魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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第三十一話 神様の記憶 (まどか語り部)

「あまたの運命を束ね、因果の特異点となった君はどんな途方もない願いも叶えられるはずだよ」

 

「本当だね?」

 

「さぁ、鹿目まどか、君の魂を対価にして何を願う?」

 

「私は、全ての魔女を生まれてくる前に消し去りたい。過去現在未来、あらゆる世界線で生まれてくるであろう魔女を全て消し去りたい。私の手で!」

 

「そんな祈りが叶うとしたら、時間干渉なんてレベルじゃない!因果律そのものに対する反逆だ!君は本当に神様になるつもりかい?」

 

「神様でもなんでもいい!今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を私は泣かせたくない!」

 

「これが私の祈り!さぁ!叶えてよ!インキュベーター!」

 

そして、私の身体は肉体を超越する。

 

全ての魔女を私は身体全体で理解する。

 

ワルプルギスの夜は多くの魔法少女の集合体。あらゆる魔女の集合体。私はその魔女を一つ一つ消すために過去にその魂を転移させる。

 

その魔法少女は外国の部族の魔法少女だった。多くの人の怪我を治すためにどんな人の傷を治癒する願いを叶えた少女。

しかし、その力をめぐり部族どうしで争いが起きた。

 

そして、その魔法少女は泣いていた。絶望していた。

みんなの幸せを望んだはずのその願いが生み出したものは。

その部族の破滅だった。

そして、ソウルジェムが完全に濁る。

そこに、私が現れる。

その子のもとに一瞬で飛び移る。

そして、その子のソウルジェムの穢れごと私の中に吸収する。

 

その少女の肉体は消えていく。その少女の肉体ごと別の空間に転移させる。

そして、その少女が最も望んでいたもの見せる。

それは、その少女の家族だった。

 

その少女が傷の手当をすると、みんなみんな本当に幸せそうにしていたのだ。

彼女を褒めてくれた。

全ての人を治したい、そんな崇高な願いの始まりは、お父さんお母さんに褒められたい。そんな年相応の願いからきたものだったのだ。

だから、その少女の家族の魂をこの世界に転移させた。

そして、褒めてあげて。

その子は今までがんばったんだよ。

精一杯がんばったの。だから、力いっぱい。できる限り褒めてあげて。でも、そんな事はいう必要すらない。

その少女の家族は優しく微笑みながら抱きしめていたのだ。

そして、少女も年相応に、泣きながら微笑む。

 

よかったね。

 

そして、その子の魂は浄化され、両親とともみあるべき世界へと消える。

 

そして、私はまた、別の魔法少女の子のもとへと飛ぶ。

 

そうやって、いくつもの魔法少女のもとへ飛ぶ。

 

それは、戦争を無くすことを願った少女。

しかし、その願いの結果起きたのはさらなる大きな戦争。

ソウルジェムが濁りきり、私はその子のソウルジェムごと全てを浄化する。

 

その少女の戦争をなくしたいという願いは、家族が戦争に奪われたからだ。

 

そして、私はソウルジェムと引き換えにその子に最後の願いを叶える。

 

それは、もう一度その家族と出会うことだった。

家族を奪った戦争を憎んだ少女。

しかし、彼女が本当に望んだ世界は、家族と笑顔で、なんの争いもない世界で暮らすことだった。

 

そんな少女を浄化して、願いを叶えていく。

 

多くの魔法少女の穢れをも私に移す。

 

幾千幾万の魔法少女の穢れをすべて私に移す。

 

多くの少女のソウルジェムを吸収し、魔力を使いその子の願いを叶えていく。

 

みんな、泣かないで。

 

みんな希望を捨てないで。

 

だって、魔法少女は希望を振りまくもので、決して絶望を振りまくものではないのだから。

 

そして、私のソウルジェムは完全に濁りきる。私のソウルジェムの大きさは地球に納まらない宇宙サイズ。その、ソウルジェムが生み出す魔女はワルプルギスの夜どころじゃあない。地球を破壊するどころではない。宇宙全てを破壊させるほどの存在。文字通り。世界を終焉にもたらせるもの。

 

別の次元から、そんな変わり果てた自分を眺める。

その世界にはほむらちゃんがいた。

いてくれた。

多くの並行世界を旅して、私を救い出すためだけにその全てをかけてくれた、私の最高の友達。

 

泣きじゃくるほむらちゃん。

「そんな、こんなことって!みんなの幸せを願ったまどかが!こんな……の、ひどすぎる!」

 

そして、彼女は腕を振り上げ

「もう一度、ループして……」

 

私はほむらちゃんの隣に立つ

「大丈夫だよ、ほむらちゃん」

「まどか!?」

「私の願いは全ての魔女を生まれてくる前に消し去りたい!それなら!

