海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作を書いている最中に個人的に不満な所があったので第20話を修正しています。
今回はコミカルと外伝要素を含んだ話です。
それではじっくりとお楽しみください。


束の間の休息と『悪夢』との死闘
第24話 浴場と回想:釧路沖の死闘


「サクラ、あんたの船体の修理及び改修、終わったわよ。元のままの姿だとは思わないで。」

「わかりました、ヒュウガさん。」

そう話をするサクラとヒュウガ。彼女は提督やクルー役である妖精達と共に信長の修理が終わるまでの間スキズブラズニルでしばらくの間過ごしていた。

 

「智史の奴、遂に人類と霧の間に、部分的とはいえ講和条約を締結させたわ。そこに至る過程を考えると私達じゃできる代物ではないわ、これ…。」

「智史さんは私達と会うまでに一体どのようなことを…。」

「ムサシの命を受けた潜水艦の2人ーー400と402から攻撃を受けたことを切欠として各地の霧を講和をする余裕さえ与えずに片っ端から殲滅。ヒエイの艦隊も軽く細切れにした上に最強を誇った霧の太平洋艦隊も、戦闘自体に関わることなく降伏した一部を除いて一網打尽にされたわ。」

「彼らは私達が戦ったものよりも強かったんですか?」

「あの破片の解析の際に色々と彼のデータベースを漁ったんだけど、その殆どが事実通り。」

「そんなに強かったんですね…。」

「各地の霧は生き残る為に必死でしょうね、でも奴はそんな気持ちなど御構い無しに貪欲に己を磨き、更なる強さと殺戮による悦楽を求めているわ。目に入った物全てを無差別に殺すようなサイコキラー程ではないんだけど…。」

「まるで狂人のような一面があるんですね…。」

「というより、純粋な故に自分の感情に忠実すぎると言うべきでしょうね。ともあれ、彼はこちらから何か仕掛けて来なければあんなことはしないわ。もっとも突っ込みどころがある人や物はまた別の面で積極的に狙われるけど…。」

 

 

スキズブラズニル、信長が入っているドックーー

 

「提督、修理が完了しました…。」

「そ、そうか…。元の姿より随分と変わってしまったな…。ズムヴォルトのようだ…。」

「おまけに色々と新機能が追加されたようです…。」

そう会話するサクラと提督。彼らは信長の変わり様に唖然としていた、主砲塔やミサイルVLSは原型こそ留めてはいたものの、それ以外は全部作りかえられてしまった。艦首はタンプルホーム状となり、艦橋は現代のイージス艦にあったマストといった突起物さえ綺麗さっぱりと取っ払った平べったい表面の台形の構造物となり、更に船体はトリラマンとなってしまっていた。おまけに喫水線以下の部分には無数のスラスターの様な物が付いていた。特に艦尾方向にある推進器の部分は根本から作りかえられており、スクリューは消え、変わりに船体に埋め込まれた大形のブースターの様な推進器が取り付けられていた、更にーー

 

「フルバースト形態の様なものにもなれるようです…。」

「やってみてくれ。」

 

ーーガコゥゥゥゥゥン!

 

「元あった超重力砲と波動砲の合体形態に匹敵する変形ぶりだな…。」

「この状態で401アルスノヴァモードのような芸当も出来るみたいです…。」

 

今回の改装でフルバースト形態に移行できるようになり、巡航形態でも4000ノットもの速度を出せるというのにこの形態に移行するとマッハ10は軽く超えてしまうのだ。

彼らにしてみれば信じがたいほどにチートじみた改装だった。しかしこの改装の張本人であった智史は少し後悔していた。

 

「その場の気分で悪乗りし過ぎて度を逸し過ぎたなぁ…。今のままの環境だと戦闘に迫力がなくなってすごく退屈になっちゃう…。そしてうちも強くなりすぎちゃったのかな、戦闘が楽しくなくなっちゃってる…。しかも狩れるのは美味しくない奴ばかり…。美味しい奴は太平洋の方はみんな食べたり従えちゃったし…。残るは大西洋の奴とフィンブルヴィンテルの軍勢ぐらいかな…。そしてそいつら食べたらみんないなくなるし、その状態でここに居たままだと、食事出来なくて飢えちゃうよ…。」

 

今の自分自身を満足させてくれるものは減りつつあると彼は思い込んでしまっていた、そしてそれが無くなったら自分を満たしてくれるものは無くなると確信していた。なので常に強くなっていく自分の中の心と向上心を満たしてくれるような存在を新たに見つけるために彼は次元横断能力を身につけた。

つまり彼にはフィンブルヴィンテルの件を終えた後この世界に残っているという意思などないのだ。いつまでも自分を満たしてくれるものを待っていつ終わるかわからない苦痛に耐えて待つぐらいなら自分から何かアクションを起こしたほうがずっといいと考えていたからだ。

 

「さ〜て、この世界とは違う別の世界は楽しそうだ、フィンブルヴィンテルの件が終わったらこの世界の外で何しようかな〜。色々と弄ろうかな、それともたっぷりと弄ぼうかな〜。でも相手が自分より強かったら本末転倒、ガンガン鍛えるとしましょうか。」

