「まどか、ほむら。ど、どうして、君達が?
いや、そもそも、ありえない。
ありえないことだろう。
いくらなんでも。だって、君達は普通の少女のはずだろう?そんな、魔法少女みたいな奇跡を起こせるはずない!
そもそも、君達は何も憶えているはずがない!
僕の手でなかったことにしたはずだ!
君達はわからないはずだ!
何もかもわからなくなっているはずだ!
僕のことも、
僕達インキュベーターの事も
魔法少女の事も!」
「憶えていないわけがないよ。わからないわけない」
まどかが一言そういった。
「私達の幾千幾万の魂の記憶をなくせるわけがない」
ほむらが一言そういった。
一体何が起こっている?
どういうことなんだ?
わからない。
彼女達は一体何を言っているんだ?
説明がつかない。
明らかに法則を無視している。
理にかなっていない。
常軌を逸している。
魔法少女は条理を覆す存在ではあるが。
ただの少女にそんなことがありえるのか?
否。ありえない。
ありえるわけがない。
日常に生きるものが、
非日常の力がそなわるわけがない。
それとも僕は何か間違っていたのか?
僕は一体どんな間違いを犯した?
彼女達に一体何が起きているんだ?
「ほむらちゃんは成績優秀、スポーツ万能、何でもできちゃうスーパー美少女なところを除けば確かに普通の少女ではあるけれど」
「まどかはその可愛さから、見る人全てを狂わせるほどの困った天使ちゃんなところを除けば確かに普通の少女ではあるけれど」
「ほむらちゃんの魂は
「まどかの魂は
「「普通の少女のものではない」」
「た、確かに、ほむらは魔法少女の時、その能力故に、その願い故に幾千幾万の時間を過ごし、その記憶を魂に刻みつけたとしても、その魂が、その過ぎ去った時間により、進化したとしても、ほぼありえないことだけど、それでも、無理やり、そんな理由をこじつけたとしよう」
「しかし、まどかは一体どうしてこんな所にいるんだい!?」
「ありえない事だろう?まどかは確かに常人では考えられないほどの因果絡み付いていた。確かに常人では考えられない魔力を宿していたけれど、それでも、それで彼女の魂が進化するとは思えない。たった一度の人生で、魂に記憶を刻みこむなんて考えられない!」
「それは、確かに私も驚いたわ」
ほむらが突然神妙な顔をして頷く。
「私もついさっき知ったのよ。
しかし、私はその時納得したわね。まどかがどうしてこんなに可愛くてしょうがないのか、もうそのレベルは天使を超えて女神ね、と最近よく思っていたのよ。まさか、本当に神様だったとは」
「な、何を言っているんだい?わけがわからないよ?」
「インキュベーターさん、だからお願い、彼の前世の記憶を蘇らせてほしいの」
『勿論、恩人である君達の頼みなら何でもオーケーさ。彼の人間だった時の記憶を呼び起こせばいいのかな?』
「うん、お願い」
『この、インキュベーターの人間だった頃の記憶を呼び起こせ』
驚愕!僕は人間だった!いやあ、そんな話は確かに出てきたけど、それと、この状況に何か関係があるのだろうか?
