その人は必死に私を抱きしめる。必死にしがみつく。
寂しかったの?辛いことがあったの?嫌な事があったの?悪いことをしたの?あなたは助けたいの?助けてもらいたいの?
大丈夫よ。もう、あなたは大丈夫。だってあなたは私を救ってくれたじゃない。あなたのおかげで私はもう寂しくない。一人ぼっちじゃない。 そしてあなたも一人じゃない。
ありがとう。
私はとても幸せよ。
一一一巴マミ
暁美ほむらは今魔女と交戦中。マミを食った魔女。そいつが今目の前にいる。食欲を隠す事もなく。ただ自分の欲望に忠実に暴れまわる。ただ、執着に身を任せて食べまわる。
僕は今暁美ほむらの右肩にへばりついている。勿論戦いの邪魔をしようというつもりはこれっぽっちもない。むしろ倒して貰わないと困る。だってそうしないとマミを救い出せないじゃないか。
僕は暁美ほむらに懇願する。それは彼女の力を借りないと不可能だからだ。
「お願いだ。僕にできることならなんでもするから。マミを救い出したら僕の命なんていらないから。頼むから。協力してくれ」
「ちょっとどいうことなの?」
「マミはまだ生きている。いや、違う。まだ死んじゃいない」
「何を言っているの?あなたはただ認めたくないだけでしょう。巴マミが死んだ事実を受け入れられないだけでしょう。はっきり言ってあげる。巴マミは死んだのよ。あなたと契約したせいで死んだの」
「なんだい?さっきは慰めてくれたのに。僕が今のこの答えにたどり着いたのは君のおかげなのに」
「あら、私とした事がインキュベーターを慰めたとしたら、一生の不覚ね」
「でも、君は言ってくれただろう?巴マミは本当に不幸だったのか、と」
「なんで死んだら可哀想なのかしら?私はそれが理解できないだけ。死ぬ前に救われて報われたなら、それは羨ましいこだと思っただけ」
暁美ほむらは少し悲しそうに俯く。
「ああ……。でもマミはまだ死んじゃいないよ」
「何を根拠に言っているの?私が自由になっているということは、巴マミの魔法が消えた。これは完全に巴マミの魔力が尽きた証よ。そしてあそこに無惨に転がっているのは、巴マミだったものよ。それでも、まだあなたは巴マミは死んでいないというの?」
魔女の攻撃を余裕でかわしながら会話を続ける暁美ほむら。ほんとに、君が闘ってくれたらよかったのに。
「僕達インキュベーターは魔法少女の補佐の為にある能力がある」
「まさか……Wぱいタッチね……。くっ!まどかのオパーイをまさぐった恨みまだ忘れたわけじゃないわよ!あの魔女より先に貴様のその腐った耳毛を切り落としてあげるわ!」
「違う!違います!ちょっ!ほんと待って!あの時はほんと僕が悪かったよ!出来心だったんだ!」
「で、まどかのオパーイはどうだったのかしら?」
「そりゃあもう最高だったよ。マミの莫大なぱいおつもいいけど、まどかのような小さなしかし確かにそこにしっかりと芽吹いた命をひしひしと感じたね。なんというかほんとに愛らしいぱいおつでしたよ」
「さよなら。変態野郎。あなたは今まで私が出会ってきた孵卵器のなかで最低最悪でした。そのまま死んでね」
「ちょっと!待って!」
僕の顔の真横に手榴弾が置かれる。
「ゴミ虫が何か言っているけど聞こえないわ」
「この一件が終わったらまどかの下着をあげるから!」
即座に手榴弾は消える
あれ?助かった?
「……たいよ」
え?
「絶対に!絶対よ!」
………暁美ほむら。君……マジで?
「わかりました。今回だけはあなたに協力しましょう」
……もの欲しそうに、こっちをちらちらみている。
OK。君は本気なんだね。
鹿目まどか君はいろんなやつから狙われているよ。
しかし僕はガチでドン引きしている暇はないのだ。
「コホン、僕達孵卵器の能力はそれは魔法少女、魔女を問わずその魔力を見ただけで理解できるんだ。」
「へ〜」
ほんとまどか以外に興味がないな君は!
