魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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これは罰なの?
あの時逃げたから
だからなの?
私があの時逃げたから
だから佐倉さんは・・・
ああ、どうすればいいの?
私はどうすれば


「違うよ」

そんな声が聞こえた。
その声はとても心強かった
その声はとても心優しかった
轟音が響く
土煙が舞う
私の目の前に美樹さんが現れた。
佐倉さんの槍を破壊して
小さいはずのその背中は
私にはとても大きく見えた。
―――巴マミ



第二十一話 美樹さやかVS佐倉杏子 (グロ注意!美樹さやか語り部)

私は佐倉杏子の槍を破壊する

「来いよ、私が相手だ。槍女」

私は精一杯格好をつけて頬を釣り上げる。不適に笑う。それは恐怖を隠すためのものだった。

「へっ、いい度胸だな」

佐倉杏子もまた、獣のように笑う。八重歯をむき出し凄惨に笑う。

「美樹さん!ダメよ!」

「マミさんお願いします。ここは私一人でやらしてください」

「そんなのダメよ!これは私の問題なのよ!私が……」

「マミさんが何かしたんですか?」

「え?」

「私は知ってますよ。マミさんが何にもしてないってことは、そんなの私が一番知ってますよ。マミさんが悪くない事を私は知ってますよ」

二カッと、純粋に力強く笑うことができたと思う。

マミさんは眉を寄せて涙をこらえる。顔を真っ赤にさせて、歯を食いしばっている。

「だから、もう泣かないでください。マミさんは何にも悪くないんです。そんな顔しないでください。マミさんがそんな思いする必要なんてないんです。」

「……私、本当にダメだな……、後輩に庇われてかっこ悪い」

「いいじゃないですか、たまには格好悪くても。いつも格好よ過ぎるんですよマミさんは。たまには私にも格好つけさせてくださいよ」

「ふふ、でも美樹さんに佐倉さんと戦う理由はないんじゃない?」

「なあに、私はあいつを一ッ発ぶん殴らないと気がすまないんですよ。だから、後はあたしに任せろ!」

「ふふ、本当に格好いいわね……。後は任せます」

「はい!!」

「話は終わったかい?」

「まあね」

「死ぬ準備もできたかい?」

「それはする必要がない」

私は長剣で佐倉杏子に切りかかる

佐倉杏子は槍で私に切りかかる。

お互いの武器で火花を散らす。

「まさか、さっきの不意打ちでいい気になってんじゃあないだろうね?あんたまだなりたてだろ。あたしの足元にも及ばないぜ」

「それはやってみないとわからないだろ!」

「へっ」

佐倉杏子の槍が突然形を変えた。

長い槍がいくつにもわかれる。バラバラになったそれらはすべて鎖でつながれている。変則変形型の槍。

私の体に佐倉杏子の槍が纏わりつき、拘束される。身動きがとれない。

「ボカン」

指をならす

ボカン!

「うあああああああ!」

痛い痛い痛い!

そして怖い

この容赦のなさが怖い

私を殺そうとする純粋な悪意

私の両腕は吹き飛んだ。

私は口に長剣をくわえ切りかかる。

「わあお」

佐倉杏子はバックスッテプで距離をとる

怖いし、痛い。もしかしたら泣いているかもしれない

それでも通さなきゃいけない意地がある。

「はぁはぁはぁ」

「息があがってるぜ!」

佐倉杏子の怒涛の槍が私の体を貫く

頭、心臓、右肺に容赦なく突き刺さる

「おらおら!どうしたよ!」

ボガン!

