海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー 作:satos389a
今回は三者講和のことにも触れて書いています。
そしてリヴァイアサン=海神智史の出生ですがとんでもない存在が何かとオリジナルの彼自身の自我と融合したことで生まれたということにする予定です。
それではじっくりとお楽しみください。
「遂にあの巨艦のお出ましか…。」
「それも日本からのプレゼントである振動弾頭を搭載した401と一緒だという。奴は一体何を考えているんだ?」
「さあな、奴にしてみれば俺たちはどうでもいい存在だ。もし奴がその気になれば俺たちは一撃で吹っ飛ばされる惰弱な存在なのさ。」
「それにしてもなんて大きさだ、こいつは…。艦といえる域を超えてやがる…。」
「まさに海に浮かぶ城、いや巨大な要塞だな。それにしてみれば随分とシンプルな形をしているが、海軍のイージス艦に近いコンセプトを持ったデザインだな。」
「左舷に飛行甲板らしきものを備えているようだが…、よもや、こいつ航空戦艦か?」
「そのようだな、奴が霧の太平洋艦隊を叩き潰す際にはそれが未使用だったことが上層部に報告されているが、奴は艦載機をそこから繰り出して戦うという戦術も用いるのだろう。」
「しかし右舷にはそんな感じを漂わせるものはねえな…。ミサイルのVLSに巨大な「何か」を隠しているような感じの雰囲気があるハッチがあるだけなんだが…。」
「恐らく強力な兵器が隠されているのだろうな、それをわざわざ使わなくても奴は霧の太平洋艦隊を軽く殲滅して退けるだけの実力があるのだろう。」
「霧の化け物達が持っているものより遥かに強力なエネルギー兵器を使ったという報告も軍のお偉いさん達の耳に入っているぞ。奴がバリアみてえなものを展開しといたお陰で何事もなかったが、もし奴が最初から俺たちを滅ぼす気でいたら俺たち人類は地球、いや太陽系諸共木っ端微塵じゃ…。」
「俺にはカミさんや生まれたばかりの子供がいるしお前らにも大事な人がいるだろうがこいつが俺たちのそんな事情に関心など示してくれる筈などねえ。何れにせよ今の俺たちには何も起こらないことを神に祈ることだけしか選択肢がねえのさ。幸い今のこいつは戦う気が無さそうだ、実際に奴らが輝かせている模様が輝いていねえ。」
そう話すアメリカ陸軍の兵士達。彼らは北米太平洋方面の霧と戦ったことがあったものの、一方的に蹴散らされるという結果に終わることが殆どであったことから半ば諦めかけていた。そして彼らはその霧を蹴散らしたリヴァイアサンに畏怖し、自分達が生き残る努力すら無駄だと考えて絶望していたのだった。
「おいそこのおめえら、何を話してやがる?」
「しょ、小隊長殿。今からここに来るイ401に随行している巨艦について話をしておりました。」
「話をこっそり聞かせてもらったが皆奴の強さの前に手足がすくんでいるようだな。」
「はっ、その通りであります!」
「奴が来る場所はどこだ?」
「サー、ここであります!」
「奴と相対するのが、怖いか?」
「はっ、我々全員がこの場から逃げたしたい気持ちであります!」
「なるほど、だが奴から我々が逃げ出したら誰が奴と戦うというのだ?」
「はっ、我々だけであります‼︎」
「そうだな、我々は万が一奴と戦うことになったら真っ先に戦うという使命を受けているから戦わなくてはいけないのだ。だがもしヤバくなったら逃げろ。勝ち目の無い戦で無闇に犬死にするぐらいなら退け。そして他の仲間達にこのことを伝えて次の戦いの糧にしろ。それでも駄目なら最後は大切な人を守ることに専念しろ。」
「はっ、我々は国家や国体を守る為ではなく、我々自身の大切なものを守る為に戦うのであります!」
「そうだ、大事なものを守る為に戦え!ほぅら、霧のクソッタレ共を次々と屠った英雄殿が来るぞ、もてなしてやれ!」
「サー、イエッサー‼︎」
彼らは次々と持ち前の場所にテキパキと着いて行く、その時リヴァイアサンごと401一行はサンディエゴに入港しようとしていた。
「イ401と大戦艦モンタナ、および大和型を模したと思われる霧の艦艇及び未確認の巨艦を視界に捉えましたーー、⁉︎」
ーーバシュゥイイイイイイイン‼︎
ーーバシュゥイイイイイイイン‼︎
「海底に強力なエネルギー反応を複数検出!」
「機雷の爆発か⁉︎それとも彼らではない別の霧が仕掛けた新手のトラップなのか⁉︎」
