ねぇ、マミ。君は覚えいるかい?
覚えているわけないよね。
僕達に関する全ての記憶がない君達は覚えているわけないよね。
でも、僕は忘れないよ。ずっと忘れないよ。君と出会ったあの日を。君と過ごしたあの日々を。僕が不覚にも幸せだと感じてしまったあの日々を。僕達のしてきた事は後悔しかなかったけど、それでも、君と出会えた事だけは後悔なんてなかったよ。
僕がは生まれてこの方少女と契約したことがない。それはそうだろう?
できるわけがない。
あんなこと僕には無理だ。
あんな。少女を地獄に落とす行為なんて、できるわけもない。
少女を騙して
偽りの希望を抱かせ
絶望を押し付ける。
そんなもの地獄と言わず何というのだ。
だから僕に居場所なんてないし、意味もない。生きる価値だってきっとない。
本当に楽しみと言えば道行く人のパンツが覗けるくらいかな!自分の体格というかな?この目線は気に入っているんだ!ちょっと見上げれば!
君はイチゴパンツかい!
とても似合っているZE!
しかも、ほとんどの女性に僕は認識されていない。
だから
あ、よいしょっ〜!
僕は耳毛で道行く第二次成長期前の少女のパンツをめくり上げる!
「きゃあっ!何?風かな?」
はい!このように全くバレません!ステレスモードです!わーい!やりたい放題だ〜!
少女は首を左右に振って、周りをすこし見渡しながら何事もなかったように歩いていってしまう。
結局誰にも気づいて貰えないのでやっぱり、寂しいな。うん?
お!
もう一人標的を発見!
僕は迷わずその第二次成長期前の少女のスカートに潜り込む!
わーい。
ここは天国かい?
ペロペロしたらさすがに不振がられるかな?
いや、もしかしたら、それで僕の存在をこの子は感知してくれるのかもしれないじゃないか!
そう、僕は誰にも認識してもらえなくて寂しいだけなんだ!
僕を慰めてくれ!
そう、本当に誰にも認識されないなんて寂しことだよ?
ねぇ、○○○?
あれ?僕は何を言ってるんだ?
僕に知り合いなんているわけないのに。
独り言?
いよいよ僕も頭がおかしくなってきたのかな?
まぁ、道行く少女に変態行為を無差別で行っている僕をまともかと言われれば、何も言えないのだけれど。
「きゃああああああ!」
僕の思考は少女の悲鳴で一気に掻き消される。
????
「変な、白い未確認生物が私のスカートの中に!!!」
あるぇ?
もしかして、彼女、僕を認識、していらっしゃる?
はっ!
しまったこの娘はまさか!
僕は一般の少女には確かに認識されない。
それは少女だけではない。
ある一部の少女を除いてあらゆる生物に僕達は認知されない。
そう、ある一部を除いて。
それは魔法少女もしくは
魔法少女の素質をもつ少女のみ。
しまった。
パンツめくりに夢中でうっかりしていた。
この少女は巴マミ。
魔法少女の素質を持つ少女。
僕達インキュベーターは普通の少女より、強い、感情エネルギーを持つ少女とコンタクトできるように作られている。
そして、感情エネルギーを強く発する少女の事は
その、少女の情報は、余すことなく知っている。
知りわたっている。
わかっていたはずなのに。
僕はどんなに素質を持つ少女にも近づかないと決めていた。
どんなにかわいらしい少女でも。
どんなに願っている少女でも。
僕は彼女達には近づかなかった。
それはセクハラ行為が露見するのも、まぁ、理由としては大きくあるのだけれど、それ以上に。
怖かった。
その少女はきっとなってしまだろう。
希望を抱き魔法少女になってしまうだろう。
絶望に押しつぶされ魔女になってしまう事だろう。
たくさんの笑顔を振りまき
たくさんの涙を零し
そして
たくさんのエネルギーを生み出して。
君達はそんなふうにされて
僕達はそういうふうな構造をしているんだ。
効率よく
スムーズに
契約を済ませる。
少女に何を言えば僕達を信頼し
どうすれば希望をさらけだし
何をすれば絶望するのか。
僕達は知っている。
知っているんだ。
だから、僕は君達に近づけない。
だって、僕は何もできないじゃあないか。
僕だって、最初はみんなに伝えたさ。
決して、僕達を信じるな、と。
でも、誰も耳を傾けてはくれなかった。
出来損ないの僕は少女達を信じ込ませることもできなかった。
真実を伝えることも
騙すこともできない、できそこないなのだ。
少女達は皆、魔法少女となってしまった。
そのうちのいくつかは魔女になった。
その情報が上位通信(テレパシー)で伝えられる。
何度絶望したかなんて覚えていない。
僕は、何度絶望しても当然魔女にはならなかった。
それが、とても、辛かった。
こんなにも絶望しているんだ。
いっそのこと魔女になってしまえばいいのに、と。何度思ったことだろうか?
