海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作はあの巨大な要塞が現れます。
しかもムサシが言った通りのことがそのまま起きます、ですがこれも智史の想定内です。彼はとっくに過剰と言っていいほどの、マスターシップの件も含めたあらゆることに対する対処を実行し、これでも十分だというのにまだその対処を充実させてしまいます。
あと彼の暗い過去が明らかになります。
ルフトシュピーゲルングさんもちょこっとですが登場です。
そして前作の最後部分を修正しました。
それではじっくりとお楽しみ下さい。


第15話 マミヤの料理と智史の過去、そして最初の破壊の化身と化した地獄の門と悪夢

「そうか、カトリ達は殺されずに済んだか…。」

「はい、彼らが降伏した後、奴からの発砲は確認されていません。」

「よかった…。これで少しでも仲間が生き延びてくれれば…。」

部下のシャドウ・ブラッタとそう会話をするヴォルケンクラッツァー。彼女は確かに決戦の準備を進めてはいたものの、部下を無理に抵抗させて玉砕には追いやりたくはなかったのだ。部下達をリヴァイアサンに対して捨て駒として使ったら、自分の存在を語り継ぐ存在が居なくなってしまうからだ。

「皆、あなたから頂いた破片を組み込んだ影響で苦しめられております、ですがあなたと共にいれば如何なる試練も乗り越えられると信じております!」

「そうか…。皆、済まない…。」

実際あの破片を組み込んだ影響によって彼女の部下の超兵器達はあの破片の力に自我を失いかけたりして苦しめられていた。だがそんな事で膝を屈したらリヴァイアサンを打ち倒す前に自分達が破壊の化身と化して他の皆が殺されてしまうのだ。そんな事で躓いていたら勝負にもならない、だから彼女達は皆で破片が定める宿命に必死に抗っているのだ。

「ヴォルケン様、妹様から概念伝達による通信が入っております。」

「分かった、今出る。」

ヴォルケンは太平洋艦隊旗艦専用の概念伝達空間に移動するーー

 

 

ーー太平洋艦隊旗艦専用の概念伝達空間ーー

 

 

「ルフトか。」

「お姉様、あの巨艦の件は終わったのですか?」

「ああ、リヴァイアサンのことか。あの件はまだ長引きそうだ…。」

ヴォルケンとそう会話するのは彼女の妹である大西洋方面艦隊旗艦、超巨大戦艦ルフトシュピーゲルングだった。ルフトもまた彼女と同じく究極超兵器で、彼女の姉妹艦でもあり、彼女とも互角に戦えるスペックを持っていた、ただヴォルケンと比べると現実空間でのキャリアが短い事もあってか、ヴォルケンが姉で彼女が妹という事となっていた。

 

「奴の強さは尋常ではない、東洋方面の艦隊が悉く全滅した事は知っているだろう。」

「その報に勇気付けられた人類が各地で反撃を試みています、私達が居なければ霧には未来はありません。全てはあの巨艦のせいです。」

「そうかルフト…。そしてこの件を片付けるにはもうしばらく時間が掛かりそうだ…。現実空間でお前とまた会いたいのにな…。」

「そうですね、私もその時を心待ちにしています…。そういえばムサシから聞いたのですが、まさか、あの破片を取り込んでしまったのですか?」

「そうだ…。奴はあの破片抜きでは絶対に倒せない存在だ、たとえ化け物となるリスクを背負ってでも、だ。実際私と共に戦いたい部下達が奴との決戦の為にあの破片を次々と己の体内に取り込み、その破片の定めに皆苦しめられている…。それでも背に腹は代えられない。」

「そうですか…。でもお姉様ならあの巨艦を沈めると信じております!」

「そうか…。ありがとう…。」

 

そしてヴォルケンは概念伝達を切るーー

 

「ルフト…。私はお前より先に逝くかもしれん、そんな私を許してくれ…。」

 

