何がいけなかったのか。
誰が悪かったのか。
今どういう状況にあって。
何がどうなって。
何が原因なのかも、わからないでいた。
そんな僕だけれど。
ただ、なんとなくわかったことがある。
漠然と一つだけわかる。
これは。
この不幸は。
この絶望は。
この絶対的な、絶望は。
おそらく、終焉の予兆なのではないか。
この世界の。
この幸せな世界の終り。
世界の終りとはこんなにも絶対的で、そして。
こんなにも、強大で。
こんなにも、逃れられないものなのだろうか。
こんなにも、絶望的なものなのだろうか。
そして、僕のこの感覚は決して思い込みでもなければ。
勘違いでもなかった。
そんなものではなかった。
これは、現実以上なのだと。
これは、僕のせいで、起こってしまった、終焉の始まりなのだと。
僕が原因の中心に居たのだという事なのだと。
そう、突きつけられた。
今から始まる。
終焉の始まりと。
僕達の罪のお話。
僕はマミのソウルジェムとマミの身体を握りしめ、強く、強く抱きしめて、今のこの状況が夢であってくれと、そう、みっともなく願っていた。
しかし、この状況は、強く目をつむっても、どんなに固く瞼を下しても、しかし、この手の中にある温もりは消えることはなく。
今の、この、悪夢のような世界は僕達を包みこんでいた。
もう、ダメなのかと思った。
マミが心配そうに僕の顔を見つめる。
どうしたの、と、必死に僕の顔を抱きしめてくれる。
マミのその優しい声、匂い、温もり、僕の大切な、幸せが、確かに、ここにあるはずなのに、それなのに。
僕の感じている絶望は膨れ上がり、僕の中で、弾けてしまいそうになる。
一体何が起こっているというんだ。
わからない。
一体これはどんな、冗談なんだ?
こんな事が、現実で起きるっていうのか?
あまりにも、脈絡がないじゃないか。
これは、突然というには、あまりにも、おこがまし過ぎる。
そんな暴力的な、事態だった。
異常なんて、言葉では、とてもじゃないが、片づけられない。
世界とは、こんな簡単に、終わってしまうほど、危うい状況にあったていうのか?
僕達の紡ぎだした、この世界とは、こんなにも、簡単に崩れてしまうほど、ギリギリの状態だったとでも言うのか。
僕達のこの幸せは、それはありえない事を無理やりに、紡ぎださなければいけないようなものだったのか。
そんな、ありえないものじゃあないだろう?
ただ、僕達は、友達と笑顔でいたくて。
大切な人と、一緒にいたくて。
みんなと生きていたかっただけなのに。
それは、そんなに罪深い事だったのか?
僕達は何にもしていないじゃないか。
ただ、みんなと共に生きて行けたなら、
みんなと共に笑いあえたなら、それがあれば。
それさえあれば、僕達は幸せだったはずなのに。
それなのに、なんでまた、僕達は。
僕達は、こんな絶望をやり直さないといけないんだ。
そして、この答えはすぐにでも、知ることになる。
そして、今でも疑問に思ってる。
僕が、人間として生きたことを。
僕は生きてはいけなかったのかもしれない。
あの日、あの場所で、僕はインキュベーターと一緒に、永遠の絶望を繰り返していればよかったのではないかと、そう思った。
そうしていれば、彼女達だけでも。
マミだけでも、幸せでいられたんじゃないかと。
そう、僕は思った。
「大変だ!マミさん!先輩!」
さやかと、杏子が僕の部屋に駆け込んできた。
僕は、このどうしようもない状況に、ただ、呆然としていることしかできていない。
そんな情けない、姿をさらしている、と気が付いた。
マミは、とても、不安そうに、僕を見つめている。
何をやっているんだ僕は。
僕は、ゆっくりと震える腕で、マミを抱きしめて、大丈夫だよ、と震える声で言った。
馬鹿だ。
こんなことしたら。
こんな様じゃあ余計マミを心配させるだけなのに、僕は、そんな事にも、気づけないほど、取り乱していたんだ。
僕は、覚束ない足取りで、さやかと、杏子について行った。
この状況に、めまいを通り越して、吐き気がする。
緊張で、体の震えが止まらない。
今にも僕の身体の中身が全て出てきてしまうのではいかというほどの吐き気と戦いながら、この状況を必死に認識しようとした。
認めようとしていた。
でも、僕の全身がそれを拒絶する。
僕の魂が、それを拒絶するのだ。
まだ、終わっていなかった。
あの事件は未だ、その傷跡を残し、未だ、彼女達を蝕みつづけていた。
このマンションの住人全員が倒れた。
皆のその、胸の前には、濁り切っていたソウルジェムがあったのだから。
本来は、光り輝いていたであろう、それらは、どす黒く、今にも、崩れてしまいそうだった。
そんな、何が起きてるっていうんだ。
住人達をとりあえず、ベットに運び込む。
みんなの、あるはずのない、魔法少女としての力。
みんなの魔法少女の魔力を使えば、すぐに、彼女達をベッドに運びこむことができた。
僕達では、とても、無理な。
不可能な数の住人達も、瞬く間に、ベットに運び込まれた。
こんな異常な世界になってしまった。
できないことも、簡単にできてしまう。
それこそ、絶望的な世界に成り果ててしまった。
この絶望でむせ返ってしまいそうなほどの異常な光景。
みんなが。
僕の家族と言ってもいい、そんな大切な人達が、どんどん、魔女になろうとしていた。
それが。
そう、あることが、彼女達の本来の姿であるように。
そうあることが、彼女たちの本来の運命であるかのように。
そう、あるべきだと、世界が言っているかのようだった。
そんな馬鹿なことがあるかよ。
この少女たちだって生きていたんだぞ。
泣いたり、笑ったり、悲しんだり、喜んだりして、必死にこの世界を生きていたんだぞ。
幸せそうに、生きていたんだ。
それを、なんだってこんな、酷い状況に合わされなければいけないんだ。
確かに、みんな悪戯好きで。その個性には一癖も、二癖もある少女達ばかりだったけれど。
それでも、こんな目にあわされなければいけないほど、罪深くはないはずだ。
罪深くはなかったんだ。
それが、なんで。
それが、どうして。
こんな事に。
マンションのロビーで呆然とする僕達。
ないはずの力。
ありえないはずの、奇跡。
途方もない絶望。
連絡の取れない、二人の後輩。
ただ、僕達は呆然としていた。
そうする事しかできなかった僕達に。
二人の少女が訪ねて来てくれた。
「皆様。どうやら、今のこの異常な世界にはお気づきになっているご様子ね」
「話がややこしくならずに済んでいいね、織莉子」
真っ黒な少女と真っ白な少女がそこには立っていたのだ。