htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
プロットが出来ているのに...
すまぬ...すまぬ...
「うわ...」
ついつい彼が、鉄骨がむき出しになった壁を通過した先の、目の前の壁を見て、うわ言のように呟いた。
それもそうであろう、あんな扉迷宮を頑張って抜けてきたというのに、まさかそれが、行き止まりだとは。
まさかそんな事はないだろう、と周囲を確認するが、あるのは土塊で出来た三方向の壁のみ。
人一人入れる程度の穴は、先程自分達が通ってきた穴しかなかった。
土塊の壁を叩いてはみるものの、特に空洞があるような音はしない。
結局見つけられたのは──
「なんだこの穴は」
「わかんない」
手を開放されているミオンは、行人の呟きに、律儀に答える。
彼女等が見つけた穴というのは、照らさないと全く見えないようなもので、地面と壁の設置部分にぽっかりと空洞をあけている。
屈んだミオンでもやっと入れるか位の大きさしかない小さな穴だった。
ミオンに行かせれば万事解決かもしれない。
が、そんなあからさまに空けている所に女の子を放り込む畜生が、何処にいるというのか。
蛍に内部を照らさせた所、奥に地面に着いているタイプのスイッチがあるようだが、残念ながら手は届かない。
かと言って、荷物の中の物でスイッチを押す、なんて器用なことも出来はしない。
何故なら、そこまで届く柱状のものは無いからだ。
どうしたもんか、と彼は呟く。
考えて考えて、色々な行動に移したものの、結局効果は無し。
お手上げだ、彼が悲鳴をあげようとした、その時。
髪の毛に、パラパラと土が、上から舞い落ちた。
つい咄嗟のことで、一瞬視界を奪われたが、そのまま急いで後ろに飛んだ。
目にかかった土を拭い、土が降ってきた天井を見やる。
すると、真っ暗で先のみえない暗闇から、茶色の何かが落ちてくるのが見えた。
鳥の羽根や消ゴムのような小さな物ではなく、そこそこの大きさがある。
音もなく落ちてくる『ソレ』に、二人と二匹は釘付けになっていた。
そして、それから数秒後、ドサッ、という乾いた音とともに、『ソレ』は土塊で出来た地面に落ちた。
どれどれ、と言いたそうに、行人は近付き、『ソレ』の正体を見破る事に成功した。
──なんの変鉄もない、ミオンよりも少し小さいくらいの木箱だった。
蛇や邪でも出ると思っていたのだろうか、行人はそれを見て、少しつまらなそうに溜め息をつく。
一方ミオンは、その木箱をまじまじと見つめると、訝しげな顔で、口を開いた。
「これ...あの穴に入れられないかな?」
ふと、小さく響くミオンの声を聞き、行人が彼女の方を振り向く。
そして、『よく気がついたな』とでも言いたげな、感嘆と敬意の視線を、ミオンに向けた。
「早速試してみようじゃあないか」
行人の言葉に、ミオンは頷くという形で、推定の意を表す。
足早に行人は、ミオンと一緒に木箱を押しながら、穴へと向かっていった。
「それっ」
力一杯ミオンが穴に木箱を押し込むと、木箱はするりと穴に入り込んだ。
そして、カチッ、という小気味の良い音が響き渡る。
一体何が起こるのだろう、と行人は、不謹慎ながらも興味津々のようだ。
──その時、茶色の地面が揺れた。
一瞬、木箱が砕けたかのような音が響くが、それを意に返している暇なんて無い。
「うぉ!?」
「きゃ!?」
急な時揺れに、なすすべなく二人は地面に倒れ込む。
揺れが収まった後、一体何事かと、二人は辺りを焦りながら見回した。
...とんでもないことが起こっていた。
それは──
「入口が無くなっている...?」
入口があったはずの背後には、そこらの壁と変わらない土塊しか無かったのだ。
完全に跡形もない。
まるで、元々入口なんて無かったように。
「と、閉じ込められちゃった...?」
最悪の出来事を想定したのか、勘の良いミオンが青ざめる。
行人は、どうしたものかと腕を組んでいたが──
「...まてよ?」
ふと、行人が、何か気付いたかのように、先ほど木箱を放り込んだ穴の方を向く。
そこには、『何故か穴が、入口同様に跡形もなく消えていた』。
「まさかとは思うが...地盤が上昇でもしたのか?」
現実ではほぼ有り得ない憶測を、行人が呟く。
かといって、彼も本当にそうだとは思っていないだろう。
だが。
『良い勘してるわね...正解よ』
いつの間にか傍によっていた蛍が、彼の言ったことを推定したのだ。
蛍が推定したということは、彼の憶測が正しいことを証明している。
彼の口から、思わず『嘘だろ蛍...』という言葉が漏れるのも、仕方ない。
『穴に木箱を入れていく...貴方達の考えは、正しいわ』
くすりと笑いながら、蛍は行人に囁く。
それを聞いた彼の目は、次の穴探しへと向かっていた。
4-2は花種でスイッチが面倒だった記憶がッ