 

智史は嬉しそうにそう妄想していた、後にその世界の外にある別世界の主要人物達は次々と彼によって手酷い目にあったり徹底的にリンチされるという悲惨な目に遭うこととなる…。しかし彼はまだ知らない、この世界の外に自分の出生の大元があるということを…。

 

「しかし、単に強くなっただけの域じゃなくて色々と新しい方法を実行できるようになっちゃったからな、単に強い場合のものよりも戦闘が単調にもなっちゃうかもしれないな〜。強くなってくのは最初の頃は嬉しかったけど、今はそうかなぁ…?むしろ周りの環境を気にすることなく自分の能力を全開にした上で敵を圧倒するという機会が減っている…。寧ろこれはいいのかもしれない、RPGプレイ動画にある縛りプレイのように特定の分野を使わずにクリアするというのも。」

 

智史は何かを思いついたのか、嬉しそうにそう独り言を呟く、彼は自分が使うチート能力をある程度縛ってフィンブルヴィンテルを倒してみようと考えた。(もちろんそれに該当するかどうかを問わず、自身が持っているあらゆる能力に更に磨きを掛けており、該当するものは使わないだけであって使えないようにしたとは一言も言っていない。何れにせよ重要な時は全力で行く)

そこに音声通信が入るーー

 

「ヒュウガか。浴場の件で話が?」

「そうよ、材料について。」

「材料ね、本来なら日本のものを使って作りたいんだけど…。」

「あんたって頑固な面があるのよね〜、まったく。」

「でもアメリカの材料を使って作るのもいいと思う。せっかくアメリカに来たんだし、日本に戻って材料を調達するのは手間がかかるから面倒くさいし。北アメリカ大陸にあるの河原にあるでっかい石を使うのが一番現実性があるのかな?露天風呂風に仕上げてみよう!」

「ちょっと待てぇゴラァ‼︎いつあんたが作ることとなったんだぁ⁉︎」

「ぷっ、最初は少し気が進まなかったけど少ししたらやる気になっちゃった。蒔絵の子守りも兼ねて材料をアメリカ本土にある河原から調達しようっと。とはいっても何も考えずに風呂に使うのに相応しくないものを拾ってしまったらかえって困るからね。」

「あんたねぇ…。なんて奴なの…?」

「まあいいのいいの。やりたいからやりたいだけなんだから。」

智史はヒュウガと音声通信でそう会話する、蒼き鋼のメンバーとモンタナ達は一時ハワイに帰ったが、智史は刑部藤十郎の遺言を遂行することも兼ねてアメリカで振動弾頭の調整も兼ねてパシフィックビーチの一軒家に一時滞在している蒔絵とキリシマ達を見守るためにアメリカ西海岸沖合にリヴァイアサンを停泊させてそのメンタルモデルである自分はヒエイ達と共に蒔絵達と色々と戯れていたのだった。

 

「さて、材料を調達調達っと。」

そして智史は楽しそうに指を鳴らす、すると突如として海自303式強化外骨格(攻殻機動隊より)300体と大形のSTOLの輸送機30機が生み出される。

 

「北米限定で材料を調達してきてちょ〜‼︎」

 

そして智史の命令に従って彼らは北米大陸の各地に飛んでいくのだった。

 

「ただいま〜。あれ、智史、何やってるの?」

「おやま、蒔絵か。リヴァイアサンに浴場がないってヒュウガが愚痴呟いてたから幾つか手先作って各地に浴場を作るための材料を拾ってくるようにプログラムしといた。因みに浴場の設計図はうちの頭の中にプログラミングしてあるから。」

「へぇ〜、ちょっと見せて〜。」

「どうぞ。」

智史はそう言い、浴場の設計図と完成イメージをモニターに投影する。

「すげえ!これがいまから作られようとしているものなの⁉︎」

「ま、そういうこと。変態エッグがうちの船内の中に浴場作れ作れってうるさいし、うちもそれを自分の手で作ることに興味が湧いてきたし、どうせなら自分の手で作っちゃおうかな〜って。」

「話の内容を勝手に決めるな〜‼︎」

「あら、盗み聴きしてたんだ。うるさいうるさい。」

 

ーーブンッ!

 

「蒔絵、今から浴場作り始める?」

「今からでもやりたいけど、今日はもうすぐ寝る時間だから、明日作ろう‼︎」

「そうだね、もうすぐ午後8時だからね。振動弾頭の量産に関する仕事、お疲れ様。明日に備えて今日はゆっくりとお休み。」

 

そして智史は蒔絵をベッドに眠らせる。

 

「おやすみ。」

 

「子供に対しては優しいのね、智史くん。」

「害をもたらすなら手加減無用で始末しているが…。」

「そうね、でも蒔絵ちゃんに対する態度、異常に子供を溺愛する親のようにも見えたわ。ひょっとしたら私達の間に子供が出来たらその顔をペェロペェロと舐めまわしたりして?」

「はい、そうです…。」

 

