海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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とうとう30話目を達成してしまいました。
ムスペルヘイムについては当初群像達と戦わせ、止めをリヴァイアサンごと智史が刺すという方向で考えていましたが、色々と練ったうちに航空攻撃にてメンタルモデルを除くすべてを完璧に屠った後にルフトに向かうという流れとなりました。
ムスペルヘイムを不遇な目にしてごめんなさい。
それでも楽しめて頂けるなら幸いです。
それではじっくりとお楽しみください。


第30話 猛進撃のリヴァイアサンとそれに振り回される群像達

「敵艦隊多数、こちらの気配に感づいた模様!こちらを包囲追撃するのかのように向かってきます!」

「散開!タカオと信長は包囲されないように高速で航行しつつヒットアンドアウェイを繰り返せ!本艦は敵に突撃し敵を撹乱する!」

「りょ、了解!」

群像の命が飛ぶ、そしてその命に応えるかのようにタカオと信長は左右に散開し、敵艦隊の陣形の外部に沿うように航行し始める。

 

「海面に着水音!推進音は確認されません、爆雷と思われます!」

「右舷120に回頭!杏平、低周波魚雷を発射した後に電子撹乱魚雷搭載のキャニスターをばら撒いておけ!タイミングは任せる!」

「あいよ、低周波魚雷発射後10秒後にキャニスターを散布!」

 

ーーシャァァァァァ!

ーーズゥゥゥゥゥン!

 

ーーガコン!

ーーゴボゴボゴボゴボ…。

 

低周波魚雷が401の艦首から放たれ炸裂し、敵の水中の「視界」を撹乱する、そしてそれと同時にキャニスターが401の船体後部から射出されていく。

 

「キャニスターの起動確認、電子撹乱魚雷が射出されていきます!」

「艦長、方位270から魚雷多数接近!」

「パッシブデコイ並びにアクティブデコイ射出!電子撹乱魚雷の爆発に巻き込まれる前に範囲外に脱出するぞ!」

「敵艦、回避態勢に移行した模様!散開を開始しています!」

「この隙を逃すな!401の作戦行動を援護するぞ!サクラ、ミサイル、主砲、発射用意!」

「了解、前部ミサイルVLS開放、陽電子砲並びに超電磁砲、射撃開始します!」

 

ーーボボボボボボボボ!

ーーシャァァァァァ!

ーーシュゥゥゥゥゥゥ!

 

射出された魚雷に感づいたのか、敵艦隊が散開を開始する、だがそれによって陣形が崩れる、その隙を突くかのようにタカオと信長が外部にはみ出した敵に一斉に砲火を浴びせていく。

彼らの標的となった敵駆逐艦、巡洋艦クラスは次々と量子魚雷や陽電子砲、レールガンの餌食と化し、木っ端微塵となっていく、そして更に追い討ちを掛けるようにヒュウガによって改良された電子撹乱魚雷が次々と炸裂、敵の動きを次々と封じていく。

 

「よし、このままなら行けるーーきゃぁっ⁉︎」

 

ーードガァァァァン!

ーーガァァァァァン!

 

「タカオにレールガンが着弾!クラインフィールドの稼働率45%近くにまで上昇‼︎」

「お姉ちゃん、大丈夫⁉︎」

「いったたたぁ…。少し甘く見てたわね…。」

「本艦にも超兵器からレーザー並びに砲弾が複数着弾、第1クラインフィールドの稼働率が80%を超えました!」

上手くいくと慢心した彼らに舐めるなと言わんばかりに電子撹乱魚雷の直撃を免れた敵艦からレールガンや中口径ガトリング砲、荷電粒子砲が撃ち込まれた、幸いクラインフィールドを展開していたため致命傷にはならなかったものの、それでも威力は彼らの浮かれ気分を吹き飛ばすには十分だった。

そして敵艦は追撃を加えようとするもその前に電子撹乱魚雷が新たに襲来して次々と動きを封じられた。

 

「敵艦、超兵器クラスを除いてすべて沈黙!」

「超兵器クラスも行動に支障が出ている模様!」

「艦長、今です!」

「杏平、波動魚雷を1番から4番まで装填!」

「合点承知!」

 

電子撹乱魚雷の爆発範囲から離脱した401は波動魚雷を放つ、それと同時にタカオと信長も一斉に量子魚雷や核融合砲、反物質砲を放つ。

瞬く間に海は多彩な爆発と光線で彩られる、その攻撃の規模は智史のものに劣りはしたものの、超兵器クラスも含めた敵艦隊を破片丸ごと焼き払うには必要十分だった。みるみるうちに敵艦隊は形を崩して消滅していく。

 