 

私だって!絶望する必要なんて!

ない!」

 

そして、過去現在未来のあらゆる世界の鹿目まどかの存在はなかった事になる。

みんなは私の事を認識できなくなる。

私の存在は一つ上の存在にシフトされる。

 

そして、私は神様になった。

いや、正確には、神様になる一歩手前かな?

私の魂は形を失っていく。

そんな中、こんな所まで追いかけてきてくれる、最高の友達がいた。

 

「まどかぁぁぁぁ!!」

ほむらちゃん……、こんな所まで、来てくれたんだ。本当にあなたはすごいな。

 

「そんな、まどかがどの世界にもいなくなって、こんな世界で、永遠に!そんな!こんなの、死ぬいより、ひどいじゃない!」

 

「そんなことないよほむらちゃん」

私はほむらちゃんの涙を拭う。

「私はね、みんなの側にいるよ。私はどこにでもいるんだよ。いつでも、あなたの側にいるの。ただ、みんなにはそれがわからないだろうけどね。でも、私は感じているよ。みんな私の事忘れちゃうだろうけど、それでも、私はみんなの事覚えているよ。忘れない。忘れるはずない」

 

「そんな、それじゃあ!私たちはどうなるの!私達はあなたの事を感じれないの?私達はあなたの事、覚えてすらいないの!?そんなのいや!私だってあなたを感じていたい!あなたともっと一緒にいたい!」

 

「ごめんね、ほむらちゃん、もう、私行かないと。でも、こんな所まで、来てくれたんだもん。もしかしたら、ほむらちゃんなら私の事覚えていてくれるかも」

私はほむらちゃんの手の平の上にリボンをのせる。

私愛用の赤いリボン。

「いつかまたもう一度ほむらちゃんと逢えるから。その時までお別れだね」

 

「まどかぁぁっ!」

 

ほむらちゃんの声が遠くなっていく。

そして、私は神様になった。

 

魔女を全て消し去った世界。そこには魔獣が蔓延っていた。

 

その、世界で、戦い続ける魔法少女。

戦い続ける私の最高の友達達。

その子達の隣に私はいつもいた。

みんな気づくことはなかったけど。

 

そして、私の最高の友達の一人さやかちゃんのソウルジェムが濁りきる。

 

私はさやかちゃんのソウルジェムごと浄化する。

肉体ごと別の世界に移動させる。この時マミさんが、いってしまったわ、円環の理に導かれて……と言っていたような気がするのは気のせいかな?私そんな感じで呼ばれているの?

 

その世界は、さやかちゃんのしてきたことを全てをなかった事にした世界。そう、しなければ、さやかちゃんの救われる道はなかった。

 

その世界では、上条くんが演奏していた。

ヴァイオリンを演奏していた。

「ごめんね、さやかちゃん。さやかちゃんの願いを叶えるには、こうするしかなくて」

「いいんだよ、仁美じゃあ、適うわけないしね。恭介にはもったいないくらいにいい子だから。私はただ、もう一度恭介の演奏を聞きたかっただけなのかもしれない」

 

「うん……」

 

消え去ろうとした私の手を掴むさやかちゃん。

それは、とても震えていた。

それは、涙のせいかもしれないけれど、さやかちゃんは怒っていた。

 

「でも、確かに!確かに!私の望みの一つは!恭介の演奏を聞くことだけど!でも!一番の願いはそうじゃない!そうじゃあないよ!」

 

「え?」

 

「勝手に決めないでよ!私の一番望むもの勝手に決めないでよ!私が一番望むもの!それは!

 

まどかと一緒にいることよ!」

 

あれ?なんで、涙が、止まらない?私泣いてるの?神様なのに?