鮮明に記憶が蘇っていく。
それは、思い出してはいけない事だった。
それを、思い出した事でどうにもなることはないのだから。
僕が君達の隣に帰れることなんて事はありはしないのだから。僕が君達と笑って帰るなんて事できるわけないんだから。
ただ、その記憶は僕の心をかき乱し、えぐることしかない。
ただ、僕は後悔するだけ。
ただ、絶望するだけしかないのだから。
そんな事に意味は無いじゃあないか。
でも、そんな事、彼女達が知る由もなくて、
僕が知っているわけもなかった。
そして、完全に記憶を取り戻した。
確かに、まどかなら、元神様である、彼女ならば、何が起こっても不思議ではない。
その魂も、普通の少女とは言えないだろう。
進化の一つをしていても何の不思議もない。
そうなると、やはり驚愕するべきはほむらなのだろう。
ただの少女でありながら、彼女の歩んできた人生はそんな簡単に忘れられるほど甘いものではなかったのだ。
彼女の魂の記憶、魂の傷、トラウマと言ってもいい。
それを忘れることができない。それは、もしかしたら辛いことなのかもしれない。
いや、辛いはずなのだ。
だって、僕はこんなにも辛いのだから。
忘れていたほうが、
思い出さないでいたほうが、ずっと楽だった。
何の後悔もなく、穏やかに、君達の笑った顔を見て幸せにいけるはずだった。
そのはずだったのに。
涙が溢れ出る。
それは、嬉しいとか、ここまでこれた歓喜の涙でも報われた感動の涙ではなかった。
ただ、純粋に辛かった。
苦しかった。
惨めだった、恥ずかしかった。悔しかった。
「これで、帰れるね。これで、君も帰っていいことがわかったね。さあ、帰ろう。君も、笑ってもいいんだよ。泣いたっていいんだよ。私達と一緒に」
まどかの純粋な笑顔。彼女に悪意なんてこれっぽちもない。それはそうだ、僕の為にこんな所まで来てくれたのだから。
「早くしなさい。マミさんも、言っていたわよ、誰か大切な人がいない気がする。いつも、隣にいてくれた誰かがいない気がするって。べ、別に、私はあなたの為とかではなく、大切な先輩や親友がうるさいから来ただけで……」
ほむらは顔を真っ赤にしながら、視線が泳いでいる。
「ふふ、素直じゃあないなぁ、ほむらちゃんは。幽体でばったり逢ったとき、一番最初に提案したの、ほむらちゃんじゃない。あいつを迎いにいけるんじゃあないかって」
「ま、まどか!それは秘密だって言ったのに!」
微笑ましい光景。
幸せそうな少女達。
はは、こんな事があるんだね。
まったくの善意。
誰かの事を一心に考え
その人の為に頑張り
優しい言葉をかける。
なるほど、それはすばらしいことだ。
きっと、大部分の人はそれで救われるのだろう。
僕が今までそうしてきたように。
はは、お笑い種だよ、本当に。
誰よりもそうしてきたはずの僕が、そんな、想いを、言葉を受けて。
絶望する日が来るなんてね。
「「これで、帰れるね」」
全く悪意のない、純粋で
神々しさすら感じる
そんな、満面な笑顔。
手をさし伸ばす二人。
ああ、こんなものが
こんな、真っ黒で醜いものが
僕の心の中にはあったのか。
「ああ、これで、僕は僕達と一緒に行くことはできなくなったね」
二人の笑顔は広がる。
やったぁ!って今にも叫びそうな、そんな期待に胸を躍らせている。そんな、希望のつまった笑顔。
「だから、君達に最後にお願いしたい事があるんだ」
「「?」」
純真な瞳。何のこと全くわからない。そんな顔をする二人。
やめろ
やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ!
そんなことをするのはやめろ!
彼女達が幸せならそれでいいだろう?
そう、思ってきたはずだろう?
誰よりもその子達が笑顔でいることを僕は望んでいたはずだろう?
だったら、それを壊すような真似はやめろ!
それを、台無しにするような!
大切なもの全てを壊してしまうような事はやめろ!
死ぬならだれもいない所で一人で勝手に死ね!そんな重荷を彼女達に背負わせるな!
僕のそんな想いとは裏腹に僕自身はやってしまう。
やってしまった。
「僕のソウルジェムを君達で壊してほしいんだ」
黒く濁ってしまったソウルジェムを
差し伸べられた二人の手のひらの上にそっと置く。
「「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」
今までの希望に詰まった笑顔は
一瞬にして絶望にそまった泣き顔となった。
でも、大丈夫だよ。
君達はいくら絶望しても大丈夫だよ。
だって、君達は普通の少女なんだから。
ソウルジェムなんてないんだから。
君達には帰るところがあるんだから。
「ソウルジェムが濁りきれば、僕は魔女になる。そんな危険なものが君達の側にいたら大変なことだろう?