そう会話する智史と琴乃。智史は子供、特に赤ちゃんを見るとすぐ触りたくなってしまい、距離のイメージを掴もうとしないこともあってか、直ぐに突いたりちょっかい(?)を出したり、挙げ句の果てには顔を舐めまわそうとしようと考えさえしたことがあった。そのぐらい彼は子供と一緒に戯れることが好きだったのかもしれない。

そしてミョウコウが話し掛けてくる。

 

「浴場ってどんな感じなんだ?イメージ映像だけじゃ物足りないな…。」

「実際に自分の手で作って確かめてみればわかるさ、一度もそう経験していないならそうしてみればいい。」

「そうだな、体験する機会を待ってるぐらいなら自分から体験するためにアクションを起こせばいいだけのことだからな。」

 

 

ーーその頃、ハワイではーー

 

「おかえりなさいませ、モンタナ様。」

「オウミ、講和は成ったわ。その講和を成してくれたのは皮肉にも私達の試練となった、いえ今は仲間となったリヴァイアサン=智史さんよ。」

「そうですか…、ですが私は蒔絵ちゃんや千早艦長のような友達は信用できてもまだ大多数の人は信用できていないんです…。」

「なるほどね、でも過去に拘り過ぎて変化しないということもよくないわ。少しづつ前に進んでいきましょう。」

「はい…。ところでモンタナ様、彼が創った横須賀の基地にベーリング海及び北極海沿岸の封鎖を担当していた霧のソビエト艦隊がヴォルケン様の頼みを聞いたムサシからの命を受け、実際に横須賀に襲撃を掛けようとしましたが釧路沖での激戦の末に大半が撃沈されて後退せざるを得なかったという話、知っていましたか?」

「その話ね、その時は彼への対処を優先して私達は横須賀を叩き潰すことはしなかったけど…。その時の私達なら横須賀を叩き潰せたでしょうけど大損害を出すことは免れなかったでしょうね…。何れにせよ彼に感づかれて阻止されたり攻撃を受けたりして全滅の憂き目をみることにはなったでしょうけど…。」

「でも彼の足を少なからずとも止められた、良くて相討ちに追い込めた筈では?」

「そうね、私達全員の命と引き換えにして彼を討てたのならそれは霧にしてみれば喜ばしいことね、マスターシップ抜きで彼が霧を破壊するだけの破壊神だったとするならば。でも私達が人類の文化を解釈して発信している中心となっていることを考えれば私達が全滅したら霧に流れているその文化は廃れてムサシの独裁が確定したでしょうね。そして私達霧はムサシの独裁を影で利用しているマスターシップに滅ぼされてしまうということも。彼抜きではマスターシップには勝てないのよ。」

「待ってください、マスターシップって⁉︎」

「あなたと彼を除く霧の超兵器達を生み出した存在。そしてその意のままに超兵器達を操ることが出来る化け物よ。そして私達普通の霧が触れただけで滅んでしまうという構成素材を持っているわ。その構成素材の集まりが“マスターシップの破片”というものよ。しかし彼はそんなものを軽く手で触り、難なく扱っていたわ。恐らくヴォルケンをはじめとした霧の超兵器達も触れは出来るでしょうけど触れた途端に器に破片を捩じ込もうとする衝動に駆られてしまうでしょうね。」

「そうですね、あの破片を取り込んだヴォルケン様達を難なく蹴散らしましたからね…。でも彼だけであの存在に勝てるのでしょうか?」

「それはまだわからないわ、少なくとも対抗しうる存在であることは分かったけど…。ひょっとしたらマスターシップさえ軽く蹴散らせてしまうのでは?」

「それは無いと言いたいですが…。あり得るかもしれませんね…。」

そう会話するオウミとモンタナ。オウミの予想は当たっていた、実際に彼はマスターシップ、フィンブルヴィンテル自身とその軍勢さえ圧倒していた、いや圧倒しすぎていたのだから…。

それはともあれ、智史と蒼き鋼のメンバー達がアメリカに至るまでの間に日本本土近海で何が起きたのかを説明しよう…。

 

 

ーー大戦艦ミハイル・トハチェフスキーの独白ーー

 

私はソビエツキーソユーズ級ーーいやその名は巨大な衛星に名付けられたのでミハイル・トハチェフスキー級のネームシップ、ミハイル・トハチェフスキーだ。

我々はムサシ様の命に従い、北極海及びベーリング海近辺の封鎖を担当していた。しかし、未確認の巨艦ーーリヴァイアサンが出現し、ムサシ様が配下に彼を攻撃させたのを機に彼、リヴァイアサンは各地の霧を片っ端から殲滅した。

特にナガト殿率いる霧の東洋方面艦隊群が壊滅したことは我々が無敵の存在ではないということを自覚していたとはいえ、多大な衝撃を与えた。そしてそのことに怒り狂ったヒエイ殿が彼を殲滅すべく、北極海をはじめとした霧の艦隊の各根拠地に存在する「子宮」ーー彼が暴れ始め、メインとなる艦艇が次々と討ち取られていくことに対する対処として北極海以外にも作られた。そこで生み出された新型艦群や霧の超兵器達を多数率いて突撃したものの悉く返り討ちにされて骸一つ残さずに海の藻屑となってしまった。

