはいけないよ。

 

かわいそうだなんて間違っても思ってはいけないよ。僕たちはそんなものを受ける資格すらないんだからね。

 

ただ、自業自得だと。

 

それがお前たちが上位種だとかってに謳ってやってきたことだと、そう思ってほしい。

 

今思えば上位種だなんて片腹痛いよ。滑稽だ。

 

そう、これは滑稽な物語なんだよ。

 

 

 

 

 

僕たちの喜劇のような滑稽な末路を見てほしい。

 

 

 

 

 

僕は誰なのだろう?

まずはそんな疑問を持ったことを覚えている。

生きているのか死んでいるのかわからない、そんなあいまいな意識が僕の始まりだった。

何か大切な約束を忘れているような気がするけれど、思い出せる気がしない。

僕は一体何者なのだろう?

この溢れかえるような何かは一体なんなのだろうか?

僕を塗りつぶしていく。

君は一体だれで

僕は一体何なのだろう?

 

僕の問いに答えてくれる。

僕の中に止めどなく流れ込んでくる、それが答えてくれる。

 

「僕たちは一つの大きな存在から生まれる。」

 

僕達?

 

「そう。僕達は元は一つの大きな何かから生まれる。 それは、そうだな。君たちの言葉でいうと神と言った方がわかりやすいのかな?」

 

君達?

 

「もちろん君たちの考えている神様と同じなわけではないよ。ましてや僕たちは神の使い、天使のようなものと言っているわけではない。断じてない。」

 

「ただ、漠然としない大きな何かから生まれると理解しといてくれたらそれでいいんだよ。」

 

「僕たちの存在なんてまあ、得体のしれない宇宙人とでも理解しといてくれたらいいさ。それ以上でも以下でもないさ。」

 

「少しややこしくなってしまったかな?」

 

「僕が言いたい事は、一つのものから生まれる僕達は記憶が共有されている、ということさ。今までの僕ではない祖先が何をやってきたのか。何を目的にして、何を任されてきたのか。」

 

「勿論生まれてしまえば個人としての自我を持っているから、僕達が常に記憶を共有しているわけではないのだけど。生まれてきた時にはもう何をするかは、解りきっていて、そこには感情も感動もなかった。」

 

ああ、わかってきた。

そうだ。

君の言いたい事はわかる。

君と僕が交わっていく。

それと僕が交じり合う。

いつしか語ってくれていたそれが僕のものへと変わっていくのがわかる。

だって僕は一つの大きなものから生まれて、記憶は全て継続されるのだから。

 

続きを聞こう。

続きを思い出そう。

記憶をインストールしよう。

 

「ただ、漠然とした僕達の祖先がやってきた事をするだけなのだから。だから僕達の祖先は切り捨てたのだろう。

 

いらないものだと。

 

そんなものは目的に至るのになんの必要もなく。ただ障害にしかならないと。

 

こうして僕達インキュベーターはただ無感情に、無感動に目的を遂行する。

 

そんな僕達インキュベーターは宇宙の延命を任された。

 

僕達は戸惑った。いやどうだろう?僕達は感情がないのだから…ただ困った。とそう思っただけかもしれない。

 

そんなエネルギーの塊であり、渦であり、海であり、根源であるそれを。

僕達を、僕達の星を、銀河を生み出した宇宙の命を繋ぐなんていったいどれほどのエネルギーが必要なのだろうか。

 

そんなもの、一つの星で、銀河で生まれるエネルギーではとても追いつかない。一つの星から生まれるエネルギーはその星が生まれる為に必要としたエネルギーに比例しない。エネルギーが変換されるとそこには必ずロスができる。僕達は研究した。しかしあまりいい結果はなかった。こうしている間にも宇宙のエネルギーは目減りしていく一方だ。僕達は僕達の捕らわれているエネルギーではダメだと気づかされた。

 

それでは、もうダメだと。

 

とてもじゃないけど無理だ。

 

感情のない僕達にも気苦労はあるのさ。

諦めたくもなるさ。

 

道も思考も閉ざされた僕達は形を持たない何かならどうだろうかと考えた。

 

形もエネルギーとも認識されていないものならどうだろうか。

 

例えば、心だとか感情ならばどうだろうか。

 

僕達の中で、極少数ではあるけど、心を持っていたものがいた。それは研究においてはお荷物にしかならず、いわゆる精神疾患のようなものだと認識されていた。ただ、そんな疾患を抱えているものでも研究でよい発見をするものも少なくはなかった。そう、彼らには何かエネルギーのようなものを感じていた。もっとも、あらゆるエネルギーを研究し、形あるものは全て研究した僕達は必然的に調べていない、唯一手をつけていないそれにたどり着かされたと言うべきなのかもしれない。