生きていれば、いつかは必ず絶望する日がくるんだ。
それは、君達もよく知っているだろう?
僕は非日常の存在だ。
僕は日常にあっちゃあダメなんだよ。
だからさ、
それを壊して、
君達はみんな所に帰るんだ。
僕が決して帰ることのできない日常へ」
もう、やめてくれ、
ああ、情けない。
「忘れていた、
忘却していた、
考えないようにしていた。
見えないふりをしていた。
あなた達が、どんな方法で、私達を日常に帰してくれていたことを」
まどかは絶望の底で呟く。
「またなの?また、こんなことが。こんなものが私達の、希望を壊していくの?
どうして?
どうしてあなたがそれを背負うの?
それは、私達が背負ってきたことじゃない」
ほむらは希望なんて欠片もなく呟く。
しかし、彼女達はどれほど絶望していても
どれほど希望なんかなくても
魔女になったりしない。
「「それじゃあ、私達のした事って、
そんな、私達の想いが、
ただ、あなたを傷つけただけ?
あなたを思って。
あなたの幸せを願って。
あなたが側にいてほしい。
そんな想いが、
ただ、あなたを絶望に陥れただけ?
私達は一体どれほど残酷なことをしまったの?
私達はどれだけ酷くて惨いことをしでかしてしまったの?」」
まどかとほむらの今にも死んでしまいそうな表情を見て僕は我に帰る。
な、何を……
何をやっているんだぁ!
僕は一体何をやっている!
こんな事彼女達は知らなくてよかったのに!
知る必要なんてなかったのに!
本当に情けない。
こんなことをしでかしてまったのは、
僕は羨ましいと思ってしまったんだ。
―――だったら、僕がなんとかしてあげよう
人間の記憶を思い出して、
人間の心を思い出して
―――だから、僕がいるよ。僕が必ずなんとかしてみせる
帰りたいと思ってしまったんだ。
人間であるのなら、
人間の心であるのなら
もしも、人間の姿でいれたなら
それなら、
もしかしたら、マミと一緒にいられたんじゃあないか?
そんな事を考えてしまったんだ。
そんな事あるわけないのに。
―――魔女とか魔法少女とかそんなよくわからないもの
全部なんとかしてみせる。
そして、後悔してしまった。
願った事を。
自分自身のソウルジェムを生み出してしまった事を。
取り返しのつかない事をしてしまった、と
そう、思ってしまったんだ
―――そんなシステムは僕が根こそぎぶっ壊して見せる
ああ、恥ずかしい。
こんな矮小なものが僕の真実だった。
彼女達の幸せを妬ましいと思い。
自分の覚悟をもってした行動に、後悔を抱く。
そんなちっぽけなものが僕の正体。
―――もう一度だけ、僕と一緒にがんばってみないかい?
本当にいやになる。こんな自分にうんざりする。
ああ、もうやめよう。
こんな矮小で醜い自分を曝け出すのはやめよう。
恥ずかしさと後悔と絶望で、魔女になってしまわないうちに、早く自分でかたをつけないと。
僕は自分のソウルジェムを握り締める。
彼女達にこんな重荷を背負わせちゃいけない。
「ごめん、ごめんね、これは僕のしたことで、自業自得なことで、僕の望んだことなんだ。本当にごめん。どうかしていた。
こんな。
こんな君達を責めたてるような事してごめんね。
君達はなんにも悪くないのに。
あとは自分でするから」
僕の格好をつけた事
僕の格好をつけるために頑張った事全部台無しにしちゃったなあ。
僕のやったこと全部壊しちゃったなぁ。
でも、こんな格好悪い、
醜い自分をさらしてしまった僕だけれど、
もう、遅いかもしれないけれど、
最後に少しだけ格好をつけさしてくれ。
「神様、本当によかった。もとのまどかに戻れて本当によかった。みんな笑って君も笑って、日常に帰れてよかった。
僕はここで、いなくなっちゃうけど。
まあ、僕は人間じゃあないから