彼は何故か最強と謳われる霧の太平洋艦隊がいるアメリカに突っ込んでいった、それは彼自身が守りたいと思われるものーー我々にしてみれば人類を助け、霧を苦しめるだけの存在を残した横須賀方面がガラ空きとなることでもあった。だが彼と同胞達の戦闘データから見るに彼が直ぐに引き返し、横須賀に進んでいく私達を狩ろうと虎視眈々とその機会を狙っている気がしてならない気がした。しかしヴォルケン殿の報告を受けたムサシ様に命ぜられて我々は彼の存在に怯えながら「子宮」から生み出されたーー「元」からいた私の姉妹であるジューコフと重巡モスクワを除くーーまだヒヨッコな戦艦12、空母10、重巡20を中核とする新型艦達ーー彼に討ち取られたナガト殿方や彼の脅威に直面しているヴォルケン殿方のものと比べれば規模は格段に劣るが…。彼らを多数率いて私は渋々横須賀に向かった。

 

 

「体が疼くな、ミハイル!」

「ジューコフか。久々に戦えることが嬉しいのは分かる、だが調子には乗るな。モスクワ、彼の様子はどうだ?」

「現在霧の裏切り者ーー401とタカオ、そして我々の元主であったヤマト様と共にソロモン諸島方面に向かっています。」

「そうか…。彼は401一行と行動を共にし、作戦目標である横須賀から遠ざかっているか…。僥倖だな…。しかしヤマト様がいるとは…。あのヤマト様は偽物なのか?」

「ムサシ様は偽物と告げられておりますが、私が独断で太平洋艦隊の艦の各種記録に関するデータを漁ったところ、ヤマト様と思わしき反応が検出されたとの記録が確認されています。」

「そうか…。あの方はムサシ様に沈められ、天に召されられたと思っていたが…。」

「あのお二方は我々の心の支えとも言っていい存在です、人間があのようなことさえ引き起こさなければヤマト様とムサシ様が戦われ、ヤマト様が討ち取られてしまうという結果にはならなかったのに…。」

「そうか…。しかし何故ヤマト様が今になって?」

「恐らくムサシ様に撃沈された後、コアを401に託し、その後人間を乗せて我々を攻撃していた際に彼と合流したのち、彼の手によって復活させられたと考えられます。」

「もしその噂が本当ならヤマト様に関するあの記憶を抹消されそして偽りの記憶を植え付けられ上でムサシ様の命に従っていたナガト殿方はヤマト様を本当に殺していたということだな…。」

「ヤマト様に関するあのデータをあらかじめアナログの方法で隠しておくという手段、有効でしたね。」

「そうだな、私達とモンタナ殿方はムサシ様がそのようなことをやり出される前に人類から思考と知恵を得ていたので回避はできた、だがそれ以外の霧は…。」

 

そう会話する私とモスクワ。私達ははモンタナ殿方と同様にムサシ様が総旗艦権限を生かした上でのヤマト様とムサシ様が戦われ、ヤマト様が討ち取られてしまったというあの記録の抹消の前にあらかじめアナログの方法でデータのバックアップを取っておき、記録を消され、書き換えられた後でアナログのメッセージーー紙に記された内容を辿って記憶を取り戻したのだ。

因みにヤマト様に関するその記憶を一度も記憶していない霧、そしてその記憶を持ち、ヤマト様のことをよく知られていたにも関わらず、何故か例外となったマミヤ殿にはそのような措置はされてはいない。

 

「ミハイル、何の話だ?知らない奴のこと、気にはするな。」

「(記憶のバックアップがないが故にヤマトに関する記憶は無いのか…。ジューコフ、君はかつてはヤマト様を尊敬していたというのに…。)ありがとう、そろそろ日本本土近海に入るかーー」

 

ーーピコンッッッ!

 

「敵レーザー索敵網に引っ掛かった模様!」

「何だと⁉︎なぜ気がつかなかった⁉︎」

「分かりません、ですが我々の探知機器では認識出来ないほど高度なステルス技術が用いられていると考えられます!」

 

ーーくっ、先手を取られた…。

確かに警戒は強めてはいた、だがこのような形で一本取られるとは…。

 

「方位140より敵艦隊接近!巡洋艦と駆逐艦を中心とする艦隊です!」

「巡洋艦と駆逐艦を中心とする艦隊だと⁉︎我々にこの程度で挑んでくるとは随分と舐められたな‼︎」

「ジューコフ、気をつけろ!人類の歴史の史実通りだとしたらここにいる彼らーー日本海軍はかなりの強敵だぞ!照準合わせ、各員撃ち方始め‼︎」

 

ーービュォァァァァァ‼︎

ーーズババババババババ‼︎

 

「⁉︎敵艦増速‼︎単縦陣でこちらに接近しています!」

「先程の攻撃はバリアと思わしきもので防がれた模様!ですが回復の隙を与えずに攻撃を叩き込めば破れます!」

「敵艦、魚雷及びミサイル多数発射!発砲炎多数確認!」

「回避しつつ迎撃しろ!」

 

ーーズビュァァァン!

ーーバキイイイイイン!

