欲望にはチュウジツに!   作:猫毛布

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対話な感じ。
たぶん読みにくい……と思う。


舞台裏の主人公

 誰でも主人公になれる。

 

 

 

 なんていうのはきっと都合のイイ言葉だと俺は幼いながらに思っていた。

 自分の人生の主人公は自分自身である。なんて事は決してない。

 

「マジかよ、笑えるー」

 

 そういう考えだったから、俺はきっと何も得る事が出来なくなったんだろう。中二病と言ってもいい。発症が中学二年生ではない辺りが手もつけられないが。

 自分の事がどうでもいい。関心が持てない。自分がまるで他人の様に感じる。他人だからこそ、どうでもいい。

 けれど、最悪な事に、最低限の生命を維持し続けないといけない。コレはたぶん親に悪いだとか、そういう感情であって、別に俺は俺が死んだところで何も感情は湧かないだろう。死んでるから当然と言えば当然だけれど。

 俺という存在……確か、名前は――いいや、どうでもいいか。これから先の話、尤もスグの話になるけど、俺の名前は譲るのだから俺はもうこの名前では名乗れない。

 

 

 

 俺の人生が歪んだきっかけ――……俺が一瞬だけ俺の人生で主人公になった時の話をしよう。

 簡単な事だった。女にしか扱えないISを動かしたのだ。ちなみに、俺を合わせて二人目。

 俺は特別な人間だったのか。なんて事も感じた。俺だってかろうじて男なのだ。そういった憧れを持ち合わせていないわけじゃない。

 ISを起動したのだって、よくわからない声が聞こえたからだ。初めは幻聴かと思った。

 

 ソコからは検査の嵐だった。血も抜かれたし、ややこしい精神テストもされた。血族関係を改められたし、ソコで唯一俺を人間たらしめていた柱がポキリと折れてしまった。

 ああ、いや、ソレが原因で俺が歪んだ訳じゃない。

 

 話は少しだけ変わるけれど。

 悪役がいる。正義の味方がソレを倒す。コレが一般的な事だ。

 けれど、悪役はいるけれど、正義の味方がいない。だから悪役を倒した者が正義の味方になる。コレが俺の受けた説明――洗脳だったかな? まあそんな所。

 生憎、と言うべきか。幸い、というべきなのか。自分という確固たるソレを持ち合わせていない俺はその洗脳に冒される事はなかった。

 ただし、かなり魅力的に映ったのは……間違いない。

 

 俺はスパイになった。コレは乗り気だった。

 だって、スパイだぜ? 格好いいだろ? そういうのに憧れてもいいじゃないか。

 俺は俺の人生で初めて主人公になった。前述してるけど、俺が人生の主人公になったのは一瞬だけ。後にも先にも、コレが最初で最後なのだ。

 ああ、それで、名前を捨てたのはココ。正確には捨てられたんだけど。まあ、細かい所は別に問題にはならない。

 

 

 

 さて、問題は悪役が誰なのか。

 最初は篠ノ之束だった。政府側の人間、最初に俺を洗脳しようとしたヤツらからは『篠ノ之博士を捕まえろ』と言われた。

 俺は二つ返事で応えた。理由? そりゃぁ自分が主人公だからだよ。だから俺は主人公らしく格好良く振る舞ったのだ。

 篠ノ之博士が標的になり、俺は必死でISの事を勉強した。我ながら初期理論も読み漁ったのは馬鹿だと思う。けれど、それで見えてくる事実もあった。

 篠ノ之博士は悪人ではない。聞かされた話での篠ノ之博士はぶっ飛んでたけど、求めている事は実に人間らしかった。

 俺に人間らしい、などと言われている時点で人間らしくはないのかも知れないけど。

 

 

 

 

 IS学園に入学して、必須書類が届いてない事を知った。最初は政府と学園の不仲が原因だと思った。もしくは学園が警戒していたか。

 どちらにせよ、侵入出来なくては意味もないので書類は俺が書くことになる。

 へらへらと笑いながら、適当に応対する。そんな事は慣れている事なのだ。なんせそうやって生きてきたのだから。

 

 

 

 

「えっと……織斑一夏です」

 

 記念すべき俺が主人公で無くなった瞬間だった。笑えるだろ? 挨拶一つでわかったんだ。いや、直感した。

 ……いや、まどろっこしい言い回しは止めよう。俺は織斑一夏に憧れたんだ。よくわからないけれど、ただただ憧れた。だから、俺はこの時点で主人公じゃなくなった。炉端の意思に逆戻りしたのだ。おめでとう。なんてな。

 

 えっと、それで、何だっけ?