 

「何よ!神様!?そんなものためにまどかは私達のもとから離れていっちゃったの!?私は今の今までまどかを覚えていることすらできていなかった!感じることすらできていなかった!」

 

そして、さやかちゃんの魂は薄れていっちゃう。

 

「ごめんね、さやかちゃん。もう、お別れだ」

 

「そんな!いやだ!もう、まどかとお別れなんていやだ!もっと、もっと一緒にいたかった!もっと一緒に遊んでいたかった!もっ……か……」

 

そして、あるべき所に帰るさやかちゃんの魂。

この時からだった。

確かに、私は、世界の魔女を消し去ることも心から望み、そして、この世界から存在が消えることも全て、受け入れたけど、私の最高の友達は、それをどう思ったのだろうか。

 

もしかしたら、私は最高の友達を裏切ったんじゃないのだろうか。

私は間違っていたのだろうか?

私の希望に疑いが芽生えた。

 

そして、今度は杏子ちゃんの番。

さやかちゃんが消えたせいで、ソウルジェムが濁りきった彼女。私は今度は同じ過ちを犯さないように。

勝手に決めてしまわないように杏子ちゃんに

「あなたのねが……」

「まっどかぁーっ!」

「きゃぁっ!」

「逢いたかったぞ!この野郎!テメェ今まで何してたんだよ!このこの!」

 

「きゃはは!ちょっ、杏子ちゃんくすぐったいって!」

 

「何言ってんだ!触らせろ!なめさせろ!もっと食べさせろ!」

 

「きゃあああああ!」

 

「はぁはぁはぁ、それで、杏子ちゃん?願いは?」

私は願いを聞きだすだけで、疲労困憊である。

 

「そんなの、お前と、さやかとずっと一緒にいたいな」

そして、屈託のない笑顔でそう杏子ちゃんはいった。

ああ。私は本当は間違っていたのだろうか。

 

「ナイスよ!杏子!」

そしてグーサインで現れるさやかちゃん。

「さやかぁぁぁーっ!」

「ちょいストップ」

抱きつこうとする杏子ちゃんの動きを制するさやかちゃん。なれていらっしゃる!?

「あんたとのハグはあの世で思う存分やらせてあげるから。だから、今しかできない事をやろう」

「?」

「?」

首を傾げる私と杏子ちゃん。さやかちゃんが何を言っているのか全くわからない。

 

「まどか~~!逢いたかったぞぉ~!あんたとの話はまだ終わっていないんだからね!」

 

「え!?」

 

「杏子!まどかを取り押さえろ!」

逃げようとする私を羽交い絞めにする杏子ちゃん。

うそ!?私神様なんだけど!?

 

「杏子よ!聞いてくれ!まどかは私達と一緒にいることよりも、神様として、全ての魔女を消し去ることを選んだらしぞ」

 

「な、何!?」

 

「その証拠に、あんたはまどかに会うまで、まどかの記憶が全くなかったはずだ!まったくまどかを感じれなかったはずだ!」

 

「そ、そう言われてみれば!?」

わぁ、杏子ちゃん、気づいていなかったんだ。

「まどかには然るべき裁きを与えるべきではないかね?杏子君?」

「確かに!」

 

「ええ~!?」

 

「きゃはっはあっははっははははは!」

 

「このこの!まだまだ終わらせんぞ!」

「そうだ!もっとペロペロさせろ!おいしいぞ、この野郎!全部食べちゃいたい!」

 

「ちょっっと!杏子ちゃん!?どこなめてんの!?そこは!?ていうか!ほんとに食べちゃだめぇ!」

 

「この!神様なんぞになったけしからん身体はこれか!こうしてくれるわ!」

 

「ぁあん!ちょ、ちょっと!?さやかちゃん!?どこさわてんの!?やぁん!」

 

「「どことはどこのことだ?はっきり言ってくれんとわからんなぁ~」」

 

「もう許してぇ~!」

 

そして、消えていくさやかちゃんと杏子ちゃん。

「許さない……絶対許さないんだからぁ!また、来たときはもっと凄いことするから覚悟しておきなさい!」

 

さやかちゃんは涙を流して、本当に名残惜しそうに私を見る。

 

「え!?あれ!?なんであたし達だけ!?まどかは!?」

現状をいまいち理解していない杏子ちゃんはさやかちゃんに助けを求めるように見る。しかし、視線をそらすさやかちゃんを見て、なんとなく理解したようで

「そんな!だって、あたしの願いはずっと!