インキュベーターだから
僕の事なんて気にしなくていいから、僕を数にいれなくていいから。
僕の事なんてすぐに忘れて、
今度はみんなでうまくやっていきなよ」
僕は力をこめる。
自分のソウルジェムを破壊するために。
「「やめてぇぇぇぇ!」」
彼女達の悲痛な叫び声が悲しく響く。
『本当に君は馬鹿だなぁ』
と、そんな空気を読まない言葉が響いた。
僕と少女二人は固まる。
突然の僕達インキュベーターの言葉が空気を凍結させた。
空気を壊したともいう。
「は?」
少し、間を置き、僕はそんな素っ頓狂な声しかだせない。
『いや、だから、君は大馬鹿だなぁ、と思ってね』
「確かに、僕は馬鹿だけど、君達に言われたくないよ。僕は今から自分で全て終わらすんだから、邪魔しないでくれ。君達まで、僕を止める理由はないだろう?」
『自分で全て終わらせる?こんな少女達を泣かせてまで終わらせなくてはいけないことがあるって言うのかい?いや、そんなものはありはしない。彼女達が泣いてしまうなら、この物語の終わりだってなかったことにしてあげるよ』
「な、何を?君達は一体何を言っている?」
『簡単な事さ、願いで君に人間の肉体を与えて、君達と一緒に日常に帰ってもらうのさ』
「そんな、馬鹿な!?だって、この願いは、僕達インキュベーター自身の欲望の為には使わないって、そう決めただろう?僕だけ例外なんてそんなの、他のみんなに示しがつかないじゃないか」
『だから、君は馬鹿だと言っているんだよ。君が僕達と同じインキュベーター?馬鹿言っちゃあいけない。君はどっからどう見ても人間だよ。だから君が僕達と一緒に責任をとる必要なんてないさ。僕達と一緒に絶望の連鎖の世界に行く必要はないんだよ。』
涙が溢れる。今度はさっきのようなみっともない涙とは違う。
「ありがとう、本当に、ありがとうございます、インキュベーターさん」
まどかが大泣きしながら言う。
「あなた達、最高よ。グッジョブとしか言いようがないわ」
ほむらは泣きながら、キャラ崩壊なことを言っている。
『君達も、僕達にお礼なんて言っちゃあいけないよ。僕達は君達を苦しませてきたんだ。特に君達にはね。本当にすまなかった。そして、ありがとう。僕達に感情を与えてくれて、今思えばぞっとするよ。君達が気づかせてくれなければ、僕達はきっと永遠に君達を苦しませ続け、きっと滅ぼしてしまっていただろう。それでも、何も感じないで、罪の意識も、罪悪感を抱くことはできなかっただろう。本当にお礼を言わなきゃいけないのはこっちのセリフさ』
「それでも、私達はあなた達に救ってもらったんです。ちゃんと責任をとってくれたんです」
『はは、君は変わっているね』
「よく言われます」
「僕はお礼ぐらい言ってもいいだろう?」
『いいや、ダメだね』
「何故だい?」
『今僕達がこうしていられるのは、君が頑張ってくれたからさ。君は気づいていなかったのかい?僕達は君にどうやって恩返しするべきか悩みまくっていたんだよ』
「そりゃあ、初耳だね」
『でも、これで、その悩みからも開放されるかな?まだたりないくらいだけど。そうだ、君の身体にサービスしておこうか?超天才頭脳だとか世界チャンピオンになれるくらい強くするとか?』
「いや、普通でいいよ。劇的な事も、非日常な事も現実を超えるなんて事もこりごりさ。僕は、普通で、一般的で、平凡で、日常的で、
それで、みんなと一緒にいられたらそれでいい。
それが、何より望んだ願いで
何より僕の希望だからね」
『はは、確かにね。じゃあ、君の身体は生前の君の肉体そのままでいいね。君はゼロ世代として生きてもらうよ。君が生きていく為のあれこれはこちらが設定しておくとしよう。それじゃあ、僕達はもう行くね』
「……ああ」
「……うん」
「……ええ」