私の思考は停止する。

おそらく頭がはじけ飛んで、首から上が消し飛んだからだろう。悲鳴も出せない。

しかし、超速再生で、すぐに意識を取り戻す。

「気持ち悪いなお前の能力。頭潰しても、心臓潰してもダメなのかよ。まるで化物じゃんか」

「あんたに言われたくない」

「なにぃ?」

「あんた自分で気づいてなかったの?」

「あん?」

「あんたはもう魔女になりかかってる。あんたがあほみたいにブスブス刺してくる槍の魔力が私に流れ込んでくるのよ。だからわかる。この爆弾みたいな能力もあんた本来の力じゃない。これは、あんたが魔女になると発現する力だ」

「ふん、だから?だからどうした!あんたに何がわかる!家族のいない、一人ぼっちのあたしはいつ死のうが、魔女になろうが関係ないんだよ!あたしは巴マミに復讐できればそれでいい。終わっていいんだ。」

防戦一方

佐倉杏子の変則な動きの槍にとてもじゃないけどついていけない。槍は私に容赦なく刺さる刺さる。私の体は穴があくは、爆発するは回復するはで大忙しだ。もういい加減マンネリ化してきたな。

だからさあ、魔力が流れてくるって言ってんじゃん。

あんたの魔力と私の魔力が似てるからなのかわからないけどさ、あんたの感情も、思いも、記憶も全部流れ込んできてんだよ。

 

父さんの言ってることは間違っちゃいなかった。

 

だから、聞いてよ。お願いだから。

 

父さんの話を聞いて。

 

父さんと二人で、この世界をいい方向に持っていくんだ

 

父さんは表から。あたしは裏から。二人で、この汚れた世界を変えていく。

 

マミ!どうか弟子にしてくれませんか!

 

あはははは!なんだよマミそのへんてこな技の名前!

 

ど・・・どうして・・・・・・、モモ!母さん!

 

なんで!なんでだよ父さん!

 

あたしの願いが家族を潰しちまったんだ・・・・・・

 

自分の願いを押し付けたからだ。他人の為に願っちまったからだ。だったら、これからは自分の為にこの力を使おう。

 

 

マミ。もうあんたとはやっていけない。あたしはこの町を出て行く。

 

そうか、誰かを憎めばよかったんだ。

 

そうすれば、こんなに楽になれるんだ。

 

みんな殺してやる

 

「なんで!そうなんだよぉぉ!」

私は自分の左腕に巻きついてる鎖を切りつける。

しかし、壊れるどころかほどける気配すらない

だったら

私は自分の左腕を切り落とす。

私は佐倉杏子に切りかかる。いとも簡単によけられてしまう

「あんたはあたしなんだよ!自分の幸せ他人に押し付けて、自分の祈りのせいで、大切な人が離れていってしまう。惨めな自分がいやで、自分から、離れていく。大切なものを捨てていく。終いには誰かを憎まなければ生きることもできない!」

 

「だまれぇ!てめぇに何がわかるって言うんだよぉ!」

 

「わかるに決まってんだろうが!私も他人に幸せ押し付けて、大切な先輩も、大切な友達も傷つけた大馬鹿野郎だからだよ!」

 

「悪いが私はついていた!こんな大馬鹿野郎を見捨てない、一人ぼっちにさせてくれない最高の友達と先輩がいたからだ!そしてあんたはついていなかった。言っちゃ悪いが不幸すぎる!あんたの近くにいたのはあんたの事なんて毛ほども考えていない人間しかいなかった。でも、それでも、私とあんたの違いなんてその程度しかないんだ」

 

「だまれって、言ってんだろうがぁぁ!」

佐倉杏子は槍を私の口の中に突っ込んで爆発させる。

私の上顎も下顎どころか鼻から下が消し飛ぶ。

そんなの関係あるか!

すぐに回復する。

「あんたと私はついていたかそうでないかの違いでしかない!だからわかるんだよ!」

「うぜんだよぉぉ!」

佐倉杏子は堪らなくなったのか私を壁に叩きつける。

それは、私に攻撃したというよりは、私と距離をとった、いや。私に近づきたくなかったのだろう。

「お前、本当になんなんだよ!なんでそこまでやれる!何回死んだと思ってんだ。」

「そんなの、決まってる」

「あん?」

「私の大切な先輩を人殺しだと」

 

「馬鹿にされたからだぁぁ!」

 