ずっと!さやかとまどかと一緒に!

まどか!

まどかぁぁ……」

「ごめんね」

 

「本当にごめんね。杏子ちゃん、さやかちゃん。私はそっちにいけないんだ。私は私のやるべきことがあるから」

 

でも、それは本当に、友達と一緒にいることより大切な事なのかな?

 

私の中の疑問は大きくなる一方だ。

 

そして、今度はマミさんの番。

「私はみんなとまた一緒にお茶会がやりたい。もちろん。あなたも含めてよ。鹿目さん」

マミさんの願いが叶えられる。

 

「「よぉ~!まどかぁ!!待ってたぜぇ!!」」

悪人顔で現れるさやかちゃんと杏子ちゃん。

 

「またぁ!?」

 

それでも、私はやっぱり、杏子ちゃんとさやかちゃんとまた会えた事が嬉しくてたまらない。私を感じてくれる。認めてくれる。認識してくれる。そんなことがこんなに嬉しいことなんだ。

 

「そ!?そんな所を必要以上に攻めないで!!おかしくなっちゃうよ!!」

 

「とくと見よまどか!あの世で私達があみだした奥義を!」

「そうだ!とくと味わうがいい!これがあたし達の思いの力だ!」

 

かぷかぷかぷかぷ!

くりくりくりくり!

 

「あああああああああんっ!」

 

「ほらほら、あなた達もその辺にして、お茶の用意ができたわよ」

 

「「はぁーい!」」

元気のいい、しかもちゃっかりしている二人組みと

「は……ぁい」

満身創痍の私。

 

「あはははは」

「うふふふ」

「えへへへ」

「はははは」

 

久しぶりにこんなに笑ったんじゃないだろうか。

こんなに楽しいのは本当に久しぶり。

こんなにおいしいお茶も、楽しいおしゃべりも本当に懐かしい。

 

そして、やっぱり終わりのときはきてしまう。

薄れていくみんな。

それでもみんな私を強く抱きしめる。

三人で私を取り囲んで。

消えそうな身体を必死にこの世界にすがりつくみたいに。

 

「ねぇ、鹿目さん。本当に……それは、あなたがやらなくてはいけない事なの?わがままを言ってるのはわかってる。全部鹿目さんが決めたことで後悔なんてないこともわかってる。でも、それでも!私達はもっとあなたと一緒にいたかった。生きているときに、こんな風にみんなでもっと遊びたかった。それは、今でも!

 

ねぇ、本当にそうできなかったの?

 

他の道はなかったの?」

 

「マミさん……」

 

「まどかぁぁぁ!もう、いやだよ!もう、離れたくないよ!一緒にいたいよ!うわぁぁぁぁん!」

私に必死に力いっぱい抱き、号泣するさやかちゃん。

 

「さやかちゃん……」

 

「なぁ!なんでだよ!まどか!あたし達のこと嫌いになっちまったのかよ!あたしはまどかの事こんなに大好きなのに!」

杏子ちゃんも力いっぱい私を抱きしめ力いっぱい泣いている。

 

「杏子ちゃん……」

 

みんな魂が薄れ触れる事ができなくなっていく。

「みんな、の事大好きに決まってる。私だってみんなともっといたい。でも、やっぱり、私は、みんなと一緒にいけないよ。

 

ごめんね。

 

本当に、ごめんね」

 

「鹿目さぁぁぁあん!」

「「まどかぁぁぁぁあ!」」

 

みんな消えていく、

 

そして、また一人ぼっちになる私。

 

そっか、いくら私がみんなの隣にいても、それをわかってもらえなかったら、認識してもらえなかったら。それは、一緒にいるとは言わないよね。

 

そっか。私、ずっと一人ぼっちだったんだ。

 

そして今度はほむらちゃんの番。

私の作った世界を必死に生き抜いてくれた最高の友達。

 

「ま……まどかぁ」

 

「ほむらちゃん……」

 

まどかぁ! 