そう哀しげに呟くヴォルケン、そして彼女のその言葉はリヴァイアサン=海神智史との決戦の時に文字通り具現化してしまうのだった…。

そんな会話の様子を智史はきちんと見ていた、そして彼女らの姉妹愛の深さと彼女の悲壮な覚悟が彼に彼女に確実にトドメを刺すという決意を固くしていた。

 

「ヴォルケン、貴様の思うようにはさせん、増援も動けなくしてやろう。しかし貴様の悲壮と言っていい覚悟には奥義を尽くして応えよう…。」

 

そしてリヴァイアサンから機雷を搭載した無数の艦載機が飛び立ち、撤退しようとしている太平洋ゲリラ艦隊にさらなる機雷散布を行おうと襲いかかっていく。

 

そして、トラック諸島に彼と蒼き鋼は上陸するーー

 

「あなたがマミヤさんですね、私は霧の究極超兵器、超巨大戦艦リヴァイアサンのメンタルモデル、海神智史と言います。」

「え、なぜ私の事をご存知で⁉︎」

「霧のネットワークを常に調べまくってます、ですが主に調べてるのは霧の戦略概念とスペック、戦略プランが主でして、あなたのことに関しては名前以外は知ろうとせず、あなたのことの詳細を知ったのはつい最近のことです。

ナガトさんを私に殺されて悲しんでいたんですね、彼女を私が面白半分で殺してしまったので…。そこら辺は何と言えばいいんでしょうか、幾ら償っても許してくれないかもしれませんね。でも私と皆に料理を振舞って頂けますか、私も一緒に料理を振る舞いますので。それがあなたに対する償いになれば幸いです。」

 

智史は自分の生死に関する事に対する事を主にして重点的に、自己再生強化・進化システムで異常なまでに強化した演算リソースを大量に割り振っていた、そして今もその状態を続けている。勿論自己再生強化・進化システムもその事柄に含まれている。それは自分が生き残ることを主とする乱世では非常に適切な行動とも言える。しかし自己を保身し、そして敵対する相手を排除する(おまけだが楽しみながら抹殺するという意味も含まれていた)戦略をあまりに重視しすぎたために非戦闘的な事柄が少々おざなりになってしまっていた。そのせいで彼は他者のソフトやハードは徹底的に知り尽くしていても、他者を思いやることをほとんど考えずに圧倒的な力で一方的に蹂躙したために一部の他者との付き合いが非常にやりにくくなっていた。それでも彼は、他者に受け入れられるように努力はしていた。

 

「そんなこと急に言われましても…。」

 

ーー予想通り、そうなりましたか…。

 

「そうですか…。」

そう言い帰ろうとする智史、しかし、

 

「智史くん、さっきのことを少しの躓きだけで諦めてしまうつもり?」

「はっ…。」

「私も彼の料理と一緒にあなたの料理を食べたい、お願い、彼の望みを聞いてあげて。」

「ヤマト様…。分かりました、出来るだけのことは致します。」

「ありがとう。」

 

そしてマミヤと智史は料理の準備を始める、それとほぼ同時に武装解除が行われ、残存艦艇に装備されていた武器や機関に次々とロックが掛けられていく。

ついでにだが彼はキャンプの設営もこっそりと始めた、今日はもうすぐ日が暮れるので、艦に戻るのも面倒というのが主な理由だった。

 

「これがマミヤの料理か〜!」

「マミヤさんの料理も美味しいけど、彼の料理も負けず劣らずね〜。」

「この場には2人の料理を主にして様々な思考が飛び交っている。」

「なにこれ、おいしいのぉ?」

「これがマミヤ羊羹…。うまい!」

「ハルハル、キリシマ、これ、美味しいね!」

「あの2人の料理は甲乙つけがたいな…。」

「これが、グルメ。タグ添付、分類、記録。」

「智史くんとマミヤさんの2人が作るとめちゃくちゃ美味しいご馳走が並ぶね!」

「琴乃、これお前も食べてみるか?美味しいぞ?」

「お姉ちゃん、こんなに食べ物が並ぶ光景って見たことがないね!」

「マミヤ、彼の提案に協力してくれてありがとう。」

 

