htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
付近には、二体もの『宿主』が、地に落ちていた。
そして、天井には、もう『宿主』は無く、伐られた無惨な蔦が残るばかり。
生存本能を、完全に露にした『塊』は、『宿主』の身体をまとっている蔦を切断していく影蛍にすら気付かない程に、冷静さを欠いていたのである。
それだけなら、この地獄からは、直ぐに抜けられたのかも知れない。
だが、影蛍に見向きもしなかった『生存本能』を一身に向けられていた対象は、ただでは済まないだろう。
今の状況も、例に漏れないものであった。
一心不乱に、強烈な叫びをあげながら、触手と化した木の根を古い、目下の『細菌』を排除しようとする『塊』。
「ちっ!しつこい奴だ!」
苛立ちに声を震わせ、『塊』の攻撃を、息も絶え絶えに紙一重で避け、また一体の『宿主』を持ち上げると、人喰い植物へと、限界の脚を使って走る行人。
「...行人お兄さん...」
――その二者を、ミオンは岩影に隠れ、身体を恐怖に震わせながら、目を凝らして動きを見ていた。
彼女の目は、最早、捕食者に追い立てられている兎の物ではなく。
怯え、すくみながらも、『何か』を、『塊』の暴れ方を逆手に取り、じっと待ち、身体を潜めていた。
ミオンの様子の変化に気付いたのか、蛍が、岩影で、何か行動を起こそうとしているミオンの付近を照らし始める。
その蛍を見て、ミオンは蛍の近くへと詰め寄った。
「蛍さん...ちょっと、私やりたいことがあるの」
蛍の零距離で、小さく、何かを囁くミオン。
自分の位置を教えないように、静かに、蛍へと語りかける。
その話が終わったとき、蛍は、頷くかのように、身体を縦に振った。
残り一体...それさえ、あの植物に食わせれば、資料通りならば、この化物は死ぬはずだ。
だが、宿主をほぼ全て切り離したというのに、何故、更に攻撃が猛っているんだ?
もしこれで、『宿主切られてもまだまだ余裕です』とかになったら、絶対俺死ぬな...
「ちっと...まずいなぁ...」
方膝を地についた状態で、頬から垂れる血を、袖で拭き取りながら、俺は苦笑を浮かべる。
残り一体の『宿主』も、俺の居る壁際の、真逆の位置に落ちている。
だが、もう俺には、全力でそこまで行く体力は残っていない。
つまりは、もう御手上げの状態だ。
もし手榴弾を投擲して、宿主を破壊できたとしても、今の体力じゃ無理がある。
さて、どうしたものかな...
そんな対抗策を考えていても、無論化物は、待ってくれる筈もなく。
反射的に回避したものの、先程と変わらず、鋭い刺突が、俺の前髪を払った。
もう、刺突は避けられまい。
化物の目が、俺を捉えた。
あと数秒したら、俺は死ぬだろう。
意外にも、穏やかな気分であった。
が、次の瞬間。
『ギグッ!?』
急に、化物は驚きを隠せないかのように、息を詰まらせたような声をあげた。
何が起こったのかと、化物の方を見てみる。
いや、正確には、化物に護られていた『宿主』の方を見たのだが――
本来あるはずの『宿主』は、姿を眩ませていたのだ。
化物は、軈て苦しみを露にし、喘ぐように叫び、身体をあちこちに揺らす。
その隙を見計らって、ふらふらしながらも、俺は立ち上がる。
一体何が起こった?
その疑問の答えは、化物の叫びに混じる、『不協和音』にあった。
耳を澄まさねば聞こえない、あの気味悪い『人食い植物』の、肉を噛み砕き、呑み込む音。
その音が、微かに聞こえてくる所には、真っ青な顔をして、へたりこむミオンの姿があったのだ。
――まさか...ミオンは、あの気味悪い『宿主』を、彼女自身で運び、植物に喰わせたというのか?
なんて子だよ...気丈なものだ...
俺は、小さく、掠れた笑いを溢す。
もう、その時には、化物の声は、聞こえず、化物自身も、まるで萎びたかのように、目の光も消え、『その命を散らしていた』。
安心と、不意に切れた緊張が、俺を襲う。
俺の意識が解け切るまで、そう時間はかからなかった。
ぶっちゃけ、第3ステージから4ステージへ行くときの方法忘れた...
あれ、知り合いに前借りただけだから、厳しいのなんのって...