第三十四話 僕達の物語の終わり
君達に僕の物語の最後を知ってほしい。
僕の物語の終わり。
僕達の長い長い物語の終わり。
僕達の結末を。
僕達インキューベーターとしての最後を。
まぁ、そんなこと知りたくもないだろうけど。
それでも、ここが彼女達との区切りなら、
そして僕の区切りとなるのなら、やっぱり、ここまで話したものとしての、最後の責任ってやつを果たしておかないといけないと思うんだ。
だから、聞いてくれ
僕達のハッピーエンドを。
あの凄まじい戦いから一日しか経っていないというのにこの見滝原町は何もなかったように機能している。
いや、そういえば、何もなかったのだ。
この街に住む人々は昨日、何事もなくいつもと同じ日常を暮らしていた。
そういうことになっている。
昨日あんな、戦いが起こっていたことは誰も知らない。
誰も覚えていない。
それは、この街を必死に守った彼女達ですら。
しかし、事後報告というやつかな?
この事態の、
この世界の少女全て巻き込んだ一連の事件どころか、歴史の落としどころというのをちゃんと説明させてもらいたい。
僕達がこれから、一体どのように責任を取るのかも、まぁ、ついでに聞いてくれるとありがたいなぁ。
まず結論から言わせてもらえれば僕達の起こしたこと、生み出してしまった、悲劇、絶望、魔女や魔法少女といったあれこれをなかった事にはしていない。
もちろん、彼らの記憶からは全て消去させてもらったが、仮にこの世界が物語として、その筋書きを変えるようなことはしていない。
みんなが覚えていないというだけで、しっかりとこの世界では起こっている。
例えば、昨日のワルプルギスの夜戦で、破壊された街、建物や、負傷者、その全てを僕達の祈りの力で、全て修復したのだ。
昨日確かにこの街で大戦は起きたが、その証拠はない。
その記憶はない。
そういうことさ。
まぁ、誰も気がつかないのだから、それは、この街に住んでいる人達から見れば、それはなかったことになったというわけだね。
つまり、僕達は魔女が破損させた器物、及び傷つけた人々、奪った人達を全て元通りにした。
奪われて物達と奪われた者達を全て奪われなかった事にしたのさ。
確かに魔女はそこにいたけれど、何も奪わなかった。
そういうことにしたのさ。
なぜ、こんなまわりくどい真似をしているかというと、それはやはり、先人の苦労して作り上げた財産を壊してはいけないと、なくしてはいけないと思ったからだ。
もし、例えば、僕達がこの星に来ること自体、魔女とか魔法少女とか、その血塗られた歴史を全部、なかったことにしたとしよう。
そう、願ったとしよう。
しかしそうなると、この星の人類は未だに洞穴で生活することになってしまう。
この発展した町。
発展した科学力。
それらは、先人の魔法少女達が血を流し、涙を流し、絶望してでも作り上げた財産なのだ。
勿論、その先人の魔法少女となり、魔女となってしまった少女達の責任も取らしてもらう。
その先人の願いと苦労をなかった事にしないように、血と涙そして想いを無駄にしないようにしたかった。
それは、この人類が傷つきながらも勝ち取った財産なのだ。
決して、マミ達が洞穴でうほうほ言っているのが、我慢できないとかそういう私情は一切、全くございません。
さっき話しに出てきた先人の魔法少女、初代から今までの魔女になってしまった彼女達は今この世界に人間として生きている。
あの戦いの日僕達は願った。
『全ての魔女を魔女を魔法少女にもどして』
そう、あの日この世界の魔女は全て、魔法少女になったのだ。
そして、
『全ての魔法少女をもとの少女にもどして』
そして、全ての魔法少女は
ただの、
普通の、
一般の、
少女となったのだ。
ソウルジェムなんて持っていない。
穢れなんて気にする必要もなく
グリーフシードも必要ない。
何度、泣いても、
何度、絶望しても、彼女達は彼女だ。
そして、僕達の作ってしまった悲しい、腐った世界でも、それでも、魔法少女だからこそ生計をたてていた少女もいる。
そんな少女の為にも、魔法少女達には、これから生きていく為に必要なものはこちらで用意させてもらった。
願いのせいや、魔法少女だからという理由で離れていってしまった人達はもちろん。
魔法少女になる前からいなくなってしまった必要な人も、彼女達のそばにいてもらった。