一方401の方ではーー
「サンディエゴ軍港の海底に無数のタナトミウム反応を確認‼︎」
「侵食兵器か⁉︎」
ーーズシュゥゥゥゥゥン…。
「い、いえ、爆発、収束‼︎」
「何が起きている⁉︎」
ーーゴボゴボゴボゴボ…。
ーーズザァァァァァ…。
「わかりません、ですがさっきの爆発でサンディエゴ軍港の海底の地形が大きく変動‼︎水深が深くなったと考えられます!同時に無数に発生したワープホールより海水と思わしきものが流入しています!」
「なんだと⁉︎」
「群像、リヴァイアサンから入電。」
「智史、いったい何が起きているというんだ⁉︎」
「あ〜ごめんごめん。ここの軍港リヴァイアサンの巨大な船体を入れるには水深が浅かったからそこの地形を力技で無理矢理変えちゃった。驚かせてごめんよ。」
慌てたまま彼に思わず尋ねてしまう群像、それに対して智史は少し申し訳無さそうに答える。
「アホか⁉︎こんな所に入る為に無理矢理地形を変える必要などねえよ‼︎入らなかったら外で待機してればいいだけの話だよ!」
「うわぁ…。力づく過ぎる…。そして自分の都合を常に優先しすぎ…。あんた周りの気持ちを理解しようとする気ないでしょ?」
「とにかく、こんな芸当は彼にしか出来ないようですね…。」
「そのようだな…。」
そしてアメリカ側もーー
「爆発、収束しました!」
「司令、攻撃の許可を!」
「落ち着くんだ、さっきの現象は彼らが攻撃を仕掛けてくる兆候と見なせるのか?」
「は、はあ…。」
「では、さっきの現象で我が軍の艦艇や施設に被害は出たのかね?」
「い、いえ、確認されていません…。」
「なら待つんだ、今彼らにこちらから無闇に攻撃を仕掛けたら結果は分かっているはずだ。」
「は、はい…。」
彼らはさっきの現象で皆強いストレスやプレッシャーを受けて全員がピリピリしていた、中には恐怖に耐え切れずに発狂しそうになった兵士や基地要員も出た。
「おっ、面白いこととなっているな、もっとプレッシャー掛けたらどうなるんだろう?(笑)」
そう呟く智史、彼は最初からサンディエゴに入港する気でいたのだ、401が入港するのに対して自分の船体が外なのは寂しいし不満だったからだ。そのために海底の地形まで変えて入港しようとしているのだ。その際にやった事の皆の反応を見た彼は他人を思う気など無かった事もあったのか、嬉しそうに更なる暴挙(?)に出ようと妄想していた。
「だめでしょ〜?そんな事したらみんなが可哀想だよ〜?」
「(ま、そうですよね〜。)」
しかし良心があったお陰なのか、彼はこれ以上の暴挙に出る事は無かった、そしてリヴァイアサンはサンディエゴ軍港に入港した。
「(うひょ〜。ハイテンションから冷めた気分で見ると、みんな視線が怖いね〜、シミュレーションで理解していた事だけど。なら事前のプラン通りにその雰囲気をブチ壊すとしますか‼︎)」
ーーパチン‼︎
智史は嬉しそうにそう考える、そして嬉しそうに指を鳴らす。するとーー
ーージャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッ‼︎
「な…何あれ⁉︎」
「人の形をしたロボットみたいだけど両手に楽器を持ってる。それをたくさん呼んで何をするのかな?」
「智史、これは何だ⁉︎」
「軍楽隊。人間の世界で音楽という文化と軍隊という組織が融合して生まれたもの。ちなみにそこにいる彼らは人の代役。彼らの名はNS-5(ネスターファイブ)。分類上ではヒューマノイドといった方がいいのかもしれない。私が元いた世界にあった映画の「アイ,ロボット」に出てくるもの。その中のサニーというオリジナルをベースにしている。」
「ひゅ、ヒューマノイド⁉︎」
「そう、人間に近い動きをするロボットだから。因みに彼らは私の個人的好みで選んだ、自分を外見モデルとしたサブロボットを選ぶのは好きじゃないし、人の外見モデルを模したのも好きじゃないから。」
「な、なるほど…。」
「さて、こちらから入港セレモニーを始めるとするか‼︎」
彼はそう言う、そしてサンディエゴ軍港の埠頭に接岸しようとするリヴァイアサンの左舷飛行甲板上でヒューマノイド達は軍艦マーチを奏で始める。
ーーパーパーパッ‼︎パララッラッラッラッラッラッラッ‼︎
パーララッラッラッラッラッラッラーラーラーララ〜パララッラッラッラッラッラッラーラーラーララ〜(ララララララ!)