「敵艦隊の殲滅を確認。周辺海域にエネルギー反応は確認されていません。」

「そうか、だが最低クラスのものとはいえかなり強いな…。」

「この現実を見せられると彼の圧倒的な力強さとその存在が近くにあることの有り難みが少しわかりますね…。」

「あいつ色々とやりたい放題だけど、曲がりなりにも私達の為にやってきたことの重大性を考えるとあんまコケには出来ないわ…。」

「それでも俺達は彼の手を借りずに自分達の力で未来を切り開けということを彼に促されている、実際に彼の手で作られる未来は俺たちの望んだ未来とは違う、彼は俺達と同じではないのだから。またもし彼の手だけで「未来」が完成したらそこに俺達が作り変えるための欠片さえない未来が出来上がってしまう。イオナ、この戦闘でどれぐらいの弾薬を使った?」

「この戦闘でキャニスターを8基、アクティブデコイを6基、パッシブデコイを5基、波動魚雷を4発使用。幸い自走大型補給コンテナから調達ができる。」

「そうか、各艦補給を終えた後、マダガスカルに向かうぞ!」

群像のその命に従い、各艦はスキズブラズニルから出航する際に連れてきた自走型補給コンテナに随伴し、そこから弾薬を調達、各兵装に装填する。

 

「本来ならナノマテリアル生成装置と共に組み込んで欲しかったけど、401にこれ詰め込むだけの時間が今はなかったから仕方ないわな…。まあスキズブラズニルと同様、弾薬とかナノマテリアルとか無限に生成できるから補給面での問題はだいぶマシかなぁ。」

「群像、補給を気にせずに戦えるのは気楽?」

「ああ、残弾や補給を気にする必要があるのと無いのでは精神面での負担が大きく違うからな。」

イオナの質問にそう答える群像、実際に補給というものを気にするのとしないのでは精神の余裕の大きさ、消耗のペースの速さが違う。気にしているとそのことに気を取られてしまい他の大事なことを見落とす可能性が否応にも高くなる。そういう点では智史が作った「モノ」の原理を流用した、ヒュウガ特製の補給ユニットを連れてきたのは正解だった。

彼らは補給を済ませるとマダガスカルへと向かうーー

 

 

ーー重巡洋艦アタゴの独白

 

 

ーーお姉ちゃん………。智史さんにベタ惚れなんて…。

 

私はリヴァイアサンごと智史さんに船体を一方的に木っ端微塵にされて徹底的に恐怖を味わされて以降、智史さんに逆らう気力が湧きもしない、私達やお姉ちゃんが助けられたのは智史さんが気に入ったかどうかの有無だ、もし突っ込みどころか無くて気に入られてなかったら容赦無く殺されていた。

智史さん本人には悪気は無いかもしれないが、私にしてみれば智史さんは恐怖と絶望を具現化した絶対神にしか映らなかった、智史さんに敵対したものは実際に戦う前に降伏するか、それとも余程の事情が無ければ基本的には徹底的に恐怖を植え付けられ、料理された上で皆殺しだ、抵抗しようとしても無駄だ、こちらの常識がまるで効かず、すべてを把握された時点で負けが確定してしまうぐらいの信じがたい「強さ」を智史さんは持っているのだから。しかも恐ろしいことにこれでも滅茶苦茶に強いというのにこの世界の外にいる強者とやらを滅茶苦茶に叩き潰し一方的な優位を確立せんと更に己を磨くピッチを上げている。フィンブルヴィンテルは世界を滅ぼしてやるとか言ってたがそうする前に智史さんに徹底的に料理されてお終いにされる気がする。

そんな智史さんも全てにおいて絶対的存在であると言えないことは唯一の救いだった、もし絶対的存在だったらあらゆるものすべてが智史さんのものとなってしまうだろうから。それを示してくれたのはお姉ちゃんだった、お姉ちゃんは智史さんに玩具として散々に弄ばれた後、色々と教え込まれて大和撫子のように成り果てかけた、しかし皮肉にもそれが切欠となってお姉ちゃんは「力強い者に体を預けられる安心感」という人間の本能を習得したことも相まって智史さんを意識し始め、智史さんを我がものにせんと妄想し、口からヨダレを垂らしてにやけている日々を何度も見る羽目となってしまった。しかもサンディエゴの一軒家に入った時以降それが更に酷くなり、ファッションを整え、「花嫁修業」というものをやりつつ琴乃さんから智史さんを略奪するという形での恋愛をしようという有様だった。

お姉ちゃんは表向きは智史さんにそんな態度など無いというフリをしているが、仕草からバレバレである、智史さんと琴乃さんはもうとっくに気がついているだろう、いったいどういう反応をするのやら…。

私は恐る恐る智史さんに音声通信を繋いでみたーー

 

