htoL#NiQ―無垢な少女の輪廻への乱入者 作:通行人 放浪
というか既にサブタイトル着けにくいorz
利き手の右手で、外套のポケットから小さな紙箱を取りだし、蓋を開けた。
そして、シガレットを左手で取りだし、くわえ、箱をポケットに戻し、瞑目する。
平常心、平常心だ。
見たことがない幻想的な見た目と光を放つ蛍と、角が生えたブロンド髪の女の子がいても、焦ることはない、常識なんて捨ててしまえばいいのだ。
逆に考えるんだ。
―『仲良くなっちゃってもいいさ』、と。
俺は、充分に落ち着きを取り戻し、目を開いた。
『...一体何者なの?』
「えっ」
女の子を護るように俺の前に佇んでいた蛍が、喋った...女性の声で...
落ち着け、素数を数えて落ち着くんだ。
2...
3...
5...
7...
11...
素数は1と、自分の数でしか割れない孤独な数字、いざという時、俺に、理解不能な事態を乗り越える勇気を与えてくれる...
―尚、この間、数秒である。
ポーカーフェイスのまま、シガレットを煙草のように持ち、ふぅ、と俺は、軽く息を吐いた。
「蛍さん、俺は、あんたの敵じゃない」
『...え?』
相手が蛍であるため、全く表情は分からないが、人間なら、多分鳩が豆鉄砲でも食らった顔をしてるんじゃないかね。
そう思えるほど、蛍から返ってきた声は、気の抜けたものだった。
『...起きたらこの世界に居た?』
「うむ」
蛍が訝しげに言うと、警戒のためか、俺の周囲を回り始める。
そして、唐突に、俺の目の前まで、急速に迫り、止まった。
『本当に、ミオンに危害を加えないのね?』
ミオンと呼ばれているのは、恐らく倒れている女の子だろう。
むしろ、そうとしか思えないが。
「別にとって喰おうってわけじゃねぇ、単なる迷子だしな」
自分自身を迷子と言うのは、言ってて情けなくなるが、その通りだ。
ついでに、年端もいかない女の子を襲ったとなれば、俺の住んでる所に戻ってもゲロ以下扱いされかねない。
『...分かったわ、一応貴方の事を信じます』
まだ警戒の色は抜けていない声だったが、少なくとも敵対視されることは無くなったな、多分。
俺は、盛大に息を吐き出す。
「あー...もしこんな場所でぼっちだったら、気が触れてた所だぜ」
緊張を解すために、冗談のつもりで、ケラケラと、俺は高らかに笑った。
『...そう、ね』
何故か、蛍は、悲哀に満ちた震え声で、呟いた。
...どうやら、蛍と女の子は、何やらワケアリらしい。
―意味の分からない映像が途切れたのと共に、少女は意識を取り戻した。
幾分か楽になったらしいミオンは、身体を、ゆっくりと起こし、目を開く。
身体は楽になったものの、幼い彼女の頭の中は、パンク直前のレベルまで、謎の映像によってこんがらがっていた。
すると、蛍が、勢いよくミオンの近くに飛んできて、一頻り様子を見るようにミオンの周囲を一周すると、安心したように、彼女の肩に降り、羽を畳んだ。
そんな蛍を見てか、
「ごめんね、心配かけて」
ミオンは、困ったように、しかし、自然に微笑みかけた。
「...嬢ちゃん、お目覚めはどうだ?」
「っ!?誰!?」
不意に背後から聞こえた声に、彼女は微笑んでいた顔を強張らせ、目に見えて狼狽えた。
先程まで居なかった男の人の声、それだけで幼いミオンを脅かすには十二分なものである。
やれやれ、とおちゃらけたような溜め息をついた後、声の主は、軽い足取りで、ミオンの前に立った。
「御初にお目にかかる、行人と申します...ってな」
陽気な笑みを浮かべたコートの男は、のんびりと一礼した。
「...だれ?」
数秒の間、ミオンは、ポカンとした表情で固まっていた。
―ひとつ、今まで休止していた運命の歯車が、錆びを剥がす音を立てながら、動き始めた―
ホタルの声は、ミオンには聞こえませんが、行人には聞き取ることが可能です。
一体どういうことでしょうか...(棒