とほむらちゃんは泣き叫びながら私を抱きしめる。

 

「ほむらちゃん言って……お願い。あなたの願いを言って。最後にあなたが希望を抱いて眠ることができるように」

 

私もいつの間にか泣いていた。彼女には本当になんて謝ればいいのかわからない。

 

私の幸せの為に、何度も時間を巻き戻し、数え切れない地獄を繰り返してきた彼女を、私は何にもできなかった。ただ苦しむ時間を長く味あわせてしまっただけだったのだから。

 

だから、私はせめて彼女の願いだけはどうしても叶えなければいけない。どうしても叶えたい。その資格が私にはないとしても、それでも私はどうしても最後にほむらちゃんと共に時間を過ごしていたい。

 

「まどかのばかぁああああああああああああああ!」

 

それでもほむらちゃんは泣きやまない。私の身体を強く抱きしめる。

 

「怒って……るよね? ごめんなさい、こんな事許してもらえるわけないことはわかってる。でも、それでも、どうか――」

「怒ってるに決まってる!」

 

ほむらちゃんは私の言葉を遮る。

 

「あなたにあったら、どうやってその身体にお仕置きしてやろうかずっと考えてた!」

 

お、おしおき……?

 

「でも、私はやっぱりあなたが好きなの! まどかが大好き! だから結局私の願いはあなたと一緒にいること! ずっと、ずっと我慢してた! ずっと耐えてきた! 今日この日のために私は頑張ってきたんだ! だから……だから」

 

ほむらちゃんの必死な叫びに私は泣きじゃくりながら、嗚咽をもらし、呂律のうまく回らない言葉をそれでも必死に紡ぎだし、その願いに答える。

 

「うん……。いっぱい……お話し…しよ?」

 

ほむらちゃんは泣きじゃくりながら、何度も首を縦に振り頷く。

 

「話したいことが山ほどあるの……。今夜は寝かさないどころか、星一つの寿命がまっとうされるくらい長くなるんだから、覚悟してよね」

 

ほむらちゃんは涙で潤んだ瞳を攻撃的で強気な光を宿した瞳に変えていた。そんな瞳に私はこくりと頷く。

 

それは、ほむらちゃんだけではなく、私が待ち望んでいた願いで、瞬間でもあった。だから、望むところなのだ。

 

そして私達は泣きながら、時に笑いながら、話し続けた。長い道のりの物語を。

 

 

そして、やっぱりお別れのときはくる。

 

「いや!まどか!まだ、まだ話したりないよ!もうお別れなんていや!」

 

「ほむらちゃん……」

 

「まどかともう会えないなんていや!まどか!まどかぁぁぁっ!」

 

そして、ほむらちゃんも消えてしまう。あるべき所に帰っていく。やっぱり、私は神様だからみんなと同じところにはいけなくて、やらなきゃいけない事がいっぱいあって

 

「みんな、本当に、ごめんね」

 

そして、私はやっぱり、謝ることしかできない。

 

私が正しかったかどうかなんて、もうとっくに答えは出ていた。

 

これは、本当にみんなを泣かせてまで、私は一人ぼっちになってまで、したかったことなのかな?

私はみんなが泣いてほしくないから頑張ったはずなのに。

 

私は本当にみんなの為に何かできていたのかな?

 

私は確かにいなくなる覚悟はあったけど、でもみんなにそれを強要するのは間違っていることなのかもしれない。

私は自分勝手に、やりたい事をやってしまったけど、私は本当にみんなの事を考えていたのだろうか?

みんな、こんな私をあんなに必要としてくれてるのに。

神様ではない、私個人を。

私はそれに答えてあげられない。

本当に私はこれでよかったのかな?

 

この後も私はやっぱり、いろんな魔法少女を浄化し続け、そして、願いを叶えてきた。

 

でも、いつからだろう?一人ぼっちがこんなに寂しいと思うようになったのは。

 

いつからだろう。前みたいに、みんなと一緒にいたいと思うようになったのは。

 

そして、あの人に出会った。

 

その人は魔法少女ではなかった。どころか、少女ですらなかった。

その人は、少年だったのだ。

魔獣も、魔法少女も、魔女も何もしらない、ただの少年だった。

しかし、彼が全く、特別な人間でないわけでもない。

彼は、運が良すぎたのだ。

いや、運が悪すぎたのだ。

永遠に続く、繁栄も、文明もありえない。

そう、彼は、人類最後の生き残りだった。

人類で一番最後に死んでしまった少年だった。

 