「勇気付けられる音楽だね!日本の軍人さん達の催しで聞いた事ある!」
「こちらのピリピリした雰囲気をぶち壊すには非常に有効だな…。」
そして401でもーー
「本艦の接岸、完了しましたーー、⁉︎リヴァイアサンの艦上にて何か起きています!え〜っと、これは、音楽…?」
「軍艦マーチだな。緊張した雰囲気を反故らかすには非常に有効といえる。恐らく彼はその雰囲気に違和感を感じたから自分が馴染めるような空間にする為にわざわざこのようなことをしたのだろう。」
「おいおい、その雰囲気自体を作っているのは智史、おめえじゃねえか〜‼︎」
「そうだな、だが智史はそれを自分が馴染める空間にする為にこの雰囲気を壊そうとしているのではないのか?杏平、お前もそうだろう、ここが最初からお前にしてみれば馴染める空間だったらそこの空間に自分の好きなものを取り付ける必要性などあるのか?」
「はっ…。」
心に思い当たる所があったのか、杏平はそれ以上の言葉が出なかった。
「とにかく、彼の引き起こした行動に俺達は関わってはいない。従って彼の行動を止める権利はない。」
そしてほぼ同時刻、サンディエゴ軍港の埠頭に接舷し停泊したリヴァイアサンからタラップのような形をしたクラインフィールドの階段が軍港で振動弾頭受け取りセレモニーの為に待機している高級将官達の所へと走っていくように形成され、その道の上をヒューマノイドの軍楽隊が軍艦マーチを奏でながら先陣を切っていく。
「違和感、凄くない…?」
「何って言うか…、私たちはこのような場所を歩くべきではないというか…。」
「これって、お偉いさんにしか許されないことだよね…。」
「?まあいいの。元生徒会の皆さん人間に関することを学んで大分人間っぽくなってきたねえ。」
「そ、そうですね…。ですが慎むことはできたはずでは?私達はあなたより身分が高い存在ではないというのに…。」
「そんなこと言うなって〜‼︎うちも自分に自信ないけどあんたらも自分に自信無いんじゃないの?」
「はっ…!」
そう驚くヒエイ、彼女らは人間について色々と知っていくうちに無意識に謙虚らしきものーー自重する考え、体裁(悪い意味で)が身についてしまっていた。そうなってしまったことを彼女は彼の今の発言で悟ったのだった。
「なるほど、あなたは私に体裁らしきものが身についていると告げたかったのですね。」
「ま、そういうこと〜。」
「ですがそれよりもメインキャストのこと忘れていませんか…?あなたがこの出来事の主役では無いはずだというのに」
「お〜い、俺たちはそっちのけかよ〜。」
ヒエイにそう指摘される智史、そして彼がふと見るとイオナや群像達、ヤマトとモンタナが何か言いたげな雰囲気で彼を見つめていた。
「あ…、ああ〜っ‼︎わ〜す〜れ〜て〜たぁ〜‼︎」
「智史くんったら自分の命や大事なものに関することは一生懸命だけどこういう所は少し抜けているね。」
「そうです、ハイ…。」
嬉しそうにそう返事をする智史。それはともあれ、群像達をメインとする正式な振動弾頭引き渡しセレモニーが始まる。
「何なのだ、これは…?」
「さあ…?」
「ともかく、我々と戦争をしようという雰囲気は無さそうだな…。」
