海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー 作:satos389a
あとヴォルケンの覚悟も書いてみました。
それではじっくりとお楽しみください。
追記
本作品の第5話の一部が他作品のものをパクっていた為、運営の方から警告処分を受けました。
今は表現を新たに追加したり、修正してパクリではなくしてしまったので問題はないと思います、ですがその修正の影響でこの作品の投稿が遅れてしまいました。
申し訳ありません。
「相変わらず私には表での活躍の場は無いのね、でも多数の兵器や機械を開発する為の場所や相手のデータを客観的に分析し、それに対応する為の兵器の開発プロセスを提供してくれる場所を提供してくれた彼には感謝しなくちゃ。」
超巨大ドック艦スギズブラズニルのとある一室ででそう呟くのは大戦艦ヒュウガだった。
「ふふふ、ヒュウガちゃん。智史ちゃんがこんなものまであなたの為に作ってプレゼントしてくれたからよかったわね♪」
「イ…イセ…。まあ、そうね。実際この場所があったお陰で戦闘時の各種データがいろいろ分析できてそれに対するハード面での対策の方針が分かりやすくなってるからね。」
実際彼がこのようなOR(operation research)も含めた施設を作ったお陰で前回の敵のデータや通信記録を客観的に分析して敵が何を考えているのか、今後の対策はどうしたら良いのかが格段に分かりやすくなっていたのだ。
「さぁて、この前の戦闘データの解析と技術開発をやらなくちゃ。」
そう言いヒュウガは兵器の技術開発とデータの分析を押し進めていくーー
そしてほぼ同時刻、ヘル・アーチェに向けて突き進むリヴァイアサンの艦橋にてーー
「随分と禍々しいグロテスクな姿をした機体がじゃんじゃん飛んでいるな。こりゃハエや蚊だろうか、いやスズメバチか?
どちらも私にしてみれば害虫同然だ、まずは本体を覆っている害虫退治と行くとしよう。相手のスケールはほぼ分かってるからな。」
智史は海風に吹かれながら嬉しそうにそう呟く、どこかに虚しさを感じながら。それとほぼ同時にリヴァイアサンの左舷飛行甲板上にFFR-31MR/D スーパーシルフやFFR-41 メイヴ (2機種とも戦闘妖精雪風より。これらは本家のとは外観そっくりではあるものの、スペックは本家を完全に圧倒) そしてF-3 心神やF-22 ラプター (これらも本家のスペックを完全に圧倒)と言った非常に強力な制空戦闘機が次々と大量生成されてリヴァイアサンを飛び立っていく。
「いつみても圧巻の一言に尽きるな、お前が艦載機を繰り出す所は」
「すげえ…。ミツバチさん達が巣からいっぱい出てくる風景みたい…。」
「瞬時にこんな数の飛行機を生み出すなんて、こんなのあり〜?」
そのあまりの規模に様々な感想を示すキリシマと蒔絵、ハグロ。そんな彼らをよそにして彼は次のステップを押し進める。
「戦闘機の次は攻撃機だ。」
なんと今度はA-20 サラマンダー攻撃機(A-10 サンダーボルトをベースにした襲撃機。40mm6連装プラズマバルカン砲をメイン兵装とし、様々なミサイルや各種爆弾を装備可能)や爆装コスモパルサー、B-52 スーパーフォートレス、F-3E ストライク心神が次々と生成されて飛び立っていくのだ。
「智史くん、群像くん達を霧の生き残りの説得に向かわせて正解だったみたいね。」
「ああ、どうせ群像達をヘル・アーチェとの戦いに連れてきても足手まといになるだけだ、それに私が向かったら皆恐怖に怯えて生き残りの説得はかえって困難を極めているかもしれん、最悪まとめて殺すしか方法がなくなる。」
「そうね、でも群像くん達はあなたに貧乏くじを引かされたのかな?」
