魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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第二十八話 告白 (巴マミ語り部)

私は地下を降りる。

どこまでも

障害を壊しながら。

あの人に会う為の障害を破壊をする。

彼はいるのだ。

この深い深い地の底に。

道案内として、白犬さんと黒犬さんもいる。

「ごめんなさいね。こんな大変な時に」

私は二人に謝る。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

それは地上で戦ってくれている私の最高の仲間にも。

でも、それでも、弱い私を送り出してくれた彼女たちのためにも、私は彼を、私の大切な人を助けたい。

「本当は、何を考えているの!と責めるべきなのでしょうが、それでも、あなたのこの選択は奇跡的に正しいですわ。彼がいないとどうしようもない事を私は知っていましたからね。それに、こうしないと気がすまないお節介でお人よしの仲間がいる事も知っていましたからね」

白犬さんは少し微笑んだ。

「あー!織、じゃない。白犬が私以外にそんな笑顔を向けるなんて納得できない!そんなのいやだ!白犬なんて!白犬なんて!」

黒犬さんが頭を掻き毟りながら嫉妬の目をこちらにむけて

 

「大嫌い?」

白犬さんが薄く笑いながらそう問うと

 

「大好き!」

すごいいい笑顔で黒犬さんは答える。何だろう?このノロケは?

 

「しかし、そんなすばらしい仲間だからこそ、心配ではあるのですがね。早くしなければ」

白犬さんが突然真剣な顔になる。

「そういえば、鹿目さんに何か言っていたわね。やっぱり、彼女が契約をするのは、大変なことなの?」

「それも、ありますが。一番重要なのは何を願うのかですね。最悪なのは彼女が魔法少女として戦うことです。そうなってしまった場合、彼女を殺さないといけません」

「ちょっと!あなた!もしかして、鹿目さんの額の魔方陣って!」

私は白犬さんに掴みかかろうとするが、黒犬さんに拘束される。なんてスピード!?

「いいわ、キ、じゃない。黒犬。大丈夫よ」

黒犬さんの力が緩む。

「安心してください。そうしたかったのは正直な気持ちなのですが、あれは違います。そんなもの、ご主人様が見逃すはずない。

 

あれは保険です。

 

彼女が同じ間違いを犯さないために」

 

「保険?……間違い?」

その言葉が何を意味するのか私には理解できない。いえ、そもそも彼女の知識は常軌を逸している。

彼女と話ができるとしたら、そう。

 

物語の外の存在くらいでないと。

 

「願わくば、あの魔法が発動しない事を祈るばかりですが」

「どうして?そもそも、あの魔法は一体なんなの?」

「あれは、記憶を呼び起こすものです」

「記憶?」

「そうです。それはもう忘れてしまった全ての記憶。

己の前世すら見ることになるでしょう」

「どうして、発動してはいけないの?記憶が蘇るだけならそこにそれほどまでのリスクは感じないのだけど。なぜ、そんなものを鹿目さんに施したのも謎だけど」

 

「それは、彼女が神様だからです」

 

「神……さま?」

 

「そうです。彼女がそれを自覚するのは、それ自体にリスクがあります。

 

この世界そのものの運命すら変えてしまうかもしれないのですから」

まぁ、この世界を作ったのも彼女なんですけどね。と彼女は、白犬さんは続けた。理解することも難しいけれども、それ以上に信じることが難しい。鹿目さんは優しい普通の女の子よ。そんなのあまりにも突拍子がなさ過ぎる。話についていけない。そもそもそんな伏線今までなかったじゃない。

そんな、後付けみたいなの信じろって方が無理……

 

「到着しましたわ」

 

白犬さんの言葉で私の思考は一度停止する。

思考が切り替わる。

 

「この壁の向こうに彼がいます」

白犬さんは壁を指差す。

この壁の向こうにいるのね。

あの人が。

だれも信じることのできない小心者が。

自分自身すら信じることのできない

自分すら許すことができない

自分を傷つけることしかできない

そんなどうしようもない彼がこの向こうにいる。

 

彼に会いたい。

一言言ってやらないと気がすまない。

文句の一つでも、言ってやらないと気がすまない。

 

ティロ・フィナーレ!

 

私は壁を壊す。

私とあの人の境界を。

隔たりを。

障害を。

 

壁の向こうそこには

 

何もなかった。

 

そんな!誰もいない!

そこにあの人は居ない

私はみっともなく取り乱すことを隠そうともせずに

泣きながら。

助けを求めるように

すがりつくように

あの人の名前を叫ぶ。

 

「キュウべぇぇぇぇ!」

私はあの人の抜け殻のような、今は人形でしかない、それを抱きしめながら。

「どこにいるの!ねぇ!お願い!

 

お願いだから!

 

私を一人にしないで!

 

私はあなたを離さないわよ!

 

私はあなたを忘れないわよ!あきらめないわよ! 

 

だって、あなた言ってくれたじゃない!

 

私のそばにいて

 

落ち込んだらいつでも私の胸を揉んでくれるって!

 

あなたが私を一人にしないって言ってくれたように私もあなたをひとりになんかしてやらない!

 

あなたがなんと言おうと!

 

どこに行こうと!