少し気を緩める兵士達、しかし彼、海神智史が攻撃を仕掛けてこないということがまだ分かった訳ではない。彼らは引き続き401のメンバーを除く全員に対する警戒を続けることにした。
「これより、振動弾頭の引き渡しも含めたセレモニーを開催いたします。」
そしてセレモニーが始まる。全員が引き締まった気持ちで式が進むのを見守っていた、しかしーー
「う〜ん、こういう雰囲気の場所で何か待たされるのは嫌いなのよね〜。」
智史にしてみればセレモニーが終わるまでじっとその様子を見ているのは非常に退屈で仕方がない。周りをキョロキョロと視線を彼方此方に向けて退屈を紛らわしていた、それを見ていた琴乃が、
「なんか退屈そうね、智史くん。一旦外に出る?」
「う、うん。」
「すみません、連れと一緒にトイレ行きたいので一旦席を外します。」
「わ、わかりました…。」
そして2人は外に出る。
「ごめん、こんな我儘に巻き込んで…。カチカチした雰囲気の中で待つのは少し嫌いなんだ。」
「いいのよ、私も式場の外に出たかったし。でも一応群像くんがお偉いさんと記念握手みたいなことをする時までには戻りましょう。」
「なら監視カメラとかで一応式場の様子も確認しつつ風景を眺めるとするか…。」
智史はそう呟く、そして軍港の大きさのスケールを体に染み込ませるためにあっちこっちを歩き回る。
「智史くんって右脳派なの?」
「えっ?どういうこと?」
「ほら、街の雰囲気とかをイメージで掴もうとしてるし…。」
「そうだね、街の雰囲気とか物事をイメージで掴もうとしてるけど…。」
「そういう風に考えるのは右脳の働きが強いということ。左脳は倫理的に考えるから物事を倫理で掴もうとする。」
「ふむふむ、成る程…。琴乃はどっち派なの?」
「私は右脳と左脳のバランスが取れていると言うべきなのかな…。よくわかんないや。」
「成る程ね…。うちも天羽琴乃という個体はどういう頭脳派なのか少しわからない、だからうまく言葉に出来ない。」
「そうね、智史くんは右脳メインだから見たことを上手く一言で表せないのかもしれないわね。」
「そうだね、うちは自分が見たものをイメージとして心の中の情景を豊かにするために記憶しているのかもしれない、倫理ではなくて。あ、そろそろ時間みたい。」
「あらほんとだ。なら戻りましょう。」
「ついでに三者講話もやってしまおう。」
そして2人は式場に戻っていく。
「日本から遥々とした道のりを通り、幾多の困難を潜り抜けた蒼き鋼とその代表、千早群像君に賞賛を‼︎」
そして上級将校らしき軍人と群像が皆から拍手を浴びせられる中で握手をする。
戻ってきた智史や琴乃もとりあえず拍手をして群像を称えた、その道程の際での試練は霧の究極超兵器リヴァイアサン=海神智史抜きでは突破不可能だったが。
「すみません、自分達がここまで来れたのは自分達自身の努力によるものもありますが、実は彼、霧の究極超兵器 超巨大戦艦リヴァイアサンごと海神智史氏のお力添えも無ければこのような今日を迎えることは出来ませんでした。彼が海神智史氏です。」
あ、なるほど、自分達がここまで来れたという功績は“自分達だけでやったぞ!”と自慢するのではなく、うちの手助けにあると謙遜したいのね?