そして群像達も、

 

「2人の料理を食べ比べるのも一興ですね。」

「これは何って言うの?お料理対決?」

「なんだこの料理達はぁ〜!これも、どれも、美味しそうだぁ〜!あ〜どれから食べていいのか頭が滅茶苦茶だ〜!」

「こんなに料理が並ぶなんて凄いですね、これを提案してくれた智史さんに感謝しなくちゃ!」

 

だが智史は皆が楽しそうに食べる光景を見てあることを思い出してしまっていた。

 

 

ーー皆楽しそうに食べているな、もし私に誰も振り向きもしなかったらあのトラウマがここに具現したのかと思ったぞ。

元の世界では私に関心すら示さず、私だけを蔑ろにし、楽しいことに釣られて喜ぶ女子共め、見かけたら貴様ら一匹残らず八つ裂きにしてやる。

貴様らに感受性は無いのか?没個性で集団主義を求めており、同じ型をした人間として育てられるように仕向けられたからか?

何?“キモい?”“関心ないからあっちに行って?”“来ないで?”

ほざくな、私は誰にも必要とされないという孤独が非常に辛い。私を見下すなら貴様らの家族共々ズタズタに引き裂いてやる。阻むなら皆殺しだ。そうだ、恐怖と絶望に怯えろ‼︎そして悲鳴や断末魔をあげながら八つ裂きにされ、血飛沫や臓物を撒き散らしながら、無様に死んで行くがいい‼︎

 

 

「智史くん、顔が怖いけど、何か悪いことでも思い出しちゃったの?」

 

ーーはっ⁉︎

 

「…そうだ、かつてのトラウマを思い出してしまった…。」

「なるほど、相当悪い思い出を思い出しちゃったんだね。」

「智史、あんた悪夢でもみたの?」

「アシガラ、言葉を慎みなさい。智史さん、すみません。アシガラが迷惑をお掛けして」

そう会話する智史達。そこへ杏平が現れる。

 

「おめえ悪夢でも見たのか?あ、そうだ、群像に頼まれたことなんだけどさ、あんな威力の兵器の技術提供控えてくれるか?威力がアホすぎて無闇に撃ったらみんな死んじまうぜ。」

「まあ地球が吹き飛ばないレベルで調整はしたが。あはははははははは」

「な〜にが“あはは”だ!これ以上の威力を持つ兵器の技術提供をしてそれを俺達に撃たせて人類を滅ぼす気か⁉︎アホか、お前は⁉︎」

 

そしてヒュウガが彼の前に現れる。

「智史、お料理を食べ終わった後にあなたと少し話がしたいんだけど。主にあなたがやった事について。」

「お前が聞きたい事には私が横須賀で引き起こした事も含まれているのか、了解した。」

 

そして皆が料理を食べ終えて満腹になった後ーー

 

「智史、硫黄島のこと知ってるわよね?」

「ああ、あの戦いの後、そこからメカを日本本土に向けて発進させ、偵察させたのだろう?」

「そう、そしてあなたが作り上げた街にいる人間達の様子が人間のものとは思えなかった、そう、プログラムに従って動いているロボットみたいに。その緒元を探ってみたらあなたが残したマニュアルがそこの人達を洗脳していたみたいなのよ。」

「そうだ。私は醜い欲望や感情が大の嫌いだ。自分が望むものに反するものを持つものは消去すべきだと判断したためだ。醜い不協和音など一つも不要!ただ意思を高度な自己進化のシステムに委ね、一つの意思の元に素直に従い、動いていればいい。流石に喜びや幸せまで奪ったらそれは人ではなくただのbotだ。喜びや幸せは公共調和に反さぬ場合のみ持つことを許した。」

