魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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第三十七話 メゾン・ド・ゼロの住人達

…………………………………………………………………………………………………………うん。

 

朝だね。

 

ああ、とても、清々しい朝だね。

 

いやね、本当に。こう、みんなには信じてもらえないかもだけどさ、僕はほら、ちょっと前まで宇宙人ていうかさ、インキュベーターだったわけじゃない?

 

それが、紆余曲折あって、こうして人間として、ゼロ世代として国の保護をうけ、不自由なく暮らせているわけだよ。

そしてさらに紆余曲折あって、マミと文字通り自他共に認める彼氏彼女の関係を築くことができました。

 

いやいや、不満なんてあるわけないよ?

 

むしろ、最高だよ?最高に幸せだよ?これで、文句なんて言ったら本当にバチが当たるよ。

 

でもね、なんて言うかな?

 

こう、ほら、ゼロ世代っていうのはさ、みんな元魔女だった人の集まりじゃん?

いやいや、別に偏見で言ってるわけじゃあないんだよ!

みんながみんなそういうわけじゃあないんだ!

でも、こう、やっぱり、比較的、時代背景がさ、今についていけてないのかもしれないしね?

だからさ、

別に、不満を言うわけじゃあないんだよ?

ちょっと今の時代から取り残されてしまった、もう言うなればタイムスリップしてきた、タイムストリッパー少女(?)に今の時代の常識を教えてあげるためにね?

 

清々しい朝の、国から支給された、比較的高品質のベッドで目を覚まし、僕は面倒くさそうにため息まじりに口を開いた。それはいつも通りのやりとり。僕が人間になって、この町にやってきて、みんなと再開して1ヶ月、僕はこんな日常を送っていた。

 

「ねえ?なんで、僕のベットに、僕と一緒に君が寝ているんだい?ジャンヌ?」

 

 

 

 

清々しい朝、僕の隣には、何故か僕の住むゼロ世代公共マンション、メゾン・ド・ゼロの9号室の左隣、10号室の、ジャンヌさんがいた。勿論女の子である。そして、彼女自身は覚えていないけど、あの、ジャンヌ・ダルクさんである。フランスの英雄であり、聖人であった彼女。自分の祖国を守護したいという願いで魔法少女になった彼女。しかし、そんな魔法少女の記憶も、そして魔女の記憶も彼女にはない。彼女にある記憶といば、自分の名前くらいで、彼女は14歳ではあるが、知能は小学校低学年にも負けてしまうくらいで、つい先日ひらがなをマスターしたとか。

つまり、ゼロ世代とは、そういった人達なのだ。

しかし、それ以外はいたって普通の少女。彼女達もまあ近いうちに自分の歴史を学ぶ事はあっても、同姓同名かぁ、なんかてれくさいな。と思うだけだろう。

 

だが、しかし、今はそんな事は

 

どうでもいい!

 

これは一体全体どういうことだ?

 

こんな美少女が僕の隣に寝ているだと!?

 

いや、信じてほしいんだけど、嬉しくないからね?

僕にも、ありました。こんなハプニングに喜び勇むそんな若い時期がありました。しかし、いくらなんでも僕だって成長する。それに、僕はマミと付き合っているんだ。こんな、不純な女性の付き合い方は彼女にも失礼だ。

だから、Wぱいタッチはマミ以外には永遠に封印さ。

 

だから、僕はテンションなんて上がらず、Wぱいタッチなんて決してすることもなく。いたって平常通りの声色で彼女を揺すり問い続ける。いささか棒読みが露骨に聞こえてしまうかもしれないけれど。

 

「………ぅん?」

 

ポロリ

 

っしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 

はっ!

左手にはガッツポーズを、右手には我が人生に一片の悔い無しのポーズを決め込んでいた。

いやでも本当に悔いはないな。今ならあの覇者の気持ちが理解できそうだ。決してこんな不純な想いではなかったことだろうけどね。

 

ちがうちがう。

 

そしてわざとじゃあない。

こんなジャンヌの服を肌蹴さそうとしたわけじゃあない。

ジャンヌの胸を見ようなんていう願望なんてこれぽっちもない。

しかしなんという美しい形なんだ。大きさも申し分ない。これは男として触らないのは失礼にあたいするのではないだろうか?

みんなはどう思っているか知らないが、胸は大きさではないというのが僕の持論だ。肌艶は勿論、形や弾力、張り、バランス。どれも重要なパラメーターなのだ。つまりぱいおつはいつの時代もすばらしいというわけだね。

いやいや、

ちがう、何おっぱい談義を始めているんだ?

ちがうだろう?

落ち着け。

もっと考えるべき事があるだろう?

やばいんじゃない?

この状況というか、事態というか、事件にも発展しそうなこれは非常にまずいんじゃない?