軽くショックだ!
「……とにかくあの魔女。お菓子の魔女。名はシャルロッテ。性質は執着で、能力は断絶と分解だ。つまりマミの魔力が途切れたのはその力だと思う。」
「でも、何より巴マミの身体はあそこで四散しているじゃない。あんなの誰が見ても……」
「そうだ。普通の人間ならまず無理だろう。でも君たち魔法少女は違う。君もそれは理解しているだろう?」
「それは……そうだけどあんなのソウルジェムだって……」
「まあ、マミのやられる瞬間を見ていないのだからしょうがないか」
「あなたは何を……?」
「マミのソウルジェムはね髪飾りなんだ。いつも綺麗に飾られた髪飾りだったんだ。マミは頭を丸かじりにされたんだ。わかるかい?頭から首の根元まで食いちぎられて丸呑みにされたんだ。」
「だから、そんなの助かりようが……」
「わからないかい?あいつは咀嚼せずに飲み込んだんだよ」
「そんな……まさか!」
「ああ。マミのソウルジェムはまだ奴の腹の中にいる。」
「だから、僕をあいつの腹の中に投げ入れてくれ!」
君たち魔法少女はソウルジェムを砕かれなければ無敵だよ。が僕たち孵卵器の言い分だ。それには、少女を魔女なんて危険なものと闘うのに生身はすぐに死んでしまうので考案されたものだ。勿論僕達からしたらエネルギーを採取する前に死なれては困るという意味だけれど。僕はこの取り返しのつかない呪いのようなソウルジェムが大嫌いだった。でも、そのおかげでマミが助かるのなら、少しだけマシだと思った。
暁美ほむらの能力は時間停止による空間凍結のようだ。それならシャルロッテの口に僕を放り込むことなんて造作もないことだ。
シャルロッテの体内に突入する直前暁美ほむらは僕に尋ねた。
「ねぇ?どうしてなの?なんであなたはそこまでマミを助けたいと思うの?それにあなたは明らかに他の孵卵器とは違う。異常に」
「僕はね。出来損ないの孵卵器だからさ。感情なんて持ってしまった出来損ない。そんな僕が彼女を大切だと思ってしまった。それはいけないことで、それはとても無責任な事はわかってるつもりだ。ただ僕はマミに会いたい。僕にはそんな資格がないとしても、それでも僕は彼女に会いたいんだ!」
「そうなんだ。こんな世界もあるのね。それじゃあ頑張ってね。キュウべぇ」
暁美ほむらは一瞬優しく微笑んだと思ったら、僕はシャルロッテの口の中に放り込まれた。
暗い。とても暗い。そして体中が痛い。身体がシャルロッテの分解の力で消化されるのを感じる。
そんなのは関係ない。僕は奥へ進む。僕の身体が欲しいならくるてやるさ。僕の命が欲しいのなら喜んで差し出そう。だから返せ。返せよ。僕の大切な光を返せ。僕の大切な人を返せ。
外の爆音が中まで響いてくる。早くしなければ。シャルロッテが死んだらそれで終わりだ。僕とマミは永遠に魔女の結界に閉じ込められる。
暁美ほむらが奴を倒すまでが勝負だ。
クソ。僕の左目が消化され機能を失う。関係あるか。もともと中は真っ暗で何も見えない。おそらく皮膚はもうないだろう。痛みしか感じない。いや、体中が熱い。まるで体全体を燃やされているみたいだ。もう少しでいい。もってくれ。ポンコツ。後でいくらでも終わってもいいから。もう少しだけ待ってくれ。
どこだ。マミ。君は今どこにいる。どこで泣いている。僕はここにいるよ。僕が君のそばにいるよ。どんな時だって君を一人になんてしないよ。また落ち込んだ時は、その時は僕がいつでも君の莫大なぱいおつを揉んであげるからさ。だから、もう少し頑張ってくれ。あきらめるな。僕を必要としてくれ。僕は君がこんなにも必要だ。