だから、僕は少女を見ないことにしていた。
なんにもできないのが辛かったから。
救おうと試みる事をあきらめてしまったんだ。
また失うことが辛かった。
悲しかった。
虚しかった。
そして、怖かった。
怖かったんだ。
もう、それは、しょうがない事なんだと、そう、受け入れるしかなかった。
でないと、生きていけなかった。
とてもじゃあないが狂ってしまいそうだった。
今にも死んでしまいそうだったんだ。
だから、僕は多くの少女を見殺しに、
「もう!いいかげん!離れて!この珍妙生物!」
ちょっ!痛い!痛い!
「この!この!」
少女は僕を踏みまくる。
そりゃあもう、踏み殺すほどに。
はっ!
これはいかん!
このままでは僕は冗談抜きで殺されてしまう。
だが、それ以上に彼女に、こんな行為をさせてはいけない。
皆さんご存知の通り、私インキュベーターは一般の方には見えません。
ということは、巴マミからしたら変態珍妙生物に制裁を加えているつもりでも、はたから見たら、突然奇行に及んだ痛い少女でしかない。
これは彼女の人生に関わる問題だ。
僕はこれ以上少女の人生を滅茶苦茶にはしたくない。
それに、これをきっかけに、魔法少女の契約を頼ってしまうほど追いつめられてしまう事も十分にありうる!
「ちょっと!待って!僕が悪かったから!」
「いやぁ!しゃべった!」
更にその動きは激化した。
もう、エンジンピストンのように踏みまくる少女がそこにはいたのだ。
「ぼ、僕は、他の人には見えな……」
グシャっ!
何か大切なものが潰れる音が。
ああ、なんだか走馬灯が見えてきた。
ふふ、どれも、可愛いパンツだったZE。
我が孵卵器生に一片の悔いなし。
みんな、この娘は大丈夫だからね?
変態インキュベーターを退治してくれているだけだから。
だからそんな冷たい目で見ないであげてね?
それでは
さようなら。
まぁ、当然ながらさよならするわけもなく。
僕は気が付いたら、人気のない街路時の裏にいた。
僕の魂の叫びが何とか伝わってくれたのか、冷静に状況判断ができるまで落ち着いたのかはわからないけれど。
「大丈夫?」
巴マミは僕を心配そうに覗き込んでくる。
「うん。軽く死にそうになっただけだから大丈夫だよ?」
僕は笑顔で答える。
「……ごめんなさい」
彼女は明らかに僕が悪いのにしょんぼり、涙目になりながら頭をさげる。
なんのことはない。
その娘はいくら魔法少女の素質があろうが、ちゃんとごめんなさいが言える、優しいいい娘なのだ。
「君が謝る必要なんてない。どう見ても僕が悪かったさ。あれは正当防衛でしかないよ。君は何も間違ってない。とても、正しかった」
普通の優しい、少女なのだ。
この娘も魔法少女になってしまうのだろうか?