「それは個性を潰している!あなたは自分の個性を尊重してほしいと言っているのに、他人の個性は尊重しないの⁉︎」

「私は己が望むがままに行動したまでだ、実際に私がしたことは日本各地の争乱を完全に終息させた。もちろん様々な人間がいるだろうからそのマニュアルには各々に対する配慮も込めている。だが真に調和が取れない存在など、不要‼︎」

「それは、私がかつてやっていたことと同じです!自分に相容れないと判断したものは容赦なく粛清するのですか⁉︎」

智史のやったことが自分がやったことと類似していると指摘するヒエイ。

 

「そうだ!真に相容れぬものは消し去るのみ‼︎」

 

「まあみんな、落ち着いて。智史くんは自分なりに考えて行動を起こしているのよ。智史くんは自分の都合のいいように世界を変えてはいるけど、みんなを使い捨てにするような強欲で非情な人物ではないわ。」

「琴乃…。」

「智史、今回の件については俺達は口出しはしない、ただ今後このようなことは控えてくれないか?意思を統一して他のものを排除したらその中の大事なことが抜け落ちていくのかもしれないからな。」

「了解した、だが今の人類が再びかつての過ちを繰り返したら今度こそ全ての意思を調和させて真に調和が取れぬものは徹底的に殲滅するシステムに人類全員を組み込んでやる。」

「そしてあんたがこういう態度を取る理由には深い事情がありそうね、一体何があったのよ?」

「そうだな…。」

そして智史は自分の暗い過去を語り始めるーー

 

ーー私は生まれつき持つ自身の障害、いや脳機能の一部の成長速度が低いままか?生まれて成長してしまった。そのせいか私は些細なことでもパニックを引き起こしたり周りの空気が読めなかったりした。なのであまりファッションにも深くこだわることはなかった。なのにそのことを知らない周りの人間達は私の挙動を見て変人扱いし、からかったり、弄んだり、私を遠ざけたりした。大学にて異性と仲良くなろうにも私は臆病だ、空気やその人格性がうまく読めないこともあってかうまく話を進められずに悉く失敗してしまった。そしてその奴らはチャラい男どもと一緒に居ることが楽しそうで仕方がない、なら私のような人間は蚊帳の外かと。しかも奴らのいる世界では物が大量にあふれており、その世界で奴らはファッションで着飾り、それを見てはたのしんでいる。おまけにその世界は男女平等、レディファーストという常識が当たり前となっており、些細なことで男は追い詰められてしまう社会となり、男を草食化する結果となっている。そして、その時の私は清潔感にはあまりこだわらなかったーー今はこだわる様にしてはいるが。確かにそうしなかった私にも非はある。

それはそうとして、奴らは私の挙動と姿を見て、気持ち悪い、汚いと思っても、私に何も指摘せず、嘘ばかりをつき、真実を言おうとしないのだ。そして奴らは私が何者なのかを言っても没個性の社会で育てられたためか感受性が無いため積極的に知ろうとしない、ただ異質な存在として忌み嫌われるだけだ。仮に理解したところで合理的配慮すらしてくれないのかもしれない。陰湿、嘘ーーそれが大人の社会だということを知った私は奴らを皆殺しにし、全てを灰燼に帰してやろうと考えてしまうほど腸が煮えくりかえった。皆苦しめながらぶち殺してやろうと。

 

「こりゃ被害妄想が酷いわ…。確かにあんたの言う通りの人がいっぱいいるのかもしれないけど、かといって理解してくれる人がいないわけじゃないわよ。それはそうとして理解してくれる存在が居ないのはまずいわね。」

「そうね、ヒュウガちゃん。彼が横須賀に人を洗脳してしまうようなものを造ってしまったのはこのようなことが有ったからかもしれないわね。」

「あなたがいた世界にはこんなに心の感受性がなっていない生徒がいっぱいいたなんて…。このような生徒は、許しません!」

「そりゃ凹むよ、理解してくれる同年代の異性が居なかったら…。」

「あなたがあんなことをした理由にはこんなことが…。あなたはその思い出にずっと苦しめられている…。」

「智史くん、このことで相当傷ついてて、今もその記憶が蘇ってしまうことがあるのね。でも私が、支えてあげる。」

「琴乃、皆…。すまない…。」

 