例えば、マミは魔法少女になる前に両親を亡くし、彼女の願いはそこからの救いだったけれど、
それでも、
やっぱり、ただの少女ならば、
ごく普通の少女ならば、
やはり、両親というのものは必要不可欠なのだ。
母親と父親からたくさん愛を教えてもらって、
たくさん人生を教えてもらう。
それが、もとある形なんだ。
そういったあれこれをこちらで用意させてもらった。
アフターケアというやつだ。
慰謝料ともいうかもしれないけれど。
まあ、でも、今までの記憶のない彼女達からすれば、これは当たり前なことなんだけどね。
普通に笑って、
家族と笑って、
友達と笑って、
そういったものを夢見た少女達は今それが当たり前のものになったのだ。
当たり前のものとして、その傍らにあるのだ。
なんか、そうなると、僕も嬉しい気持ちになってしまう。
ついつい、微笑んでしまう。
彼女達は今日も、
普通に遊んで、
普通におしゃべりして、
笑ったり
泣いたり
怒ったり
時に喧嘩なんかもして
それで、最後は仲直り。
誰かを好きになって、
誰かを嫌いになる。
恋が始まるものもいれば
恋が終わるものもいるだろう。
そんな生活を当たり前に暮らしてくれている。
それが、幸せなことだと感じる暇もなく。
ああ、これが、君達の守ったものなんだね。
ああ、これが、君達の勝ち取ったものなんだね。
おっと、話がずれてしまった。
しかし、先人の魔法少女達は大変申し訳ない限りなのだけど、さすがにその家族までも一緒というわけにもいかなかったのだ。
さすがにこの世界の人口がどうにかなってしまう。
この世界の因果が狂ってしまう。
しかし、それでも彼女達にはこの世界で生きてほしかった。
彼女達の人生はどれも波乱万丈だったのだ。
みんな、最後は絶望してしまった。
だから
だからこそ、この世界でそんなこと帳消しにできるくらい幸せになってほしい。
それは、僕達の勝手な
身勝手な願いだけど。
ただのわがままなのだけど。
彼女達には申し訳ないけれど、もう少しだけ僕達のわがままに付き合ってほしい。
彼女達の記憶も消去している、
どころか、彼女達が魔法少女になる前の記憶もない。
彼女達の記憶はほとんどない。
記憶喪失同然だ。
自分が誰かも、
家族の記憶も、
故郷も、今までどうやって生きてきたかも、
名前や言語、生活に必要な最低限以外の全ての記憶がない。
そんな、辛い運命を背負わせて、本当に申し訳ない。
それでも、彼女達が生きていけるように。
笑顔で生きていけるように。
彼女達はゼロ世代として、この世界で生きてもらう。
ゼロ世代とは、この世界で、いつのまにか、現れた存在として、国全体で保護をうける少女たちだ。
僕達の願いで起きた矛盾を国全体で保護してもらえるように僕達が作った政策だ。
全国各国で、突然現れた少女。
その全てが10~15くらいの少女だ。
その少女の生活保護、
その、ゼロ世代専用の教育機関。
そのほか日用品の支給や生活費として現金支給。
その、少女たちのほとんどが女子寮みたいな、専用のマンションで暮らしてもらった。
この見滝原市見滝原町にはワルプルギスの夜が上陸しこともあって、1200人以上ものゼロ世代の少女がいる。
見滝原中学の隣に、ゼロ世代専用の教育機関を立てさせてもらった。
言語以外のほぼ全ての記憶を有していない少女達の集まりだ。
なんでも、ひらがなとか足し算引き算レベルで苦労しているとか。
それでも、どの学校よりも楽しそうな笑い声が聞こえてくるそうだ。
もしかしたら、マミたちと友達になっているかもしれない。学校も近いし、もしかしたら部活とかなら合同でするかもしれないな。
そうだったらいいなぁ。
しかし、ジャンヌとか卑弥呼などのような有名な偉人も魔法少女になっており、当然ゼロ世代としてどこかに暮らしている。というかこの街にいるんだけどね。彼女達が同じクラスで勉強していると思うとちょっと覗いてみたい気もする。
僕達のせいで、色んな重荷を背負わせてしまったけど、僕達のせいで色々苦労すこともあるだろうけど、
それでも
幸せな人生を送ってくれることを心より願って。
そうそう、忘れちゃいけないのが、他の世界。
ほむらが気づかせてくれた並行世界の存在。
それらの世界でも、僕達の願いでこの世界とほぼ同じ措置をとらせてもらった。