顔が可愛らしくて女の子に見えてしまうが、男の子である。

彼は、一人ぼっちで、一体どんな人生を歩んできたのか。

問うまでもなく、私にはわかる。

その子を見れば、どんな人生を歩んできたかすぐにわかってしまう。そんな力がなければきっと女の子と間違えていただろう。白髪で、赤い瞳、少し眺めの髪、色白の肌、あの珍妙な生物を思い出してしまう。

なぜ、魔法少女でも、ないのに出会ったかといえば、私が、彼に会いに来たからだ。

人類最終キャンペーンと言ったら、些か、軽いニュアンスになってしまうから、口には出さないけれど、私は彼の願いを叶えてあげたいのだ。サービスである。

私の作ってしまった世界を最後まで生きてくれたお礼がしたいのだ。

がんばって、自殺することもなく、ただ、彼自身と同じ生き残りを探すことに、人生を費やした少年。

そんな、彼に、お疲れ様と言ってあげたいのだ。

「ねぇ、あなたは神様?」

少年は私を見たら、そんな素っ頓狂な、問いをかける。

「うん」

私は端的に答える。

「ということは僕は死んだのかな?」

彼は、特に興味もなさげに、そんな事を言った。

「うん」

それは、きっと、彼の歩んできた人生がそうさせてきたのだろう。

やっと、楽になれたと、そう、安心しているのかもしれない。

「そっか、本当にろくでもない人生だったな。」

「そんなことない。あなたが頑張って生きてきた事を私は知ってるよ」

「なんか、そう言われると恥ずかしいな。それも、神様の仕事ってやつかい?」

「うーん、仕事は今からかな。何か一つだけ願いを叶えてあげましょう。さぁ、この神様に言ってみなさい」

「うーん。特にないなぁ。別にいいよ(腰のそり具合が最高に素敵だ!ぺろぺろしたいなっ!)」

「あれ?おかしいな?君のあられもない欲望が聞こえたような気がするけれど、気のせいかな?」

おかしいな?私は、人の心を読まないように、力を封印しているのだから、誰かの心を読むなんてありえないのだけれど?

「そんなものは気のせいだよ絶対!神様にも気のせいなんてあるんだね!(あ、もしかして神様の下着を見たい言ったら見せてくれるのかな?ま、まさかっ!はいていない!?そんなこといわれたら悶絶死しちゃうだろ!あ、もう死んでるんだけど!いや、もしかしたら侮蔑の視線をむけられるのかもっ!どっちもうれしい!)

「本当に気のせい?これがもし幻聴なのだとしたら私はひどい幻術にかけられているのかもしれないと真剣に悩まなくてはいけないのだけれど」

「それは心配だ。後で僕がその術者にきつく言っておくから、今はおいておこうじゃないか」

「むーーん、それよりも、本当に叶えたい願いはないのかな?」

「そりゃあ、もう、ばっちりない」

「あう、せっかくの大サービスだったのに」

夢のお疲れ様宣言も、おじゃんです。

「それより、なんで君はそんなに寂しそうなの?」

「え?」

「そんな寂しそうに何を見ているんだい?」

「これね、私が人間だった頃の記憶。いくつもの並行世界の私とその友達」

「君はもともと人間だったのかい?」

「うん、ちょっと前までは」

「どうして、そうなってしまったのか、それを見たらわかるのかい?」

「うん」

「見てもいいかい?」

「?いいけど、おもしろくないよ?」

「それでも僕は君のことが知りたい」

「あなたは変わっているね」

「生前よく言われたよ」

そう、彼は言ったのだ。

一人ぼっちの人生を歩んできた彼を、そう言ってくれる人がいない事を私は知っていた。

 

そして、私は彼に、私の記憶の全てを見せた。

もしかしたら、彼なら、一人ぼっちの人生を歩んできた、彼なら、私の気持ちを少しだけ、わかってくれるのかもしれないという、期待があったのかもしれない。

 

いや、きっと違う。

私は責めてほしかったのかもしれない。

なんで、こんな世界にしたんだと。

なんで、自分を一人ぼっちにしたんだと。

そう、言ってほしかったのかもしれない。

 

でも、彼は、私の望んだ事を決して言ってくれなかった。

 