「力量で考えたらそうなるだろうな。私以外にあんな化け物を倒せる蒼き鋼の艦は何処にいるのだ?居たら教えて欲しいぐらいだ。」
そして5万に達する数となった艦載機群はオーストラリア北東部沿岸沖にいるヘル・アーチェに向かっていく、ヘル・アーチェの方も彼らを見つけたのか、多数の戦闘機を繰り出してきた、そして空戦が始まる。
「敵航空機多数、捕捉したか。まずは外殻から潰すとしよう。」
ーーシュボァァァァ‼︎
ーーシュボァァァァ‼︎
ーーズガアァァァン‼︎
ーーズガアァァァン‼︎
瞬く間に無数のミサイルや光弾が多数飛び交い、次々と上空で爆発が生ずる、だが常に進化を続けているリヴァイアサンの方の機体は一機も墜ちていない。ヘル・アーチェの方の機体は瞬く間に蹴散らされ、制空権はリヴァイアサンの方が確保した。
「次は装甲を剥がすか。」
そして彼らはヘル・アーチェ本体に殺到する、ヘル・アーチェの方も拡散荷電粒子砲やガトリング砲、新たに生成された目の様なものからのビームなどを必死に空に向かって撃ちまくっているものの、それらの攻撃が彼らに命中しても彼らは平然と飛行を続けている、その攻撃も彼ら=リヴァイアサン=海神智史は吸収し、自己強化に回してしまったのだ。
「ウグァッ⁉︎」
そして彼らはヘル・アーチェにロケット弾や複合爆装ポッドにバンカーバスター、巡航ミサイル、量子弾頭ミサイル、JDAM、テイジーカッター、量子魚雷に侵食魚雷、挙げ句の果てにはバルカン砲の掃射まで叩きつけていった。その攻撃は一撃一撃が非常に重く、規模は苛烈を極め、ヘル・アーチェのエネルギー吸収システムでは全然吸収仕切れない。もちろんクラインフィールドや元から重厚だった装甲をあの破片の力でさらに強化した装甲はすぐに破られ、瞬く間に荷電粒子砲やガトリング砲はテイジーカッターや巡航ミサイル、量子弾頭ミサイルの爆発で溶け去り、吹き飛び、サブタワーの上部構造物はバンカーバスターやJDAM、複合爆装ポッドが貫通、炸裂することで原型を留めぬぐらいに吹き飛ばされていく。さらに水中の部分には侵食魚雷や量子魚雷が次々と命中、炸裂することで水中部分の表面を深々と抉っていく。攻撃が終わりかけた頃にはヘル・アーチェは所々が溶け去り、吹き飛び、あちこちに大きなクレーターが開いたまるで廃墟のような姿となってしまった。4つのサブタワーは跡形もなく崩れ去り、それらを構成していた柱の表面はマグマの様に溶けて流れ落ちていた。
「グガァァァァ…。」
これまで受けたことのない苛烈な猛攻を受けて瀕死のヘル・アーチェ。その様相は皮を剥がされ、肉や内臓が抉り飛ばされて所々露出している様な醜い様だった。しかし彼女の悪夢はこれだけでは終わらない。
「装甲を剥がし終えた後は、硬い中身を柔らかくするとしよう。」
そう、リヴァイアサンごと海神智史が破壊の化身と化した彼女を徹底的に美味しく食べ尽くそうと青い龍のバイナルを輝かせて襲いかかってきたのだ。
智史はヘル・アーチェを激しく甚振っていた、気持ちは落ち着いたまま。
「ヴグォォォォォ‼︎」
彼女はメインタワーの上部にある太陽光・重力子凝集砲を完全に修復すると、鏡を展開してエネルギーのチャージを始める。彼女にしてみればそれ以外の兵装を修復するのは後回しにしてでもこの悪夢から逃れる為に最優先でしたことだった。それと同時に生き残った魚雷発射管から侵食魚雷や光子魚雷が次々と放たれる。
「ソーラ・レイ擬きか。」
ーーグォォォォォォォォォ‼︎
ーービィィィガァァァァビィィィガァァァァビィィ‼︎
ーーピィィィィィン‼︎
ーーズグァァァン‼︎
ーーカキィィィィィン‼︎
「何この大規模な攻撃〜‼︎智史くん、こんなの食らっても平気なの〜⁉︎」
「平気だ。そよ風ぐらい、いやそれ以下だ。むしろ私を成長させる為の栄養源を与えてくれる元でしかない。」