『君達は本当に変わっているなぁ。そんな顔しないでくれよ。確かに、僕達は責任を取るために、絶望の世界に身をおくことを選んだけれど、それでも、僕達の当初の願いである宇宙のエネルギー保持は叶うんだ。しかも、永遠に。これは、僕達にとっても、最高で幸せな結末なんだよ。
君達の作り出してくれたこの結末は
本当に
僕達すらも含めた
全てのものが幸せになる
本当のハッピーエンドなのさ』
『最後は意味ありげなことを言って去るとしようかな。
確かに君達の物語はここで一区切りつくのかもしれない。君達の歩んできた劇的な物語の終点は確かにここなのだろう。しかし、君達の、人生の、じゃあない。君達はこれからも生きていくんだよ。君達の劇的な物語じゃあない。君達の人生という名の日常的な物語は君達は生きていく限り続いていくんだよ。死ぬまで、結末なんてわからない。死んでも、きっと君達の物語は終わらない。そんな、長い長い、嫌になるほど長ったらしい、しかし、飽きることもない、そんな物語はこれからも続いていくんだよ。気が遠くなるほどね。だから、焦るな。希望を簡単に捨てるな。一つの絶望なんて気にするな。失敗を数えるな。焦らず止まらず、ゆっくり君達の長い人生を楽しめ。決して一人で、ではなく、みんなでね』
「それでは~!転校生を紹介しまぁす!」
「ゼロ世代で初めての一般中学に転校してきた、白い髪に赤い瞳!美少女だと思いきや、男子!今流行りの男の娘!あれ?ごめん、君、名前は?」
「キューです」
「それだけ?ミドルネームとかは?」
「忘れました」
「うえ!?自分の名前わすれるかぁ!?」
「すいません、何分、何百年ぶりなもので」
「ついでに、痛い系電波君ときたぁ!
キュー君でぇす!」
この担任、若干うざいなぁと思いつつ。
僕は壇上に立っている。
この肉体は生前の僕の身体そのままで、自分はどこの国で生まれたかは忘れたけれど、そういえばよく、女子に間違えられていたような。しまった。もう少し男らしくしてもらえばよかったかな。
「かぁわぁいぃいぃ!」
「すっごい、本当に女の子みたい!」
「お人形さんみたい!かわいい」
主に女子が騒いでらっしゃる。
「やべぇ!超可愛くねぇ!」
「俺の彼女になってくんねぇかなぁ」
おい!今恐ろしいことほざいた男子どこいった!?僕は君に一生近づかないからな!
しかし、本来ゼロ世代は専用の教育機関があり、記憶もほとんどないはずだけど、インキュベーター達が気を回してくれたみたいだね。
僕は見滝原中学校に転校してきた。
しかも、学年は3年生。
ということは、当然彼女もいる。
僕は、つかつかと彼女のもとへと歩いていく。
まだ、自分の席も指定されたわけでもないけれど。
みんな、僕を唖然と見ている。そんなことは気にならない。
君の事しか考えられない。
ずっと、納得いかない事があったんだ。
告白は君からだった事がね。
忘れてしまったならしかたがない。
今度は僕から。
僕は机に唖然と僕をみつめる巴マミを優しく抱きしめて
「僕は君の事を心底愛しています。
だから、
お願いだから、
僕と付き合ってください。
僕は君を決して一人しないよ。
だから君も僕の側にいてくれ。
僕はこんなにも君が必要だ。
だから君も僕を必要としてくれ。
きっと、辛いことも苦しいことも落ち込むこともあるだろう。
その時は、いくらでも僕がぱいおつを揉みしだいてあげるからさ」
マミからしたら、いきなり転校してきた痴漢男子に、セクハラまがいの告白された形になってしまった。
まあ、それも、僕らしいっちゃあ、らしいから、いいとしよう。
「きゃあ♪いきなり告白!」
「外見に似合わずなんて手が早いの!」
女子勢が喜びの声を上げる。
「「「「「チィッ!」」」」」
よし!舌打ちした男子五人!しっかり顔は覚えた。後で血祭りに行くから覚悟してろよ!