「とても、悲しいお話だったね。」

「うん。ほむらちゃんは私を救い出すために時間の迷路に閉じ込められて、さやかちゃんはどの並行世界でも絶望してしまう。マミさんも杏子ちゃんも。おかしいよね、希望を信じた魔法少女が泣いちゃうなんて」

「だから、君は神様になったのかい?」

「うん、それが」

「魔法少女の代わりに君が泣いてあげれた?魔法少女の苦しみ全部代わってあげられた?」

「え?」

「これで、よかったのかい?君は本当によかったのかい?これで、君は本当に幸せかい?」

「よっかたに決まってる!だってそうしないとみんな泣いちゃうんだよ!?笑顔でいられないんだよ!?」

強情な私は彼の言葉を認めない。私の正直の思いを認めない。私はそう自分にいいきかせているように叫んだ。

「君はこのまま永遠に、未来生まれるであろう魔女を浄化し続けるのかい?」

「うん!だってそれは、私が望んだ事で、私がみんなの為にできることなんだ!」

だって、他にどうしようもなかったじゃない!

みんな笑顔で!私もみんなと一緒に帰ることなんてできなかったじゃない!

私は間違っていたかもしれないけれど!

それでも、こうする以外道はなかったんだ!

だから、

だから、私は後悔なんてしていない!

「じゃあなんで、君はそんなに寂しそうに泣いているんだい?」

 

そっか、私はみっともなく泣いていたんだね。神様なのに。

いろんな人を。

多くの魔法少女に笑っていてほしいのに、それが私の願いなのに……。

「本当に君の願いは、魔法少女みんなが笑っている事なのかい?

君はただ君の友達を笑顔にしたかっただけじゃあないのかい?魔法少女じゃあない。君の最高の友達をただ泣かせたくなかっただけじゃあないのかい?」

私は我慢しきれずに、今まで溜め込んだ思いをぶちまける。

 

「そうだよ!私はみんなの笑顔が見たかったんだ!私の最高の友達と笑顔でまた一緒に遊びたかった。おしゃべりしたかった!本当は離れたくなかった!私もずっとみんなと一緒にいたかった!私だってみんなと二度と会えないなんていやだよ!逢いたい!みんなとまた会いたいよ!」

 

「だったら、僕がなんとかしてあげよう」

 

彼はそんな事を突然言い始めた。

 

「無理だよ。神様の私でも無理なんだ。私が一体どれだけの間あの頃に戻りたいと願ったと思ってるの?無理なんだよ。私はもう、あの頃には帰れない」

 

「神様、僕の願い決まったよ」

 

「何?」

私は泣きじゃくって神様の威厳の欠片もない。

 

「僕をあの白いのキュウべぇってのに転生させてよ」

 

「そんな、何をするつもりなの!?」

 

「もう一度最初から、一から世界を作り直してよ。鹿目まどかのいる世界に戻してよ。神様なんだからできるだろう?」

 

「できるけど、でも、それじゃあ前と同じだよ。また悲劇を繰り返すだけだよ。私はもう、みんなが泣く姿を見たくないよ。魔法少女のシステムがある限り、私達の救われる道はないんだよ」

 

「だから、僕がいるよ。僕が必ずなんとかしてみせる。魔女とか魔法少女とかそんなよくわからないものは全部なんとかしてみせる。そんなシステムは僕が根こそぎぶっ壊して見せる」

 

「でも、やっぱり無理だよ。無茶だよ!あなたをインキュベーターに転生させたら、あなたの魂も無事じゃあすまない。本当にインキュベーターになっちゃうかもしれないんだよ!あの種族は根源が魂だから、完全に交じり合う。人間だった記憶も、この記憶も絶対覚えていられない。自分を保ってなんていられない。なんの力もあげられない。あなたが普通のインキュベーターと違うところがあるとすれば、それは、感情があることくらいしかない!」

 

「それだけで十分さ。それさえあればなんだってできる。僕はそれだけで今まで生きてきた。まぁ死んじゃったけど。でも、それでも僕が絶対君をもとの君に戻してあげる。また、みんなで泣いたり笑ったりできるようにしてみせる。あの子達の隣に君は必要で、君にはあの子達が必要不可欠だ。それなら君はこんなところにいちゃあダメだ。こんないるのかいないのかよくわからないままじゃあダメだ。