「アタゴか、どうした?もしやタカオの件か?」

「そうですね、お姉ちゃんひどい有様ですよ…。」

「『洗脳』下から解いたらやはりこうなると予測はできていたが…。やはり酷いな…。」

「アタゴちゃん、タカオが智史くんを奪おうって?」

「あ、琴乃さん、その通りですーーきゃぁっ⁉︎」

「ちょっとアタゴ、あなた何言っているの⁉︎」

「タカオ、私に惚れているのか?」

「べ…、別になんでもないですよ‼︎」

 

私が智史さんとしていた話の内容を聞きつけたお姉ちゃんは私の音声通信を強制的に切ってしまった。

 

「お姉ちゃん、智史さんーー」

「なんでもないわ、ほら、演算の副処理手伝って!」

 

本心を必死に隠すのかのように私に演算を手伝わせるお姉ちゃん。だが智史さんは琴乃さんと深い関係だ。お姉ちゃんも琴乃さんと同じく智史さんの特性を理解しているものの、智史さんはお姉ちゃんが好きになる要素を見出せなかったのか、好きではない。お姉ちゃんが気があるのはとっくに見抜かれているからおそらく足であしらわれるか良くてからかい、悪ければ忌み嫌われて逃げられるだろう…。

智史さんが琴乃さん以外の女性が好きになる気配は微塵もない、人付き合いが苦手で感情のコントロールが上手くいかず、そのせいで他人に苦手意識を持たれがちな智史さんにしてみれば琴乃さんは自分の唯一の心の拠り所であるのだから。

何れにせよお姉ちゃんがこのままでないことを祈ることしか私には出来なかったーー

 

 

ーーアフリカ、ギニア湾上

 

 

ーーふう、タカオめ、ヨダレ垂らしながら私をお婿として迎える気か?

馬鹿め。

貴様のツンデレじみた性格は私の好みではない。そしてニヤニヤ妄想している面は単なる笑いのネタにしか過ぎん。

それにしてもこういう環境下だとかつての私に変に付きまとわれ、しがみ付かれた女共の気持ちが分かる気がするわ…、苦々しい思い出よ…。

さて、フィンブルヴィンテルを片付けた後のことについて、だ。ふふふ、僧正、一方通行、エイヤス、サイタマ、孫悟空をはじめとするチート超人達よ、覚悟するがいい。もう貴様らのスケールはほぼお見通しだ、そして貴様らは私を磨く砥石として使い捨てられるのだからな…。

だがひょっとしたら見落としているところもあるかもしれん、異世界からの情報も参考にしてもっと観察眼を鍛えなくては。

しかし蒔絵はどうするのだ?蒔絵を連れた状態で下手をしたら彼女が巻き込まれるかもしれん。そのことも考えると蒔絵がまともに生きられる状況を残した上でコンゴウ達に託すしか無いな。

 

心の中でそう呟く智史。実際にリヴァイアサンごと智史の強さは計測不能な域に到達してしまっていた、ビッグバンの10の何千万、何千億乗倍という巨大なエネルギーの爆発を瞬時に叩きつけられてもケロリとし、物ともせずに吸収してしまい、指先一つで何兆もの世界が一発で破壊されてしまう域をすでに通り越していた。普通ならこんな短期間で計測不能なレベルの圧倒的な強さは獲得できない筈だが、彼は自身に備わっている自己再生強化・進化システムを桁違いに強化することで強化ペースを滅茶苦茶に上げてこれ程の域に到達してしまったのだ、まさに化け物どころかそれを通り越した「何か」という方が相応しいのかもしれない。

当然こんな化け物に物理法則は全く通用しない、そして恐ろしいことに別世界での「チート」能力も物質的意義上、全く通用しなくなってしまっていた、例えば一方通行の「アクセラレータ」は「チート」と呼ぶに相応しい強力な技ではあるものの、智史は勿論だが一方通行もまた「物質」という定から逃れられない以上、上げられるとはいえ、上限がある。智史はその上限をとっくに通り越し、かつ一方通行よりも遥かに強大なエネルギーベクトル操作能力を持っているため、力任せに打ち破るという荒業が可能である。また「アクセラレータ」のエネルギーベクトル操作も逆用してしまう芸当さえできてしまう余裕さえあったのだ。

また時空を巻き戻したり時間を止めたりすることで一方的に殴れるようにするという「チート」もあるものの、残念だがこれも通用しない。その「チート」が使用されるときには周囲に存在するモノの「時の流れ」を必ず捩じ曲げるという法則性がある、しかし智史は周囲とは異なる独立性を持った自分専用の正常な「時の流れ」を持つ空間を自分自身の中に常に生成しているためにそんな時空干渉など許さない。同じ時系列で過去の自分を殺されてもケロリとしているのだ。更には「時の流れ」を自在に捻じ曲げ放題な挙句にそれによって生じるエネルギーをさらなる自己強化に回せてしまうのである。