 そう。俺と一夏の会話だ。俺はこの時点ではまだ主人公で居たかった。まあへばりついた怨念みたいだと思ってくれ。

 とにかく、俺はこの時点ではスパイなのだ。まあ情報らしい情報なんてIS理論だけで精一杯だったけど。

 だからこそ驚いたのは織斑と篠ノ之の関係だった。幼馴染だってよ。笑える。政府側がこの情報を渡さなかったのか、渡せなかったのか、ソレはわからないけれど、スパイとしての俺は大きな一歩を踏み出したと思っていた。当然、奈落への第一歩だ。当時の俺は気づいてないけどな。

 

 

 俺が織斑千冬――織斑先生とちゃんと会話したのは深夜帯の話だ。俺の上に乗った織斑先生との会話だ。あー、いや、睦言とかそういうのじゃない。なんせ俺はこの時関節をキメられてたんだから、そういう色っぽい話じゃないのは確かだ。

 アッサリと織斑先生は俺がスパイであることを看破した。そりゃぁ、もう、アッサリと。

 

 さて、悪は誰? という話に戻るけれど。

 俺の中では篠ノ之博士は既に悪役ではなかった。悪役であったとしても、ソレは悪ではなく、悪役なのだ。

 織斑先生との熱い語らい――尋問は実に有意義であった。

 届けられなかった書類は政府の一部の人間がしたことらしい。俺に指令を与えた人間ではなく、別のグループ。

 スケープゴートかよ。なんて思った俺を即座に否定したのは他ならぬ織斑先生であった。

 

 ココで織斑先生は二重スパイの話を切り出した。

 政府とIS学園の二重スパイ……ではない。亡国機業(ファントム・タスク)とIS学園の二重スパイだ。

 日常生活でヘラヘラ笑い続けたのは俺に変化が無いことを示すためだった。織斑先生曰く、監視の目は常にあるから、との事。織斑先生がそういう事を喋るときは問題無いらしい。

 この時点で、俺はまだ喜劇を演じる道化になることは考えていなかった。

 じゃあいつからかって? もう少し待ってくれ。ほら、話には流れがあるだろ?

 

 

 

 

 織斑先生の尋問、及び政府――亡国機業側を騙すのと俺のIS操縦技術向上の為の訓練の約束を取り付けた。

 弱い俺はISの言葉を聞きながら、どうやったらいいのか試行錯誤で頑張っていた。ISの言葉を聞けるってチートじゃね? と思うかも知れないけど、中々にISの言葉通りに動くのは難しい。そもそも基礎も出来てない俺にとっては四苦八苦しながら頑張って動かせる程度なのだ。

 ココで俺は発想の転換をした。ISに聞いてから自分で動くから難しいのだ。ならISに全部任せればいいんじゃね? と。いや、ぶっ飛んだ思考なのは理解してる。ほら、深夜のテンションでぶっ通しで訓練をして頭がおかしかったんだ。

 そこからは、自分の情報を遮断した。幸い、そういう事には慣れてた。そもそも他人である自分を遮断するなんて簡単な事だ。

 視界を閉じ、何も考えずにISに全てを任せる。結果としては大成功だった言える。まあ俺が筋肉痛にならなければの話だけれど。

 

 自分へのフィードバックを考えてか、織斑先生はコレを禁止した。まあ、当然だ。

 ISにある程度の感覚を渡しているからバリア・エネルギーの消費もリアルに伝わる。ゾリゾリ削られていく感じを伝えた時にスゲー嫌な顔されたのは覚えている。

 実際にセシリア・オルコットとの最初の戦いで、近距離からミサイルを受けた時はアッサリと気絶をしたから、問題は大いにあるのだろう。

 

 

 

 

 専用機の名前は、実は無かった。

 黄色い装甲に黒いライン。ISの癖に盾を着けられているのが非常に印象的だった。

 俺がソレに触れた瞬間に、景色が飛んだ。

 白骨の絨毯、そこに立つ白い着流しの女。

 

