魔法少女と孵卵器(インキュベーター)~規制版~   作:ダル神

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第六話 絶対不可避の死

いつからだろう。本当にいつから何時からいつ頃からなのだろう。

 

こんなに怖いと思うようになったのは。

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いとても怖い

 

知られるのがこんなにも怖いと思うようになったのは

 

真実を知られるのが怖い

 

こんなにも怖いんだ。

 

いやだ。マミにだけは知られたくない。

 

今更何を言っているんだ。

 

これは僕のしてしまったことでどうしようもないことなんだ。それはわかっている。むしろ僕は誰かに責め立ててほしかったはずなんだ。僕を責めて裁いてくれる人を誰より欲していたはずだ。

 

それをマミにも求めていたはずなのに。

 

そのはずだったのに。

でも

 

でも僕は思ってしまった。

 

こんな事を思ってしまった。

 

マミにだけはこんな真実を知って欲しくないと 。

 

今のマミが消えるのはイヤだ。今の幸せな生活が消えるのはいやだ。マミの笑顔が消えるのはいやなんだ。

 

本当に救いようがないな。

 

どうしようもない偽善だ。

 

だれより彼女を不幸にするのは他ならぬ僕のくせに。

 

弱い僕は彼女に謝る事も懺悔する事もできない。

 

僕のその弱さが

 

マミを殺す事になる。

 

僕は僕を許すことはないだろう。

 

鹿目まどか、美樹さやか。彼女達は魔法少女になる素質がある。特にまどかは魔法少女として持って生まれる魔力が桁違いだよ。最強の魔法少女という存在。それは同時に最悪最凶にして最狂の魔女になる可能性がある。本当に世界が破滅してしまうほどに。僕は彼女だけは絶対魔法少女にしてはいけない。そう思っている。それはまどか自身のためでもあるがそれ以上にマミのためでもある。もしまどかが魔女になってしまえば少なくとも魔法少女は全て死んでしまうからだ。絶対に。それは確実だからだ。でもだからと言って魔法少女の真実を彼女達に話す事は僕にはできなかった。きっとマミは死んでしまうからだ。僕はもう彼女がどういう少女なのか知ってしまっている。きっとマミは魔女を生み出し続けるのなら死ぬしかない。魔法少女みんなが死ぬしかない。そう思ってしまうだろう。散々魔法少女を殺し最後は自分の命を絶つだろう。自分自身を恨み、魔法少女を呪い、僕を憎んで死んでしまうだろう。それだけはダメだ。そんな事は死んでもごめんだ。幸いまどかとさやかには魔法少女になってまで叶えたい願いは決まっていないみたいで、未だマミの魔女退治の見学中。しかし、どうするか全く手のつけられない事に変わりはなく、一週間が過ぎた。僕にできるとしたら、2人の第二次成長期前のぱいおつにタッチするしかなかった。勿論僕の自慢の耳毛でWぱいタッチさ!まあそのおかげでこの一週間の間に百を超えるティロ・フィナーレを受けた事は言うまでもない。ほんと、なんで僕はまだ生きているんだろうか。

 

本当にマミは嬉しそうだった。まるで実の妹のように2人の面倒をみている。Wぱいタッチをした時なんて本気で怒っていたし、暁美ほむら並みの殺気だった。

 

まあ僕はそんな事じゃあめげないけどね!今日もバッチリ彼女達に僕のぱいタッチ技術を披露するつも……

 

ギュムっ! ぶちっ!

 

あれおかしいな……すごい握力で僕の左耳毛が千切れているぞ!

あれあれ?これじゃ僕のWぱいタッチがシングルスだぞ?

 

僕は恐る恐る後ろを振り返ると

 

「まだ、懲りていないようねキュウべぇ♪私のかわいい後輩に手を出そうとするそんな耳毛はいらないわよね☆キュウべぇもそう思うわよね★?」

さあ!処刑の時間だ!ティロ・フィナーレとも言ってもらえない所がまた怖い!僕の命もここまでか!

 

まあ結果的に言うと僕は処刑されることはなかった

 

それどころじゃなかった。

 

それは鹿目まどかが血相を変えてマミに懇願したからだ。

 

その瞳には涙のせいで充血して、それどころか、今も大泣きして彼女が叫んだからだ。

 

「マミさん!お願い!さやかちゃんを助けて!」

 

鹿目まどかの取り乱しようは尋常ではなかった。

 

それは病的だった。

身体の震えは止まる事もなく、涙なんてとまる気配がない。

今にも倒れそうだ。

 

嗚咽が混じり、整理ができてないのか言っている事は滅茶苦茶だった。

しかしそれだけ事態は深刻であること如実に現れていた。それはへたな説明よりよっぽど説得力があった。

 

マミは魔法少女の力でまどかと僕を抱えてさやかのもとへ。

 

見滝原病院へ向かった。

 

 

そこは魔女の結界で覆われていた。幸いにも病院にまでは届いておらず、魔女も完全に目覚めている様子はなかった。

 

