魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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第二部 終わりの始まり
第三十六話 みんなと夏祭り (まどか語り部)


夏祭り。

あの戦いからもう一ヶ月になろうとしている。

本当に辛い一ヶ月だった。

本当に長い月日だった。

私も、ほむらちゃんも、マミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんも、そしてキュー君も。

本当に、長い間頑張ってくれた。

私は本当に長い間、遠回りをしてきた。

私は、彼女達に彼に、なんとお礼言ったらいいのかわからない。

 

私が、あの選択をした日から、魔法少女になった日から、神様になって、成り果ててしまってから、気が遠くなってしまうくらい、時がたった。世界が終って、また始まるくらいの本当に、長い長い時が流れてしまったのだ。

それでも、どんなに時が流れても、この思いが風化することはなかった。

みんなにまた会いたい。

みんなとまた一緒にお話していたい。

みんなと笑っていたい。

そんな、叶うはずのない、夢を見続けた。

未練がましく、みんなの過去あったであろう、色々な世界を見渡して、私も、みんなと一緒にいるつもりでいた。

でも、それはどうしようもなく、私の妄想で、幻想でしかなかった。

私はずっと独りぼっちでいたのだ。

そんな真実から目を背けて、みんなの隣にいるつもりでいた。

マミさんの、さやかちゃんの、杏子ちゃん、ほむらちゃんの隣で、ずっと彼女達を応援しているつもりだった。

それでも、ほむらちゃんだけはずっと、ずっと私の事を覚えてくれていて、何度も、何度も私の名前を呼んでくれた。

それが嬉しくてたまらなかった。

なんど、泣きそうになりながら、彼女の名前を呼んだかわからない。

まどか、まどか、と彼女は時に泣きそうなほど悲しそうに、時に嬉しそうに、時に儚げに、呼んでくれた。

私はそのたびに、涙を必死に堪えながら、彼女の触れられない、手を必死に握ろうとして、ほむらちゃん、と、必死に彼女の呼びかけに答えようとした。

はたから見たら、酷く滑稽にうつっていたことだろう。

それでも、私は、彼女に聞こえるはずもない言葉を、彼女に呼びかけ続けた。

がんばって。がんばって。私はここにいるよ。ほむらちゃん、大好きだよ。

そう、繰り返し、彼女の隣で、叫び続けた。

時に懺悔した事もあった。

彼女が膝を抱えて、私の名前を呼びながら、寂しいよ、とそう言った時には、私は大泣きしながら彼女に謝り続けた。彼女の耳に決して届くことはないけれど。

それでも、私は精一杯謝り続けた。

彼女は、とても、優しいから、私が泣きながら、懺悔すればきっと、許してくれる事だろう。

一緒に肩を寄せて、優しく抱きしめてくれる事だろう。

でも、彼女と違う次元にいる私はそんな事はできない。

これは贖罪なのだろう。

彼女に、決して許される事もなく、謝り、許しを請い続ける事が、せめて、私ができる、最後に残された、罪滅ぼしなのだと思った。

彼女と一緒に、彼女の隣で、彼女が泣きやむまで、一緒に泣き腫らした。

ごめんなさい。寂しくさせてごめんなさい。一緒にいてあげられなくてごめんなさい。

あなたはこんなに頑張ってくれたのに、私の勝手な願いのために全部台無しにしてごめんなさい。

彼女達の魔法少女としての人生は終わりを告げた。

みんな一人、一人に最後の別れを言って、そして、私は正真正銘の一人ぼっちになった。

みんないない世界は酷く、色あせた様にように見えた。

それでも、私は、魔法少女の希望の為に、みんなの希望を絶望で終らせない為に、私のできる事を精一杯やった。

そして、魔法少女は終わりを告げて、魔獣は終わりを告げて全ての世界線の人類が終わりを告げた。

ああ、何にでも終わりはあるのかと、そんな当たり前の事に気づかされた。

では、私は何時、終るのだろうか。

 

