htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
よって、かなり短め。
行人お兄さん...遅いな。
私は、目の前に広がる、機械で構成された世界を、私の頭で羽休めしている蛍さんと一緒に、体育座りしながら、不安を紛らわすために見ていた。
行人お兄さんなら大丈夫だと思うけど、やっぱり心配は心配。
大丈夫、と自分に言い聞かせていたけど、やっぱり我慢できなかった。
「...少しでも先に進んでいけば、行人お兄さんの力になれるかな」
ずっと行人お兄さんの邪魔になってばっかりで。
だから、ちょっとでも役に立ちたかった。
その気持ちが、”行人お兄さんを待たないと危ない”という『無くしてはならない』憂いを払い、立ち上がらせる。
しかし。
『...!』
蛍さんが、『行っちゃダメ』と、言いたそうに私の前に、塞がった。
横を通ろうとすると、また前に来てしまう。
「蛍さん、行っちゃダメかな?」
心を込めて、じっと蛍さんを見詰める。
『...』
ちょっとだけ御互いを見詰めあっていると(顔がどっちだかよくわかんないけど)、蛍さんが諦めたように、くるり、と回ったかと思うと、前へ進み始めた。
でも、その姿は、まるで『ついてきなさい』という、大人の人の様に、しっかりした動き。
その凛々しい姿と、蛍さんの暖かい光に、私は、とても安心していた。
...あれ?
黒い蛍さんは何処だろ?私の影に居た筈なのに。
『どうやら不運の女神様は、私達に微笑んでいるようだね...』
「全くだ、くそッ!」
やりきれない気持ちの中、行人君は、ついさっき通ってきたダクトの入口を蹴り飛ばす。
未だ人の手無く動き続ける機械のみの世界に、壁を蹴った時の乾いた音が、何処と無く悲哀を感じさせながら、辺りに木霊した。
―私達は、ミオンが通ったダクトを通ることには成功したが、影に時間を取られ過ぎた。
蛍はミオンと共に行けたようだが、大方ミオンが、我慢できずに行ってしまったのだろう。
「うは、すげえ風だな」
その証拠に、輪廻で何度も使用した、人一人を浮きあげる程の風力を持つ装置が作動していた。
行人君は、余波とも言える強風を受けて、特徴的な外套をはためかし、先ほどの苛立ちを投げ捨てたようにあっけらかんとした表情で、高らかに笑うという、彼らしい反応を見せる。
ただ、奥に見える、風力装置の作動機器の一帯が派手にスパークしてることを見ると、ミオンが派手に弄ったのだろう。
「ほっほい、この風に乗ったらどうなるかね」
『あっ』
迂闊だった。
作動機器の方に視界を向けていると、いつの間にか強風をものともせず、行人君は、風力装置に乗ってしまっているではないか。
予想外の彼の行動に、言葉を漏らす。
青年程度の体重なら、飛ばすのは容易な装置である。
「こりゃあすげえ!鳥の気分ってこういうことを言うんだなぁ!」
案の定、『最高だ!』とでも言いたそうに叫んでいる行人君は、風で吹き飛び、みるみる上へと上昇していった。
...彼の自由奔放っぷりには、私では太刀打ちできないらしい。
何度目かも数えきれない溜め息を吐き出しながら、私は影を伝って彼を追い掛けていった。
どれだけ見ている人が少なくてもッ!
見てくれている人が一人でもいるならッ!
応援してくれる人がいるならッ!
私はッ!全身全霊で筆を取ろうッ!