そこへ群像が現れる、

「智史、聞いてくれ。捕虜となった彼らの拘束を解く。」

「それは確証があった上で言っているんだな?」

「分かっている、理由はーー」

 

そして智史は群像の真意を理解する、それと同時に破片を組み込んだ“超兵器”が破壊の化身と化したことを知っていたーー

 

 

ーー翌日早朝、オーストラリア沖

 

「くそ、奴がばら撒いた自走機雷のせいで思うように撤退が出来ん。」

「こっちもよ。奴の艦載機は引き上げて行ったが奴らが撒いた自走機雷の数は尋常じゃない、数百万はあるわ。」

「くっ、このタイミングで奴が来たら一巻の終わりだ。」

 

そう会話するのは大戦艦サウスダコタと大戦艦コロラドだった。サウスダコタは好戦的で、コロラドは姉御肌の人物だった。いつもは力押しの戦い方で人類に勝利してきたサウスダコタだが、今回の相手は規格外だった、超兵器級、大戦艦級を初めとした霧の艦艇を多数葬り去り、しかも彼らの攻撃を悉く無効化して吸収し、挙げ句の果てにはその攻撃のエネルギーを自己強化に回してしまうとんでもない化け物だったのだ。実際彼の艦載機に対し積極的な攻撃を仕掛けたものの、その攻撃はやはり同じような結果に終わり、逆に無数の自走機雷をばら撒かれて、自走機雷に触雷し、轟沈し、動けなくなる艦が続出した。轟沈した艦には大戦艦ワシントンと超戦艦級すら上回る火力を持つ新型戦艦数隻も含まれていた、クラインフィールドを展開していたにも関わらず、だ。あまりに一方的な現実の前に流石の彼女もそれを受け入れざるを得なかった。

 

「ムサシが奴を始末しろと諜報部隊のあの2人に指示したせいであんなことに…。」

「仕方ないわ、起きてしまったことは仕方ないのだから。サウスダコタ、もし私達がここを脱出する前に奴が来たら素直に投降しましょう。抗っても勝てるような相手ではないわ」

「くそっ、我々にもっと力が、力が有れば、あのようなワンサイドゲームは止められたものを…‼︎」

 

ーーそう会話しつつも悪夢の機雷包囲からの脱出を試みる2人、しかしその僅かな希望は、2人が次の瞬間に見た光景によって打ち砕かれる。

 

「本艦隊南方に非常に巨大な重力子反応!高速で接近してきます!」

「な、なんだと⁉︎」

「凄まじく禍々しい気配だわ、少なくとも奴にはそんな気配は無かった…。」

 

そう、彼女らに迫ってきたのは巨大なちくわを乗っけたようなメインタワーにテーブルの形をしたサブタワーが4つメインタワーの周りに付いているような形をした巨大な海上油田を思わせるような超兵器だった、しかしマスターシップの破片を取り込んだせいかその構造物の所々に禍々しい色つきをした目が現れ、まるで機械と生物が融合したような、見方によってはグロテスクな姿をしていた。

 

「あれは、ヘル・アーチェ…。」

「ムサシが奴に破片を送りつけて取り込ませたのか!」

 

そう、その超兵器は“地獄の門”の名を冠し、その名に相応しく、彼女の守備はヴォルケンクラッツァー級を完全に上回り、驚異的なスペックを誇っていたのだ。

 

「ヘル・アーチェ、ミサイル多数発射‼︎発砲を確認っ‼︎同時に艦載機多数の発進を確認!」

「くっ、撃ちかえせ!逃走しながら反撃しろ!」

 