「なんて艦なの…。私達なら掠っただけでもあっさりと溶け去るほどの熱量だというのに…。」
「地球が消し飛ばされるほどの熱量を受けてもケロリとしてるなんて、凄えな…。」
リヴァイアサンを太陽光・重力子エネルギー凝集砲の強烈なビームと侵食魚雷、光子魚雷が次々と直撃する、しかしそれはリヴァイアサン=海神智史に装備されているあまりに度を逸した性能と化した自己再生強化・進化システム(今や本人の意思抜きでもそのシステム自身が自己強化を積極的にするようになり、更に自身の性能が上がっていく速度が速くなってしまった)の前では自身を強化する為の栄養源を自分に与えてくれるもの以外の何者でもない。よってこれらの攻撃はリヴァイアサンにダメージを与えるどころか、リヴァイアサン自身が逆に強化されるという無常識な事態を生み出していた。
「グォォォォォォォォォ‼︎」
更に凝集砲のビームの威力を上げていくヘル・アーチェ。しかしその結果は変わらない。それどころか自身の重力子機関やマスターシップの破片が悲鳴を上げた為、一旦そのビームの照射は止まる。
「グァァァ…。グァァァ…。グァァァ…。」
凝集砲のビームの全力照射で息切れのようなものを引き起こしているヘル・アーチェ。それでも死のお料理タイムから逃れたいのか、必死に凝集砲のビームの再チャージを始める。
「見苦しいな、死にかけなのにまだ抗ってるのは。その見苦しさを生み出しているのは生への執着なのだろうか。まあよい、中身をじっくり焼いてやろう。」
「す、すげぇ…。あんなに強い敵さんを楽々とやっつけられるなんて…。でもこれってもはや、弱い者いじめじゃ…。」
そしてヘル・アーチェから再びビームが放たれ、リヴァイアサンを直撃する、しかしリヴァイアサンは今度はそのビームを受けて、それを自己強化に回しながら砲塔レールガンやAGSを旋回させ、照準を合わせると烈火の如き射撃を開始した。そしてそれと同時に智史の指示であえて一旦攻撃の手を休めていた艦載機群が再度猛攻を加え始める。
ーーキュォォキュォォキュォォキュォォキュォォン‼︎
ーーズガガガガガガガガガガガァン‼︎
ーーシュボァァァァ‼︎
ーーボガガガガガガガァン‼︎
ーーズグァァァン‼︎
「ヴグァッ⁉︎ゲボォッ‼︎」
瞬く間にヘル・アーチェの醜く崩れかけた構造体に次々と大穴が開き、爆発が生じ、内部の物体が滅茶苦茶に飛び散る。それはメインタワーにも同じ状態であり、ビームの照射中に猛烈な攻撃を受けてビームの発射機構が全壊し、行き場を失ったエネルギーが内部で暴走を引き起こし、ヘル・アーチェそのものが自壊を始めていた。しかしそれで十分だというのに智史はまだだと更なる駄目押しを加えていく。
「止めは一際と念入りに、そして歯切れが良いように一気に引導を渡すとしよう。」
「よ、容赦無いですね…。」
彼のその台詞の意味する行為はオーバーキルとそう指摘するヒエイ。それはそうとして彼のその台詞と同時にリヴァイアサンは、自壊を起こし激しい崩壊を引き起こしているヘル・アーチェに正面を向ける、そして右舷レールガンの格納ハッチが開き、レールガンが迫り出してくる。
「お別れだ。さようなら。」
そしてリヴァイアサン=智史は右舷レールガンの照準をヘル・アーチェに定めると発射する、そして青白い光条が放たれる。その光条はヘル・アーチェの胴体そのものに一際大きな大穴を開けて、そしてヘル・アーチェそのものを溶かし、粉砕していく。
「ギャァァァァァァ‼︎」
ヘル・アーチェは断末魔を上げながら自身の中心を貫く光条に溶かされていく、そしてヘル・アーチェがあった場所を中心にして地球を揺るがし、海を底から吹き飛ばすような爆発が生じ、成層圏まで届くキノコ雲の爆煙が生じる。それによって生じた波の高さは1km以上はあった。そしてそれはヘル・アーチェがあった場所を中心にして、熱風や熱線と一緒にリヴァイアサンごと智史達の方に迫ってくる。