「また客人かのぉ」

 

 古めかしい喋りをする女は腰元に備えられた刀を抜こうとして、舌打ちをした。

 どうしてか鞘から抜けない刀を大事そうに提げ、女は俺を睨んだ。

 睨んでから、パチクリと瞼を動かした。

 

「お主……もしや声が届いておるのか?」

「まあ、うん」

「なんじゃと!? お主何者じゃ!」

「夏野穂次だ」

「なんと……話も出来るのか……」

「いや普通だろ」

「妾の領域に連れ込んだ者はアッサリ気が狂うて死ぬというのに……」

「怖いわ!」

 

 むぅ、と唸ったコイツ(IS)はどうやらそういう性質らしい。

 何にしろ、気が狂って死ぬというのなら、アッサリと俺を殺してくれても何も問題はない。ふと、そんな事を思って、きっと主人公(一夏)が俺を倒してくれる。なんて考えたのは結構な末期だったのだろう。

 

「……まあよかろう。妾は()()と謂う」

「んだよ、俺と一緒か」

「なんじゃと!? お主も無銘という名じゃったか……」

「そういう事じゃねーよ。天然か、天然さんか」

「むぅ……」

 

 無銘と名乗った女に俺は全てを語った。どうせISと喋れるのは俺だけみたいだし、少なからず無銘に変な同族意識を持ったのも本当だ。

 だからこそ、俺は名もない彼女に――俺と同じ彼女に()()を譲った。そして同時に、彼女を離したくなくて、俺の檻へと閉じ込めた。

 

 

 ここで説明をいれるなら、無銘……いいや、村雨はドコかの最強と戦える為のISでしか無い。戦闘データをISコアネットワークで得て、常に最強を冠する。そういうISだ。

 その事を知ったのはかなり後の事になる。それこそ、本格的に俺の決心が出来た頃の話になる。

 

 対戦乙女用IS。無銘。ソレが正しい彼女の名称だ。そして同時にそこまでしても"対"戦乙女である事がオカシイのだ。きっと戦乙女を冠する存在は鬼か悪魔か、はたまた戦いの神様か、魔王様に違いない。少なくとも、人間じゃない事は確かだ。

 

 

 

 

 

 

 初めて篠ノ之束に会った時の感想を言うなら、頭の狂った美女、という感想だった。

 何がどうなって篠ノ之博士に情報が伝わっていたのか……いや、織斑先生から伝わったのか? まあきっと俺にはわからないだろうけど。

 何にしろ、篠ノ之博士は俺の事を俺以上にわかっていた。よくよく思えばそう思う。

 

 臨海学校で出会った篠ノ之博士はとにかく頭がぶっ飛んでたとしか言いようが無い。この時点で、俺には政府の監視があった筈なのに国家機密をボロボロと出すし、挙句に全部騙している事まで(ほの)めかした。

 きっと監視の目を区切って現れたのだろう。今になればそう思うけれど、あの時は本当にヒヤヒヤした。なんせ新米スパイだったのだから。

 

 夏野穂次……つまり俺の事なのだけれど。名前だけを言えば、俺は三人目のIS操縦者に当たる。当然、メディアから言えば二人目であるし、二人目は俺だ。簡単な話、二人目と三人目は同一人物で、そして俺である。これだけの話。

 ただココで問題があるのが、俺の事を三人目だと言える人物というのは政府の極一部の関係者、もしくはその情報を入手出来る存在だ。

 俺が夏野穂次になった瞬間から、二人目の名前は抹消されている。情報すら消えた。だからこそ夏野穂次は()()()なのだ。

 

 篠ノ之博士による、クソ面倒極まりない会話で分かったことは篠ノ之博士が非常に協力的って事だ。

 新米スパイの為にちゃんと情報を落としてくれている。まあ、俺が気付いたのは少し後なんだけど。

 篠ノ之博士は俺の事――()()()()()()()()の事を一人目と呼んだ。一夏ではなく、俺を保護すべきだと言った。

 ISを動かした事。一夏の初動は彼女の仕組んだモノだという事。同時に俺がISを()()()()一人目の男だという事。だからこそ、俺は一人目だと彼女は言うのだ。まあ存在してないのだけれど。