マミの必死な呼びかけでなんとか正気を取り戻していた。

 

魔女の結界に入る。まどかの話を聞くとさやかの友達である上条恭介のお見舞いに来た帰り偶然に魔女の卵を発見し、彼女はここに残る事を決意しまどかにマミを呼んできてもらう。ざっくりいうとそんな感じ。

 

「全く無茶にもほどがあるよ。さやかが残っていてもどうにもならないじゃないか。」

少し口調がきつくなってしまうが、君たちはそれだけ危険な事をしているのもまた事実なんだ。

 

「ごめんなさい。でも、さやかちゃんはどうしても放っておけなかったんだよ。大切な人なの。さやかちゃんにとってその人は本当に大切な人で、たとえ何もできないとしても、その人の近くにいたかったんだと思う。その人を1人にしたくなかったんだよ。だから、さやかちゃんを責めるのは……。」

 

「キュウべぇ、大切な人を守りたい、そばにいたいっていう気持ちは理屈じゃないのよ。確かに美樹さんのやったことは無茶なのかもしれない、無理なことかもしれない。でも無駄なんて事はないの。その想いは必ず身を結ぶ。私はそう信じている」

 

ああ、そうだね。それはいたいほどわかるよ。大切な人が死ぬのはイヤだよね。大切な人の笑顔が消える事ほど怖い事なんてない。そんな事はわかっているよ。

 

「鹿目さん。大丈夫。美樹さんは必ずわたしが助け出して見せるから」

マミは優しく微笑む。

その笑顔にまどかの緊張はどこかに消えてしまったようだ。

「あの、マミさん」

「……ん?」

「あの、わたし……」

 

まどかが何かを決心し、何かを言おうとした時彼女が姿を現した。

 

暁美ほむらが目の前に立っていた。魔法少女としてそこに立っていた。

 

「ほ……ほむらちゃん?」

「言ったはずよね。私の目の前に現れたら消し飛ばすって。」

マミは敵意をむき出しにする。

 

「今回の獲物は私が狩る。あなたたちは手を退いて。」

暁美ほむらは立ちはだかる。

 

「そうもいかないわ。さっき思いっきりカッコつけてしまったからね。」

 

「美樹さやかの安全は保証するわ。必ず守ってみせる。」

 

マミは暁美ほむらの言葉を聞く事はなく。魔法で暁美ほむらを拘束する。

 

「ごめんなさい。私はあなたを信用できない。そこで大人しくしていなさい。怪我したくなかったら」

 

「馬鹿っ!……こんなことやっている場合じゃ!今度の魔女はこれまでとはワケが違う!」

マミはそのまま先へ進む。

まどかは少し暁美ほむらの事を気にしているようだったけど、マミに小走りで追いかける。

 

まるで、この先の結末を知っているように彼女は説得しているようだった。

 

必死に大切な人を守ろうとしているように。

僕にはそう見えた。

 

「ごめんなさいね」

 

唐突にマミは謝罪の言葉を口にする。

 

「時々余裕がなくなるの。」

「……」

「私はあなたたちが思うほど完璧じゃないわ。」

 

今のマミは少し弱々しかった。

 

「本当は私怖いの……いつも泣いていたわ……怖くて、辛くて誰にも頼れなくて、それでもただ一人が怖くてしょうがないの……。ごめんなさい。」マミは今までの本当の自分をまどかに話した。まるで懺悔をするように。いや、それは懺悔だったのだろう。弱いことも怖がることも悪いことではないのに。

 

「いいものじゃないわよ……魔法少女なんて」

 

「ごめんなさい」

 

マミは小さな声で呟いた。それは本当に消えてしまいそうなほど弱々しかった。

小さくうなだれる彼女に僕は何も言ってやれなかった。僕が何を言えると言うんだ。彼女にこんな運命を背負わせた僕にはとてもじゃないが偽善めいた事は言えなかった。

 

まどかは首を振る。

「マミさん、わたしの願いは誰かの役にたてることなんです。だからわたし魔法少女になりたいです。

魔法少女になれば願いが叶うんです。マミさんみたいに色んな人を助けて守って救いたいんです。」

 

「……なのよ」

マミは涙を流し小さな声で言う。

 

「……危ない事なのよ。怪我もするし、恋したり遊んだりしてる暇もなくなっちゃうよ?」

 

「でも、それでも私はマミさんみたいになりたいんです。頑張ってるマミさんに憧れているんです。」「憧れるほどのものじゃないわよ、私……」

 

「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」

 

まどかは優しく微笑む。それはまどかの決意そのものだと思った。

 

「本当に、これから……私と一緒に、戦ってくれるの?側にいてくれるの?」

「はい。わたしなんかで、良かったら。」

 

まどかのその言葉にマミはきっと救われたことだろう。報われた事だろう。

 

しかしこの約束が果たされる事はなかった。

 

この先にある絶望を僕達は想像もできなかった。

 

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