「キャァァァ‼︎ハルハル、キリシマ怖いよぉ‼︎」
「智史くん、これ不味くない⁉︎」
「全然大丈夫。常に進化している私を甘く見ないでほしい。」
智史がそう言う、それと同時に突如として巨大だった津波や熱線の勢いがみるみると衰え、終息していく。
「えっ、津波が一瞬で…⁉︎」
「すげぇ、海や空が元に…。」
「お前は、人間が書いた黙示録に出てくる伝説の海の怪物を、具現化した存在なのか?」
「さっきのことのメカニズムを説明すると、原子や粒子のエネルギーベクトルを調整してそのエネルギー運動量を強制的に減少させることで相殺した。」
「そ…それは、化け物がやることと同じことだぞ…?」
「そうか?まあいい、人類が滅びなければそれでいいのだから。」
彼の物理法則を完全に無視したあまりにも無常識な行動とそれによって生じた光景に皆唖然としてしまう。それでいて彼はその逆を実行して次元津波や海を捲り飛ばす程の大津波を引き起こせるのだから、そんなことをされたら彼以外の皆にしてみればたまったものではない。いずれにせよ彼のその行動の結果、人類は滅ばないこととなったのだからまだマシな方であると言うべきだろう。
ーーふっ、呆気なく終わったな、少し虚しいものだ。まあこれを生み出しているのは自分自身なのだが。
さて、群像とヤマト達は霧の太平洋艦隊所属のゲリラ艦隊の残存艦艇達を上手く説得できたみたいだな、まあうちが見せ付けたこの戦闘の所業の数々もあるし、マミヤも彼らに同行させたからかな。
彼はニューギニア方面を静かに見つめながら、心の中でそう呟くーー
ーー大戦艦ノースカロライナの独白ーー
ーー私は霧の太平洋艦隊の一員として、大戦艦モンタナ様に仕えられることが幸せだった。たとえ自身より遥かに強大な霧の究極超兵器ヴォルケンクラッツァーが相手でもあの方は話術で互角に付き合え、共生する方へと導かれてくれた。そしてあの方のお陰で私達は特にいざこざも無く、ヤマトを排除してアドミラリティコードを独占して独裁体制を取るムサシからの命令を素直にこなしていれば幸せな日々を送れていた。
しかし、ある日太平洋上に突如として未確認の霧の究極超兵器が出現した、そしてムサシの独裁がとんでもない事態を引き起こした。ムサシはあの霧の究極超兵器、超巨大戦艦リヴァイアサンはアドミラリティコード、つまり自分自身に根本的に従わざる存在と判断し、自己の配下の潜水艦部隊や東洋方面の霧達に攻撃させたのだ、そして私達にしてみれば悪夢のような出来事が次々と起こった。
奴、リヴァイアサンの傍若無人なあまりに一方的な戦いの前に、我々の霧は無敵であるという概念は呆気なく崩れ去り、私達にしてみれば強大な存在であった霧の超兵器達も次々と簡単に討ち取られ、もちろん東洋方面艦隊群に属していた仲間達も瞬く間に奴に美味しく食べられていった。
東洋方面艦隊群に属していたマミヤやごく一部の仲間はかろうじてその悪夢から逃げ延びた、そして奴が人間達を乗せた401やタカオ、大型ドック艦、なぜか復活したヤマトを引き連れて、我々の重要拠点を叩き潰しつつオーストラリアに向かい、最終的にはモンタナ様の所に向かうという情報を霧のネットワークにばら撒いたことにより、モンタナ様はヴォルケンと協議されて我々にゲリラ戦をすることで決戦までの時間稼ぎをするように命ぜられた。我々はあの方の指示通りに、新たに建造された最新鋭艦群とともにニューギニア沖周辺でゲリラ戦をする為にニューギニアへと移動した。そこで奴を撹乱して時間稼ぎをする、はずだったーー
「機雷、多数ばら撒かれました‼︎」
「機雷が…自走している⁉︎これは、自走機雷です‼︎」