僕の小さな脳みそでよく考えるんだ。浮かれている場合じゃない。

そう、こんなの他人に見られたらどっからどう見ても、僕が彼女を襲っているようにしか見えない。最悪このマンションから追い出されるはめになって、マミからは間違いなく別れ話が飛び交うことになるだろう。

これは、非常にまずい。

僕の人生がかかっている。

ゆっくりだ、そっと服をもとに戻そう。落ち着け、僕ならできるはずだ。彼女が目覚める前に。

自分の人生がかかっているとなると自然と緊張が身体全体を駆け巡る。

呼吸もまともにできない。

「はぁ、はぁ、はぁ」

自然と僕の身体は小刻みに震える。

震える手で、荒い呼吸で彼女のパジャマに触れる。←完全に変態

 

彼女、ジャンヌはパッチリと目を開く。

 

今まで寝ていたのが嘘のように僕をまっすぐ見る。

 

目と目が合う。しばらくの間沈黙が続く。

…………………………………………………………………………………………………………ふむ、

 

えーっっとぉ?

 

あれあれ?状況がよくわからないぞ?

 

ちょっと、今の状況を分かりやすく考えてみよう。

 

客観的に整理してみようじゃあないか?

 

僕は朝目を覚ましたら、何故か隣にはパジャマ姿のお隣さん(14歳少女)が可愛らしい、あどけない寝顔を僕に見せてくれた。

そして、僕は鼻息荒く、震える手で彼女のパジャマに手を触れあろう事か、彼女のパジャマは著しく肌蹴ていて、胸なんか全面にポロリで……

 

うん、わかった、皆まで言うな僕。

 

つまりは僕の人生は、

 

終わったぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 

 

僕は自分の部屋の隅っこで頭を抱え自分の人生を走馬灯のように振り替える。終わってしまった人生をじっくり思い出していた。人間になって一ヶ月、短い人生だったなぁ。

 

「おいおい?何をそんな所でうずくまっているんだ?」

と、ジャンヌ本人から予想外の言葉がかけられる。てっきり悲鳴と鬼畜な罵倒を覚悟していたのだけど。

 

「たった今、僕の人生が終わったからね。解釈はぜひ君に頼もうかと思っていたところさ」

「? 君は何をいっているんだ?」

お!?もしかして、全く気づいていない?ジャンヌが奇跡的な馬鹿で助かったかも?

 

「もしかして、この状況のことか?」

未だ胸を隠そうともせずに自分の有様を指差す。だめだ、やっぱり終わりか。バカなのは僕です。生きててごめんなさい。

 

「はっはっはっ!なんだ、そんな事を気にしていたのか?」

もしかして、こんな事をしでかした僕を君は……

 

「女の子同士だ。そこまで気にすることではないだろう?」

 

「僕は男だぁ!何度言えばわかる!男!僕は男なのぉ!」

例えここで嘘でも女だと認めればこの事態から逃れられると解っていてもこれだけは譲れない。

 

「わかった、わかった。そうだね、確かに君の心は男なのかもしれないよ?ふむ、そういう、病気もあるとエジソンも言っていたしな。だが、しかしだ。いずれ現実に向き合わなければならない日が必ず来るんだ。君の身体は女であるということをこの私が身を持って教えてやろうと、わざわざ、ドアを破壊して夜を共にしたというわけだ」

 

「君は何を言っているんだぁい!?わけがわからないよ!男なの!心も身体も生物学的にもお・と・こ!って、え?今なんて?」

 

「だから、君を女だと自覚させるために女同士身体を寄せ合って一晩をともにしたんだ」

 

「ちがうちがう、確かにそれは大問題ではあるが、その後のドアを破壊したって、嘘、だよね?」

 

「ははは」

 

「やだなぁジャンヌさん冗談ばっかり」

 

「ははははははは」

 

「ねぇ!うんって言ってよう!」

 

僕は嫌な予感を胸に玄関を見たら案の定破壊されていた。さすがは英雄王、オートロック式のドアなど簡単に破壊しますか。

 

「ちょっとぉまてぇ!何してくれてんの!?これは冗談の域を完全に逸脱してらっしゃるよ!器物破損どころじゃあないよ!どうすんのこれ!?」

「だって、君は私と一緒に寝ようといっても断ったじゃないか」

「そりゃあ断るよ!僕は男だからね!不健全だって何度も説明したじゃないか!ちゃんと彼女もいるって言っただろう?」

「それだ、その彼女と言うのを聞いて心配になったのだ。その、なんて言うかな、女の子どうしならさっきのことぐらいならまだ許容範囲内だが、彼氏彼女はちょっとやばいだろう?君が女の子に興味があることはわかっているが、それでも、線引きは必要だ」

「僕は男なのでぜんぜん問題ありません!」

「む、まだ言うか、ならば、その男とやらの証拠を見せてもらおうじゃないか。生物学的に男だと証明するものがちゃんとついているのか確認してやろうじゃないか」

 

…………………………………………………………………………………………………………はい?

 

ゆっくりと近づいてくるジャンヌ。

 

「何を言ってるんですかジャンヌさん?ブラックな冗句はもうお腹いっぱいですよ?」

 

とても可愛らしい笑顔で彼女はこう言った。

「そうそう、言い忘れてたけど、私、冗談嫌いなんだ♪」

「ちょ、やめ、―――あっ!ら、ら」

らめぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!