 

ダメ元で。

 

でもこれがダメだったら他に手のつけようがなくて。

 

だから僕達は念入りに調べた。それはめまぐるしい発見どころではなかった。

 

僕達は驚愕した。

 

起こった出来事に目を疑った。だってこの星からみたら、こんな小さな一個体から、一つの感情から発するエネルギーが一つの星を凌駕するほどのエネルギーが発生されたのだから。

 

だから僕達は探した。この銀河を、この宇宙を。

 

僕達の中にいる精神疾患のような稀薄な感情ではない、もっと強い感情をもつ生物を。

 

そしてたどり着いたのだ。

 

この星に。

後に地球と呼ばれる星に。

 

僕達はまたも驚かされた。

 

この星は僕達の祖先が非効率だと切り捨てた感情を、心を、ある一つの種族全てが持っていたのだ。

 

後に人間と呼ばれる彼らと僕達インキュベーターの出会いだった。

 

彼らの中で取り分け強い感情を抱いてるのは、第二次成長期前の少女であった。さらに感情の中でも効率がいいのは希望から絶望への総転換。この時に生まれエネルギーは個人差はあれど一つの銀河が生まれるほどなのだ。

 

僕達の発明した感情からエネルギーに変換する装置にはある副作用があった。それは感情を形にしてしまうことであった。

感情を形へ変換するに当たって生まれるエネルギーを僕達は採取する。

 

僕達はエネルギーがほしいのであって、別に感情を形にしたいなんていう美的感覚はない。そもそも感情がないのだから。

 

希望という感情を形に変換し生まれる結果はとても美しく優しい力。

 

しかし絶望という感情を形に変換し生まれる結果はとても惨い、酷い、力。

 

一見僕達からしたらあまり関係ないものに見えるが、しかし、人間が絶滅してしまっては、この宇宙のエネルギーが目減りし、最終的にはなくなってしまう。

 

絶望から生まれるエネルギーは確かに莫大ではあるだけに、その力もまた強大なのだ。

 

そこで僕達はあるサイクルを考えた。希望から得られる感情エネルギーをその人間の願いに使おう。その希望はより強固なものとなり、強い力を生み出すだろう。その力で、絶望の力を打ち倒してもらおう。

 

希望の力は絶望へと変わる日が必ずくるだろう。

 

ならば、また別の希望に打ち倒してもらおう。

 

そんなサイクルを僕達は作った。絶望から生まれた力の存在を僕達は魔女とよんだ。

 

魔女になる少女を僕達は魔法少女とよんだ。

 

希望が必ず絶望にかわるように

 

魔法少女もまた魔女になる。

 

僕達はそんなサイクルをつくりだした。

 

作ってしまった。

 

それから、僕たちは多くの少女と契約した。

僕たちと契約したことで人間の文化は急速に成長した。そして、多くの人間が死んだ。

 

多くの少女が死んだ。

 

僕たちと契約して幸せになった者なんて一人もいなかった。

 

みんな初めはいつだって笑顔で最後は必ず泣いていた。

 

希望の叶ってしまった彼女らは最後は絶望しか残らなかった。

 

そんな歴史を僕たちは歩み、作ってしまった。」

 

これが僕の継続した記憶。

 

僕が生まれるに当たって最初からある情報。その時僕は自分という存在を理解したのだ。

 

そう、僕は彼らのいう精神疾患を抱えた出来損ないであるということに。

 

僕は

 

僕という存在は

 

 

感情をもってしまっている出来損ないのインキュベーターなのだ。

 

 

 

出来損ないのインキュベーターは考える。

 

 

 

 

出来損ないのインキュベーターは望む。

 

 

 

僕達の罪を、全部棚上げして望む。

 

 

 

泣いてしまっている彼女達がもしも笑えたのなら。

 

 

 

 

それはどんなに可愛いのだろうか?

 

 

 

彼女達が泣いて笑って怒って喜んで楽しんで希望を抱いて、時に絶望してしまう事があっても、それでも、生きていける。

 

 

それでも、みんなで生きていける。

 

 

それはどんなに素晴らしい事だろう。

 

 

 

そんな夢物語を考えてしまう僕はきっとどのインキュベーターよりも罪深いのだろう。

 

 

 

でも、君達に問う。

 

 

 

君達は本当に

 

 

本当に本当に本当に本当に

 

 

 

そんな可愛い彼女達を見てみたいと思わないのだろうか?

 

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