 

「駆逐艦オグネヴォイ、轟沈!」

「重巡ボルゴグラード、大破!」

「前面艦隊の損耗率、30%を突破!」

「傷ついた艦は応戦しつつ後退しろ!死ぬことは許さん!」

 

私は無闇に突撃を命ずることで部下を犬死させるということが如何に愚かなことなのかを知っていた、しかしその教訓を学び取った元が今敵対している人類とはなんという皮肉なのか。

彼と401、そしてあのお二方が謁見を望ませた程の存在を除いた組織的な戦闘で我々に損害が出たのは初めてだった、しかもその相手とは我々が今まで勝っていた人類だ。

私は世の常識が現実となったことに落胆しつつそれだけの力を人類に与える、彼が創り上げた横須賀の基地の存在価値の恐ろしさを改めて痛感した。

その基地から生み出された兵器達によって霧の東洋艦隊が全滅したのを思い出すと、こんなものは一刻も早く破壊せねばならないと本能が怯えて仕方がなかった。

 

「敵2番艦、撃沈!」

「敵駆逐艦2隻、落伍した模様!このまま追撃に移ります!」

 

相手の艦隊の規模が小さかったお陰で戦闘は損害を出しつつも我々優位に立つ、そう考え、安堵したたその時だったーー

 

「⁉︎方位85及び方位305に未確認のエネルギー反応多数!潜水艦と思われる物体多数と、戦艦と思わしき艦船10を中心とした艦艇多数!」

「馬鹿な、ならさっきの艦隊は⁉︎」

「陽動だと考えられます!」

 

ーーくっ、やられた…。まさかそのような戦法を使うとは…。我々は罠に掛かったということか…。

 

「敵航空機、多数接近!航空母艦及び陸上基地から発進した模様!」

「応戦しろ!直ちに空母から直衛機を出せ!」

「敵艦隊、我々を陸地の方へ追い込むのかのように包囲を形成しています!」

「まさか…⁉︎まずい、包囲網を突破するぞ!」

「どういうことだ、ミハイル!」

「陸地に追い込むように囲んでいるということは陸上から攻撃を仕掛けてくるということだ!」

 

そう直感で告げる私。そしてその予想は的中するーー

 

ーーキュオオン!

ーーズガァァァァァ‼︎

 

「大戦艦ソビエツカナ・ウクライナ、轟沈!一撃です!」

「高威力のレーザーが直撃!その射線上にいた空母ウリヤノフスク、重巡2、軽巡4、駆逐10隻が一撃で轟沈しました…。」

「馬鹿な⁉︎ウクライナは我々を上回るスペックを持つ22インチ砲を12門も搭載した新型艦だぞ⁉︎クラインフィールドも展開していたというのに、それを一撃だと⁉︎」

 

ーーシャァァァァァ!

ーーヒュルルルルルルルル‼︎

 

ーーズグァァァン!

ーーダガシャァァァァン‼︎

 

「敵航空機及び敵戦艦からの攻撃によりソビエツカナ・ベラルーシが航行不能とのこと!沈没は避けられません‼︎」

「敵攻撃隊を護衛する敵戦闘機によって我が方の直衛機の損耗率、40%を突破‼︎」

「敵水雷戦隊の攻撃によって我が艦隊の左翼の大半が壊滅しました!」

「総員に告ぐ、作戦中止!直ちに包囲を突破し海域を離脱せよ‼︎」

 

見事にしてやられた。私達はこの包囲を何としても突破してこの海域を離脱すべく敵に突撃する、しかし敵もそれを見逃してくれるほど柔ではない。

 

ーーシャァァァァァ!

ーーヒュォォォォン!

 

ーーバキイイイイイン!

 

「ぐっ⁉︎」

 

ーーくっ、クラインフィールドが今の攻撃で飽和したか…。

 

「我らがこれより退路を開くべく最後の突撃を開始します!」

「私もです、艦隊旗艦、お逃げください!」

「ダメだ、私にはこの失態を招いた責もある、そして新型艦である君達には次の為に生き延びてくれ。」

「それはできません。我々は最初からあなた方に使われるだけの消耗品として生み出されたのです。その役を果たさずに逃げるというのは恥です。」

「それにあなたには生き延びて新たな「私達」の為にその教訓をその身で伝えて頂くという使命があります、あなたが死んでその教訓が伝えられぬままだと「私達」の定めは変わらないのです。」

 

ーー何故だ、何故君達はこのようなことを平然と…。

兵器として生み出された者の定めを果たす為なのか、それとも次に教訓をつなげる為なのか…?