 

君を苦しめるものは全部何とかしてみせるから」

 

彼は優しく微笑んで私に手を差し伸べる。

 

「もう一度だけ、僕と一緒にがんばってみないかい?」

 

私は泣きながら必死にその手を掴んだ。すがりついた。

それは、私に向けられた唯一の希望の光で救いだった。

 

 

 

私は膨大な記憶の中から今に戻る。

私の造った世界。

私のわがままで造った世界。

そして、この惨状に帰る。

この現実に帰る。

ほむらちゃんも杏子ちゃんもさやかちゃんもみんなみんな限界だ。

ワルプルギスの夜はやっぱりそこにいて。

私達が絶体絶命の状況は変わらない。

やっぱりどうしようもない。

確かに私はみんなの隣にいたいけど、みんなが死んじゃったらどうしようもない。

やっぱりここは私がもう一度神様になるしかない。

それしかない。みんなの為なら過ちをもう一度犯してもかまわない。

しかし、そのはずなのに、足が震えて、声がふるえて、何もできない。声を出すことも、立つこともできない。

私はもう一度あの一人ぼっちの世界に行くことが怖い。

とても、怖い。

怖くてしかたがない。

ああ、どうしたらいいの?

 

ワルプルギスの夜がまた使い魔を生み出す。

 

―――魔女とか魔法少女とかそんなよくわからないものは全部僕がなんとかしてみせる

 

彼の言葉を思い出す。

 

使い魔が私達を襲う。

 

ああ、キュー君。

 

助けて、キュー君!

 

私は、彼の名前を必死に叫ぶ。

助けを求め

救いを求める。

 

―――君を苦しめるもの全部僕がなんとかしてみせる。

 

誰より強くて優しい彼の言葉が反復される。

 

襲い来る使い魔から必死に私はほむらちゃん達を庇う。

 

お願い、お願いだから私との約束を守って!

 

―――もう一度だけ、僕と一緒に頑張ってみないかい?

 

「キュー君!!!!!」

 

「ヴァロットラマギカエドゥーインフィニータ!」

 

マミさんの声が響いた。

そして、力強い黄色い光が辺りを照らす。

襲い来る多くの使い魔が一瞬で消滅する。

気づけばワルプルギスの夜に立ち向かう魔法少女が三人。

それは、マミさん、白犬さん、黒犬さん。

 

「まどか!」

 

少年のような声が辺りに響く。

私は振り返る。

 

そこにいたのは身体を震わせて必死に立ち上がるキュウべぇの姿がいた。

 

いや、それは正真正銘あの日あの場所で私と約束を交わしたあの少年だった。

 

十年以上私の約束を守るために頑張ってくれた。

おそらく彼は何も覚えていない。

でも、それでも、彼は私の約束を守るためにここまできてくれた。

この世界を必死に生きてくれた。

 

私を信じて、運命を信じて、彼自身の思いの強さを信じてここに立ってくれている。

「お願いだ!まどか!後はこの僕に任せてくれないかい。僕を信じて君の命を、魂を預けてくれないかい?」

 

信じるに決まっているよ。あなたを信じられないわけない。ついに、この時がきたのね。

お願い、見せて。あなたが一体どうやって私達を救ってみせてくれるのか。

 

どうやって、魔法少女のシステムを根こそぎぶっ壊してくれるのか。

 

「絶対に君を魔女になんてさせない。魔法少女のままになんてさせない!必ず僕達がみんなをもとの少女に戻してみせる。誰一人泣くこともなく、みんな笑顔で帰してみせる、誰一人欠けることなく。日常に帰してみせる。非日常を終わらせてみせる。だから!僕を信じて魔法少女になってくれ!」

 

魔女や魔法少女なんていうよくわからないものは全部あなたに任せるよ。

私達を苦しめるもの全部あなたに任せるよ。

だから、お願い。

なんとかして。

このどうしようもない私達の運命をなんとかして。

「信じるよ。ずっと、信じていたよ。私との約束を守ってくれるってずっと、ずっと信じていたよ。お願い、教えてキュー君。私は一体あなたになんて願えばいいの?」

キュー君は神妙に頷き、口を開く。

 

「僕達全てのインキュベーターに君達のような強い感情を与えてくれ。」

 

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