「機雷、新鋭艦の方に多数接近‼︎触雷します‼︎」
ーーピカッ‼︎
ーーズグァァァン‼︎
「嫌ぁぁぁぁぁぁ‼︎」
奴はそんな我々の作戦行動や希望的観測を嘲笑うのかのように大量の艦載機を生み出し、それを使って我々に大量の自走機雷をばら撒いたのだ、そしてその無数の機雷の群れによって超戦艦ヤマト級より強大なスペックを持つ霧の超兵器のテクノロジーを利用して造られた艦さえもがあっさりと討ち取られていく。私にも機雷が数発命中しただけでクラインフィールドが飽和し、各所に大穴が開いて、ナノマテリアルの応急修理で辛うじて立て直せたものの、一時は航行不能になってしまった。
「ノースカロライナ様、大丈夫ですか…?」
「あ…ああ…。何とかだ…。」
私はもはや半死半生の状態で部下達の決死の努力で何とか立て直せた、だがその機雷攻撃で私の艦隊はほぼ壊滅し、他の艦隊もそのような攻撃に遭い、皆こちらと同じような状態らしい。つまり私達は奴の気配に怯え、震えながら、奴に食われる時だけを待つ獲物に成り下がってしまったのだ。これでも十分に悪夢だというのに、さらなる悪夢が起こる、そう、自分の配下達が呆気なく殲滅されていくのに業を煮やしたムサシが奴を殲滅するために自分の部下の超兵器の一人に“破片”を投与した結果、彼女は理性を失って暴走し、オーストラリア方面にいたサウスダコタ達が暴走した彼女によって跡形もなく殲滅された。そして“彼女は奴に戦いを挑むだろう、我々も巻き添えにして”と覚悟を決めていた、その時だった。
「そこにいる皆さん、投降してください‼︎あなた達とは戦いたくありません‼︎」
「俺達は彼、リヴァイアサンに君達への降伏勧告を告げるようにそう言われてここに来たんだ‼︎」
「なっ、どういうことだ⁉︎」
「ノースカロライナ様、投降されて下さい‼︎こんな勝ち目のない戦いを続けてもあなた方が全滅するだけです‼︎」
「マミヤ⁉︎なぜ生きている⁉︎」
「私にもその理由は分かりません、でも今も未来も彼に刃向ったら確実な死があることだけは分かります!」
なんと彼らは奴に付いてきた者達だった、中にはヤマトもいた、彼らは奴がとんでもない存在であるということを強調しつつ降伏勧告を告げる。マミヤ達が無事なのは幸いだった。
「艦隊旗艦、こいつらが言っていることは嘘っぱちです‼︎そしてモンタナ様への忠誠を尽くすために最後の一兵まで戦いましょう‼︎」
血気盛んな重巡洋艦バルモチアがそう言うが、あんな化け物と戦って全滅しても何も生まれはしない。むしろ生き残ることで何かをした方が何かが生まれるのだ。
「どう足掻いても無駄だ、バルモチア。大人しく投降しよう。」
「何を考えておられるのですか⁉︎艦隊旗艦ーー」
彼女がそう叫びかけた次の瞬間、南東の方で隕石でも落ちたかのような巨大な爆発が生じる、そして巨大なキノコ雲が発生し我々は滅びてしまうのかと言わんばかりの規模の爆炎と津波がこちらに向かおうとしていた、その次の瞬間、それらは突如として収まっていく。そして奴の気配は衰えるどころか逆に強大さを増していた。
ーーやはり奴は、あらゆる常識が通用しない化け物かーー
「そ…そんな馬鹿な…。あり得ない、あんな化け物を平然と倒すとは…。しかもその際に生じたあんな爆発が収まっていくなんて…。」
あまり無常識な光景に血気盛んなバルモチアもさすがに動揺する。
ただでさえヴォルケンと互角のスペックを持っているというのに、破片を取り込んで最強の破壊の化身と化した彼女さえ、自分にかすり傷一つさえ負わせることを許さずに一方的に美味しく食い殺してしまうようなモンスターと戦っても勝ち目などない、むしろ彼女と同じような悲惨な運命を辿るだけだ。そしてその者達の幾人かを殺め、人質に取っても無駄だ、さらに悲惨な運命が待ち受けているだけだ。そういう点では今回の降伏勧告は地獄に神が舞い降りたようなものだった。この勧告を受諾しない理由はない、私達はすぐに武装ロックを受け入れ、ヤマトや彼らに連れられて奴の元に向かう。