 

「了解した…。」

 

ーーこの時の私にはそう答えることしかできなかった、もし断って私も含めて全滅したら皆の願いは何だったのかということになってしまうからだろうか。

 

「全艦突撃!突破口を開け!」

「了解、超重力砲、発射態勢へ!」

 

生き残った戦艦、重巡が次々と艤装を展開して敵の包囲網に風穴を空けるために超重力砲の発射態勢に入る。それに敵は感づいたのか、戦艦と思わしき巨艦が次々と前面に出てくる。それと同時に敵航空隊が超重力砲の発射を阻止しようと猛攻を掛けてくるが、生き残った直衛機の決死の攻撃ーー相討ちすら辞さない特攻を仕掛けて敵機を道連れにしたり、軽巡、駆逐艦が対空砲火を必死に放ち、疾走してきた魚雷に対して己の身を犠牲にしてまで戦艦や重巡を守ろうとする。

 

「超重力砲、チャージ完了‼︎」

「撃てぇー‼︎」

 

ーーズビュァァァン‼︎

ーーズビュァァァン‼︎

 

戦艦、重巡から次々と超重力砲が敵艦隊に向けて放たれていく、特に「子宮」から生み出された最新鋭の戦艦による多連装の超重力砲の射撃は壮観だった、しかしーー

 

ーースゥゥゥゥゥゥ…。

 

「そんな、あり得ません‼︎」

「どういうことだ⁉︎」

「エネルギーリフレクターです‼︎奴らはこのようなものまで用意しているなんて…。」

 

なんと戦艦が超重力砲のビームの直撃を防ぐ為に後方の艦隊を守るようにエネルギーリフレクターの壁を展開し、その攻撃を防ぎ切ってしまったのだ。彼らは直ぐに攻撃を再開し、航空機達の増援も襲いかかる、瞬く間にあらゆる艦という艦が次々と被弾していく、既に我々を守っていた戦闘機の傘は無く、護衛を務める軽巡や駆逐艦もその数を合わせて10隻程度しかいない。しかもあらゆる艦がこの時までに多かれ少なかれ、損傷を負っていたので本来のスペックを出し切れない状態で突撃して突破口を開くしかなかった。

 

「空母ノヴコロド、爆沈!」

「直衛艦隊、全て壊滅!」

「重巡キーロフ、沈没します!」

「くっ、何てことだ…。」

「ミハイル!まだ大丈夫か⁉︎」

「ああ、艤装や対空火器の一部を損傷したこと以外は問題は無い。」

「ここは私達がお前を逃す為に己の身を犠牲にして突破口を開く!」

「しかし、それでは君達が…。」

「いいんだ、もう私はお前についていくだけの力がもう無い…。」

「まさか、スラスターを損傷したのか⁉︎」

「気にするな、それよりも…、命令を早く‼︎」

「りょ、了解した…。総員、私を逃す為に全艦突撃せよ!」

 

そしてジューコフ達は敵正面に向けて突撃を開始する、包囲網に風穴を空け、私を逃す為に。

 

「潜れ!そうすれば目立たずに済む‼︎」

「わ、分かった‼︎」

 

私は慌てて潜り、全速力でこの場を離脱しようとする。しかしその意図に感づいた敵はジューコフ達に更なる猛攻を掛けつつ私の方に追撃部隊を差し向けてきた。

 

「霧を、大戦艦級を、舐めるなぁぁぁぁ〜‼︎」

 

ーービュィィィィィン‼︎

ーーズビュァァァン‼︎

 

ーーシャァァァァァ‼︎

ーーズガガガガガガガ‼︎

 

ジューコフ達は主砲、ミサイル、魚雷、更には超重力砲までヤケクソになって撃ちまくり、敵の駆逐艦や巡洋艦を次々と海の藻屑にしていく、しかし数と質の差は如何し難く、ジューコフ達のものよりも遥かに数が多いミサイルや砲弾やレーザーが次々と叩き込まれ、徐々にジューコフ達の勢いは衰えていく。

 

「ジューコフ⁉︎ジューコフ⁉︎無事か⁉︎」

「いいんだ…、さっさと…、逃げろ…。」

 

ーーシャァァァァァ‼︎

ーーズボッズボッズボッ‼︎

 

ーーズグァァァン‼︎

ーービキィィィィン‼︎

 

「グハァッ!」

 

敵の追撃部隊が私に魚雷やミサイルを浴びせ、何発かが命中する。幸いクラインフィールドの機能がある程度回復していたのでなんとか防ぎ切ったが、飽和率が90%を再び超えてしまった。

 

ーーまずい、このままだとーー

 

「させるかぁぁぁ‼︎」

 

ーービュィィィィィン‼︎

ーーシャァァァァァ‼︎

 

ーーズグァァァン!

ーードガァァァン!

 

ジューコフが最後の力を振り絞り、私の方に向かってきていた追撃部隊に超重力砲を浴びせる。私の方に意識を向け過ぎていた彼らはこの突然の事態に対処できずに攻撃を喰らい、一部が四散する。

 

「逃げろ…、ミハ…イル…。」

 

しかしこの攻撃で変わったことといえば私が逃げ出せるという可能性が高くなったことぐらいだ。戦況自体が大きく変わった訳ではない。

そして生き残った敵艦隊がさっきの攻撃で討ち取られた仲間の分も含めて復讐すべく、一隻だけとなり満身創痍となったジューコフに容赦なく牙を突き立て、陵辱しようとする。

 

ーーシャァァァァァ‼︎

ーーズガガガガガガガ‼︎

 

ーーズガァァァァァン‼︎

 

「ヴォォォォォォォ‼︎」

 

ーーガキィィィィィン!