「……うんっ。ありがとう」
彼女は安心したのか、涙をぬぐって、とても可愛らしい笑顔を僕にくれた。
それは魔法少女でもないのに、とても希望に満ち溢れた、笑顔だった。
魔法少女になれば、きっとこの笑顔が消えてしまう日が来るだろう。
それは、嫌だ。
本当に嫌だな。
「それじゃあね。私これから、家族でドライブに行くの」
「ちょっと待って」
小走りに駆けだそうとした少女を呼び止める。
「?」
「僕はね、この地球の生物じゃあないんだ」
「うん。見ればわかるけど」
「……わかるんだ。すごいね」
「えへへへ」
手を後ろに組んで、照れ隠しのように可愛らしく微笑む巴マミ。
さすがは魔法少女の素質ありの子だな。
「僕達はこの地球を征服しようとしているんだ」
「えーーー」
「いや本当だよ。今は見逃してあげるけど、次会ったときには君の願いを叶えてあげるとか甘い事を言って君を不幸にするからね?絶対に、願ってはいけないよ?現実を超える願いは必ず歪が生じ、その希望という幸せはいつか絶対に、君を絶望という不幸に陥れることだろう」
「???うん、わかった」
明らかにわかっていないだろう。この娘は。
それでも、僕は最後の望みを込めて彼女に懇願する。
「約束だよ。絶対に……。そのまま、君は君のまま幸せに生きてくれ」
「うん。それじゃあねっ。宇宙人さん」
彼女は手を振って、走って行った。
家族とのドライブ。きっと楽しいのだろう。
その幸せが永遠に続けばいいのに。
そんな夢物語あるわけないのに、僕はそんな事を願っていた。
現実を凌駕する事を望んではいけない。自分の夢を楽をして手にしてはいけない。だって、もしも願いを叶えてしまったのなら、後に残るのはやっぱり絶望だけなんだ。
だから、君達は僕たちとなんか、関わっちゃいけない。
何があっても。
僕は懇願する。
少女達に。
懇願することしかできない。
無力なできそこないのインキュベーターなのだ。
僕がどこを目指すわけでもなく、町の中を歩いている。
この一昔前よりも大きく発展した見滝原町では、上空にも道がある。いわゆる。高速道路である。
魔法少女の契約により大きく発展した科学力。
少女の血と涙と絶望で積み上げられた幸福。
僕は、そんな町を歩く。
まるで、少女達の死体でできた道を歩いているみたいだ。
そう、考えると、本当に死にたくなる。
僕のそんな悲観的思考はしかし掻き消された。
上空から、轟音と悲鳴が聞こえたからだ。
とても大きな音が聞こえたのだ。
それは、交通事故だった。
何故だろう?僕は、血相変えて高速道路を駆け上がる。
だって、僕は聞こえてしまったんだ。
轟音が轟き、悲鳴が叫ばれる中、聞こえてしまったんだ。
巴マミの声が。
苦しい。
痛い。
と。
僕は一体どうするつもりなんだろうか?
彼女に一体何をするつもりなのだろうか?
わからない。
でも、僕は駆け上がる。
彼女のもとに。
僕は本当に何をするつもりなのだろうか?