世界は終わりを告げた。

そのはずだった。

しかし、私は彼に出会った。

終ったはずなのに、出会いはあったのだ。

彼のその人生は、同じ人類を探すというあまりにも辛い人生を歩んでいた。

彼は血の繋がらないたった一人の育ての親と幼少を過ごした。

彼の生みの親は彼が生まれてすぐに死んでしまったからだ。そして、共に生きた最後の老人に彼を託した。

彼の容姿はあまりにも女性的だったので、性別をよく間違えていたようだ。老人がボケていた可能性もあったけれど。

そして、彼が10歳になる頃に、その老人は病に倒れ、最後に、彼に、仲間を探すように言ったのだ。

同じ人類を。人間を。

 

そして、一人ぼっちになった彼は、旅に出た。

ずっと、ただ、一人で同じ人間を探し回っていた。

自分と同じ人間を。

彼は夢に見たことだろう。

知らない誰かと出会い、友となり、隣り合い、笑いあえる。

そんな世界を夢見ていたのではないのだろうか。

女性であったのなら、恋をして、愛を語り合おう。

男性であるのなら、共に人生を語り合い、笑い合おう。

夢を追い求める、彼は希望に満ち溢れていた。

初めての事に、胸を躍らせていた。

まだ見ぬ希望をを求め続け、世界を回り、そして、長い長い年月が経ち、そして、彼は息絶えたのだ。

彼一人しかいない、世界で、自分と同じ、人間を捜し求める人生。

決して叶うことのない、希望を追い求めて。

彼は息絶えたのだ。彼は生まれたときから、彼の夢は叶うことはなかったのだ。

そう決められていたのだ。

それが、あまりにも不憫だった。

まるで、自分自身を見ているかのようだった。

決して隣り合うことのできない世界から一人ぼっちで世界を傍観し続けた、私にそっくりだと思った。

だから、私は彼の願いを叶えてあげたいと思った。

なんなら、彼のその人生の恨み辛み、全部私にぶつけてほしかった。

なんでこんな世界を作ったんだ、どうして、自分は一人ぼっちでいないといけなかったのかと、そう、私を責め立ててほしかった。

そうでないと、彼の気がすまないのではないのかと思った。

いや、もしかたら、私はただ、責めてほしかったのかもしれない。優しい彼女達は私を責めることはしなかったから。

だからせめて、誰かに、言ってもらいたかった。

なんで、こんな間違いを犯してしまったのか、と。

あんたなんて、なんの意味も無いじゃないか、と。

しかし、初めてあった彼は、私の想像できる域を超えていた。

―――その腰のそり具合が最高に素敵だ!ぺろぺろしたいなっ!

うん。どうやら、初めての人(?)の姿をしていた私に出会えて気が動転してしまったようだ。

まあ、無理もない、初めて人に出会ったのだから、ハイテンションになって、思ってもいないことを口にしてしまうものなのかもしれない。

彼からしたら夢にまで見た、人なのだ。

しかし、本当に意外だったのが、彼はなんの迷いなく願いを断ったのだ。もう、願いはかなってしまったといわんばかりに。

そんな笑顔をしていた。

しかし、彼は私の事を知りたいといってくれた。

もしかしたら、同じ人間だと思った私がどんな人生を歩んでいたのか気になったのかもしれない。

 

彼は私の人生を見て、怒ったのだ。

君は本当にそれでいいのかと。

君は寂しくないのかと。

そう言った。

私の目を背けていたことをズバッと。

それでも、彼はまるで自分の事のように、叫ぶように、私に訴えた。

君はそのままじゃあダメだと。

寂しくないわけないのだと。

その後に続く言葉は、彼は言わなかったけれど、

 

きっとこう言いたかったのではないのだろうか。

 

だって、僕は、あんなに辛かったんだ。

誰にも、出会えず、ただ一人の人生を歩んできた。

 

だから、君は、君だけは、それを捨てないでくれと。

自分が手に入れられなかった、その希望を、幸せを捨てないでくれと、そう言っているように感じた。

 