「ほう、君が千早君達を助けた霧の究極超兵器リヴァイアサンのメンタルモデルか…。」
群像に指名された智史は素直に壇上に上がる。
「私は霧の究極超兵器リヴァイアサンのメンタルモデル、海神智史といいます。」
そして彼はメンタルモデルであるということを示すのかのように青いサークルを自分の周囲に発生させる。
「おお…。」
「本物のメンタルモデルだ…。」
その光景に皆が驚きの声を挙げる。
「そしてそこにいる皆様方、いえアメリカ全国民の方に私の方からお願いがあります。」
彼がそう言う、するとヤマトとモンタナが彼の意を理解していたかのように壇上に上がる。
「今回私がここに来たのは蒼き鋼の振動弾頭輸送を護衛するだけではなく、皆様方に太平洋方面の霧と講和をしてもらいたかったからです。」
「な、なんだと⁉︎」
「驚くのも無理はありませんね、何せ私がこのことを伝えなかったことがありますから。」
彼らが驚くのも無理はない、何せ今まで敵対していた筈の存在といきなり講和しようというアイデアが飛び出してきたのだ。
「我々を追い詰めた存在といきなり講和をしようとは、貴様、ふざけているのか⁉︎」
「驚かれるのは無理もありません、だから好きなように驚いてください。ですが私はまだ何も結果が出ていない事柄を最初から無駄と決めつける行為自体が嫌いなのでね。」
その提案に怒り狂いく掴み掛かろうとする出席者の一人に智史は冷たく反論する。それでも掴みかかって来ようとしたので智史は相手に怪我を負わさないレベルで加減をした上でクラインフィールドで彼を殴り気絶させた。
「君が言っていることは本当なのかね?」
「はい、その通りです。こちらに講和する意志さえあれば直ぐに講和を締結致しましょう。」
智史に質問した人物はアメリカの国防長官だった、智史は相手を騙すために策を弄するする気など微塵も無いので素直に講和を提案しているのだが、彼にしてみれば裏があるのでは無いかという警戒を与えるものでしかなかった。
「アメリカ国防長官殿、彼が場を乱してすみません、ですが彼が言っていることは本当です。」
「成る程、では君は、誰だね?」
「元霧の太平洋艦隊副旗艦、大戦艦モンタナといいます。我々の艦隊の旗艦であるヴォルケンクラッツァー殿は皆さんもご存知の通り、彼と戦い、多くの部下と共に名誉の戦死を遂げられました。」
モンタナはそう言う、そして空中にスクリーンのようなものを形成すると今までの戦闘記録をそこに流し始める。
「おお…。」
驚く皆、そしてモンタナは話を続ける。
「私はヴォルケンクラッツァー殿に複数の艦隊と共に生き残るように命ぜられたからこそここにいるのです、もし彼と戦うように全員に命ぜられていたら我々は彼によって一人残らず討ち取られ、私もここにはいなかったでしょう。そしてその戦闘の後、彼が私の元に来たのですが、彼は降伏したものについては比較的寛容でした。それどころか私達に平和というものを提案してくれたのです。」
「なるほどな…。」
「今憎しみ合うことを続けても憎しみは憎しみを生み出すだけです。私達は私達自身にあったその負の連鎖を断ち切る為にここに来たのです。」
ーーモンタナ、私の為に嘘を吐くのか?
私はお前達に人類と停戦するという行為が戦略上重要と判断したからこそ人類と和平を締結するようにそうした。嘘を吐く、そういうことなど微塵も考えていなかったのに。
私は嘘を吐くの猛烈に嫌いで苦手だ、だからそういう選択肢など一つも浮かばない。だが嘘は方便ともいう。私だけで策を弄して嘘を吐きまくって思うようにことを進めるするのは難しいな。
「わかった、君達が言うことを信用してみよう。」
遂に国防長官が腰を上げた。そしてセレモニーは無事に終わる。
国防長官は高級VIP用の部屋に入るとワシントンD.Cにいる大統領に電話を掛けるーー
ワシントンD.C、ホワイトハウスーー
ーープルルルルルルルル…。
ーープルルルルルルルル…。
ーーガチャ。
「大統領閣下、お電話です。」
「わかった、それで誰だね。」
「国防長官殿からです。」
「私だ。いったい何の用だね?」
「大統領閣下、霧の太平洋艦隊を撃滅したあの霧の究極超兵器のメンタルモデルとその太平洋艦隊の元副旗艦のメンタルモデルから我々に対して和平交渉の提案がありました。」
「その2人の名は?」