この消化液の中マミのソウルジェムが消化されたり、もしくはシャルロッテに噛みつかれた時に砕けてしまった可能性は十分にある。いや、むしろそっちの方が可能性は高いだろう。でも、僕はマミを探すのをやめない。あきらめない。後ろ向きな僕は今だけは前を向く。希望を信じた事のない僕は今だけは信じる。
そして僕はたどり着いた。その光はひどく小さなものだった。それは僕の目玉がもう機能できていないだけかもしれないけど。僕は目の前の光に耳毛を伸ばす。僕はその光を抱きしめる。
マミのソウルジェム。マミの魂はとても温かい。そう僕は感じた。僕の肉すらすでに消化され、感覚なんてないはずなのに。痛みすら感じないはずなのに。温かく優しい光を確かに感じた。ああ、やっと会えたね。マミ。
僕はマミのソウルジェムだけは溶けないようにソウルジェムを自分の身体全体で覆う。大切に抱え込む。
早く。頼む、暁美ほむら速くシャルロッテを倒してくれ。僕はただ暁美ほむらの声を待つ。
ねぇ、マミ。聞こえるかい。僕は君が大好きだよ。
小さな身体で、それでも街を守る姿をいつも尊敬していた。
でも、君は少し頑張り過ぎだ。たまには泣いたっていいじゃないか。時々逃げるくらい、いいじゃないか。たとえ君がどんなに弱い姿を晒しても僕がそばにいるからさ。僕がちゃんと見てるから。一生目をはなさないから。だからマミ。
君は君のままでいいんだよ。
帰ろう。みんなが待ってる。
『キュウべぇ!終わったわよ!速く耳毛を伸ばしなさい!』
暁美ほむらのテレパシーが届く。
さあ、インキュベーター第二の特殊能力の発動だ!
秘技、耳毛伸ばし!
すいません。ただ普通に耳毛を伸ばしてるだけなんだけど。しかし僕の耳毛はどこまでも伸びる。10メートルも20メートルもわけない。
しかし僕の身体に今気がつく。シャルロッテの分解の力で僕の身体はボロボロだった。手足なんてもう原形をとどめていない。目玉も両方消化されてどっちが上か下かもよくわからない。僕のアイデンティティである耳毛 は自分の意志で急速に細胞分裂をして伸ばすので問題ない。
「早く!結界が崩れる!」
暁美ほむらの声の方向に耳毛を伸ばす。
しかしここは消化液の中。シャルロッテが死んでしまっても機能はある。僕の耳毛も消化され途中で切れてしまう恐れがある。僕は耳毛をラプンツェルみたいに交互に結びしめ縄みたいに一本の縄を作り上げた。僕はそれをのばす。しかし、これでも危険因子はまだある。
言ったろう。僕の身体なんてくれてやる。命なんてくれてやる。ただし、マミだけは返してもらう!
僕は自分の口の中にソウルジェムを加え、頸から下。つまり身体を捨てた。僕はモロくなった自分の身体を千切る。もろい僕の身体は完璧に、簡単に、まるでトイレットペーパーを千切るみたいに簡単だった。僕は頭のだけの状態で、出口まで引っ張ってもらう。
引っ張り上げられた僕を見てまどか達がなんて言うかは僕としてはとても怖いところだ。なんたって首から上しかなく、顔なんてわからないくらいぐちゃぐちゃに溶けているだろうからね。
まあ僕は死んでしまうだろう。でも最後に巴マミだけは助ける事はできたんだ。僕にしてはなかなかどうしてましな人生だったじゃないか。
ああ、最後にマミの笑顔がみたかったね。
そして結局君に謝るっていう僕の夢は叶わなかったな。
最後にマミ、君にいいたい事がある。
その言葉は僕がずっと言いたかった謝罪の言葉ではなかった。
巴マミ。
ありがとう。君と出会えて、君と一緒に生きる事ができて僕は本当に幸せだったよ。
さようなら。