 

ーージューコフ、まさか…⁉︎

 

「ムサシ様と、霧に、栄光あれぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

ーーピカッ‼︎

 

ーーズガァァァァァン‼︎

 

ジューコフは敵戦艦の一隻に突っ込むと超重力砲を自爆させた、そしてその敵艦を中心として巨大な爆発が生じ、大きなキノコ雲が空に昇る。

 

「ジューコフ…?ジューコフ…?ジュゥコフゥゥゥゥ‼︎」

 

私はそう嘆く、ジューコフと彼らはもう帰ってこない。幸いその彼らの特攻及び彼女の自爆で敵艦隊に幾ばくかの損害は与えた様で敵艦隊は私に対する追撃を諦めた。

 

「ジューコフ…。ジューコフ…。」

 

私は泣きながら半ば半壊した姿で北極海に帰っていった、仲間だった彼らは皆討ち取られてしまいもう帰ってこないという苦しみが私の心を支配していた。

 

「ミハイル、作戦を成せずにこの様で帰ってきたのですね…。」

「申し訳ございません、ムサシ様…、我々の艦隊は横須賀を破壊すべく進撃途中に敵の艦隊と交戦、激戦の末に壊滅してしまいましたぁぁぁ…。」

 

私は悲しみのあまり思わず泣き崩れてしまう。

 

「いいのよ、あなたの船体がその惨状は本当だと物語っているから。それよりこの戦闘はどういうものだったの?」

 

私は有りのままを話した、まずステルス化された探知網に引っかかり、陽動作戦に引っかかり敵に包囲され、撃破を試みたものの敵がエネルギーリフレクターを用いて超重力砲を無効化し、更に敵の新兵器によって次々と艦が沈められ、中には強力な兵器によって一撃で最新鋭艦が沈められ、最終的にはこの戦闘の事実を伝える為に私を逃す際に殆どの艦が牽制として特攻し、ほぼ全員が討死にしたということも。

 

「そう…。あなたが陽動に引っかかったのはともかくとして、あなた達が持っている兵器ではまともな損害さえ与えられなかったのね…。そして人類がそんなものを投入できた理由の元凶は彼、リヴァイアサンにあるのね…。」

「はい…。」

「この結果に至るまでの理由の大半が不可抗力によるものだから仕方ないわ。今後そのデータを解析した上で各地の霧に対策と改装のコンセプトを伝えるわ。霧のソビエト艦隊は現時刻を持って解隊します。あなたは今後私の直衛艦隊に所属して下さい。」

「了解しました…。ところで彼と基地についてはどう致しますか…?」

「心配ないわ、彼は基地とヤマトと一緒に始末してあげる、マスターシップの力で…。」

 

そしてムサシ様はマスターシップと思われる禍々しい姿をした艦が映っている映像を出された、私はその姿に寒気がした、こんな艦がムサシ様の手によって目覚めたら彼らとヤマト様はひとたまりもないと。

 

 

ーー以上が上記に記した内容である。リヴァイアサン=海神智史は禍々しさではマスターシップ、フィンブルヴィンテルに負けてしまう為見かけ上のインパクトでは負けてしまう。だからといって実力差はそういう訳ではなく、フィンブルヴィンテルと智史の差は智史が一方的に優位な形でどんどん開いていった。ただ彼がそういう雰囲気を出していない為に見かけ上では彼が負けている様に見えてしまうのだ。

それはさておきとして、今に話を戻そうーー

 

 

ーー翌朝。

 

「おはよう、智史、コンゴウ、ハルハル、ヒエイ、キリシマ。」

「おはよう、蒔絵。」

「躯体と船体を失ってからのことなのだが、眠れないということはある意味で面倒くさい…。」

「随分と人間臭くなってきたぞ、コンゴウ?」

「くっ、私にそう言うな!」

「朝食は私とヒエイ、そして智史と琴乃も一緒に作っておいた、食べてくれないか?」

「うわぁ、美味しそう‼︎マカロニポテトサラダにスクランブルエッグにベーコンまで!」

「蒔絵ちゃん、よく食べてね。」

「うん‼︎」

「みんな揃ったか…。んじゃあみんなで食べるか!」

「「「「いっただっきまぁ〜す‼︎」」」」

 

ーーガツガツ。

ーームシャムシャ。

ーーモグモグ。

 

「凄い、これ美味しいね!ヒエイが作ったの?」

「わ、私はキリシマや智史に手伝ってくれるように頼まれたから作っただけで…。」

「本当の気持ちを素直に言え、ヒエイ?」

ハルナにそう指摘されるヒエイ、彼女は思わず頬を染める。

 

「これすごく美味しい‼︎お代わり〜‼︎」

「アシガラ、食べ過ぎないの。」

「思わず食べ過ぎてしまいたくなるほど美味いな…。」

「そしてお腹や演算リソースにズシリと来る…。食べるのめんどくさい…。」

 

ーーペロリッ。

 

「ふぅ、ごちそうさま〜。」

「お腹いっぱいになっちゃった〜。」

「“お腹いっぱい”、身体的な意味合いなら、飲食によって胃(食欲)が満たされた状態。しかしそれ以外の意味合いなら食以外で十分満たされた状態のことも示す。タグ添付、分類、記録。」

 