その破壊の化身から解き放たれた無数の艦載機がサウスダコタ達に襲いかかる、その艦載機はリヴァイアサンが持っているものよりは格段にスペックが劣っていたためサウスダコタ達の必死の抵抗により何十機かが墜ちていった。しかしその損害を気にしない数にものを言わせた力押しおよび本体からの直接攻撃、そしてサウスダコタ達がリヴァイアサンの艦載機による機雷散布による攻撃によって戦力の半数近くが機能しなくなってしまったこともあってサウスダコタ達の艦は一隻、また一隻と沈められていく。

 

「こちらの攻撃、効果が認められません‼︎」

「右翼を構成していた艦隊が全滅しました!」

「最終防衛陣の消耗率、50%を突破‼︎」

「ーーくっ、奴の機雷攻撃さえ無ければ逃げられたのにっ‼︎」

 

次々と艦隊を構成している艦が沈められていくことに悪態を吐くサウスダコタ。しかし更なる悪夢が彼女達を襲う。

 

「奴の上部構造物で何かが駆動しています!」

「まさか、あれを使う気か⁉︎」

 

彼女達がそう言って驚いて見つめている先にはちくわの形をした上部構造物を花が開くのかのように展開し、そして同時に自身からミラーのようなものを射出して強力なエネルギー砲のチャージを始めたヘル・アーチェの姿があった。

 

「艦隊旗艦、退避してください‼︎」

「ダメだ、回避が間に合わないーー」

 

ーーピカッ‼︎

 

ーードグァァァァン‼︎

 

ヘル・アーチェの上部構造物から放たれたエネルギー砲はそこにいるサウスダコタ達を跡形もなく焼き払った、しかもあの欠片を組み込んだこともあってその威力はとんでもないことになっており、サウスダコタ達を焼き払うに留まらず、オーストラリア東沿岸部の大半を跡形もなく消し去ってしまった。そしてヘル・アーチェは視界に入るもの全てを焼き尽くしながら、リヴァイアサンの所へと進んでいく。なお智史はこっそりとこの現場の近くに飛ばしていたSR-41 ブラックバード偵察機を通じて戦闘の一部始終に関する全てのデータを収集していたのだった…。

 

「まさに“地獄の門”に相応しい暴れっぷりだな〜。こりゃ地球を焼きつくせるな、これ。ま、この威力もスペックもこれまでの強化ペースをどんどん上げていって、えらい勢いで強くなっちゃってるから全然想定内で行けちゃうし、余裕で倒せるけどね。でも念の為にさらに強化ペースを上げておこう。」

 

 

 

ーーそしてサウスダコタ達が全滅してから少ししてーー

 

 

「サウスダコタ達が全滅⁉︎彼によるものではないの⁉︎」

「はい、リヴァイアサンのものと思われる攻撃は確認されませんでした。」

「なんてこと…。艦隊を集めようとした矢先に…。」

「ヘル・アーチェはムサシに忠誠を誓っていた、ムサシはそれを利用して、奴に震える我々への見せしめも兼ねて彼女に、あの飛行物体を通じて破片を組み込み、暴走させたのだろう。だが暴走した彼女でも奴には勝てるかどうかには疑問符がつく…。」

「彼は幾多の仲間を次々と沈め、その度に異常な勢いで強くなっていることが確認されているわ。とにかく撤退作戦は中止して、様子を見ましょう。」

「そうだな…。撤退しようとしている仲間にはすまないが奴と彼女の戦いに無闇に関わって悪戯に兵力を失うわけにはいかん。」

 

 

ーーそしてほぼ同時刻、トラック諸島では

 

 

「皆さん、話を聞いてください。」

ヤマトの発言に皆が通信回線を開いていく。

「本時刻を持ってあなた方をリヴァイアサンごと智史さんの管理下から解放します。」

「ヤマト様、一体それはどういうことなのですか?」

あまりにも意外な発言に驚くマミヤを始めとした皆。

 