もはやチート万歳な域に彼は突入してしまっていた、しかし彼はこれでも全く満足しない、今思い通りに行くことでも未来ではそうはいかないのかもしれないのだから。

彼は今も滅茶苦茶なペースで自己を磨き、そのペースさえ滅茶苦茶に上げている、その行為には手加減や容赦はない。もはや「こんなのアリかよ…。」という言葉さえ生温いほどだった…。

 

「さて、群像よ。お前達の尻を更に鞭打ってやろう。」

 

その言葉は「「未来」を自分だけで作られたくなければ積極的に戦って関われ」という意味が込められていた、そして「自分たちの手で未来を作らなければいけない」というプレッシャーを更に強めるために智史は艦載機達を生成して更なる暴挙に出るーー

 

 

ーー大戦艦キリシマの独白

 

 

ーー圧倒的だ、いやその言葉さえ物足りないとは…。智史、お前は強くなりすぎているぞ…。

 

私は自身の潜在的欲求である「前線に立って戦うことの楽しみをもう一度味わいたい」という欲求を持っていたことをひどく後悔した。

奴に一方的に蹂躙されて終わった有明海での海戦以来、私は船体を取り戻していないし、戦ったとしてもリヴァイアサンを通じて戦ったということしか無いし「直接」戦っていない。しかし心のどこかでは「戦うことを肌で感じることによる楽しみを得たい、もう一度自分の体で直接戦いたい」と思っている自分自身がいた。

 

「キリシマ、本当は前線に立って戦いたいのだろう?」

「いや、そんなことは無いぞ⁉︎」

「遠慮するな、乗れ。」

「ハルナ、智史を止めてくれ!」

「智史から事情は聞いている。キリシマ、行ってこい。」

 

だが、その本心を奴は見抜いていたのか、植物共が蔓延し始めた北アフリカ沿岸を焼き払うということを理由として私を強制的にB-3ビジランティⅡに搭乗させた。

 

「げふっ‼︎…っ、こうなったら意地でもやってやる…。何々?この機体は元々は智史からのリモートコントロールと智史の意向を反映する人工頭脳ーー私達霧の言葉で言うとユニオンコアを搭載して動いているのか…。まあこいつらの生みの親は智史だからな…。」

 

私はこの機体の特性はよく理解できていなかったものの、搭乗直後すぐにこの機体の特性に関するデータや操縦方法がユニオンコアの中にスラスラと入ってきたので、どれをすればこうなるのかぐらいは理解できた。

 

「それにしても物凄い兵器があれこれと搭載されているな、お約束通りに…。これ一つあれば霧はおろか地球をも焼き払えるというのに…、これを大量に揃えて北アフリカのみならず地中海にいる超兵器共を塵芥残さず徹底的に焼き払おうとは…。鬼か、お前は…。」

「ふっ、悪く思うなキリシマ。さて、時間だ、行くがいい。」

「了承した、出るぞ!」

 

そして私のビジランティⅡは他のビジランティⅡやB-70ヴァルキリーやその他の機体と共にリヴァイアサンの左舷飛行甲板から飛び立つ、瞬く間に空は鋼鉄の鳥達の群れで埋め尽くされる。こんなものが襲いかかってきたら私達はおろか、フィンブルヴィンテル一味も一たまりも無い程の規模だった。

そして鋼鉄の鳥達の大群はギニア湾から北アフリカ沿岸へと飛び立っていく、敵も彼らに感づいたのか迎撃を開始するものの、帯同していたF-23クレイゴーストやF-37タロン、T-50にSu-35といった多彩な形をした戦闘機達が片っ端から排除していく。

敵の対空迎撃の役割を兼ねた飛行物体の攻撃は体当たりを浴びせてもケロリとしてたりで全く微塵も効いていないのに対しこちらの戦闘機達は機銃掃射一つで肉片を四散させるだけでなく弾道先にいる敵まで次々と貫いて四散させてしまうのだ、全く勝負にならない。

 

「“その程度で止められると思ったのか?散れ”」

 

ーーゴォォォォォォ!

 

ーーピカッ!

 

ーーズゴァァァァァン!