 ついでに言えば、動かし続けている、という事に関しては俺は二人目になる。だからこそ三人目なんて現れない。

 イカした頭かイカレた頭を持った三人目が出てくる訳なんて無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本格的に、政府と亡国機業の繋がりが見えたのはスコールさんが俺の目の前に現れたからだ。

 俺が捨てた名前を呼んだ時点で、繋がりは見えた。もしかしたら篠ノ之博士みたいに情報を得たかも知れないけれど、ソレはきっと薄いだろう。

 

 そもそも、ここまで二重スパイとして活動していた俺だけれど、実際はまだどちらに着くかなんて決めてなかった。いいや、ある程度は織斑先生に従う事は決めていたけれど、踏ん切りはついていなかった。

 そして、ソレはここまでだった。

 

「織斑一夏に勝ちたくはないかしら?」

 

 この一言さえ無ければ、俺は喜劇の為の道化になる決心がつかなかったかも知れない。

 前述しているけど、俺は一夏に憧れを抱いていた。イケメンだから、という意味ではなくて。

 ただ純粋に、自分では立てない場所に立っているから、憧れた。妬んだ。羨んだ。恨んだ。

 俺は一夏に勝ちたいという気持ちは少なからず持っていた。それは友人として、アイツの隣に立てる様に、相棒と言う俺を親友と呼ぶ一夏を失望させない様に。

 

 だから、だからこそ、一夏を狙う事は許せない事の一つだったのだろう。

 かと言って、この時点で俺がスコールさんを倒しても意味は無い。なら、俺は立場を利用し尽くし、立ち回らなくてはならない。

 

 

 ここでようやく悪役が決まったのだ。

 同時に俺が喜劇の為の主人公(道化)になる事を決心した。

 

 

 

 

 

 悪役を倒すためにはどうすればいいのか。

 悪役を倒すのはヒーローの役目だ。そしてソレは俺じゃない。そんな事は分かりきっていた。

 主人公に成れない俺と、主人公である一夏。わかっているから、計画はアッサリと決まった。

 幸いな事に、亡国機業は()()()()がよほど欲しかったのか、スグに動き出した。

 俺を連れ去り、拷問して、仲間へと引き入れる。ソコでわかったことは()の情報はそこそこに彼らに伝わっているらしい。お金が大好きな事、金の為なら友人であれ情報を売り飛ばす事、女が好きな事。繋がりを大切にしていない事。そもそも繋がりが無い事。

 そんな上辺だけの情報は知られているらしい。ありがたい事だ。お陰で簡単に亡国機業へと入り込めた。

 無銘――村雨を()()()暴走させたのにも理由がある。俺には力が足りないのだ。

 より、亡国機業に魅力的な力が。ついでに言えば、ちょっとだけ一夏に勝ちたいという気持ちもあった。コレは秘密だ。

 より深く、より濃く、より熱く。俺と繋がった村雨が興奮気味に語っていた事も追記しておこう。あとは全力を出せない事への不満ばかりだったけれど。

 

 この時点で俺の立場というのは空中に浮いているようなモノだった。

 それこそ裏では亡国機業と繋がりを持っていたけれど、表ではスパイをやめた状態なのだ。ぶっちゃけ裏切り者として干されている方が俺としては都合がよかった。そういう風に動きもしたけれど、どうやら織斑先生の判断はまた別だったようだ。

 受け入れてくれた一夏達に俺が二重スパイだとバラした織斑先生。バラした時点でのその場所が情報規制をされている場所だと判断して、洗いざらいは話した。尤も、亡国機業と繋がっている事は言わなかったけれど。

 信頼はしているけれど、誰が誰に漏らすかわからない。だから、この情報だけは言わなかった。

 織斑先生に状況を聞けば、政界の方の掃除は政府側で俺を担当していた人がある程度頑張ったらしい。それでも根は深いだろうからまだ油断は出来ないけれど。

 まだ問題はある。二重スパイ、そしてその後の計画を知っている人物は織斑先生と俺と篠ノ之博士。そして政府側にいる二人ぐらいしかいないのだ。

 だからこそ更識会長は非常に厄介だった。政府のスパイである時にある程度の隠蔽工作は学んだけれど、あの人は容易くソレを看破して、俺に接近を果たした。一夏との関係を結ぶ、なんて建前を言っていたけれど、あの人なら普通に関係も結べただろう。たぶん……いや、変な所でポンコツ発揮するからわからないけれど。