私は速度をつけて、勢いををつけて、切りかかる。

佐倉杏子は槍で受け止める。

「あんたは知っているはずだ!マミさんがそんなことをする人じゃないってことをあんたは誰よりも理解しているはずなんだ!あんたが馬鹿なお人よしと言い捨てたけれど、でも本当はあの人みたいになりたかったんでしょう?憧れたんでしょう?だから弟子入りしたんでしょうが!」

「うるさいうるさいうるさい!」

「本当は理由なんてどうでもよかったんでしょ?本当はだれでもよかったんでしょうが!あんたは!誰かに自分に対しての憎しみをぶつけたかっただけなんだから!」

「だまれぇぇぇ!」

私の両手足が爆破され、地面に無残に転がる。

私は手足の回復に時間がかかることに気がつく。立ち上がるはいいが、足元がふらつく。そりゃあ、そうだ。こんなけやられてればガタはくるだろう。

私は懐からさっきほむらから受け取ったグリーフシードを取り出す。

「させるかよ!」

手に持っていたグリーフシードは腕ごともぎ取られる。

グリーフシードを佐倉杏子は背後に投げ捨てる。

どうやら自分の魔力回復すらするつもりもないらしい。彼女は魔女になることを望んでいるのかもしれない。速く楽になりたいのかもしれない。

私は霞む視界のなか、おぼつかない足取りで、最後に、どうしてもしたいことの為にしっかり佐倉杏子を見据える。

おそらくこれが最後のチャンスだ。

私は自分の体の周りに長剣を纏う。てにもつ剣に魔力をこめる。

私は佐倉杏子に突っ込む。

佐倉杏子はそれに応じる。応じてくれる。

変則的な動きをする槍に対し数で応じる。

きっと彼女なら私が自滅するまでよけ続けることもできただろう。しかし彼女は私の真っ向勝負を受けてくれた。

そうだ、聞いてくれ

お願いだから聞いてくれ

あんたは・・・・・・

しかし私の言葉は彼女に届くことはなかった。

あとの一歩のところで、私の腹部に槍が刺さっていたのだ。

数を量産できるのは何も私だけではなかったのだ。

これが、経験の差。力がないと思いを伝えることもできないのか。

悔しいな・・・

畜生・・・・・・

私はその場に崩れ落ちる

 

私のソウルジェムは完全に濁りきっていた。

 

「やばいよマミ!さやかのソウルジェムが!」

「美樹さん!」

「さやか!」

「はぁはぁはぁっ。へへ、次はどいつだい?」

 

みんなの声が遠ざかる

だったら殺しちゃいなよ

 

そんな声が聞こえた

だったら殺しちゃいなよ

 

そんな声が聞こえた

悔しいなら早く絶望しちゃいなよ。

 

そしたら、力が手に入るよ

 

だからさあ、殺しちゃいなよ。さあ!さあ!殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

 

私は狂気に埋もれていく。自分の黒い感情に押しつぶされそうだ。

 

みんな死んじゃえって思うでしょ?死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ

 

すべてがどうでもよくなる。このまま飲まれてしまえば楽になれる。

 

あれ?なんで泣いてるの?君はなんでそんな所で一人ぼっちでないているの?

 

壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ

 

ごめんね。私はそっちに行ってあげられないよ。私には大切な仲間がみんながいるから。だから、こっちにおいで、あなたはそんな所にいちゃあいけない。

呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪

 

こっちにこないなら引きずってでも連れて行く!

 

あんたを一人ぼっちになんてさせない!だってあんたは

 

私なんだから!

 

狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂狂

 

うるさいのよ。

 

えっ?

 

ケチケチせずに今よこしなさいよ!

 

何を言っているの!?

 

それは、未来の私の力なんでしょうが!だったら今よこせ!

私は私のままその力を手に入れる!

 

私は自分の中にある黒いもの全部受け入れる。全部食い尽くす。そして、絶対自分を見失わない。希望を見失わない。みんなの事は絶対忘れない。帰るんだ。私は帰る。みんなのもとに。そして、あいつを連れて行く!