泣きそうな顔で、必死に、私に手を差し伸べてくれる彼に初めて、自分の感情も心も全てさらけ出して、醜く彼にすがり付いた。

嘘を言ってごめんなさい。虚勢を張ってごめんなさい。強がりを言ってごめんなさい。本当は私は寂しくて、悲しくて、辛くて、泣いてしまいそうだったのです。

今にもダメになって、崩れてしまいそうだったのです。

願うだけで、罪深い事だと思います。

願うことすら恥ずかしい事だと思います。

全部自業自得で、救いようのない私ですが、

それでも、どうかお願いします。

どうか、私をみんなと一緒にいさせてください。

またみんなと笑い合いたいんです。またみんなとお話したいんです。離れ離れはいや。

一人ぼっちは嫌なんです。

 

そして、彼はこの世界を作り上げてくれた。

私の為に。

みんなの為に。

彼の全てをかけて、この世界を紡ぎだしてくれたのだ。

 

 

待ち合わせよりだいぶ速く来てしまった。

私はゆっくりと待ち合わせの神社の鳥の前にむけて足を運ぶ。

まだ、屋台の準備をしているところもいくつかある。

というかまだ日は高い。

太陽はまだまだ高く。かなり熱い。

せっかくの浴衣が台無しにならないか心配だった。

それでも、まあ、ずっと楽しみにしていたのだから仕方がない。

初めて、みんなと一緒に夏祭りをするのだ。

隣で傍観しているわけではない、私も含めたみんなで、する夏祭り。

桃色の浴衣をきて、一緒に、お店を回って、花火を見て、そしていっぱい笑いあうのだ。

ああ、楽しみでしょうがない。

すると、まだ待ち合わせより二時間早いはずなのに、彼はそこにいた。

何故彼が、男の子の浴衣を着るとここまで、色っぽく見えるのだろうか。

胸元が無防備すぎる。

いやいや、これが普通なはず。

しかし、彼に花柄の可愛い女性ものの浴衣を着せたくなるこの衝動はなんなのだろうか。

絶対似合うと思うのだけど。

きっと言ったら怒るんだろうな。

怒った彼はさらに可愛くなることは、秘密だけど。

 

「やあ、まどか。早いね」

「キュー先輩に言われたくないですよ」

私は少し苦笑いしながら答える。

苦笑いのつもり。

つもり、なのだけれど、どうにも、彼の前だとゆるゆるに微笑んでしまう。

これでは、デレデレに顔をニヤけさせていると言った方がいいのかもしれない。

「だって、楽しみで仕方がなかったんだもん。初めてなんだ。全部何もかも。君達と同じ視点に立つなんてさ」

私と同じことを彼も感じていたのだ。

感じてくれていた。

それがなんだか嬉しくて、大笑いしてしまう。

あははは、と。

「笑うなんて、酷いなぁ。まどかはどうなんだよぉ」

口を尖らせて、キュー君は言う。

「えへへへ、私も同じです」

「ほぇ」

素直に答えた私の言葉にキュー君は予想外だったのか、素っ頓狂な声を上げる。

「キュー先輩と同じです。私も、ずっと楽しみにしていたんです。みんなと一緒に、手を取り合って、笑いあう、そんな楽しい日常なんて、本当に夢見たいで、まだ信じられないくらいです」