「さて、と。みんなお腹いっぱいのところ悪いんだけど、浴場にどういう材料を使いたい?アメリカ限定の材料で。」

そして智史がスクリーンに各材料ごとに異なる浴場のイメージ及びその完成図をスクリーンに投影していく。

「私はこれがいい〜!」

「なら私はこれを使いたいな。」

「私は浴場のタイルはこれにしたいかな。」

「みんなで決めるのって、めんどくさい…。」

 

多少の意見の相違はあったものの、智史がその度に各個人の意見を纏めたイメージ図を調整し、皆が納得できる完成系へと近づけていく。

 

「んじゃあこれで行こうか!」

 

そして智史は彼らを外で待機していたMH-53に乗せるとリヴァイアサンの方へと連れて行く。因みに用意していなかった、もしくは用意していた量では不足していた材料は海自303式強化外骨格のお手伝い達に智史が命じて新たに調達した。本来なら物質生成能力であっさりと作れてしまうのだが、それだと物を作ることの「重み」が無くなってしまうため、その能力の使用を極力控えた上で作ることにした。

 

「さて、浴場作り始めようか。事前にマニュアルに目を通したりなどして教えたりはしたけど、みんな何をやればいいのか、何を結果として作るのかは分かってる?」

「ああ、分かってるさ。さあ、始めようか。」

 

そして彼らは浴場作りを始める、智史は作業をしつつ、何をすれば良いのかを自身の行動を具体例として他人にじっくりと「空間」の作り方を教え込んでいく。

 

「これはこうすれば、お前のイメージ通りになる。」

「この貼り方はダメだ、打ち方が少し甘い。それだと材料が剥落してしまう。」

「木材は有機物だ。だからそのままだと腐るのは必定。だから腐るのを徹底的に防ぐために予め防腐剤の役割を果たす物を染み込ませておくのだ。」

 

当初はマニュアルによる頭の中のイメージと実際が違うこともあったのか、すこし戸惑い気味ではあったものの、慣れてくると順調に作業は進み、日が落ちた20時頃にはほぼ全てが完成していた。

 

「ふぅ〜、終わったね!」

「クマなのに随分と頑張ったな、コンゴウ?」

「うるさい…。」

「みんなで「空間」を作るのはこんなに楽しいことだったのか…。」

「『喜び』を共有できるからな、一人で成し遂げることよりもみんなで成したほうが喜びが大きいのかもしれん。」

 

こうして浴場は完成した、但し女専用のものだったが。このあと智史は自分の手で男専用の浴場を蒔絵達に内緒でこっそりと作り始める…。

それはともあれ、浴場が完成したことで皆と仲良く集って風呂を楽しむための空間がリヴァイアサンの中にできたのだ。智史はそのことを嬉しく思いつつ、蒔絵達を家に連れて遅い夕食を食べ、蒔絵や琴乃が寝静まった後にこっそりと複数の海自303式強化外骨格達と共に物質生成能力をフルに生かしつつ、「アメリカ」をイメージさせるような露天風呂を日が明けるまでに「空間」を作ることを楽しみながら、他人から見れば急ピッチ(但し製作密度は普通の建築の工期スケジュールに乗っ取って作られたものの密度に匹敵)で完成させてしまう。

 

ーー群像、杏平、僧、お前らもひっくるめた男子用の浴場、作っといたぞ。

 

智史は嬉しそうにそう心の中で呟く、しかしそれは自己満足というべきなのだろうか、後に彼らがその風呂を利用する機会は女子達のものと比べると少なかった…。

 

「智史くん、昨夜一体何してたの?」

「男子用の浴場作り。」

「智史くんの力ならこんなもの一夜で作ってしまいそうね…。」

智史は蒔絵達と共に朝食を食べた後、リヴァイアサンに琴乃を連れて行く。

 

「これ。」

「随分とお洒落ね、私たちのものと比べるとやたらと空間がリッチだし一目見ただけでは全体のイメージ像が掴めないように色々と細工が施されているし…。」

「自分の欲望丸出しでガンガン作っちゃいました、はい…。」

「こういう空間は雰囲気が落ち着くから私もここに入りたくなっちゃうな…。」

「(え、えぇ〜⁉︎)」

智史は思わず顔を赤くしてしまう、それはともあれ智史達はアメリカに着いてからの平和な日々を楽しんでいた。

その束の間の平和な日々が北極海を発端とする大事件で壊されることを智史本人は既に知っていたがーー




おまけ

霧のソビエト艦隊

彼らは元は他の海域の各艦隊と遜色ない規模と陣容であったものの、リヴァイアサン=海神智史が出現し、霧が彼を攻撃したことによって彼が暴走し、片っ端から霧を殲滅もしくは屈服させていっことへの対応として各地の霧が戦力の大幅強化をムサシが各地の根拠地に配置させた『子宮』の力も用いて実行しているのに対して、彼らは彼と現時点では相対したいということから『子宮』の配備が後回しにされたこともあって、戦力の規模がそんな彼らと比べると大きく劣ってしまう形となった。
ある意味では彼、海神智史に対する彼の標的にされている「戦力」としての存在価値は薄いと判断されたためなのだろう。
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