私はジャンヌさんと対峙する。
互いが互いを敵として認識している。
この魔法少女大戦の難敵で、
恋敵なんだ。
一歩も譲れない。
大体なんで、こんな事態にあるかは、全てあの男に責任があるのだけど……。
まったくもう、この戦いが終わったら、本気でとっちめてやる。私しか見られないように、他の女の子なんて見られないように、強制して矯正してやる……。
私は想像し、魔法を形成する。私の最もしっくりくる、私の武器はマスケット銃、長銃だった。
初めてのはずなのに、なんで、こんなに馴染むのだろう?
なんで、こんなになれて、慣れ親しんでいるのだろう?
そんな小さな疑問が浮かび上がるけれど、そんな事はやっぱり気にしていられない。
ジャンヌさんは騎士を思わせる鎧に身を包み、右手には剣を持っている。
勿論、ただの剣ではない。
紅蓮の炎をイメージさせる、そんな炎を纏っている。
お互いが同時に動いた。
ジャンヌさんも私も。
私は距離をとる為に
ジャンヌさんは私と距離を詰める為に前方へ飛ぶ
ジャンヌさんは炎を剣に載せて、まるで刃のように、斬撃のように弧を描いて、私に幾つもの炎の刃を浴びせる。
私はマスケット銃で炎を撃ち落とすけれど、全てではない。
私は回避する為に、必要最低限の炎撃を撃ち落とす。
私は体勢をできるだけ低くし、炎撃を抜ける。
炎撃のおかげで土煙が舞い、いい目隠しになる。
しかし、また小さな疑問は私を問い続ける。
何故、こんなにも身体が自然に動くのだろうか?
私は平和な、戦場なんて起こるはずのない、日常に身をおいていたはずなのに。
優しい、お父さんとお母さんがいて、可愛い後輩がいて、そして優しい彼がいてくれた。
そんな幸せな日常しか送ってこなかったはずなのに……。
なんでこんな事を思ってしまうのだろう?
、、、、
懐かしい感覚だなんて。
そんな感覚味わった覚えはないはずなのに……。私は土煙の中、マスケット銃でジャンヌさんに狙いを定めて、躊躇う暇なく、身体が勝手に引き金を引く。驚くほど身体が勝手に動いてくれる。
頭で考える必要すらないくらい、自然に戦う事ができる。
しかし、ジャンヌさんも、その危険察知能力は並み外れていて、いとも簡単に私の銃弾の軌道を避ける。
私はいつのまにかジャンヌさんの攻撃圏内に入っていたようで、ジャンヌさんが剣を振り下ろす。
炎を纏っている剣。マスケット銃で受け止めるわけにはいかない。
私の身体を縦切りにせんとするその剣を、紙一重で避ける。剣の軌道をしっかり見て、まばたきすらせず見定める。恐怖なんて微塵も感じない。頭すら勝手に働く。
私は放たれる炎の推進力を利用して、ジャンヌさんから距離をとる。
助走もなしに私は5メートル以上横に飛ぶ。
そして、私は一番の疑問に思い当たる。
今までずっと疑問には感じていたはずなのだ。
でないとおかしい。それは、あまりにも都合がよすぎる。ご都合主義もいいところだ。
ただ私は考えないようにしていたのだ。
何故、彼は私に突然告白して、そして私は何故いとも簡単に承諾したのだろう?
私は何故彼をこんなにも信頼しているのだろう?別に幼なじみだったわけでも、文通のやりとりがあったわけでもないのに。本当に初めてあった少し前までは他人だった筈の彼をどうしてこんなに信じる事ができたのだろうか?
あってまだ一ヶ月になるくらいなのに……。
それなのに私はどうしてこれほどまで
彼を愛しているのだろうか?
どうして、彼は私を愛してくれたのだろう?
どうして、こんなに優しくしてくれるんだろう?
どうして、こんなにも私をわかってくれるのだろう?
