htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
正直すみませんでした。
俺は、轟音で失神しているミオンを引っ張りながら、トロッコから這い出た。
『トロッコが無かったら即死だったわ...』
いつの間にか、蛍もトロッコに入り込んでいたようだが、まぁそんなことは知ったこっちゃない。
というか、ヘルメットじゃねーのかよ、そこは。
地味に気になった思考をポイ捨てしつつ、依然警戒しながら、周囲を見渡してみる。
辺りは真っ黒焦げで、スクラップされた部品が、綺麗に鉄屑と化していた。
そして、デカブツの居たところを見てみる。
俺の目に入ったのは、二つ。
『終わったよ』
何事もなかったかのように悠然と影に潜む影蛍。
もうひとつは、原型を留めていない、数えきれない破片と化した兵器だった。
「うーむ...爆発四散どころか爆発百散はしてるんじゃね?」
冗談混じりに笑うと、不安定に引き摺っていた眠りのお姫様を、安全におぶってやる。
『ミオンに何かしたら、許さないわよ?』
鋭い攻撃的な、容赦のない蛍さんの言葉は、俺の精神に10万くらいのダメージを与えた。
ついでに、変な性癖疑惑をかけられ、更に何万かはダメージをプラス。
...実際に見に覚えがあったら即死だったな。
心のヘルメットなんてものは存在しないのである。
「...何故だ...何故上手くいかないッ!」
色々な機械に囲まれている中、頻りに手を動かしていた男の人が、目の前に横たわっている”おぞましい何か”に、叫んでいた。
男の人の目は、見られていないはずの私が、震えてしまうほどに怖い。
その人の周りには、変な筒みたいなものがあって、”何か”が幾つも浮いていた。
気持ち悪い。
「■■■■」...ひっく」
男の人のいる世界の”外側”にいる”私”は、最早嗚咽を隠すことなく、ずっと泣いていた。
次に目をぱちぱちと明け閉めすると、別の部屋が見えた。
その部屋の光景に、私は目を奪われる。
部屋には、幾つも”私”が眠って―いや、”転がっていた”。
でも、あの”私”達は、”外側”にいる子と同じで、よくわからない角がなかった。
料理に出てくるお魚さんのように暗い目をしていた女性は、忙しなく脚を動かせ、幾つもの機械に足を運んでいる。
そして、唐突に、唯一機械に凭れかかり、眠っているかのように動かない”私”の所へ来て、前屈みになる女の人。
「待っててね...絶対起こして見せるから、■■■」
女の人の声は、とても辛そうだった。
「...ねぇ、どうして気付いてくれないの?ここに私はいるよ?その子は私じゃないよ?」
見るに耐えないほどに、涙で顔を歪ませた”私”は、力なく崩れ落ち、言葉を紡ぐ。
「お母さん、お父さん」
”私”の目は、生きている人の目では、もう、無かった。
行人君は、普通に寝てしまったミオンの面倒を見ながら、『森』に出るための、とても長い階段の途中で、壁に凭れかかり、前のように銃を持って眠っていた。
ミオンもぐっすり眠っていて、どんな幸せな夢を見ているのか、表情も柔らかく、寝言も可愛らしい、というよりお花畑なものだった。
『...どうして、こうなってしまったんだろうね』
心の内に貯めておくことが出来ず、つい独り言のように溢してしまう。
私達が、”造った”ことがそもそもの始まりだったのかもしれない。
いや、十中八九そうなのだ。
でも、受け入れられる訳がないだろう。
なにも悪いことをしていない、まだ無垢な大切な命を散らすなんて。
『今、そんなことを考えない方がいいと思うわ』
独り言が、余程大きかったのか、ミオンを見守っていた蛍が、淡々とした言い方で、ぽつぽつと呟く。
だが、彼女の声は震えていて、心境は穏やかじゃないことが、ひしひしと伝わってくる。
蛍も分かっているのだ。
この輪廻の原因は、私達二人が起こしてしまった『人間の禁忌』にあると言うこと。
幼い子供の居場所を、私達が勝手に”奪って”しまった子と。
そして、その幼い子供の憎しみが、永久の輪廻と言う地獄を、一人の少女に矛先を突き付ける事になってしまったことを。
償うために、ミオンの手助けはしてきた。
それでも、この世界は。
真っ黒くなった幼い娘は、地獄から這い出すのを許さなかった。
『...ミオン、すまない...』
私達が、研究者で無ければ。
私達が、技術が無ければ。
”私の目の前にいる”
これはちょっと原作知ってないと理解不能かもしれませんね...(困惑)