「奴は伝説の海の怪物の名を冠し、その名に相応しく圧倒的、いや一方的な振る舞いを見せつけているというのに外見は随分とシンプルで、人間の言葉で言うとステルスを重視したイージス艦のデザインに近いな。」
「伝説の海の怪物の名前が今の人類の艦艇群に近い現代的なスタイルと相まってこの艦に魅力みたいなものを齎しているな…。」
以外にも奴のメンタルモデルは男だった、彼は私達を見ると何か申し訳無さそうな顔をしてこちらを見ていた。彼の名は海神智史といい、元は別の世界の人間だったらしい。だがある時時空変動に巻き込まれて気がついたら奴そのものになってしまっていたそうだ。彼は純粋で無邪気な普段は何処か抜けた感じの雰囲気だが、戦闘となるとその純粋さと無邪気さ故に徹底的に相手を甚振り、嬲り殺しにしてしまうという残虐な一面を見せるところもある。
とにかく、奴つまり彼を敵に回さなければ、よほどのことが無い限り殺されることは無いだろう。唯一気掛かりなことと言えば、モンタナ様やヴォルケン達は彼の敵だから確実に惨殺されてしまうかもしれないことだが…。
「ノースカロライナか‼︎私のライバルであるワシントンの姉か‼︎」
「そうだ、しかしキリシマ、何故お前は生きている?」
「奴の気まぐれだ。奴は自己中な所が強いからな…。」
私の妹、ワシントンのライバルであるキリシマのメンタルモデルは生きていた。ワシントンはあの化身に焼かれる前に彼によって生成された艦載機達からばら撒かれた機雷に触雷して沈んでしまったが…。なのにキリシマが生きていたのは何故かわからない。人間の歴史に記されている太平洋戦争に関する記述では、戦艦霧島は沈んで戦艦ワシントンは生き残ったという結果だったのに。これも運命の皮肉なのか?
ともあれ私達は巨大ドック艦がいるソロモン諸島マキラ島沖に連れられ、そこで苦痛な日々を過ごすこととなったはずだが、彼は私達に、逆らわなければ自由に過ごしていいと告げ、私達を修繕し、マミヤに食事などを振る舞うように命じた。お陰で私達はこの島から出られないこと以外は自由に暮らすことができ、人間にしてみれば大切なことである最低限の衣食住も保証されたので、取り敢えず安心した。彼が何故私達を直したのかという理由は分からないが、仮に万全な状態で彼に戦いを挑んでもすぐに粉砕されて終わりだ。そして彼によって大事なものを奪われて悲しんでいたマミヤが今では奴と一緒に幸せそうに料理を振舞っていたので彼に逆らうことはマミヤを悲しませること以外の何者でもなかったからだーー
ーーところで、群像達はというとーー
「艦長、リヴァイアサンから戦闘の一部始終のデータが送られてきました…。」
「そうか、イオナ、モニターに出してくれ。」
「了解」
そして401のメインモニターやサブモニターに戦闘の一部始終のデータの映像が現れる。
「うわぁ…。まさに一方的…。でもスペックが違いすぎているからこんなの私達だけじゃ勝てない…。」
「地球を焼き払っちまう化け物を平気な顔で甚振れるのかよ、完全に化け物じみてるぜ…。」
「彼はあの超兵器の膨大なエネルギービームを悉く受け止めた挙句吸収して自分のものにしてしまいますからね。物理的常識を生まれた時にどこかに置いてきてしまったと言うべきでしょう。」
「とにかく、彼は私達の常識が通用しない相手だということが改めてそこからわかりますね…。あの破片を取り込んでも彼に一方的に嬲り殺しにされた彼女には同情してしまいます…。」