 

 そんな更識会長に対抗する為にはどうすればいいのか。簡単な事だった。人質をとれば何も問題はない。

 人質と言えば聞こえは悪いけれれど、実際はある一定程度に仲良くなる事が目的だった。それだけで更識会長の動きをある程度止める事は可能だった。

 妹である簪さんに会うのは簡単だった。ホント、簡単というか偶然会ったからスグに行動に移したぐらいだ。幸いな事に彼女の趣味はある程度把握していたので、ヒーローショーにでも連れて行けば、親交は深める事は可能だ。

 それに時期を合わせるように学園祭が行われる。亡国機業に怪しまれる訳にもいかないので、入場チケットを渡すんだけど、外出すれば更識会長に怪しまれる。いやー、簪さんって便利ダナー。

 マドカにチケットを受け渡して、俺は簪さんの信用を得る為に自分の事を話した。当然、スパイだった事なのだけれど。

 人間、そういった人に言えないような秘密を暴露すればある程度の信用を得れる。ソレはなんとなく知っていた。それこそ、他人に取り入る事なんて常の事だから上手くいった。

 

 学園祭は滞りなく進んだ。それこそスコールとオータムはすんなり潜入出来たみたいだ。IS学園の警備ェ……と思いながらもスコールからある程度の作戦を聞いた。

 一夏から白式を奪うらしい。どうにか出来ないものかと考えていれば更識会長による『灰被り姫』の演目に誘われた。時間を稼げば準備も出来るだろう。

 その事をスコールに伝えて、逃げる時に一夏をオータムが控えているだろう場所へと誘導する。我ながら本当に亡国機業務めの方がいいんじゃないかな、と思えた手腕だった。

 それに一夏には更識会長も着いていたので何も問題は無かっただろう。

 俺は早々に移動を果たして、オータムの回収補助に徹さなくてはいけない。

 オータムはどうやら俺を警戒していた様だけど、知らない筈の"オータム"という名前を呼べば納得をしてくれた。当然、周りにはラウラさんが居たから反応らしい反応は無かったけれど。本当にわかってたんだよな? いや、わかってたんだろ。オータムに聞いたら「ばっきゃろ、そんなのわかったに決まってんだろッ」とか言ってたし間違いないな。

 

 

 さて、ココで問題が起きた。

 更識会長が計画を知ってしまったのだ。俺の心の中はマズいとヤバイでイッパイだった。というかイッパイイッパイだった。オッパイオッパイの方が絶対にイイネ。間違いない。

 アッサリと更識会長に計画を話している織斑先生に俺は冷や汗しか出なかった。馬鹿野郎。鬼に勝てるわけがないだろ!

 

 

 キャノンボール・ファストに関してはソレ程言う事はない。スコールからの指示でアリーナのバリアを時間で解けるようにしておけ、と言われただけだった。

 まあソレが非常に面倒な事になったんだけど……。そう考えれば我ながらバカな事をしていたと思う。でも後悔はしてないから問題ないな。

 

 

 

 

 

 ……さて、七面倒臭い話は少し休憩しよう。紅茶でも飲んでゆっくりしてくれ。

 そうそう、紅茶と言えば、俺の愛しい人達の話をしよう。え? いらない? まあまあ聞けよ。聞いてくださいお願いします。

 

 そう、アレは一目惚れだった。間違いなく、一目惚れだったと思う。たぶん……うーん、今思うとそうじゃないかも知れない。

 それでも変に意識してたのは最初からだったと思う。何よりセシリアはスゲー美人なんだ。もう美人過ぎたね。それに何よりおっぱいが大きいんだ。重要じゃない? 人間は中身だ? おいおい、内臓に恋をするなんてスゲー人種だな。違うって? 別にいいじゃねぇか。おっぱいが大きいことは、いいことだ。うん。

 

 いやいや、こんな話をしてるとまた怒られるんだけど。

 えーと、そう、それで美人なんだ。え? 聞いた? マジかよ。言い足りないんだけど。

 えー、っとじゃあアレだ。メイド服の着てたセシリアの話をしよう。スゲー可愛いの。マジで。ホントスゲーよ。へっへへへ。

 俺が初めて呼び捨てになったらキョトンとするんだ。マジで可愛かったんだぜ。

 