 

第一、数と兵器の質が違いすぎるのだ、こちらの戦闘機達が放つミサイルは炸裂するとまるで水爆でも炸裂したかのような巨大なエネルギー衝撃波によって周辺の敵も巻き込みながら滅殺してしまう代物である、しかもこちらは巻き込まれてもそのエネルギーを吸収、回収して更なる自己強化に回せてしまうのだ。それが雨霰と大量に撃ち込まれるのだから喰らう側にしてみれば堪らない。撃ち尽くそうにも奴のものだから直ぐに弾が補充されてしまうため撃ちまくり放題であった。

これはもはや反則といっていい程に圧倒的だった、圧倒的な威力を誇るミサイルが間断なくしこたまと撃ち込まれ細切れにされてただでさえ悲惨だというのに、今度はこちらの攻撃が全く効かない侵略の天使達が散り散りとなっている彼らに当たったら死ぬような高威力の兵器を撃ちまくって大挙して容赦なく襲いかかってくるのだから泣きっ面に蜂である。人間の航空機よりも高い機動性、俊敏性で逃げようにも速度差が圧倒的すぎるし、振り切っても別の機体が次々と襲いかかってくるので逃げ切る前に叩き落とされるか空で四散していく。

敵も馬鹿ではない、幸いデータを回収、記録してくれていたので、実際に私達霧対さっきの化け物共という形で私の演算リソースをフルに使ってシミュレーションを行ってみたものの、よくて辛勝、悪くて相討ちという結論が殆どだった。こんな化け物共さえ軽く蹂躙し、一方的に嬲り殺してしまうレベルの軍勢もいつも見せつけられているとはいえ、呆れてしまうが、それを平気な顔で生み出す智史にも呆れるばかりだった、戦闘機さえ超戦艦級を軽く屠れてしまう程の圧倒的火力を持っているのだから。「圧倒的な大差を付けて一方的に嬲って楽しいのか?」と尋ねたくなってしまうぐらいだ。

しかしこんな攻撃が戦闘機だけで行われたのだからこの程度で済むとは到底思えなかった。そしてそれはある意味で正解だった。

 

「“さあ、汚物は消毒だ。”」

 

ーーシャァァァァァ!

ーーゴォォォォォ!

ーーヒュルルルルル!

 

ーードガァァァァン!

ーーズゴォォォォォォン!

ーーゴォォォォォ!

 

私のその予想通り、北アフリカに到達した爆撃機と攻撃機の群れは植物達とそこを守っている化け物共に一斉に襲いかかると中に仕込まれていた「落し物」を次々とばら撒いていく、私も奴に「撃つのはこちらの判断に任せる」と言われて試しに数発ばら撒いてみたが。するとその「落し物」は着弾するとまるで巨大な隕石でも落ちたかのような巨大な爆発を次々と引き起こし、そこにいた植物達や化け物共を塵芥残さずに滅殺していく。しかもその爆発の余波で大気や雲、地殻、海が次々と捲り飛ばされていく。もはや地球を滅ぼせると言わんばかりの光景がアメリカ東海岸の虐殺劇の延長線として繰り広げられる、私はこれを見てああやっぱりかと思うしかなかった。そして同時にこのボタン一つで地球を跡形もなく消し飛ばし、霧も人類も滅殺できる「力」を私は智史から「与えられた」と確信した、そしてそれを「奮える」状態になのだと感じ、恐怖した。なにせボタン一つでお手軽に人類や霧はおろか、地球が滅ぼせてしまうのだから。そして智史が「力」をあまり他人に授けない理由も奴の面白半分で行われたオーバーキルと言わんばかりの火力が私の手によって太平洋の時よりもより簡単に振るわれてしまった現実を見て感じた、「力」を扱うのにはそれ相応の器と責任が必要だということを。

その器と責任が備わっていなければその「力」を授けることは己の身を物理的に滅ぼす結末を招くという事態に。奴は奴なりに考えて「力」を振るっているという現実が改めてよく理解できた。私は大戦艦キリシマだった時代の方がまだマシだったと考えた、その程度で頑張っても地球は滅ばないのだから。

しかし私がそう考えているのはこの蹂躙劇を終わらせるファクターにはならない、更なる爆撃が行われそこにいたもの全てが散々に吹き飛ばされ、消滅していった、そしてお約束通りに異常事態は奴の手によって収束していく。

北アフリカを散々に爆撃してストレスを軽く発散した攻撃機達と爆撃機達は私と共に今度はマルタの島へと襲いかかる、彼らは既に別働隊の攻撃だろうか、それによって被害を出していた。

 

ーーギュルルルルルル!

 

ーーパシュゥゥゥゥゥ!

 

ーーゴォォォォォォォ!