「ヘル・アーチェ…。地獄の門を名乗るに相応しい力を見せつけたがそんな存在ですら簡単にお手玉にとって美味しく食べてしまうリヴァイアサン、いや智史。彼は俺達を積極的に助けてくれているようだ、だが俺達は彼に依存しなくても生きていけるようになりたい、でも依存しなければこの現実を生き残れない…。実際に今回も彼がいなかったら俺達は勝てなかった…。俺達は非力すぎる…。」
「智史…。」
そうそれぞれの感想を呟く群像達。それは自身の無力さと悔しさが滲んだものだった。
彼らのそんな感想を彼、海神智史はこっそりとリヴァイアサンの艦橋でハッキングで聞いており、皆の態度を自身が展開する青いサークルによって表示されるモニターに映る映像を通じて見て聞いて、どこかしんみりとしていた。
「あれ、智史、どうしたの?」
「ああ、千早群像達の様子を見ていた、自身の無力さを嘆く様子が何処か自分の心に響いてきたからな…。蒔絵、自分を取り巻く環境を変えるだけの力が無かったことを悔しいと思わなかったか?」
「そうだね…。友達が欲しいなって思ったけど、その環境を変えられなかった、そこは悔しかった…。」
「そうか…。」
智史は蒔絵とそう悲哀に満ちた会話をする、夕日がその悲哀を更に強くする。そして彼は蒔絵や皆の為にコンゴウと密かに密談を交わし、ある計画を進めていた…。
ーーそしてほぼ同時刻、ハワイ近海にいるヴォルケン達はというとーー
「まさに一方的だな、彼女は防御で私に勝ること以外は私とほぼ互角のスペックを持っていたはずだ、それでいて破片を取り込んで更に強くなったというのに、それさえも一方的に弄んで嬲り殺しにしてしまうとは…。」
「まさに悪魔の所業ね…。非戦闘艦や既存艦はどうするの?」
超巨大戦艦ヴォルケンクラッツァーの前部甲板上にてそう会話をするヴォルケンとモンタナ。ヴォルケンはモンタナにある大事な話を伝えようとしていた。
「モンタナ、お前は非戦闘艦や戦いたくない艦と共に奴に投降しろ。決戦の準備は整った、だが私を含めた皆が破片を取り込んで奴に突っ込んでも奴に一矢も報えずに一方的に殺されて終わりだろう…。たとえマスターシップがそこに加わってもその結果は変わらないのかもしれん…。それにマスターシップからは邪悪な意思しか感じられん、私達を己の物にして傀儡、そして兵器として使い捨ててしまおうという意思しか。奴抜きと仮定したら世界中のすべての霧の艦艇を集めてもマスターシップには勝てん。
そしてムサシの命に従いそのまま奴との決戦に臨んでも、皆死に絶えたら何も生まれぬ。ならば誰かが生き残れば何も生まれぬという事態は避けられる。私達が奴、リヴァイアサンの為に犬死になることで生き残った者達の未来が明るくなればそれでいい。それに奴は冷徹な悪魔では無い、逆らわない者達には寛容だ。」
「つまりどういうことなの?」
「モンタナ、お前にはオウミと共に生き残り、生き残った物達を束ねてくれ。そして奴と協力してマスターシップを倒すんだ。ムサシが邪魔してきても構わん、排除しろ。私は奴にマスターシップを倒す為の資格があるかどうかを問う為に自分について来てくれる部下達と共に、己の命を懸けて奴に死闘を挑む。」
「わかったわ、でも何故彼は信用できる存在だと考えられるの?」
「奴は逆らずに大人しく従うことにした私の部下達を素直に保護し、受け入れてくれた。奴によって大事なものを奪われて悲しんでいたマミヤが今では奴と一緒に料理を振る舞い、皆を楽しませていることから分かる。奴が何者なのかは分からない、だが奴とマスターシップを両方敵に回したら私達は確実に滅ぼされる。
奴とマスターシップ、この両者の違う所を挙げるとすると、奴にはマスターシップのような邪念はない。むしろ自分に素直で純粋な人物だ。奴、リヴァイアサンとマスターシップ、このどちらを取るかと問われた時、私なら奴を取る。奴の元なら彼らが奴に逆らわなければ彼らは未来を育んでいける。