これも全部、あなたのおかげです。ありがとうございます。そう言おうとしたのに、その言葉は最後まで言うことができなかった。

「そうだね。本当に長い間頑張ったね。まどか。これが君達が最後まで諦めることなく勝ち取った、君達の大切で幸せな日常なんだよね」

彼が、そんな優しい言葉をかけながら、暖かい眼差しと共に、包み込むような優しくて暖かい手が私の頭を撫でてくれたのだから。

私は、ただ顔が熱くなって、嬉しくて、幸せで、泣きそうになって、言葉を失ったのだ。

「浴衣すごく似合っているよ」

本当に、彼のこういう無自覚で優しいところは何とかしてほしい、本当に、嬉しくてしょうがない。

私は、俯きながら、小さく頷く事しかできなかった。

そのあと、私は何もしゃべる事ができなくて、ただ、キュー君の横顔を見つめる事しかできなかった。

お話したいことも、お礼を言いたいことも、いっぱいあったはずなのに、何もしゃべることができなかった。

私たちは無言で、待ち合わせ場所で、みんなを待つ。

そして、みんなが来てくれる。

ほむらちゃんが、さやかちゃんが、杏子ちゃんが、マミさんが。

みんなすごく綺麗だった。

ほむらちゃんは全体的に紫の浴衣。

さやかちゃんは、水色。

杏子ちゃんは赤色。

マミさんはオレンジ色の浴衣を着ている。

私と同じ型の浴衣を色違いで。

そう、みんなであらかじめ、お揃いになるように、注文していたのだ。

「まどか!すっごく綺麗よ!私の脳内HDに永久保存ね!」

「ほむらちゃんもすっごく可愛いよ!お人形さんみたい!お持ち帰りしたいな!」

「あなたが望むなら!喜んで!これが結婚というやつね!なんて幸せなの!」

はい。ほむらちゃんともお約束。

そういえば、以前キュー君に、それはマジで本気で冗談にならないから気をつけなさいと強く言われたことがあった気がするけれど、どういうことなのだろうか?

こんなもの冗談以外の何ものでもないと思うけれど。

でも、彼の必死な目を思い出すとどうにも笑い飛ばせない。

今度詳しく話しを聞いた方がいいのかもしれない。

「まどかは私のよめだぁ!」

「美樹さやか、あなたはどこまで愚かなの。殺すわよ」

「……すいません。冗談です」

ん?さやかちゃんが決まり文句を言っただけなのに、ほむらちゃんの凄い殺気に一気にその勢いを殺がれた。

ほむらちゃんの何がそこまでさせたのだろう?

「何むくれてんだよ杏子ぉ」

「ふんっだ!さやかなんてほむらと一緒にまどかを取り合ってればいいだろ!」

「おやおや、ジェラシーですか杏子さんは?」

「べたべたひっつくなよ!熱いだろ!」

「ツンデレときた!これは萌だね!萌萌だね!」

うん。今日の杏子ちゃんもさやかちゃんも羨ましくなるくらい仲好しだ。

「マミ。凄く綺麗だよ」

「もう、あなたは恥ずかしげも、テレというものもないの?」

マミさんは嬉しそうに微笑む。

本当に綺麗で、美しくて。

やっぱり、私なんかじゃあとても、手が届かないことを、思い知らされる。

 

そして、みんなで始まる夏祭り。

みんなで勝ち取った日常。

みんなと一緒に分かち合える幸せ。

これほど素敵な事があるだろうか。

 

そんな暖かく優しい幸せなはずの世界。

しかし、ふと屋台が立ち並ぶ隙間から垣間見えた、二人の少女と人形。

何故だろうか。

彼女達が闇に見えたのは。

どこまでも冷たい闇に見えたのは。

ふと、彼女たちが私をみて笑ったように見えた。

その笑顔がどうしようもなく、恐ろしくて、私は一瞬、意識が飛びそうになる。

嫌な汗ををかいて、立ち止まり、もう一度彼女達のいたはずの屋台の隙間を見ても、そこには誰もいなかった。

 

「まどか?」

「ううん。なんでもない」

私は小走りで、みんなを追いかける。

本当にあの嫌な予感はなんだったのだろうか。

 

まるで、この脆弱な世界を簡単に壊してしまうような、あの恐ろしい感覚は。




これより始まる終わりの物語。
ゆっくり書いていきますので、どうかよろしくお願いします。
あと、この先おそらく過剰なエロシーン、エロトークが入ると思いますので、苦手な方は、気を付けて読んでくださいね。
それでは、ムロブチ氏には申し訳ない気持ちといいますか、恥ずかしい気持ちでいっぱいですが、不肖このダル神、僕なりの最後をどうかよろしくお願いします。

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