「「俺のおねぇさんが!?」」
最後の男子二人!てめぇら終わったなぁ!虐殺決定ぃ♪
ちゃんと後で住所と名前確認しておくから首洗ってまってろよNA☆
肉体もう少し強くしてもらえばよかったかなあ。
虐殺したかはともかく、無事今日一日の学校生活が終了。
マミにいきなりの告白をかました事後報告をさせてもらえば、
マミはいきなり、泣き出して、それはもうクラス中が大騒ぎ。
僕も焦ったね。
ティロ・フィナーレされるならともかく、いきなりなきだしちゃうなんて!?
しかし、マミは
「なぜ、なの?あなたを、私はずっと、待っていたような気がする。初対面なのに、おかしいなぁ。それでも、
ずっと、隣に、あなたがいなくて」
「寂しかったようぅ!」
そう、僕に抱きついてくれた彼女に、僕は気が狂ってしまうぐらい嬉しかったんだ。
まあ、さらに、クラスは大賑わいになって、はれて僕達は自他共に認める彼氏彼女の関係を築く事ができた。
まずは第一歩かな?
これから、色んなことするって
恋らしい事いっぱいしていくってそう約束したからさ。
さし当たって、まずは、あの日を取り戻すために。
僕とマミはキスをした。
道中、公共の場で。
あの日あの地下で、した事をこれで取り返した。
そう思った。
「きゅ、キュー君!?こ、ここは、こ、公共の場で、そ、その」
顔を真っ赤にするマミ。かわいいなぁ。初心なところが特に!
「これで、あの日は取り戻した」
「何を言っているの?」
「わからなくていいさ。これからは全部、した事がないことで、初めての事ばかりなんだからさ」
「?」
「安心した事といえば、僕の生物学的なあれで、君の生物学的なあれにはなんとか届きそうだ、ということかな?」
「だ、だから!?なんの話をしているの!?」
「わあ!学校で噂になっていたのは本当だったんだ!」
後ろから杏子がそう叫んだ。
「ひゃー。やるねぇ。こんなところでいきなりキスとは!私のマミさんを奪うとは!転校生!飛んだふてぇ野郎だ!」
さやかも
「いきなり、前回ね。全く盛りのインキュベーター、おっと間違えた。盛りの男子は本当に何とかしてほしいわね、ねぇまどか?」
ほむらも
「キュー先輩ぃ!そういうことは、おうちでやりましょう!ベッドの上とかで!」
そして、まどかも
「あああああ、あ、あなた達!?見てたのぉ!?」
「「「「そりゃあ、もう、バッチリぃ!」」」」
「いやぁ~!」
ニヤニヤ顔の後輩4人と
火か出るんじゃあないかというぐらい真っ赤なマミ。
うむ!実にかわいい!
マミが可愛すぎてやばいな、もう、可愛すぎて、かわいい!しか言えなくなりそうだ。
こりゃあ、レパートリーを増やしておかないと♪
落ち込んで、みんなより歩行ペースを遅め、うな垂れるマミ。
後輩共はそんなマミを気にする事もなく。
「なぁ、杏子!私達も負けていられないと思うんだ!」
「な、何言ってんだよぉ!」
「ま、まどか?私達も、その、ベッドの上で、頑張らなくてはいけないと思うの」
「? また、パジャマパーティーする?何故かほむらちゃんとパジャマパーティーするたびに記憶が飛んでしまうのはどうしてなんだろう?」
百合トークをおっぱじめていた。
僕はマミに手を差し出し、
「ほら、行こう。僕達の勝ち取った、日常に」
きっと、マミは僕が何を言っているのか理解していないだろう。
それでも、彼女は満面の笑顔で
「ええ!」
僕の手を取ってくれる。
僕達は手を繋ぎ、歩んでいく。
この道を
この物語を
このどうしようもなく長い
人生という名の日常の物語を。
そうだ、僕達の物語はまだまだ終わらないんだ。
結末なんてわからない。
でも、それでいい。
それがいい。
さあ、はじめよう。
僕達の大切な物語を。
―――第一部・完