 

生き残った超兵器がいるのだろうか、何処からかレーザーや黄電、黒い弾球が程走る。

ムスペルヘイムとモニターに名前が表示されたその超兵器はさっきの攻撃でだいぶ外装がひしゃげていたようだが3胴船体で、中央の戦艦のようなものにそれを挟むように2つの空母部分が存在する形をしていた。その攻撃に呼応して生き残った敵からも攻撃が開始される。しかしそれも無意味に終わる。着弾した黒い弾球は炸裂し、周囲を巻き込むという強烈な物理法則が生じる。しかし爆撃機達と攻撃機達は全くそういうことなど意に介さず、その物理法則を軽く引きちぎるばかりではなく、黒い歪みさえ取り込んで一斉に襲いかかる。

 

「“これが私特製の暴力と破壊のランチタイムだ。じっくりと味わうがいい。”」

 

既に奴による切り替えが済んだのだろうか、奴のその言葉と共に彼らは先程のものとは違う兵器を叩きつける、しかし容赦の無い徹底的な攻撃は一貫していた。本人は欲望のままにやっているかもしれないが、こんなランチタイムを味わされる側にしてみればたまったものではない。瞬く間にムスペルヘイムは無数のN2弾頭搭載極超音速対艦ミサイル、100t強化バンカーバスター、JDAM、268発もの1000㎏高性能炸薬弾を詰め込んだ複合爆装ポッド、超音速量子魚雷、波動魚雷を大量に叩きつけられる。

 

ーードガァァァァン!

ーーズグァァァァァァン!

 

そんなオーバーキルに等しい攻撃を防ぎきる余裕などムスペルヘイムにはなく、フィールドは破かれて船体は細切れとなって四散する。そして駄目押しとばかりにブラックホール弾搭載のミサイルが撃ち込まれてその四散した船体を飲み込んだ後に巨大な爆発を引き起こして完全に爆散した。炎の国は呆気なく海の藻屑と化してしまった、一瞬有明海でのあの様を思い出してしまう程の光景だった。

ムスペルヘイムが爆発四散する瞬間、メンタルモデルらしきものが吹き飛ばされたが、それは別のビジランティⅡが回収したようだ、奴が何のために使うのかは分からないが奴にしてみればその程度のことなど些事に過ぎないだろう。

何の兵器も威力が圧倒的過ぎた、裏を返せばこの火力程とはいかなくてもムスペルヘイムを粉砕するにはかなりの火力が必要では無いかと捉えることもできる。

 

「“さあ逃げ惑え、恐怖と絶望に駆られるがままに‼︎”」

 

ーーガガガガガガガガ!

ーードドドドドドドドド!

 

「ガァァァァァァ‼︎」

「グァァァァァァ‼︎」

 

既に敵はムスペルヘイムを沈められて潰乱状態に陥っていたが、それを奴が見逃してくれる筈が無い。容赦なくクラスター侵食爆弾や誘導爆弾、対艦ロケット弾、更には大口径バルカン砲搭載のガンポッドによる機銃掃射といった攻撃が雲霞の如く叩きつけられ、敵は苦痛や断末魔、悲鳴を上げて体をもがれて甚振られ、追いかけ回された挙句に殺されるという一方的虐殺という悲惨な末路を辿った。

何れにせよ、これらは奴にしてみればいつも通りの、戦争ではない只の射的ゲーム、鬼ごっこだった。しかしそれを実現するのに使われている力を太平洋での海戦よりもより身近に直に扱ってしまったという現実は私の中に深く刻み込まれた。私は奴は奴なりに考えて行動しているということを思い知らされて後悔した。

 

「どうだ、キリシマ?久しぶりに戦場の雰囲気を味わった気分は」

「それよりも、お前と私の器の違いを直に思い知らされた…。お前はお前なりに考えているのだな…。」

「まあそうだ、貴様は私の「手」の中で動かされているのだからな。」

「つまり最初から事態が己の望むような想定内に終わるようにプランを組み、牙を磨いていたということか…。完全に私の負けだ…。どう足掻いてもお前には勝てない。」

「まあいいさ、貴様が無事に帰ってこれたことは嬉しいことさ…。」

 

 

ーー再び、ギニア湾内のリヴァイアサンーー

 

 

ーーさて、北アフリカと地中海は完全に片付いたか。群像、花の1つぐらいお前に持たせるために恐怖と絶望に駆られて錯乱している獲物共をくれてやる。花を全部持っていくのは何のために群像達を戦わせているのだという事態となってしまうから気がひけるな。戦略的に食い切れる規模で調節しておいたからこれに奮い立って奮戦してくれたまえ。しかしそもそもなんでこんな事態に?私が気まぐれ過ぎるせいなのだろうか?