 

一人ぼっちで泣いている。本当にどうしようもない、昔の私にそっくりなあいつを。

 

私はゆらりと立ち上がる

 

みんなが唖然とした顔で私を見る。佐倉杏子だけはあたしに背を向けている。

しかし、大量の冷や汗をかいている

「なんでだ!ありえない!ありえない!ありえない!確かに、殺した筈だ!壊した筈だ!完膚無きまでに!完璧に!それなのに!どうしてだ!?」

こちらを振り向いた彼女の顔に今までの余裕はなかった。

 

魔力があふれる。しかし、今までの魔力の感じと全然違う。

「なんだよ、その、大剣!そんなもの、てめぇ持ってなかっただろうが!」

 

 

魔力の形状イメージを羽。黒い羽。

「黒い・・・・・・翼?」

「どういうこと!?美樹さんは一体どうしたの!?」

「まさか、まさか、魔法少女の肉体のまま、ソウルジェムのまま、穢れの力を魔力に変換している!?魔女になるとき生まれる莫大なエネルギーを消費しているって言うのかい!?魔女の魔力を持つ魔法少女。絶望を動力源に希望を振りまく超越した魔法少女!」

「なんだよそりゃあ!?そんなの!それこそ!化け物だろうがよ!」

大量の槍が変則的な動きをして私に襲い掛かる。

私は左手に持つ大刀でそれらを消し飛ばす。

「なんだよ、消し飛ばした!?あたしの槍全部消し飛ばしたって言うのかよ!?でたらめだ!でたらめ過ぎる!」

私は魔力の羽で、佐倉杏子の背後にあるグリーフシードを取る。

そして、ゆっくりと佐倉杏子に近づく

「くんなよ!こっちくんな!」

無造作に投げつける槍をあたしは魔力の翼で払いのける

そして、佐倉杏子の目の前に立つ。

硬く目をつぶる杏子。

私は佐倉杏子を抱きしめた。

あの時マミさんが私にしてくれたように。

強く抱きしめた。

そして、今にも魔女になってしまいそうな杏子のソウルジェムをグリーフシードで浄化する。綺麗な赤色だと思った。

「一人ぼっちは寂しいでしょ。だったら、あなたは一人でいちゃあダメだよ。杏子。私が一緒にいてあげるからさ。もう、私があんたを一人にしない。あんたが間違ったときはちゃんと怒ってあげる。泣いたときは涙をぬぐってあげるし、苦しみは一緒に背負おう。だって、あんたは私で私はあんたなんだから。だから、もう誰も憎まなくてもいいの。だれも傷つけなくてもいいし、誰も殺さなくていいんだよ。」

辛かったよね?苦しかったよね?

でもさ、どんなに苦しくても、どんなに認めたくなくても、それが、私達がしちゃったことなんだ。

それは、それだけは、しっかりと認めなくっちゃいけない。

取り返しなんてぜんぜんつかないし、救いなんてない、償うことも、購うこともきっと許されない。

でも、それでも、笑っちゃいけないわけでも、幸せになっちゃいけないわけでもない。

私達は私達の罪を認めて、受け入れて、それでもしっかり笑って生きていこう

 

 

私は杏子を一発も殴ることはなく。

そんな想いをギュウギュウに詰め込んで、杏子を抱きしめた。言葉にならないくらい、強く、強く抱きしめた。

 

そう、これが私のどうしても、やりたかったことなんだ。

 

きっと彼女にもうまく伝えられたと思う。

 

 

 

 

その後は私はあまり、覚えていない。なんでも、私のソウルジェムは限界ぎりぎりだったらしく、浄化しても、かなり危険な状態だったらしい。マミさんとほむら、そして、杏子が協力してくれてなんとか私は助かった。

 

実は杏子が一番必死になってくれていたそうだ。

 

私は聞こえた気がするよあんたのさやかーって呼ぶ声がね。

それが実は一番うれしかったりする。

 

私たちは年相応とは言いがたいけど、真っ当に喧嘩して、そして真っ当に友達になれたんだと思う。

 




さて、次回からは問題のところなので、どうしようかなぁ。
次回! 問題のパジャマパーティー編スタート!
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