勿論、全ての世界線の僕達にも感情を与えた。
それはもう大変なことだった。
収集をつけるのに苦労した。
僕達狂って死亡者数最高記録、70億中68億。
危うく滅んでしまいそうだった世界も少なくなかった。
まぁ、自業自得なんだけどね。
他の世界の僕達もこの世界の僕達も今はアフターケアで手一杯だ。
でも、これで魔法少女も魔女も超常的なものは全ての世界から消えた。
これで、全ての魔法少女はただの少女となり、日常を取り戻したのだ。
今のこの世界は、まあ、こんな感じで回っている。
この世界と僕達の関係はほぼない。
そうなった。
でも、これが本来あるべき形なんだ。
もともと少女と僕達の関係なんてものはこうあるべきだったんだ。
そして、僕と一緒に戦ってくれた元魔法少女達。
僕の最高の仲間達。
最強最高の少女達。
彼女達のその生活を
この改変された世界で、一体どのように暮らしているかを。
それを説明したら、僕は行くとしようかな。
と言っても、実際僕が見てきたわけではなく、この世界の情報を読み取っているだけどなんだけどね。
美国……うわっと、白犬だったね。
あぶない、あぶない。
白犬の父、まあ、彼らの名前はどうしても伏せなければならないので、ここは、白犬議員としておこうかな?
白犬議員は汚職を押し付けられることもなく今も選挙活動に勤しんでいる。
まあ、もともと正義感の強い、間違ったことの嫌いな真っ当な議員。汚職でも押し付けられない限り、経費などの搾取、不正行為なんて起こすような人ではなかった。
だから、警察からの追求を恐れて首を吊って自殺なんてすることもなく、時々一人娘と一緒に演説をしたりするそうだ。
そして、白犬自身もまた、父の仕事を手伝いつつ、最近は友達ともよく遊んだりして、その美しい顔を笑顔でさらに輝かせているという。
そして、白犬のとなりにはいつも黒い少女がいた。
呉、おっと、黒犬である。
いつも何も興味をもてなかった彼女ではあるが、白犬と出会い少しずつではあるが、色々なもの興味をみつけだし、クラスの少女達とも、仲良くできているとか。
白犬を生徒会長でもなく、議員の娘でも、容姿端麗だからでもなく、成績優秀、スポーツ万能でもなく、白犬自身を強く見つめている黒犬に一番心を開いているようで、
なんというか、いいコンビという噂。
付き合っているよう噂はデマであると願いたいばかりだけどね。
佐倉杏子。彼女の父親は宗教の宣教師。
いわゆる、牧師さんである。
一時期は、彼の言葉が世界にも取り上げられ、世界を救う男と騒がれたほど有名になったこともあるが、そのブームも去ってしまったようで、今はその時稼いだお金を元手に新たな宗教を広めようとしているらしい。
家族にはまともに働け、とよく怒られてるらしいけど。
そして佐倉家の家計をゆっくりとしかし確実に蝕み脅かしている食欲旺盛な暴食娘、杏子とモモ。この二人に両親は脅威をいだき始めているとか。
まあそれでも普通に学校に通う、見滝原中学2年生。
ごく普通の女子中学生。
普通と言えない所があるとすれば、
学校では大食いチャンピオンとして名を馳せている事かな。
まあ、同じクラスのまどか、さやか、ほむら、先輩のマミと楽しそうに今日も食べ歩きをしているようだ。
美樹さやか。
彼女は最近、幼馴染であり、初恋でもある、上条恭介をめぐって志筑仁美と全面抗争を繰り広げ、長い抗争の末、敗れたとか。
敗因は上条恭介の初恋が志筑仁美だったから。
失恋に落ち込んだ彼女をお節介な親友達と先輩はほっとくわけもなく、最近は新たに恋を見つけたご様子のさやか。
なんか、杏子と最近異常に仲がよくなったとか。
杏子の初めてを奪ったのはさやかだ、という噂は、マジで本気で噂であってほしい。
普通の女子中学生と違うところがあるとすれば2大百合魔神として名を馳せていることくらいか。
巴マミ。
ドライブ中に交通事故なんて起こることもなく、両親と幸せに暮らしている。
学校でも、よき友人と後輩に囲まれ幸せな日々を送っている。よき先輩としてみんなに慕われている。
その、巨乳と容姿で学校中の男子に人気があるとか。
一部の男子にはおねぇさんになってほしいという声もよく聞くという。
やばい、今から見滝原中学校の全男子中学生を虐殺してこないと!