「リヴァイアサン、もとい海神智史と大戦艦モンタナです。」
「なるほどな…。今まで我々と敵対することを続けていた存在と講和するということか…。感情的に受け入れ難いところもあるな…。だがそれを提案した彼は霧の太平洋艦隊を撃滅したという実績がある。我々にしてみればそれは決して無視できる代物ではない。」
「つまり古来からの戦争のルールの活躍した分だけ褒美を与えるという考えに基づくと今の彼には我々に和平か戦争かという選択を強制的に迫るという権限があるということでしょうか?」
「そういうことだ。もし和平が成立して海洋の封鎖が実質的に解かれた場合、経済的な好影響を与えることとなるだろう。」
「では彼の提案に乗る、いや国家の運命を賭けるということですか?」
「そうだな、彼の提案に乗ってみよう。彼らに伝えてくれ、私直々にサンディエゴに向かうと。」
ーーガチャ。
「今の我々は彼に生死の選択を突きつけられているということか…。彼が何者なのかはまだ分からんが…。」
彼らは知らなかったが、実は智史はこの話をハッキングできちんと聞いていた。彼らが本気で和平を結ぼうとしているのかをきちんと確認しないと気が済まなかったからだ。しかし彼は少しだけだが緊張していた、本来なら些細なことでは動きはしないお偉方を自分が原因となって引き起こされたことで動かしてしまったからだ。
ーーなんだろう、これ…。力があり過ぎるとこうもあっさりと動かせるのか…、しかしその行動に基づく責任は非常に大きいな…。シミュレーションを何億回も繰り返しても常に強化している演算能力なら十分に処理可能という結論に達してはいるが…。
「智史さん、プレッシャーが掛かっているようですね。」
「アタゴ…。あんたなんでうちの居場所を…。」
「心配ですよ、あなたは自分の感情のままに基づいて行動するからそれが世界を揺るがす事態を軽く生み出してしまうということにも繋がりかねませんから。そしてあなたはそのことの重大性を理解はでき、殆どは処理できてしまうでしょう。ですがほぼあり得ないと言うべきでしょうか、場合によっては処理不能に陥ってしまうことがありますから。」
「それはうちの処理能力及び自己進化能力を物理的に解析した上で言っていることなの?」
「そういうことです、あなたが人間と同じ処理機能だったら激しいパニックを引き起こしかねませんからね…。」
真夜中のサンディエゴ軍港に停泊中のリヴァイアサンの艦橋にて海風に吹かれながら会話をする2人。アタゴは智史のことを琴乃から聞き、智史の特性を完全とはいかなくてもかなりの高レベルで理解していた。
「裏を返せばうちの向上心に基づく強化を賞賛しているの?」
「そういうことにもなりますね…。」
そして翌日、サンディエゴ軍港近くの空軍基地にてーー
ーーキィィィィィィィィィィィ…。
「大統領閣下が到着なされました!」
「大統領閣下、彼はサンディエゴ軍港の司令部の用VIP用休憩ルームで待機しています。」
「ご苦労、国務長官。」
サンディエゴ軍港の司令部のVIP用休憩ルーム。
「はじめまして、私がリヴァイアサンのメンタルモデルごと海神智史といいます。」
「君があの霧の艦のメンタルモデルか、よろしく。」
ーーこいつが大統領か、初めて物理空間で認識するが…。アフリカ系アメリカ人か、うちがいた元の世界でのそういうのみたいな雰囲気とはまた違うな…。ベテランの映画俳優に雰囲気が近い…?ともかく、外見と相まって大統領にふさわしい威厳を醸し出しているな…。
「隣に座っている人達は誰だね?」
「1人は人間ですが他の2人は人間ではありません、超戦艦ヤマトと大戦艦モンタナのメンタルモデルです。」
「よろしくお願いします。」
そして講和条約に関する条件の交渉が始まる。
「我々としては我が国とその同盟国の海域の霧を全て駆逐することを条件として欲しいのだが。」
「不可能ではありません、ですが私達だけでそれをやるとするとそれは自分で駆逐したということにはならないのでは?自分の力で駆逐したという実績があれば多少の面子はあると思いますが。そして何故?何故霧を全ての海域から駆逐する必要があると?」
「そ、それは…。」
