第四十九話 プロローグ (まどか語り部)
私は醜い。
ああ、私は、なんと醜いのだろう。
私は、死ぬべきだった。
間違えた。
間違えた。
どこで。間違えた?
生まれたことが間違いだった。
存在してしまったことが間違いだった。
幸せを望んだ事が。
みんなの笑顔を望んだ事が。
自分自身の笑顔を望んだ事が。
こんなにも罪深い事だった。
許されるわけがない。
望んではいけなかった。
こんな事していいわけがなかった。
きっと私の間違いは、あの日、あの場所で、彼の手を握ってしまった、あの時なんだと思う。
私はあのまま、一人ぼっちの神様のままでいるべきだったんだ。
純粋にみんなの笑顔を望んだ聖女として、作り笑いを浮かべていればよかったんだ。
そうしておけばよかった。
そうしていればどれほどよかったことか。
もしそうできていたなら、自分のこんな醜いものがああらわになる事はなかったのではないのだろうか。
終わったはずの世界を無理やり、作り変えて、元通りにして、無理やり、運命を捻じ曲げた結果この様。
ごめんなさい。
みんな、本当にごめんなさい。
こんな事謝って許されるわけではない。
謝ることすら、罪深いことだとはわかってる。
許しをこうなどおこがまし過ぎる。
でも、私は、もう、これだけしか言えなく、なってしまった。
いつまでも、きっと、こんなことしかいえない。
こんな体になってしまった。
彼を欲して。
彼を望んで。
彼を私のものにしたかった。
その結果。
私は自分で死ぬこともできない存在になってしまった。
ごめんなさい。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
お願いします。
どんな償いでもします。
永遠の地獄に落とされても構いません。
だから、どうか、お願いします。
誰でもいいんです。
誰か。
私を殺してください。
今日は、本当に、
……………本当に楽しかったなぁ。
はは、
バカだ。
私は本当に馬鹿だよ。
何が楽しかったのか。
いや、本当に笑えたのは確かだと思う。
こんな滑稽なものが、私の真実。
なんなのだろうか。
私は、一体なんなのだろうか。
あの魔法少女システムは本当に素晴らしいものだった。
みんなが、本当に楽しそうで。
幸せそうで。
私も胸が躍ってしまった。
あの、辛く苦しい、戦いの日々が、全部、消えてしまうくらいに。
ただ一つ、恐ろしい事があったのだとすれば、それは。
どんな願いでも、一つだけ叶えてくれる。
そんな悪魔のような一言だけ。
まるで、悪魔のように。
まるで、インキュベーターのように。
まるで、神様のように。
私は、願ってしまった。
本当は、願ってしまいそうになった。
きっとみんながいなければ、私は迷うことなく願ってしまった事だろう。
しかし、私は辛うじて、なんとか、嘘を憑くことができた。
―――………またみんなと一緒に遊びたいな。
そう、嘘を憑くことができたんだ。
でも、本当は。
本当に、願いたかったことは。
―――キュー君を私のものにしたい。
―――私だけのものに。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
私は醜い。
私は、こんなにもずるくて、こんなにも矮小で、こんなにも脆弱なものだ。
あの日、私は、認めたはずだったのに。
マミさんと彼が。
結ばれることを。
祝福していたはずなのに。
それなのに、私のこの思いは、膨れ上がって。
いつのまにか、私は。
『巴マミなんていなくなればいいのに』
私は、いつの間にか、頭を抱えて蹲っていたようだ。
その声に、頭を上げる。
まるで、自分の心の声、先に言われてしまった、そんな気がした。
そこに立っていたのは。
一人の人形と。
一人の少女と。
そして、一つの異質。
真っ黒な、異質で、異常で、異様なそれは。
辛うじて、人の形を保っているそれは、ゆっくりと私に近づいてくる。
『また、みんなが魔法少女になってしまえば』
そんな、やめて。
『また、みんなも、そして私も』
嫌だ、お願いやめて。
私はそんな事望んでいない。
『不幸になったら、彼が自分を見てくれるのではないか』
違う!やめて!そんなこと私は!
『思っていないとでも?』
『また彼が、貴女を救ってくれるかもしれないのに?』
やめて、やめてよ。
そんなこと、許されるわけない。
『ボクが、貴女の願いを叶えて進ぜよう』
ゆっくりと、その真っ黒な手は私の額に近づいていく。
私は、まるで動けない。
まるで、屍のように。
もう、死んでしまっているように。
ああ、そうだったなら、どれほどいいのだろうか。
でも、私は、無様にも、生きていて、この異質な手を払いのける事もできなくて。
そして、その手が私を触れる。
とても、とても、とても、冷たい。
そう、思った。
そう、想った。
『だから、ボクと一つになろう』
そして、私の身体は、私の魂は。
私のものではなくなってしまった。
全部、冷たく、そして、黒く。
真っ黒に塗り潰される。
彼を、自分だけのものにしたかった私は。
そんな罪深い私の報いは。
自分の存在すらも、奪われることでした。
私の存在はもう、私のものではなく。
私には、もう、何も残されてはいない。
全部、全部、奪われてしまったのです。
だからどうか、お願いします。
みんな、私を殺してください。
どんなに酷くても。
どんなに残酷でも。
どんなに惨くてもかまいません。
それが私にとっての救いなのです。
だから、どうか、どうか私に死を。
今日この日より、世界のあらゆる理も、秩序も、法則も歪められ、インキュベーターのいない、魔法少女と魔女だけの、何の目的も希望もない、絶望だけの、絶望だらけの、そんな異質な世界に成り果ててしまった。
他でもない。
私のせいで。