 

そして、僕の悲鳴はメゾン・ド・ゼロの住民すべてにいきわたったという。

 

 

 

「……といことが今朝あったんだよ」

ラウンジで朝食を食べながら今朝の事件をみんなに説明した。

「そんな事が……本当に大変でしたね、キューさん」

献身的に僕を介抱してくれて、ナース服装の彼女はこのメゾン・ド・ゼロのお姉さんにして、唯一の常識人にして、優しい天使。フローレンスである。彼女もゼロ世代で歳は17歳。あの、フローレンス・ナイチンゲールである。多くの人々の治癒を願った彼女。その記憶はあるわけではないけれど、その力があるわけではないけれど、このマンションの住人の面倒をなんでも見てくれる優しいお姉さん。このマンションでは最年長であり、このマンションの住人に彼女に頭の上がる人間はそういない。特に小さい子供に大人気。まあ、みんなフローレンスのことが大好きなのだ。

 

「しかし。何故そんなにボロボロになっているのじゃ?」

古風なしゃべり方をする、巫女服に身を包む彼女は卑弥呼。勿論ゼロ世代で、14歳。ジャンヌと同じクラスでよきライバルで友達。少し爺言葉であるが、普通の女の子だ。全知全能の知識を願った彼女ではあるが、今の知識といえば足し算引き算程度。しかし、毎日を幸せそうに生きている。やはり生前のなごりか、ものすごい占いがうまい。ここの住人は明日の天気予報をよく頼む。これがすごい当たる。

 

「僕を男だと認識するや、彼女にボコボコにされたんだよ」

僕は涙目でジャンヌを指差す。

「だ、だって、びっくりするじゃないか!あんなものいきなり見せられたら!」

「だから僕は止めたじゃないか!それをむりやり君がぁ!」

号泣する僕。だって、マミにしか見られたことないのに!

「だ、だが、それなら、君もおあいこだろう?」

ジャンヌは突然顔を真っ赤にしてぼそぼそ言う。

「私の胸を見たわけだし」

ぬおっ!そうだった。

 

「はっはっは!もしかして本当にやるとはねぇ~、我輩もびっくり仰天」

「やはり君の差し金かエジソン」

白衣のいかにも博士という格好をする少女はエジソン。あのトーマス・エジソンの娘であり、無能な父親を発明家にすることを願った父親想いの娘。まあ、彼女がそんなことを覚えているわけもないのだけど。自分の興味のあること意外ひどい馬鹿ではあるが、やっぱり、ものすごい発明をいくつもして、このマンションのムードメーカー。よく問題をおこしてくれるが、みんな彼女の引き起こす事件を楽しみにしている節がある。まぁ僕も彼女の発明にはいつも驚かされてばかり。

相棒のマリーキュリーと今度は一体どんなおもしろ道具を見せてくれるのか。さながら青い猫型ロボットのポケットのごとく。

 

「まぁまぁ、今度の発明はすごいからさ!君の彼女もきっと大喜びさ!できたら一番に使わせてあげるから、ドアも僕が直しておくから勘弁してよ」

可愛い笑顔でてへペロしてくる彼女これ以上いえるわけもなく。

 

「キューちゃんかわいそうに」

「ありがとう、珠ちゃん」

この頭を撫でてくれるメゾン・ド・ゼロの小さなアイドル、明智珠ちゃん。9歳でこのマンションの最年少少女。父親の明智光秀を天下統一させたはいいが、3日で滅んでしまい、三日で魔女になってしまったかわいそうな過去をもつ。しかしそんな記憶は存在することもなく、テレサのことが大好きな元気のいい女の子。すこし甘えん坊な所もあるがそこが可愛い。あるいみ珠ちゃんにも頭が上がらない住人達だ。

 

「珠ちゃん。あまりそいつに近づくな。怖いものを見せられぞ」

「ジャンヌ!君に言われたくないわぁ!僕の服をノブセリみたいに引っぺがしおって!」

「う、うるさい!君こそ私の胸を見た上あんなものを見せおって!責任をとれ!」

「そんな理不尽な!あれは不可抗力だろう!?」

「ええい!うるさいうるさい!この埋め合わせ今度してもらうからな!」

顔を真っ赤にしながら怒るジャンヌ。まあ、男にあんなものを見られ、あんなものを見せられたら当然か。追い出せれなかっただけラッキーだ。

しかし、埋め合わせって?普通二度と僕には近づきたくないとばかり思っていたけれど?

 

「素直じゃないなぁ~」

「そうですねぇ~」

何故かニヤニヤ顔のエジソンとフローレンス。

 

「お、お前たちもうるさいぞ!」

 

「ジャンヌねえちゃん、つんでれー!」

「こ、こら珠ちゃん!どこでそんな言葉覚えた!」

 

「おっと、こんな時間だ。そろそろ学校行かないと!」

「た、確かに!」

「まったく君のせいだぞ」

「何故そうなる!?」

「ジャンヌいい加減ツンデレストップ」

「ツンデレじゃない!」

「わしも急がねば」

「早くしないと遅刻しますわよ」

「あたしもいく~」

そんな慌しい朝をむかえ、今日も学校に行く。

そんな日常を僕達は送っている。

 

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