 それで実はもう一人居るんだよ。

 浮気? 違うよ。俺に戸籍が無いから、結婚すらしてないから……。そう思うと悪いことしてるなぁ……。

 えっとそれで、そう。シャルロットの話もしよう。可愛いんだよ。マジで。おっぱいもあるんだぜ。重要じゃない? なんだよ、お前は貧乳派かよ。おっぱいに貴賎なし。ちっぱいも良いものだ……。

 いや、違う違う。おっぱいの話をしたい訳じゃないんだよ。え? 何、する? おっぱいの話。あ、必要ない。そうですか。

 

 それで、シャルロットの事な。シャルロットも美人なんだよ。美少女って言った方がいいのか。いや、俺の美的センスは無いって二人から言われてるし……。

 

 

 

 うん。まあ、俺の大切な人達な。この二人の為に俺は計画に本格的に乗った。ぶっちゃけ世界の為に命を使うとか出来ないし。死んでも気にしないけど、二人に会いたいから生きる理由にもなった。

 そんな二人が学園祭でスコールに会ったんだ。未だに俺を信用してないスコールに。内心慌てたね。さっさと話を切り上げて二人を逃したい気持ちでイッパイだった。

 まあ二人は恋人とか、色々言われてテンション上げてて可愛かったけどさ。スコールも変に「若いっていいわね」みたいな表情してたし。どうしろってんだ。姦しいとかそういうレベルじゃないから。

 

 キャノンボール・ファストで二人が……セシリアが狙われた時は本当に計画を無視するつもりだった。それぐらいにはマドカの事を殺すつもりだった。

 怒りに我を任していた訳じゃなくて、単純に敵だと思ったから殺すだけだったのも手に負えない感じがする。

 スコールが止めなかったらたぶんバッサリしてただろう。間違いないね。

 

 

 タッグ戦前の話になるんだけど、ある程度のコアと対話……つーか、一方的な会話をする事が出来る俺は白式に計画の種を仕込んだんだ。我ながら不自然な動機で一夏を誘い出したから怪しまれないかドキドキしてたね。ホント、簪さんっていい立ち位置にいると思う。

 俺の言葉「死ね」だとかそういう類の言葉と村雨の起動に合わせて雪羅を起動するように伝えた。コレで俺の不意打ちは防がれる筈だ。

 もしかしたら一夏がちゃんと俺を警戒してくれてたらマシだったんだけどな。つーか、更識会長、もっと一夏に警戒心抱かせて。一夏死んじゃう。

 

 

 

 電脳世界で篠ノ之博士と会って計画の打ち合わせを詰めていた。あの人マジで凄いな。俺がこうしたいって言うと「えー、ヤダ」とか言って拒否した挙句、自分で決めていくんだぜ? 俺要らなくね?

 それでもちゃんと俺の事を考えてくれていたみたいで、セシリアとシャルロットの事も計画にちゃんと入っていた。後から聞いたら「君に嫌われて死なれるよりも、適当に恩を売る方がいいじゃん」と言われた。いや聞かなかったことにしよう。何も言われてないッ!

 

 電脳世界に一夏が侵入してくるのは知ってたけれど、随分と早い時間に俺の世界へとやってきた。タイムアタックじゃないんだぞ、と文句を言いたい気持ちを抑えた。

 ともかく、ちゃんと俺を怪しむように、怪しそうな言葉を吐き出して一夏を見送ったけど、アレは無理だ。絶対俺を信用してる。嬉しいけど、違うそうじゃない。シレッとIS学園深部に潜ってるって言ったのに、ちょっとは怪しんでくれ。マジで。

 

 

 

 一夏との戦いで言った言葉は大体本当の事だった。

 一夏の事を羨んだし、恨んだし、妬んだ。まあ理解はしてたけどさー。やりきれねーって事。

 それでもそれが当然の理由に聞こえて、亡国機業が俺の裏切りに集中する筈だ。その隙を狙って篠ノ之博士が亡国機業を掌握する、という計画だった。それでも全部は無理な事はわかっていたので、一部だけを完璧に切り離した。

 俺が裏切ってから、ソコに所属し、そして()()()()に反逆をする。Dr.タバネが全部悪いんだッ! が計画の合言葉になったのは笑った。だいたいDr.タバネが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