そして、だ。ムスペルヘイムのメンタルモデルの回収並びに体内に入っていた「破片」は取り除いた、流石に自我がちゃんとあり、良心がある常識的なものを殺すのは気がひけるからな…。そんな気持ちになると、ヴォルケン、貴様を面白半分で徹底的に嬲り殺した私自身が憎たらしくなって仕方がない…。

 

そう心の中で呟く智史。実際に地中海の敵艦隊は大半が先程の攻撃で食い散らされ、残るものも大なり小なり手傷を負い、おまけに帰るべき本拠地も徹底的に破砕された挙句に帰ろうにも直ぐに見せしめと言わんばかりに沈められ、さっさとアラビア海に行けと言わんばかりにまるで家畜でも扱うのかのように容赦なく鞭打たれて怯え、震えわめきながら生を望んで紅海へとさっさと動いていった。彼らは群像達やオウミ達に「戦果」として殺されるのだ、仮に彼らを群像達が仕留め損なっても智史による死の定めは免れない。そんな智史は心のどこかで苦痛や憐憫を感じてはいたが、彼らが害をもたらす存在である以上、同情するつもりは微塵もない。従って彼らを徹底的に嬲りながら殲滅することを決意していた。

 

ーームスペルヘイムよ、今は休むがいい。お前は破片によるマインドコントロールや先程の戦闘で疲れが溜まっているからな…。私の「駒」となる現実を受け入れられないかもしれんが、私は私の欲望のままに動くからな、悪く思わないでくれ…。

さて、ルフトの元に向かうとするか…。早く動かなければ私がみんな平らげるぞ?

 

 

ーーアメリカ東海岸、フロリダ半島沖

 

「ヤマト様、被害報告の集計、完了しました。」

「ありがとう。」

そう言いデータに目を通すヤマト。

「かなり被害が出てる…。これでも被害を抑えられたことは大きい。」

「はい、生き残ることを優先するように訓示した結果、ユニオンコアまで殲滅された艦は皆無でした。完全に復旧するのに掛かる時間は5日程度です。」

「そう…。でもその被害を立て直す間に智史さんが動いたみたい。」

「はい、あの人は北アフリカを散々に爆撃しただけでなく地中海にいた敵艦隊の殆どを血祭りに上げた挙句にその一部を「花」として群像さん一味に押し付けたみたいです。」

「そう…。でももし私達抜きで私達の未来が作られるのは何処か納得がいかない、これでいいのかって。智史さんは首を長くして待ってくれているのかしら?智史さんは私達に「早くしないと自分の手で『未来』を作るぞ」と語りかけている気がするわ。」

「なるほど…、あの人はあまり待ってくれる気がしませんね、それに敵も馬鹿ではないですしこちらの準備が整うまで待ってくれるとは限りませんし、もたもたしてたら立て直されてしまう可能性もありますからね…。」

「そうね、せっかく智史さんの手を借りてやっと立てるようになったというのに、これで智史さん1人で栄誉を独り占めにされたら「自分達は何のために戦ってきたのか?」ということになるし、智史さんに借りの1つさえ返せないままになってしまう。あまりモタモタしてられない。」

「そうですね…。実際に北アフリカでの大勝利をアメリカ政府に聞かせた途端、「自分達も遅れを取りたくない、早く自分達を連れてヨーロッパへの上陸作戦を実行しろ」と言わんばかりの矢の催促が届いています。」

「私達を導いてくれる智史さんが勝利を挙げるのはいいことだけど、戦う意義や借りを返す機会まで奪われるのは堪らないわ。アメリカ軍との共同作戦は承認します。我々も手遅れになる前に急ぎましょう。ヒュウガの例の新兵器が完成したからこちらに回すことも群像さん達に伝えて。これは智史さん抜きで植物達の問題を解決するのには重要な兵器なの。」

「了解です、直ちに新兵器の輸送準備に取り掛かります。」

そう会話する超戦艦ヤマトと大戦艦ルイジアナ。彼女らは智史の考えである「自分達の手で未来を作って欲しい」を理解し、そして智史が急がせるような感じで訓示していることを理解していた。

 

ーーもし智史さん1人にやらせたら、智史さん1人で偉業を成し遂げてしまうこととなり、そうなったら借りの1つも返せないし、「働いた分だけ恩賞をやる」というルールに基づいて考えた場合、智史さんに「褒美」が集中してしまうこととなってそれを取ることは気後れしてしまうから自分達も頑張らなくてはいけない。

 

その考えが根底にあるヤマト達は急ぐのだったーー

 

 

ーーアラビア海

 

 

「ふう、何とか撃滅できましたねーー」

そう呟くオウミ、彼女達は12度目の敵の攻勢を耐え切って安堵していた、しかしーー

 

「オウミさん、方位185、距離250㎞に重力子反応‼︎」

「分析パターンは⁉︎」

「敵艦ーーいえ、これは401の重力子パターンと確認!他の艦のパターンも判明、タカオと、…信長だそうです。ですがモンタナ様が告げた友軍であることは間違いありません‼︎」

「友軍ーー⁉︎千早艦長⁉︎直ちに401に通信を繋いで‼︎」

オウミは慌てて401に通信を繋ぐ。

 