「彼と私に群像さんがそうするよう提案し、私達が理由を理解した上での事です。」

「ではその理由とは?」

「あなた方を解放する事で選択する自由を与えたかったからです。」

彼女がそう言い終えると同時に武装や機関のロックが外されていく。

 

「ふぅ…。」

要件を伝えて一息つくヤマト。しかしそのホッとした気分は次の瞬間に入った音声通信で吹き飛ばされる。

 

「ヤマト、喜ばしくない事態が発生した。至急設営しているキャンプのブリーティングルームに来てくれ。この事の詳細はここで話す。」

「わかりました、でも一体何が?」

智史の通信の内容が気になるヤマト。

 

「マスターシップの破片を取り込んだ超兵器がオーストラリア方面を警戒していた霧の艦隊をオーストラリア東沿岸部共々吹き飛ばした。」

「何ですって⁉︎」

「ヤマト様、その艦隊って、サウスダコタ様を旗艦とする艦隊では…。」

「わからない、でも喜ばしくない事であることはわかる。」

 

そして彼女は智史が設営したキャンプへと走っていくーー

 

 

「これが今朝発生した戦闘の一部始終のデータだ。映像に写っている、巨大な禍々しい構造物の形をしているのがマスターシップの破片を取り込んだヘル・アーチェだ」

 

ヘル・アーチェの禍々しい姿とその驚異的な戦闘力を示した映像やデータに唖然とする皆。

 

「彼女はムサシ様に強く忠誠を誓っていたはず…。それがどうしてこんなことに?」

「おそらくムサシは我々を処刑するために彼女にこの破片を組み込んだ。実際大西洋上空を未確認の飛行物体が南極へと飛んで行った記録が確認されている。ムサシは何人死んでも永遠に変化のない霧が残れば問題はないと考えたから、暴走した彼女が太平洋艦隊の一部を殲滅しても最終的に我々を殲滅できればいいとしてこのようなことを実行したのだろう。」

「でも彼女を放置すれば皆死に絶えるはず…。」

「そうだとは限らん。マスターシップの破片は宿主を自壊させることも出来る。その制御元はムサシが握っている。」

「ではムサシは彼女達を使い棄てられるというの⁉︎」

「まあそういうことだ。さっき言ったように彼女には永遠に変化のない霧が残っていればいいという事だからな。」

「会長は鬼〜?どうせ私達には何もできないから全てがめんどくさ〜い。」

 

そう会話するヤマト達。そこにマミヤが不安な様子で入ってくる。

 

「智史様、お取り込み中すみません、一体何があったのですか⁉︎」

「映像の通りだ。お前達の仲間のサウスダコタ達が化け物に殲滅された。」

智史はそう言い放つとその戦闘の一部始終を収めた映像を画面に表示しているタブレットをマミヤに渡す。

「な…なんてこと…。あんな事をしたのはムサシ様なのでしょうか…?」

 

そう動揺している彼女を尻目に彼はまたしても皆にしては突飛な発言をする。

 

「奴は私が1人で殲滅する。他の艦は残った敵を追い詰めてくれ。」

「待ってくれ、いくら君でも、勝てるか分からない相手に何故勝てると言える?」

「既に奴らの情報のほとんどはとっくに入手済みでそれに対する対応の規模も異常なほどになっているし、今も対応を充実させているからこの事は対処できると自信を持って言える。だからだ。」

「私達は彼の戦闘データから対策を練って彼を撃滅するためにその対策を十分に施したと信じていいぐらいの艦隊を出撃させました、ですが彼は私達の作戦と行動計画を最初から見抜いていて、それに対する対応を非常に過剰と言っていいぐらいに充実させてきました。そんな事も私達は知らずに彼に戦いを挑み、当然の如く敗れました。つまり私達は戦う前から負けていたのです。そして彼は今も新たに対応を無常識と言っていい程のペースで充実させています。彼には私達の常識は悉く通用しません、だからこそ彼はいかなる相手にも打ち勝ててしまうと言えてしまいます。」