それは交通事故というものだった。人間の作った乗り物、いわゆる車が何らかの原因により不足の事態に陥る事である。それは軽い物損事故から重い人身事故まで様々な要因があり、原因がある。
その事故は比較的大規模な事故だった。
勿論災害被害に比べたら大したことはないが、自動車事故としては大規模な事故だった。高速道路で民間の車と大きなトラックとの正面衝突。それに連なり多くの車が衝突する。おそらく生きているものはいない。誰が見てもそう思うだろう。しかし、僕はこの大惨事の中奇跡的に生き残っている少女がいる事を知っている。それが、僕がこんな所にいる理由。そこに巴マミがいたからだ。
巴マミの姿はとても痛々しかった。とても酷かった。
身体の下半身は車に挟まれてペシャンコになっていた。上半身の下部では内臓がこぼれ出ていた。彼女はもう何が起きているか理解できていないだろう。痛みなんて感じる余地もないだろう。息ができる事が不思議なくらいだ。いや、彼女の異常のような過呼吸を聞く限りもうその呼吸も時期止まるのだろう。
僕は今からこの娘に何をしようとしているのだろう。何をさせようとしているのだろう。
僕は彼女に幸せになってほしい、とそう思っていたはずなのに。
何を何を何をしようと。
何をさせようとしているんだ!僕は。
言うまでもない。
彼女が助かる道はただ一つだ。
僕と契約するだけだ。
本当にそれでいいのだろうか?
彼女を苦しませるだけではないのだろうか?
このまま、彼女を魔法少女にして生き残ったとして彼女は本当に幸せになれるのだろうか。
否。
そんなわけはない。
君はきっといつかこういうだろう。何故あの時死なせてくれなかったのか、と。
そうなる事がわかっている。
わかっているんだ。
でも、いくら辛くても
苦しくても
それでも、生きることはできるんだよ。
生きていくことだけはできるんだ。
救いはないかもしれないけれど。
それでも、生きてほしい。
そんな事を思ってしまうのは僕ができそこないのインキュベーターだからだろうか。
「僕と契約して魔法少女になるかい?そうすれば君は生きる事はできるだろう。でも、それはとても辛い事だよ。生きるのがいやになるくらい辛い事だよ。それでも君は僕と契約するかい?必ず後悔する日がくるとわかった上でそれでも僕と契約するかい? 」
僕の中で何が正しいのかわからない。
彼女にとって、何が幸せなのか。
辛く苦しい、最後は絶望しかない世界に生きるくらいなら、きっとこのまま死んでしまったほうがいいだろう。
でも、弱い僕は。
君を見捨てて。
君をこのまま見ていることができない。
残酷なのはわかっている。
偽善なのもわかっている。
こんな少女にそれを決めさせることがどんなに卑怯かもわかっている。
それでも、僕はどうしたらいいかわからないんだ。
僕は彼女に救いを求めるように、彼女の答えを待つ。
彼女はかすれる声で、荒い呼吸の中こう言った
「……た…すけ…て……」
僕の中で答えがでた。僕の望んだ答えが出てくれた。
これが僕の生まれて初めての契約だった。巴マミの魂に僕は触れる。彼女の魂を願いにのせてソウルジェムを作る。彼女の感情エネルギーによって願いが成就される。終わらせる。
終わらせてしまった。彼女の人生を終わらせてしまった。
彼女の身体は完璧に復元される。傷一つなく。服までももとあったであろう姿に復元される。それは、この光景にはあまりに不自然で、歪で、異常だった。
巴マミは気絶してしまっている。死んでしまっているように眠っている。僕はそんな彼女に話しかける。
「君はよく意味も解らずに契約しただろう。真実を隠されているのだから当然だ。もしかしたら君は助けられたと勘違いをしてしまったかもしれない。僕の事を良い奴だと思ってしまったかもしれない。でも、それはどうしようもない勘違いに他ならないよ。僕はね君にひどい事をさせようとしているんだよ。君を不幸にさせようとしている。僕と契約すれば確かに君の命は助かるだろう。でも、いつかきっと後悔する日がくるだろう。だから一つだけ約束してくれ、君が真実を知り、それを受け入れる事ができなくて世界を呪いたくなったらまず僕を呪ってくれ、僕にその呪いの全てをぶつけてくれ。僕をせめてくれ。せめて、せめて、せめて、せめて、そして殺してくれ。」
約束だよ……
僕の声はガソリンの引火により燃え盛る炎のなか悲しく響いた。