「こちら第2艦隊旗艦オウミ、千早艦長、聞こえますか?」

「こちら401、貴艦の通信を傍受した。如何なされたか?」

「401がこちらに救援に向かっているとモンタナ様から聞き、確認として繋ぎました。」

「了承したーー」

「群像、リヴァイアサンから入電。オウミ達にも。『北アフリカに植物が蔓延し始めてたから徹底的に爆撃してクレーターまみれにした。地中海にいる敵艦隊も当初は皆殺しにしようと考えたがそれだと群像達を戦わせる理由が無くなるから一部を残しておいた、そいつらはこちらの爆撃でだいぶ傷んでるけど手柄としては一級品だ、こっちに向かっているから仕留めてみせろ。なお、急がないとお前達の食い分も全部平らげるぞ』って。」

「あの野郎、そう言っておいて美味しいところを全部平らげるつもりだろう〜‼︎」

「千早艦長、こちらの偵察機で確認したところ紅海方面から敵の残存艦隊が向かってきています。恐らくはーー」

「智史が言った「手柄」か…。映像を出してくれないか?」

「了解しました」

そしてオウミの艦隊の偵察機が撮影した画像が401のメインディスプレイに表示される。

 

「随分と損傷が激しい…。超兵器級も含まれてない以上、ケープタウンのもの程の戦闘能力は無いな…。」

「先程の入電の内容とほぼ一致。でも脅威であることには変わりは無い。」

「あの野郎、こんな痛みものを寄越すとは…。こりゃ戦闘じゃなくて残党狩りじゃねえかぁぁ!畜生、舐めやがってぇぇ…。群像、こいつらをオウミ達と連携してぶっ潰して新兵器を受け取りに地中海に向かうぞ‼︎」

そう言い怒り狂う杏平。実際に智史は彼をからかうことで怒り狂う様を見たくてそう仕向けたのだ。

 

「杏平、お前の言う通り彼に完全に軽く見られているな…。だが俺達の実力がその程度では無いということを見せつけるぞ!」

「了解です、私達が軽い存在では無いことを彼に思い知らせます!」

「全速前進、アラビア海へ向かうぞ!」

 

智史に軽くからかわれたことで大いに憤り、奮起する群像達とオウミ達。そこに浦上大将の日本海軍派遣艦隊も加わり、彼らは烈火の如き勢いで智史が残した「手柄」を我先に取らんと襲いかかろうとしていたーー




おまけ

今作の敵超兵器紹介

霧の超兵器 超巨大航空戦艦ムスペルヘイム
全長 戦艦部分 1885m 空母部分 1650m
艦幅 戦艦部分 850m 空母部分 600m
全幅 1400m
基準排水量 45000000t
最大速力 水上 2000kt 水中 1500kt

兵装
114㎝100口径 3連装3基
対空パルスレーザー 連装160基(戦艦部分80基、空母部分は40基ずつ)
各種ミサイルVLS 15000セル
βレーザー発振基 2基
光子榴弾砲 単装10門
圧縮プラズマ砲 連装4基
ブラックホール砲 単装1基 (霧の艦隊が使う超重力砲とは攻撃メカニズムが決定的に違う。本来の呼称である重力砲だと混同される可能性を考慮したために呼称を変更した。)
拡散荷電粒子砲 連装20基
80㎝90口径 3連装8基
140㎝多弾頭噴進砲 単装8基
200㎝各種魚雷発射管 250門
全方位超重力砲 戦艦部分 30門 空母部分 24門ずつ、計78門
なお、全ての超重力砲をブラックホール砲と連結させることでヴォルケンクラッツァー級の波動砲を超重力砲に連結させた状態の火力に匹敵する。
クラインフィールド、ミラーリングシステム、強制波動装甲、ナノマテリアル生成能力、エネルギー吸収活用システム、自己再生修復学習システムを装備。

解説
鋼鉄の咆哮3のデザインをベースとした霧の超兵器。
原作の設定に基づき、ヴォルケンクラッツァー級に並ぶ火力を持ち、リヴァイアサン出現後の戦訓を基にして艦載機も展開できるようになったため、一応グロースシュトラール級をベースとはしているものの、実質的にはヴォルケンクラッツァー級やリヴァイアサンを除いた敵超兵器に対しては圧倒的優位を誇る火力を持っている。
しかし本作のストーリー上、いきなり破片を自身の実の生みの親であるフィンブルヴィンテルに強制洗脳された挙句、リヴァイアサンから発進した航空機達からの猛攻によってリヴァイアサンと直接相見え、真髄を発揮することなく船体を殲滅されるという不遇な目に遭っている。
幸い人格者であり、良識人でもあったことや、ヴォルケンクラッツァーを殺してしまったことでルフトシュピーゲルングを傷つけてしまったことに負い目を感じていた智史が彼女の死を良しとしなかったため、メンタルモデルは回収され、破片を取り除かれて現在メンタルモデルだけの状態で一時休息中である。
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