htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
さぁ、始まりますよー。
デカブツと行人の距離...およそ3、400メートルまで詰められる...
本命の行人は、後ろに下がることが出来ない...
だが、今、彼に天運が降りようとしていたッ!
「こいつは...」
行人は、脚に当たった”何か”を拾い上げる。
それは―
「物騒だな...」
彼が力を入れて押さなければ動かないくらいの大きさと重さを持つ正方形に固められた爆弾の数々だった。
もし、これがデカブツの火炎放射機で点火でもしたら、ここら一帯は消し飛ぶのではないか、というほどの数。
御丁寧なことに、表面には、”危険”と、ペンキで、でかでかと書かれている。
だが、表面辺りに当てても、これほどの爆弾でも効かないかもしれない。
その考えが、行人の思い切りを阻害する。
「...まてよ?”表面”?」
訝しげに爆弾を見詰め、考え込んだように腕組みをする行人。
しかし、その思考時間も、数秒に満たないものだった。
「言うなれば、”表面”じゃなくてもいいってことか!」
勝てない、という邪魔な思考を払拭出来た行人は、指を鳴らすと、悪い笑みを浮かべた。
巨大な機械は、ここら一帯の大気を揺らす程にけたたましい咆哮をあげた。
その咆哮に応じ、ひび割れた天井が崩れ、幾つも瓦礫が辺りに落ち、散乱する。
構造を言うと、この咆哮は、獣のそれとは、全く違う。
幾つもの部位の鉄が擦れ、ガラスに爪を立てたときの不協和音のように、まるで生き物の咆哮に疑似した音を立てるのだ。
悪魔の兵器は、侵入者を消し去るために、重く響く足音を立てて、侵入者に近づいて行く。
「おいおい、その顎は飾りか?噛み付くなら今の内だぜ」
不意に、行人は、影から現れ、不敵に笑みを溢した。
数メートル程度の範囲まで、自ら化け物に近付く。
どうみても自暴自棄...痩せた考えの馬鹿にしか見えない。
忌むべき侵入者を目前にした兵器は、まるで走るように歩を早め、上下の顎を打ち鳴らし、大きく口を開き、獲物を食い千切らんと、目の前の脆い人間に突撃した。
一つの球体が、行人の掌から零れ落ちる。
そして、侵入者が居たところは、近くの地面と共に、クレーターを残して丸かじりされた。
獲物を食らい、勝ち誇ったように咆哮をあげ、上下の顎を何度も昇降し、口の中の異物を何度も噛む。
だが、鉄の兵器は、違和感を感じたかのように、急に咆哮を止めた。
気付いたときには、もう遅すぎている。
その直後、轟音と共に、兵器の口内は、強烈な大爆発を起こした。
「爆発したねぇ」
俺は、掌のピンを其処らに投げ捨てながら、塊爆弾とグレネードの二重苦に驚愕し、大きく体勢を崩す化け物兵器を嘲笑うようにケラケラと笑ってやった。
どうせ死ぬなら賭け事だ。
仕掛けは至って簡単、俺の背後に爆弾を持ってくる。
そして、化け物が噛み付いてくるのを避ける直前に、ピンを抜いたグレネードを爆弾付近に落とす。
点火源が必要かもしれない爆弾も誘爆できて、一石二鳥ってこった。
まぁ、代償として、コートの裾は食い千切られたがな。
勝ったッ!第2ステージ完ッ!
勝利の微笑を浮かべ、外套のポケットに手を突っ込む。
「行人お兄さん!」
不意に後ろから聞こえた、護るべき少女の声に、驚きながら振り向く。
ダストシュートのダクトであろう所に、ふらふらとした足取りで駆け寄ってくるミオンと、辺りを警戒しながら空に揺れる蛍、そして、ミオンの影に入りつつ、俺に近寄る影蛍がいた。
『まさか、あの機械を倒したのかい?ミサイルは?』
驚きの色を混じらせ、影蛍は言う。
まてよ?ミサイルなんてあったか?
俺が見たのは火炎放射機とやたら強い顎だけ...
まさかッ!?
俺は、まるでニュータイプのような、嫌な予感が走るのを感じ、ジャムった銃を癖で構えながら、高速で振り向いた。
嫌な音を立てながら、ゆっくりと立ち上がっている化け物の機械...
その化け物の口の中には、見紛うことなき、俺の身体以上を悠に越えるほどの大きさの、黒いミサイルがあった。
あんな大きさのミサイル、こんな密室で直撃したら滅びるだろ、人の身体じゃ...
ドン引きしながら、打ち出し体勢を整える機械を冷やかに見た。
『...悪足掻きも甚だしいね...』
あのどでかいミサイルを見ても、全く焦らず、何故かデカブツのミサイルの方に漂っていく影蛍。
何か策があるのだろう。
『行人!ミオンをひっくり返ったトロッコの中にいれてっ!』
意外なことに、冷静沈着に影蛍に対し、鬼気迫る勢いで蛍は叫ぶ。
蛍の叫びは、影蛍の策を共有しているかのように見えた俺は、溜め息をつきながら足早にミオンに近付いた。
「ミオンちゃん、ちょっとごめんねー」
「ひゃっ!?」
有無を言わせる必要なし、あの蛍が叫ぶなんて、かなり厄介なことなのだろう。
結構力任せにミオンを抱き抱えると、付近に幾つかある一つのの、ひっくり返ったトロッコの隙間に滑り込んだ。
あのでかさのミサイルだ、耳をつんざくってレベルじゃない音が出るだろう。
鼓膜もどうかなるかもしんねえな。
そう考えた俺は、出れるだけのトロッコの隙間を、デカブツの反対方向に開けておく。
「耳を塞いどきな、ミオン」
「えっ、あ、うん」
訳のわからなさそうに周章狼狽するミオンだったが、ちゃんと自分で、自分の耳を塞いでくれた。
俺も、焦らずに耳を塞ぐ。
その直後、強烈な爆発が起き、ゴウ、という風圧と、俺が使用したときの爆弾とは桁が違う轟音が、俺の聴覚を支配した。
終わったッ!第二章完ッ!
「ほーお、じゃあ第三章は誰が主人公を努めるんだ?まさか(ry」
いや、主人公はミオンちゃんですから。
ミオンちゃんの視点は少なめですけど依然かわりなくミオンちゃんですから!