htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
ご期待に添えるかは分かりませんが...精一杯やらせていただきますね。
『THE DROP(ザ・ドロップ) 私だけの投下時間だぜ』
「うっわ、あっぶねぇ!?」
あ、ありのまま起こったことを話すぜ!
金属の悪魔、その口内の、喉の部分、そこに、謎の突起物を見つけ、自分の予感を信じて、大きく後ろへステップして、距離を置いた直後、先程俺が居た場所は炎の海になった...
な、なにを言っているかわからねーだろうが、俺自身も、あの突起物が火炎放射機だと気付くのに数秒かかった...
頭がどうにかなりそうだった...
グレネードをぶちこんでも全く傷つきやしない脚部といい、戦車や影の化物とか、そんなちゃちなもんじゃない...
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...
およそこの通路は数百メートル。
そして、進む道は、完全にデカブツに居座られてしまい、抜ける道はなし。
更に、じりじりと、ゆっくりではあるが、二足の脚で這いずるかのように近付いてくる。
後ろは、ここへごみを落とすためのダストシュートのパイプと、謎のもう一本のパイプ、そして壁。
逃げようとしても、上から降ってきた貨物用のトロッコのせいで逃げられない。
いよいよ、腹を括るしかないか?
舌打ちしながら、ジャムを起こした銃を懐に突っ込み、グレネードを構える。
後退りしたとき、太股辺りまで、何かの塊のようなものが、脚に当たる。
まさか、段差か?
歯噛みし、脚が当たった辺りを、ちらっ、と見てみると...
一人の青年が、『金属の歯車』擬きと死闘を繰り広げる中、黄色く輝る蛍もまた、一種の死闘を掻い潜っていた。
『頼んだよ、蛍...』
流れ行くベルトコンベアの先の、残った塵を、幾つも取り付けられた火炎放射機で焼き、上顎、下顎に着いた、丸で牙のような出っ張りが、焼かれた塵を、だめ押しに砕く。
回避不可能の、まるで悪魔が大口を開けたかのように、何度も凶悪な牙が昇降するスクラップ機を黙視し、蛍が成功するのを祈り、天を仰ぐ影蛍。
蛍は、所謂漆黒の壁に阻まれた迷路を、静かに、冷静に、そして疾く潜っていた。
だが、ここで、この迷路を知らないものは、ある一言を口にするだろう。
たかが迷路に、何故冷静沈着に進まねばならないのか?
蛍は、その理由を、身に染みて知っていた。
漆黒の壁に触れた途端、まるで何処かの『ダ』から始まる掃除機のような吸引力で、肉体もろとも、その言葉通り”喰われて”しまうのだ。
一度触れれば、逃れることは出来ない。
それはまるで、怨霊の呪いのごとく。
『やっぱり集中力使うわね...』
息があがっている素振りを見せつつ、迷路を鮮やかにすり抜けていく蛍。
方向感覚がおかしくなっても当然の道を、確りと辿っていっている。
迷路の更に障害となる、高圧の電流を纏った棒さえも、水が流れるように、回避していった。
もはや、幾度の輪廻で経験済みの彼女から見れば、攻略するのも容易いのかもしれない。
ミオンを護らねば、という意思も、関係しているだろう。
常に『精神統一』していたかのような読みと動きは、危なげなく、二分もかからず迷路を突破させた上に、ミオンがスクラップ機に到着してしまう前に、スクラップ機の機能を停止させるボタンへと辿り着かせる。
流石に堪えたのか、人ならば肩で息をするほど、蛍は、疲れたように、ぜぇぜぇと息継ぎしていた。
『はぁ...はぁ...止まりなさいッ!』
少しふらつきながらも、全力でボタンにタックルをしかける蛍。
カチッ、という小気味よい音が響き渡った。
『お疲れ様、蛍』
影蛍は、排熱しながら少しずつ、鈍化し、最後には完全に沈黙したスクラップ機を見て、ベルトコンベアの、下からしか出ることが出来ない程しか隙間がない、一方通行の隙間から這い出てくる蛍に、労いの言葉をかけた。
『まだ安心できない...この機械の口の中はダストシュート。そしてその先には』
息を荒げながらも、悠然と空に浮く蛍は、警戒の色を全く薄めない声で、強く言い放つ。
『あの化け物兵器が居るんだから...!』
あの大口スクラップ機の口内って、ダストシュートという感じがしますけどねぇ