「だいたいそんな感じかなー」

「…………お前さ、バカだろ」

「失敬なッ! 俺は阿呆だぞ、()()!」

「ソコは誇る所じゃねぇよ……マジで。親友に裏切られた挙句に親友を叩き斬って悩んだ俺の時間を返せ! 今スグ返せ!」

「世界が平和になったからいいじゃん、スゲーじゃん。さっすがヒーロー!」

「この野郎ォ……」

「ん、まあコレで全部終わったから許して……許して」

「俺は別にいいけど、セシリア達は知ってるのか?」

「…………」

「おい、知らないのか?」

「いや、知ってるんだよ」

「なんだ、よかったじゃないか」

「いやいや、秘密の計画がなんでかあの二人に知られてるんだよ。マジ怖い。何があったの? コレでも計画の実行犯だけなあって、俺の責任で漏れてるっぽくて怖いんだけど」

「いや、俺が知るわけないだろ」

「だよな……簪さんが教えたのかな」

「……簪さんは計画を知ってたのかよ」

「ちょくちょく会ってたからな。更識家ってスゲーよな……マジで。更識会長が仲間でよかった」

「お前に何があったんだよ……」

「情報集めてたんだけど、更識のデータベース入る方が早いよー、って篠ノ之博士から言われて覗いたぐらい?」

「束さんか……Dr.タバネが全部悪い」

「だいたいDr.タバネの責任だ」

「……それで、これで計画は全部終わったんだろ? どうするんだ?」

「そりゃぁ、無職になったからには俺の運命は決まってるのさ」

「ヒモか」

「違ァう! お婿さんだッ!」

「………………」

「やめろぉ! そんな目で俺を見るなァ!」

「それで?」

「まあ、一応死んでる扱いだから、サプライズ的に執事の格好をして潜入しようかなーって」

「……ふーん」

「クックク、スパイとして二年近く活動した俺の本領を見せてやるぜッ!」

「それは楽しみですわね」

「そうだね楽しみだね」

「アイェェェェエエエ!? ナンデッ!?」

「悪いな、つけられた。イヤー、二年モスパイシテナカッタカラナー」

「そうかそうか君はそういうヤツなんだな!」

「はいはい、行こうね旦那様」

「そうですわ旦那様。沢山言いたい事がありますもの」

「お、お手柔らかにお願いします」

「…………」

「ニコッてされたッ! コレ絶対に折檻コースだッ! 俺知って――」

 

 古ぼけた喫茶店の扉が閉められた。




>>平和
 1000点

>>時系列
 結構バラバラです。終盤は一夏に対して話していて、二年程の時間が経過してますし。終盤までの地の文は一夏相手でもなく、セシリアやシャルロットとイチャイチャしてたりしてますし。気分だよ(震え声

>>ちょっと待って、拷問部分がないやん。
 食べちゃいました……。
 拷問なんて見たい人も聞きたい人もいないからカットだッ。忘れてる訳じゃないゾ。

>>アトガキ
 たぶん矛盾は無いはずです。たぶん。いや、どうだろ。
 終わりました。終わったー。よかったー。終われた……。
 ホントはおっぱいを書くためだけの小説だったのにどうしてこうなったんでしょうね。もっとおっぱいだしてホラ。
 実際、喜劇なのかはわかりません。でも誰かがクスッってしてたらいいなーぐらいのアレです。

 一夏君の視点だと熱いバトルモノになります。裏切った親友が悪の幹部になっていて、千冬さんと同等の力を得ている親友と戦い、勝つ。そしてDr.タバネを打ち倒すのだッ!
 みたいな。英雄譚かな?

 何か忘れているような気がする。ああ、そうだ(唐突
 夏休み中に穂次が政府に拉致られて、束さんが居場所を即答している部分。読者の方々に「束さんだからという理由は使わない」と言っていたような気がします。
 政府に攫われてから、協力者二人。()()()()()()人と()()()()()研究者によって救出、篠ノ之博士へ連絡、みたいな流れで居場所が発覚してます。すっかり忘れてた。
 他にも書いてない事がありそうですね(震え声

 何か気になった事がありましたら言ってくだされば解消させます。ある程度は考えてるからへーきへーき(震え声


 ともあれ、コレにて喜劇は終幕です。
 彼はココからようやく下半身にチュウジツになるんでしょ。絞られる側だけどなッ!

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