「そうか、分かった。君はあの超兵器を撃破しに向かってくれ。俺達は残った彼らを追い詰める、ただし投降の意思があったら戦闘を中止して受け入れる予定だ。」

「ついでに言っておくが、ニューギニアの奴らとその奴らの撤退を支援するための艦隊も機雷投射で立ち往生させてやったぞ。かなりの被害が出ているから投降させやすくなっているが」

「何故その事も自信を持って言える?」

「私が彼らならそうするだろうと考えるからだ。」

「なるほど、そのぐらい、敵を知り、己を知るという事を君は徹底しているのか。」

「あの…、私もあなた方に同行したいのですが…。」

「真実を知りながら仲間を救いたいのか、なるほど、我々に不都合なことをしなければ同行を許そう。」

「ありがとうございます、一刻もあの破壊の化身を止めてください!」

「分かっている、己の罪は己で償うものだからな。全艦出港せよ!ここを引き払うぞ!」

「智史くん、私も付いて行くわ。」

「ありがとう、琴乃。」

彼女と手を繋いで、トラック諸島沖にいるリヴァイアサンへとマリンブルーの色をした美しい海の上に架けられた青いクラインフィールドの道を渡っていく智史。

「あ、琴乃だけずるい〜!」

「そうか?これもありだと思うが…。私に乗りたいなら乗れ。」

そのあとすぐに智史達はキャンプを引き払う、蒔絵達や琴乃、元霧の生徒会のメンバー達はリヴァイアサンに乗艦し、それ以外の者達はニューギニア沖のゲリラ艦隊の生き残りを説得すべくそれぞれの艦に乗艦、全ての艦にバイナルが灯る。そして彼らはトラック諸島から出港していく。

 

通常のスペックの高さに加え、破片を取り込んだことで、更に圧倒的な力を見せつけるヘル・アーチェ。だがそん力を持つ彼女さえ一方的に圧倒してしまう程の力を持ち、一方的な破壊と殺戮の宴を齎す存在、霧の究極超兵器 超巨大戦艦リヴァイアサンごと海神智史が彼女に向けて突き進んでいくーー




今作の敵超兵器紹介

超巨大海上移動要塞 ヘル・アーチェ
全長・全幅 1800m
全高 4500m(水上に露出している部分の高さは2000m)
基準排水量 400000000t
最高速力 海上 50kt 海中 計測不能 (非常に巨大な、高速で移動することを想定していない海上リグの形をしているためあまり速くは移動できない。)
武装
太陽光・重力子凝集砲 一門
100口径80㎝単装砲 24門
80口径51cm連装砲 48基
エレクトロンレーザー発振基 40基
127mmガトリング砲 単装200基
拡散荷電粒子砲 連装 80基
各種ミサイルVLS 40000セル
100㎝各種魚雷発射管 1000門

クラインフィールド、強制波動装甲、エネルギー吸収・転換システム及びナノマテリアル生成装置を搭載。

ムサシの切り札と言っていいほどの圧倒的な火力を誇る超兵器。非常に巨大な海上構造物の形をしている為移動力は低いものの、防御力はヴォルケンクラッツァー級を軽く上回る。また一定内のエネルギーなら吸収して各兵装の威力の向上に回してしまうことが可能。
本来ならミラーリングシステムを装備していたがリヴァイアサンがその装置のシステムを逆用して次元津波を使用するようになってしまった為、ミラーリングシステムを撤廃し、代わりにエネルギー吸収・転換システムを装備した。
メンタルモデルに人格はあったものの、ムサシから飛行物体を通じて渡されたマスターシップの破片を取り込んでからは赤黒いメタリックな色付きをした躯体となり、その躯体の所々に禍々しい赤い色をした目が出現した破壊しか求めない存在となってしまった。それに伴い本体にもそのような色をした目が多数出現し、外観も生物と機械を融合させたような姿となってしまった。
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