htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
ここで私は、止まるわけには行かないッ!
あ、乱入者編、始まりまーす。
「全く、ここはほんとにどこなんだ?」
『謎の影の化物』を、なんとか撒ききった行人は、御気に入りのシガレットをくわえながら、髪をわしわしと掻き毟っていた。
―彼の頭の中は、半ば混乱状態だった。
それもそうだろう、のんびり寝ていた筈の彼には、起きたら別の世界に来てました、なんて、理不尽且つファンタジーな事は、起きたことが無いのだから。
しかも、彼からしてみれば、薄暗い物騒な所へ連れてこられるわ、化け物に追いかけ回されるわ、散々もいいところなのである。
あまつさえ、更に行人を驚かせることがあった。
「...なんで小一時間は歩いたはずなのに他の人や、あの化物共の気配が感じられねーんだ?」
もしかして、俺って最高にツイて無いんじゃないか?
負の感情を殺すように、音を立ててシガレットを噛み砕くと、やれやれ、とばかりに大きく彼は、溜め息をついて、深い闇に包まれた天井を仰いだ...
―この時、ずっと適当に、且つ下方向を見ていたのに、たまたま、”ある場所”に辿り着いた彼が、果たして不運と呼べるのかは、定かではない。
「なんか、ここ、驚かされてばっかだな」
前方、悪態を付く彼が見つけたのは、幾つも壁に穴が空いている、どでかい研究所のようなものだった。
周囲に柵のなれの果てのようなものも、沢山存在していた。
しかし、彼が目を奪われたのは、そこではない。
人のビルで言う三階辺りの壁の穴に、真っ暗な中、明らかに不自然な灯りが見えたのだ。
「...jackpot、やっぱり悪運は強いらしいな」
指を鳴らして、嬉しそうに口笛を吹き出す行人。
その一室に人が居ると踏んだ彼は、意気揚々と、”柵だったもの”の鉄屑を跨いで、建物の入口と思わしき所へ走った。
とは言うものの―
「閉まってる」
残念なことに、入口の扉は、無情にも施錠されていた。
ピッキングをしようにも、それ専門の器具を、運悪く彼は、持ち合わせていない。
―正確には、最近ぶっ壊したばかりなのだが。
今の状況での鍵付き扉は、余程彼にとっては、面倒臭かったらしい。
「...実”弾”行使でいいか」
素で舌打ちしながら、行人は右手を、外套の懐に突っ込んだ。
―懐から出てきた彼の手に握られていたものは、これまた真っ黒な無骨な拳銃だった。
45口径程度の自動拳銃だが、銃身が少し延長されていたり、妙な改造が施されていた。
彼は、不敵な笑みを湛えて、銃を鍵穴に向け、狙いを定め―
そして、漆黒の銃口から、一つの弾丸が発射された。
強烈なノズルフラッシュと、銃声、破壊音が辺りを響かせる。
「廃墟レベルなのに鍵とか論外だろ」
無惨に貫かれた鍵穴を持つ扉は、愚痴を溢す青年に、蹴り飛ばすような勢いで開け放たれた。
同刻―
『そんなっ!銃声!?』
ミオンを護る為に、彼女の近くを周回していた私は、突如聞こえた銃声に慌てふためいていた。
今の私はしらない。
この常識が崩れた世界に、乱入者が来ていることを。
『今まで、銃なんてものはこの世界には...」
もしかして、新手の影だろうか?
そうだとしたら、絶対にミオンは殺されてしまう。
―何に変えても護らねば。
梯子を登る音が、どんどん近付いてくる。
どうすればいい?
解なんて、無いに等しかった。
この身体では、攻撃は勿論、邪魔も出来ない。
ミオンも、ずっと小一時間は眠ったままだ。
万事休すだ。
ごめんね、ミオン。
何度、こう謝ったことか。
もし、人の身体であったら、幾度ミオンを救えただろうか。
梯子から、人影が身を乗り出してきた。
そして、身軽に、私達と同じ床に辿り着いてしまう。
最期に、その人影の正体を見てやる、次の為に。
「...あの子、角生えてね?」
人影の方から、何とも覇気の無い、苦笑いを含んだような声が聞こえた。
―人影の正体は、古めかしいコートを着て、『どういうことだ?』とも言いたげに頬を掻く青年であった。
あれ、原作もう無くないですか?