わからない。
わからない事だらけだった。
「キューは渡さない!」
ジャンヌさんは叫び声のように、顔を真っ赤にしてそう言うのだ。
彼女の方が正しいのだ。
きっと、彼女の方が正しく彼のことが好きなのだ。
何故好きなのかわからないまま付き合っている私よりは少なくても
正しい。
私は、正しさとか、正義とか、とても大事だと思っている。もしかしたら、そんな理由で戦えるかもしれないくらい、大切で大事なことだと思う。
でも、正しくなくとも
間違っていたとしても
それは不純なのかもしれないけれど
それでも、彼だけは渡せない!
キュウべぇだけは!
キュウべぇ?
私は彼をそんな風に呼んだ事があっただろうか?
そういえば私は今まで彼の名前をほとんど呼んでいなかった気がした。
別に名前を呼ぶのが気恥ずかしかったわけでも、彼の名前が嫌いだったわけでもなくて
そうだ
しっくりこなかったんだ。
何か違和感があった。
そうだ、私は覚えていなくても、きっと
きっと、彼の事を
キュウべえと
そう呼んでいたのだ。
私の中で何かがかみ合う。
まるで、今まで外れていた歯車が、ガッチリとはまって動き始めたように。
———そんなの!
あなたのことが大好きだからに決まってるでしょうが!
バッカヤロー!
え?これは?
———あなたのことが好きで好きでしょうがないのよ!五秒に一回はあなたの事考えてる!あなたの事しか考えられない!あなたが嬉しいと私は幸せな気持ちになる。あなたが笑うと浮かれてはしゃいでしまう!
私は彼にこんな事をいったのだろうか?
———それにあなたがいくら自分自身を信じる事ができなくても
私は誰よりあなたの事を信じているわ。
あなたがいくら自分自身の事許せなくても
私がどんなことでも許してあげる。
あなたがいくら自分自身の事認めて無くても
私がいくらでも認めてあげる
あなたがいくら自分自身の事が嫌いでも
私がこれ以上ないってくらい愛してあげる
だから、私のそばにいて。私の愛する人としてそばにいて。
私はあなたを一人にしない。
だからあなたも私を一人にしないで。
もう、こんな思いはしたくない。
あなたと離れたりなんてしたくない
ああ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、
どうして、どうしてこんな大切な事を忘れていたんだろうか?
辛いことが一杯あって
苦しい事がいっぱいあって、
死にかけたことなんて数えきれないほどあって
それでも、私は彼と共に
キュウべぇと一緒にいる事ができて
幸せだったんだ。
「マミ!巴マミ!
しっかりしろ!」
ふとそんな声がした。
少年のようなかわいい声。
聞き間違えるはずのない彼の声だった。私は気づいたら体中がボロボロになっていた。
辛うじてソウルジェムだけは無事だけれど、
記憶が戻る間無防備に立っていたようだった。
「君は
誰にも負けなかった!
君はとても強くて
そして、世界一愛している最高の僕の
彼女だ!
君以外考えられない!
君以外を愛するなんて無理だ!そんなのはとても無理なんだ!
だから勝ってくれ!
君だけは負けないでくれ!」
全く、本当にずるいな。
彼の言葉は本当によく響く。
私は昔の要領で、魔法を形成する。
想像どころじゃない。
思い出す。
あの感覚を。
私はリボンを形成し、ジャンヌさんを捕える。
死角からの攻撃にジャンヌさんの動きも思考も一瞬止まる。
私は千を超えるマスケット銃を創世し、魔力の要領でそれらを空中ですべて操り
「ヴァロットラマギカエドゥーインフィニータ」
一斉射撃をする。
「くっ!」
ジャンヌさんはとっさに身をよじりソウルジェムを体で抱え、ぎりぎりソウルジェムだけは守りきるも、大きく吹き飛ばされ
そして、私はその先に立っていた。
リボンを縦横無韻に張り巡らせ、その反動を利用した空間移動法。
結果ジャンヌさんの目の前にいる私は
ジャンヌさんのソウルジェムに巨大なマスケット銃、
大砲のようなそれを向けて
「ティロ・フィナーレ」
何の躊躇いもなく、放った。