一部の男子には特に念入りに!
最近の悩みと言えば親馬鹿である父親とその加齢臭。
あとは、大切な後輩4人の百合疑惑がかなり本気で無視できない状況にあることだとか。
暁美ほむら。
あれ?情報がない?
鹿目まどか。も?
これは一体どういうことなのだろうか?
世界の情報なんだけど?
まあ、でもさっき話も出てきたとおり、きっと幸せに暮らしていることだろう。
時々でてきた百合疑惑はとても心配ではあるが。
ねぇ、ほむら?もしかして君が2大百合魔神のもうひとりってことじゃあないよね?
はぁ、まあ、もしかしなくても君なんだろうけどね。
まどかは大丈夫かな?
君は普通の日常を送れているのだろうか?
変態に付きまとわれたりされていないかい?
君のすぐ傍らに手のつけられない変態がいることに君はちゃんと気づいているだろうか?
まぁ、それでも、
みんな幸せそうに
笑顔に
時に泣いたり怒ったりしながら。
しかし楽しそうな。
そんな日常を謳歌しているようでよかった。
これが、君達の本当の人生。
これが、君達が本来歩むべき人生。
そして、これからも続く君達の大切な人生。
みんな頑張ってね。
それじゃあ、僕もそろそろ行くとしようか。
これで、本当にお別れだ。
僕はこの世界の情報の渦から、出て、僕達のもとへ。
僕達インキュベーターは感情を得たことで僕達の発明した感情エネルギー変換装置を使用できるようになった。希望のエネルギーで願いを叶え、絶望のエネルギーで宇宙の動力源としていたこのシステムの中に今度は僕達が身を置き、永遠にこの宇宙を維持していく。
それが、行く行くはこの星の人達の為にもなるのだから。
僕達はこの願いで、存在を一段階シフトし、宇宙の永遠のエネルギーとして僕達の命を使っていこうと思う。
僕達の感情を希望から絶望の総転換を繰り返し、放出されるエネルギーを宇宙のものへと変換し、この宇宙を永遠に保っていこう。
それが、僕達の責任。
それが、僕達のたどり着いた結末。
僕達は一生絶望しながら生きていくのだ。
僕達は偽りの希望を抱き、その希望は奪われ、絶望をする。
それを繰り返す
そんな人生を繰り返す。
でも、間違ってもかわいそうだなんて思ってはいけないよ。
僕達はそんなものを受ける資格すらないんだからね。
ざまあみろ、とそんなふうに思ってくれたら最高だ。
それが、お前らが上位種だと勝手にほざいてやってきたことなんだと、そう思ってほしい。
今思えば上位種なんて片腹痛い。
滑稽だ。
そう、これは滑稽な物語だったのさ。
「やあ、僕達。」
『やあ、僕。気は済んだかい?』
「ああ。もう行こう」
『その前に、君にお客さんが来ているよ。遥々地球から幽体でやってきてくれた少女が』
は?
そ、そんなバカな!?
『ほら、あそこで待っている』
僕達が指差した先。そこにいたのは。
「まどか、ほむら……。どうして君たちが?」