魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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第二十話 あいつと私はよく似ている (美樹さやか語り部)

意識ははっきりしているのに身体が動かない。痛みもなく。苦しくもない。しかし、声も出せない。生きているのか、死んでいるかもわからない。もしかしたら、もう死んでいるのかもしれない。だけど、みんなの声だけははっきり聞こえた。みんなの姿ははっきり見えるのに、今の自分の状態がどうなっているかわからない。まどかが私の前で泣きながら何かを抜こうとしている。まどかの取り乱しようから私はあまり無事ではないようだ。暁美もまどかと一緒に何かを引き抜こうと躍起になってる。あんたはパワータイプじゃあないからな。まどかが私の名前を連呼する。泣きながら、必死に私に語りかけてくる。大丈夫だよ、私は大丈夫だよまどか。そんな泣かないでよ。できる事なら、今すぐにでもさやかちゃん特性ギャグでまどかをすぐに笑わせてやるのに。頭を撫でてやるのに。まあ、暁美はすっごいいやそうな顔をするだろうけどね。この前、まどかは私の嫁宣言したら暁美と戦争になった。あん時は本当に死ぬかと思ったわ。まどかの婿(?)は私一人で十分よ、とかわけのわからない事を言っていた。

 

まどかと暁美があんまりにも本気で私を心配してくれる事が嬉しくて笑ってしまう。

 

まあ、ぴくりとも動かない私の身体は笑う事もできないけど。

 

しかし、私の心は乱された。これは、怒りだった。それは、こんな声が聞こえたからだ。

 

「この人殺し」あの赤い魔法少女はそんな事を言っていた。一体誰に?

 

赤い魔法少女がマミさんに切りかかる。マミさんは長銃で受け止める。

 

「あたしの家族に本当の事を言った時どんな気分だった?あたしの親父はどんな顔してた?さぞ面白い顔してたんだろうな!」

それらは全てマミさんに向けられたら言葉だった。こいつが何のことを言っているのか私にはさっぱりだった。

 

「佐倉さん!?何を言っているの?わからない。わからないよ!どうしてあなたがこんな事をするのかも!あなたが何を言っているのかも!」

マミさんは本当に辛そうに涙を流し、困惑している事を隠そうとする余裕もない。でも、やめてよ。マミさんを泣かせないでよ。私はその人を泣かせすぎた。一生分泣いてしまったくらい。だから、だから私はもう、その人を泣かせるわけにはいかないのよ。

 

「なんだよ。笑えよ、巴マミ!あたしの妹と母親が父親に殺されて、最後は父親も自分家に火を付けるなんて最高に笑えるんだろ!」「そこに一人残された私を見てあざ笑っていたんだろうが!一人ぼっちになった私にざまあ見ろと思ってたんだろうが!」

 

「そんなわけない!あれは事故だったはずよ!とても悲しい事故だったはず!」

 

「まだ言うのかよ……だったら」

 

赤い魔法少女、指をパチンと鳴らす。

 

ボガン!

 

もの凄い轟音が私の鼓膜を破ったとおもったら突如私の左腕が吹き飛んだ。

「ぐがあああ!」

突き刺さっていた槍が突然爆発したのだ。

しかし、激しい痛みで、大分目が覚めた。声は出せる。しかし、身体は動かせない。自分の身体からでる肉の焦げた匂いが鼻につく。幸いまどかと暁美には怪我はない。しかし、私の身体を見て悲鳴をあげ、気絶するまどか。普通の女子中学生には少しばかりショッキングだったようだ。勿論暁美がものすっごい、いい顔で受け止めるんだけどね。あんた本当にわかりやすいわ。あと5分は帰ってきそうにないわね。

 

「やめて!お願いだから!美樹さんは関係ないじゃない!やるなら、私をやりなさい!」

「だから、それじゃあ意味ねぇって言ってんだろうが!あんたは最後まで誰一人守れず死んでいくんだよ!」

 

「あたしの家族はあんたのせいで死んだ!あたしが魔法少女だって事をあんたがばらしたからだ。あんたと一緒に食った飯はうまかったのに!幸せだったのに!本当に、嬉しかったのに!なんで!なんで!あたしの家族を奪った!」

 

ああ、どうしてこんなにイラついていたのかわかったわ。

あんたと私はよくにているからだ。

「あたしの願いを知らなければ、みんな幸せだったんだ!親父は信者ども導き、お袋も妹もそんな親父の姿が大好きだったはずなんだ!それを!それをそれをそれをそれをそれをそれをそれを!

 

あんたが壊したんだ! 」

 

自分の願いで大切な人が離れていく。どんなにその人の事を思っても、自分の側から離れていってしまう。それは、確かに辛いよ。誰かのせいにしていないと、とてもじゃないけど正気じゃいられない。

 

「だから、私があんたの大切なもの全部奪ってやるよ!あんたにも味あわせてやる!一人ぼっちの苦しみを!奪われる悲しみを!」

……だからって、私の先輩を泣かせていい理由にはならない。

 

あたしの先輩を人殺しだと馬鹿にされて放っておけるわけない!

「ああああああああああああっ!!」

 

私は自由になった左腕、吹き飛んだはずの左腕で、自分の身体に突き刺さっていた槍を抜き取る。私の身体は穴だらけで大量の血が吹き出す。しかし、その傷の周りに魔法陣が展開されすぐに塞がる。これが私特有の魔法、超速再生。組織事破壊された腕すら数秒で完治させる。

 

「私もやるわ。まどかを泣かせた佐倉杏子を私は許さない」

 

「……よく言うわよ。ホクホク顔でまどかを膝枕してるくせに」

「その点に関しては佐倉杏子にはグッジョブとしかいいようがないわね」

 

「ここは私一人でやらせて」

 

「死ぬわよ」

 

「あいつは私何だよ……。私もあんな様だったんだよ。だから、あいつは私が救ってやらなきゃいけない。無意味な憎しみから解き放ってやらないといけない。」

 

「やれやれ、これは何を言っても無駄ね、もっていきなさい」

ほむらはあたしにグリーフシードを投げる。

 

「悪いね、ほむら。一つ聞きたいんだけど」

 

「佐倉杏子の願いは父親の話を聞いてもらう事よ。でもその願いを知った父親は……」

 

「そっか……」

「必ず帰ってくるのよ。あなたがいないとまどかが泣いちゃう」

「うん」

「いってらっしゃい、さやか」

ほむらは少しだけ微笑んでそう言った。

 

おう。

私は不敵に笑い返して、振り返ることなく前へと突き進む。

どれ、まずはあそこで情けなさそうに転がっている私たちの英雄にでも元気を取り戻してもらってから、あいつをぶん殴りに行くとしますか。

 

 

 

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