htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
...申し訳ないです...
この森は、地獄だ。
恐らく、俺が見てきた中でも、ハイクラスに位置する程に。
幼い少女の死体が、全て見た目が同じな上、無数にある。
こんな光景、地獄や、悪夢と言わず、なんと言おうか。
俺は、蛍に上を向かせないようにしながら、謎の扉に歩み寄っていく。
近くで見れば見るほど大きな扉だ。
俺を二人縦に積んで、やっと届くか、くらいの大きさである。
それに、妙な紋も彫られていて、更に気味悪さを引き立たせている。
「変な扉だね」
ぼそっ、と後ろで、ミオンが呟いた。
俺は、まじまじと見たり、手で触れられる位置まで近付いてみる。
よく分からないが、扉で隔たれた先から、身の毛が弥立つような、嫌な空気が流れてきていた。
まるで、怨念を一塊に固めたものが、目前にあるかのようだ。
一言で言うと、『怖い』。
その感情を押し殺しながら、謎の扉に、手の平を当ててみる。
その直後だった。
一瞬、目の前に一人の『少女』がフラッシュバックした。
その『少女』は、風貌、髪型、眼の色、全てがミオンと、限り無く近い。
一目見て分かる違いと言えば、あの特徴的な角が無いことのみ。
そんな『少女』は、刹那的にしか見えなくとも、俺を間違いなく見ている。
そして、小さな微笑みを浮かべていた。
目に籠った感情は一瞬過ぎて読めなかったが。
あの『少女』の視線、微笑み。
何故か、何処と無く懐かしい。
だが、まだ何か、忘れてはならない、大切なものを無くしているような―
「行人お兄さん!」
「ぐはっ!?」
突如、耳元で、ミオンの声が凄まじい音声で響き渡る。
幸か不幸か、俺は扉から手を離し、一発で現実に引き戻された。
鼓膜のダメージがヤバいが...
平衡感覚を上手く捉えられず、ふらふらとした足取りで、近くの木に手を置く。
別に悪いことをしたわけではないのに、俺の様子を見てか、ミオンは泣きそうな顔になって、平謝りした。
「ご、ごめんなさい...えっと、その...少し様子が変だったから、こうやったら聞いてくれるかもと思って...」
いやその理屈はおかしい。
...と、言いたいところだが、蛍達が見てる中で、そういうことは言うべきじゃないだろう。
『大丈夫だ』と、ミオンに一言返してから、俺は、周囲に、道等が無いか探すため、辺りを見回してみる。
すると、暗くて良くは見えないが、少しだけ、何か奇妙なものが少し離れたところの地面に絡まっているのを見つけた。
「蛍、彼処照らしてくれ」
俺は、小声で蛍に囁き、気になった所を指差す。
蛍が、その場所を照らすと、数歩分位の地表の姿が露になる。
その地表は、刈ってもまた生える謎の蔦が、足場としても充分すぎるほど太く、また、その蔦の下には、空洞のようなものが見えていた。
ミオンを連れて、その蔦の位置へと足早に駆けだす。
足元まで近付いた俺は、蔦の下の空間を調べるため、ナイフを取りだし、蔦に突き刺してみた。
が、確かに刺さってはくれたものの、貫通しきる事は全くなく、かなり太い、という事が分かる。
それに、ナイフ自体がイカれてしまっては、元も子もありはしない。
「こんなもん切ろうとしたら、数時間かかるぞ...」
俺は、面倒臭さに耐えきれず、呟きと共に、盛大に溜め息をつく。
そんな俺を見て、此方に寄ってくる淡い影の光が一匹。
『私なら切断できるかもしれない』
あ、そういえば、影蛍は、影の中から、影の本体に作用できるんだったか。
エレベーターに乗る前のデカブツに追い掛けられていた時、天井落としの決め手になってくれたのも影蛍だからな...
賭けてみる価値はある。
「頼んだ」
ほぼ零距離でないと聞こえない程小さめに、俺は呟いた。
announce:乱入者の状態が『異世界から出ていくついでにミオン達と行動』から、『この異世界に来る理由になった記憶を思い出し始めている』になりました