「今までの経験から霧を排除しようと考えてしまう気持ちは分からなくはありません、ですがその気持ちが自分達の視野を狭めているのでは?友好的な個体もいないとわかっている訳ではないでしょう?そして霧が人類を積極的に滅ぼそうとしているという根拠をあなた方は示せていますか?人類を衰退に追いやろうとしているのは確かですが。」
「う…。」
ーー私は常に力づくで解決することしか考えてはいないがな、口で解決することが猛烈に苦手だから。だが指摘できることはきちんと指摘しておくぞ。
「恐らくあなた方は己の保身と軍産複合体の利益の保身及びその回復を企てているのでしょうね、まあ私もあなた方と精神的思考ルーチンが一致しているので私の行動の奥底にある「欲求」もあなた方のものと同じですが。私達に霧を駆逐するという負担を押し付けて国益よりも彼らの利益の回復を図っているのでしょう?まあ私は霧と積極的に対立してしまい、霧に激しく恨まれているので霧を無力化するのは喜んでやりはしますが。」
「そうだな…。私は国民だけでなく彼らの力に支えられて大統領を務めてはいる、今回の条件は国民の不満を晴らすということもあるが同時に軍産複合体の不満を晴らすということもある…。」
「嘘吐きばかりの下種どもと比べたら大統領、あなたは随分と素直ですね、ですが皮肉だ、あなた方の国家に残っているのは自由だけで平等はまだしも博愛は微塵も無い…。
今回の条件は受け入れましょう。我々にもメリットをもたらす代償としては受け入れられる許容範囲内ですから。ですがどちらかに一方的過ぎるのも不満が出ますからね。」
「(つまり君は自分達ををタダ働きさせた挙句に使い捨てようとするような行為をしたら殲滅するという気なのか…?)」
「(まあそういうことです。)」
そして5人は講和条約の文書にサインをし、印鑑を押す。
印鑑は大統領のもの以外は智史が各艦の個体識別紋章をモデルとしたものとなった。
そして大統領と智史達が一人一人握手をする、その光景は歴史的瞬間としてマスメディアで大きく取り上げられ、大統領と彼らは歴史的功績を挙げた存在として賞賛された。
「U.S.Navy Pacific Fleet Head Quarters San Diego Naval Port Control sending a message to Japanese Navy Yokosuka Naval Port Control.
I-401 arrival confirmed.I-401 is alive. Report, I-401 is alive.
And signed a peace treaty with the survival of Fog Pacific Fleet.」
(日本語訳;アメリカ合衆国海軍太平洋艦隊サンディエゴ軍港司令部より日本国海軍横須賀港司令部に通達。
イ401の到着を確認。イ401は健在。繰り返す、イ401は健在。
そして霧の太平洋艦隊の生き残りとの講和条約を締結。)
日本、横須賀ーー
ーーガチャ。
「なるほど…。アメリカと太平洋方面の霧が講和条約を締結したか…。」
「はい、既に太平洋方面の霧が我々を攻撃すると思われるアクションは確認されてはいませんが、アメリカから我々宛に正式に太平洋方面の霧と講和するようにメッセージが出ています。」
「統治システムもデータベースを照合した上で彼らと講和すべきという結論を出した。彼らに対する攻撃行動は以後自己防衛を除いて慎むように各方面の部隊に伝えてくれ。」
「はっ。」
太平洋方面の霧、そして部分的とはいえ、霧と人類の間に講和条約が結ばれた。それは人類と霧が必ずしも対立しているとは限らないということを示していた。
後にこれは世界を巻き込む戦争の時に人類と霧が軍事同盟を組む切欠となるーー
おまけ
NS-5(ネスターファイブ)について。
映画「アイ,ロボット」に出てくる最新型のロボットなのだが、人工知能VIKIが自我を持ち、人類に反旗を翻した際に彼のコントロール下に置かれ彼の手先として人類に襲いかかった。
しかしサニーは同系列のロボットではあるものの、ロボット3原則に従わずに行動することができるーーつまりVIKIに対抗できるのかのように自我を持って自分で行動できるようにVIKIを生み出した博士が彼をそう作り出した。
今回のロボット達は智史がNS-5.サニーのデザインが好きだったということから全員がサニーをモデルとしている。