 

絶対どこまでもついていってやる!」

 

「……苦しいよ、マミ」

 

そんな声が聞こえた。

可愛らしい少年のような声が響いた。

それは私が求めた。

希望。

 

「キュウべぇ……どこに行っていたの?どこかへ行くときはちゃんと言ってくれないと、心配するじゃない」

私は抱きしめていた、人形

いえ、

キュウべぇを見る。

涙目で

でも、笑顔がこぼれてしまう。

 

「何故だい?」

 

「え?」

 

「理解できない。わけがわからない。どうして君はそんな目で僕を見ることができるんだい?なんでそんな顔ができる?なんで、そんな優しい言葉をかけてくれるんだい?なんでそんな好意を僕に向ける。僕にそんな価値なんてないじゃあないか。

 

君のその気持ちは明らかに常軌を逸している。

君のその感情は説明できない。

 

何故だ?わからない?なんで僕のためにそこまで一生懸命になれる?」

 

「そんな事もわからないの?」

 

「わからない。君のその感情は、気持ちは、思いは、わからなさすぎて

 

恐怖すら感じるよ」

わからないことは怖い。理解できないことは気持ちわるい。

それは、当たり前のことだった。

でも、そんな事あなたに言われたくないな。

だって、あなただって私の為に泣いてくれたじゃない。

苦しんで

苦悩して

それでもあきらめずに

私の事考えて思ってくれたじゃない。

私の事を命を捨てても守ろうとしてくれたじゃない。

同じことよ。私のした事も。

あなたのしたことも。

全部。

 

「そんなの!」

 

私は人生全ての勇気を振り絞って

 

「あなたのことが大好きだからに決まってるでしょうが!

バッカヤロー!」

私は顔を真っ赤にして涙を浮かべて、恥ずかしくて死にそうで、怖くて、とてもじゃあないけど立っていられなくて、この場から逃げ出したいけど、それでも、私はあなたの前にいる。

「は?」

そんな素っ頓狂な声を上げる。きっとそんなこと言われるなんて夢にも思わなかったのだろう。それでも、私は畳み掛ける。

「あなたのことが好きで好きでしょうがないのよ!五秒に一回はあなたの事考えてる!あなたの事しか考えられない!あなたが嬉しいと私は幸せな気持ちになる。あなたが笑うと浮かれてはしゃいでしまう!」

キュウべぇは宇宙人である。外国人どころではない。体格も身体の構造も考え方も何もかもが違う。

カルチャーショックどころではない。

それはキュウべぇから見ても同じ事で、

もしかしたら私のこの気持ちは迷惑以外のなんでもないのかもしれない。

怖くて鬱陶しくて気持ち悪いのかもしれない。

でも、

それでも

「好きになっちゃったんだから、しょうがないじゃない!バカァー!」

「あなたがなんて思おうが!

あなたが拒絶しようが

あなたが私の事嫌いになろうが

私はあなたのそばに居ます!

一生付きまとってやる!

何人彼女を作ったって無駄なんだから!

私は絶対あきらめない!

どんな手を使っても!

どんな策を弄しても!

あなたを振り向かせてやる!」

 

「人間だって

魔法少女だってやめる覚悟はあるんだからぁぁ!」

 

「はは。それは、本当に怖い。君を本気にさせたらこうなっちゃうんだね。初めて見たよ」

「そ、そうよ。覚悟しなさい。私に目をつけられたのがあなたの一生の不覚なんだからね。でも、あなたがいくら後悔しても遅いんだから……」

「うん。それは、もうわかったよ。身に染みてね。こんな所まで来ちゃうんだもん」

「あなたがどれだけ嫌がろうと」

「それは無いよ」

「僕も本当に君のことが大好きなんだよ」

「え?」

「今も嬉しくて死にそうだ。そりゃあそうだ。大好きな君からあんな告白を受けて嬉しくないわけがないだろう?」

「で、でも、私の気持ち理解できないって

怖いって」

「そりゃあ、だって、好きでもない奴のためにここまでできるのはおかしいって思ったんだよ」

「へ?

ぷっ、ふふ」

「わ、笑わないでよ。僕は本気で君が聖女か何かかと疑ってかかってたんだから。まあ、聖女なんて信じたこともないけどね」

「本当にあなたは疑り深いのね」

「そうだよ。僕は何もかも疑ってる。何かを信じたことなんて一度も無い。誰かを信じたことも一度も無い。自分を認めたことなんて一度も無い。

 

こんなに大好きな君すら一度も信じたことが無い。

 

こんな、僕で君は本当にいいのかい?」

 

「そんなの関係ないよ。そんなのずっと前から知っているよ。そんなの全部ひっくるめてあなたが好きなの」

「本当に敵わないなぁ」

「それにあなたがいくら自分自身を信じる事ができなくても

私は誰よりあなたの事を信じているわ。

あなたがいくら自分自身の事許せなくても

私がどんなことでも許してあげる。

あなたがいくら自分自身の事認めて無くても

私がいくらでも認めてあげる

あなたがいくら自分自身の事が嫌いでも

私がこれ以上ないってくらい愛してあげる

 

だから、私のそばにいて。

私の愛する人としてそばにいて。

私はあなたを一人にしない。

だからあなたも私を一人にしないで。

もう、こんな思いはしたくない。

あなたと離れたりなんてしたくない」

 

「ああ、本当に、こんな幸せなことがあるんだね。僕がこんな幸せになることなんてあるんだね。僕は幸せになってもいいのかな?」

 

「そんなのいいに決まってるよ。他の誰がなんと言おうといいに決まっているの」

 

「そっか、そうなんだ。ありがとうマミ。

いや、愛してる

 

愛してるよ、マミ」

私たちはキスをした。

お風呂場でしたキスとは全然違う。

お互いの思いを知って

お互いが好きだということを認めて

お互いを愛した

 

そんなキスを私たちは初めてした。

 

キスだけじゃない。これからもっと初めての事をいっぱいするんだ。

 

私たちの恋は

 

ようやく

 

やっと

 

始まったんだ。

 

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