htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
エレベーター脱出編(といってもそこまで描写は有りませんが)始まりますよ。
夢を見ていた。
昔の夢を。
その記憶は、俺がまだミオンと、同じ程度のチビッ子だったころの、幼かった頃の話だ。
俺の周りには、人が三人居た。
一人は、白衣を着た、とても頭の良かった大人の男の人。
一人は、いつも優しくて、料理がとても上手だった大人の女の人。
もう一人は―
―目を開けるのがまだ億劫だった俺は、代わりに耳を澄ました。
昇降機の独特の機械音が、ゆっくりとしたテンポで聞こえる。
どれだけ寝てしまったかは分からないが、どうやらまだ昇降機は、目的の階層に到着していないようだ。
寝方は、壁に凭れかかって寝ていたようである。
嫌々ではあるが、ゆっくりと瞼を広げていく。
薄く開いた目に写ったのは、昇降機の小部屋に点いている小さなランプと、隅でちょこんと、暇そうに体育座りしているミオン、そして、そのミオンの周囲にいる蛍達。
ふと両手を見ると、左手にはナイフ、右手には拳銃を持っていた。
(寝てるときでも臨戦態勢か)
武器を即座に懐に仕舞いつつ、自分の、危機に対しての強い警戒っぷりに、心の中で、軽く自分自身を嘲笑する。
「行人お兄さん、起きたんだね」
いつの間にか前に来ていたミオンの声で、我に返る。
「ん、おはよー」
悲しいことに自分でも驚くほどに気の抜けた声を出してしまった。
―だが、次の刹那、自分の危機耐性に感謝することになるとは。
「っ!」
急に部屋の光が落ち、昇降機の動きが止まってしまったのだ。
『気を付けなさい、来るわ』
冷静な蛍の声に、更に警戒心を強める。
「あんた達、元は、ミオンちゃんの大切な人じゃねぇのか?」
俺は、シガレットを煙草のように持ち、離すと小さな息を吐いた。
無論、副流煙などは、有りはしない。
『どうして...そう思うの...かしら』
出来るだけ平静を保とうとしている蛍の声は、隠すことが出来ないほど震えていた。
小馬鹿にするように聞こえないよう、注意しながら言葉を選ぶ。
「あの子を護りたいって意思が、犇々と伝わってくるからな」
この時だけは真面目に、そして本気で答えようと思っていた、本心だった。
『...隠す必要は無いと思うよ、蛍』
ふぅ、と軽く溜め息をつくと、影蛍は、蛍の影に寄り添った。
納得がいかない、という風に、軽く項垂れたように地に降りる蛍。
『私から話してもいいかな?伝えられる事は、言える範囲で伝えよう』
影蛍の言葉に、顔を立てに振る。
些細な事でも聞き出せれば、それは俺達の護身にも繋がるからだ。
少し間を空けて、ぽつぽつと、影蛍は語り始めた。
『私達は―』
『この世界を、何度も周回している。それはまさに、無限に続く輪廻のように』
影蛍の言葉を思い出しながら、ミオンを、唯一の脱出路と聞かされていた、俺なら何とか通れるか、位の大きさのダクトにミオンを近付ける。
彼等の忠告は、恐らく全て現実になる。
”何度もこの世界を見ている”味方が居ると、なんと心強い事だろう。
『行人君という、本来この世界に居るはずのないイレギュラーが現れたせいで、絶対とは言えないけどね』
こんなことを言われても、信用できる...出来るかな、うん。
『下よ!』
蛍の声に、また我に返されるが、今回は直ぐ様銃を突き付ける。
まるで水が染みてくるように、じわりじわりと、軽い闇で見えにくい中、黒い何かが、這い寄ってきていた。
「ミオン!はやく行けっ!」
「う、うん!」
慌てながらも、しっかりと抉じ開けたダクトの中に入り込むミオン。
出来た子だ、と心の中で、褒める。
俺もダクトに入ろうか、というその時、足元辺りに、既に影は忍び寄ってきていた。
盛大に舌打ちしたあと、
「beat it!(失せろ!)」
毒舌混じりに大声で怒鳴り、俺は即座に影の脳天辺りを狙い、躊躇なく引き金を引いた。
弾け飛ぶ影が霧散したのを確認すると、拳銃を持ちながら、ミオンの後を追い掛けることにした。
すこーしだけ伏線を張りました。
回収できるようにがんばります。
今更ながら、御気に入りは5人、UAは150越えと、思ったよりもかなり見てくれていることに驚きを隠せません。
10話突破で、更に気を引き締めます。
そして、これまでも、これからも見てくれる御方に感謝を。