そして奴は自身中心で行くとするならば完全無欠と言っていいほどの強さを見せつける、だが他者を束ねるとなるとやや力量に欠ける所があり、結局自己中心的な未来を描いてしまう所もある。モンタナ、お前は奴を手伝い、そして奴が間違った方向に突っ走らないように奴と他の仲間達の関係の調整をしてやれ。奴は環境を整えてやれば生き残った皆を救う救世主となる。」
「つまりあなたは彼に皆を救う資格を問う為に命を天に捧げるのね…。」
「私は奴が怖くてあの破片を取り込んだ、そして己を犠牲にして奴に勝つことで未来を切り拓こうと思った、だが奴は相討ちを許すほど甘くはなかった、奴は私が己を必死に磨いている姿を見て無邪気に喜び、更に己を磨く速度をどんどん上げていき、そして私との実力の差を滅茶苦茶な迄に広げて、それを見て更に喜び、更に自分を磨き、その速度すらも更に上げていった。私の努力など奴を喜ばせ、既に絶望的な迄の実力の差を更に広げるだけに終わった。
だが己を磨く為に奴を必死に見続けているうちに奴は悪魔のような存在ではなく、ただ単に純粋で無邪気な人格を持った人物だということに気がついた。なら奴の欲望の為に自身を犠牲にすることで誰かが救われるのならそれでいい。奴は純粋さ、無邪気さ故に敵や己を駒として悪用する者に対する残虐性や非情さ、突っ込みどころを持つ者を徹底的に弄んでしまうという所も持っているが、それと同時に本当に困っている他者を積極的に助けてくれるような優しさも持っている。奴はそんな分かりやすい存在だからこそ私は奴の元に仲間達の未来を託せる。」
「分かったわ、ヴォルケン…。」
「私達は負けるべくして負けるのだ。なら私と一緒に生き残っても害にしかならない者も纏めて奴に始末してもらおう、ムサシに忠誠を誓う者達も勿論のこと、気の毒だが、私に仕えること以外を考えないあまりに視野狭窄に陥ってしまい、結果破片を取り込んでしまった者達も。破片は一度取り込んだら取り除けん。そして奴には私達諸共始末してしまうことを軽々とやってのけてしまうだけの実力がある。」
そう会話を終えるヴォルケンとモンタナ。ヴォルケンは自分に迫り来る死の運命を覚悟していた、だが自分に付き従ってくれた太平洋艦隊全員には死の運命を確定させたくない彼女はモンタナに一部の部下達と共にリヴァイアサン=海神智史に投降するように指示した、後に彼女と彼女に熱狂的に付き従う部下達には彼によって一方的な破滅的な死の調べが奏でられる。だが彼女達の犠牲と引き換えに彼に投降し、生き残った者達は明るい未来を生きていくことになる。ただ彼らはまだその未来を知らないーー
リヴァイアサン=海神智史が新たに習得、披露したオプション
原子・粒子運動エネルギーベクトル操作能力
智史が自身で習得した次元津波の発生メカニズム及び冷却弾を無効化した際の進化データを再研究した結果、新たに習得したオプション。
原子と粒子の運動エネルギーベクトルを自分の好きな方向に向けて、それらが衝突するタイミングを任意で調整することで、それらの運動エネルギー量を自分の任意の量に調整してしまうもの。
つまりエネルギーベクトルの調整次第では現時点で使えるものとはいえ、とんでもない規模の次元津波やビッグバン規模の大爆発を引き起こしてしまったり、逆に共振現象のエネルギーや東日本大震災クラスの大津波すらも一発で沈静化させてしまう程である。勿論その能力を活かして更にエネルギーの生成量を増やして、更に自己再生強化・進化システムの能力を強化してしまうことだって可能。勿論その能力も自己再生強化・進化システムによって強化されてしまう。
本作ではヘル・アーチェの大爆発によって生じた津波と爆発のエネルギーの拡散による大災害を未然に終息させるために平然と使用された。