海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー 作:satos389a
作者である私が圧倒的に主人公贔屓(いや私が自身をモデルとして主人公のストーリーを描いているからこうなるんだ)なせいでルフトシュピーゲルングがリヴァイアサンに軽く瞬殺されてしまいます。
そうなる裏付けはきちんと書いていますし、その裏付けを示しながらとても納得できるものにしてみようとしたらこうなりました。
まあメンタルモデルは助けましたので殺してばっかりの一色よりは幾分かマシと思います。
それではじっくりとお楽しみください。
「敵艦影複数捕捉、オウミが報告してくれたデータ画像と99%一致。」
「やはりこちらに向かってきているか…。浦上大将、こちらは?」
「こちらもレーダーにて捕捉した、やはりあの電文の内容の通りだな…。見たところ我々の方が圧倒的に優位だが、油断はならんな。それにしてもアラビア海での防衛戦の時よりも規模が小さいな…。こちらが全滅しないように配慮してくれているのか、それとも単に軽く見られているのか…。」
「その両方だと自分は考えます。仮にこちらが全滅したら彼にしてみれば「シナリオ」上の不都合と言えるでしょう。」
「仮に彼の手の平に全てが収まっていたとしたら我々を「作り変えた」彼は恐ろしい存在だな…。」
そう会話する浦上大将と群像。実際に彼らの考察通り、智史は群像達が全滅するのを一欠片も望んでいなかった。
「敵艦隊、我が軍に突っ込んできます!」
「散々に追い回されて追い詰められたから後がない故にヤケクソだな…。だがこの程度で止められるとは思わないでくれ。総員戦闘配置につけ!」
その言葉とともに日本海軍や霧の連合軍の「パーツ」達は流れるように戦闘態勢を整えていく。
「侵食魚雷、てぇーっ!」
「荷電粒子砲発射準備完了、いつでもどうぞ!」
「こちらオウミ、攻撃開始します!」
ーーボンボンボンボン!
ーーシャァァァァァ!
ーーピャォイッフォァァァァァァ!
次々と連合軍からミサイルや魚雷や光弾が放たれる、それは満身創痍だった敵軍を次々と貫き沈めていく、しかし敵も黙ってやられてくれる訳ではない、これで負けたら後はない状態なのだ。故に死に物狂いで抵抗してくる。だが彼らの1つを屠ることさえ叶わないほどに火力は貧弱で、命中精度、士気もあまり高いとは言えなかった。おまけにここに至るまでに幾つか脱落してとり、数自体もあまり少なかった。
「その程度で我々を止められると思ったか‼︎」
「舐めるな、すぐに海の藻屑にしてやる!」
それに対して日本海軍や霧の連合軍は智史にからかわれたことで半分憤っており、士気軒昂な状態だった。彼らは智史抜きで勝てないという現実を知ってはいたものの、かといって活躍の場を奪われてしまうのは何処か許せないところもあった。故にその鬱憤を生き残りである彼らに容赦なく叩きつけ、一方的に蹂躙していく。
「一隻残らず沈めろ!1匹でも生き残りが出たら末代までコケにされるぞ!」
ーーシャァァァァァ!
ーーズグァァァァァァン!
最終的に彼らは敵艦全てを一隻残らず沈めるパーフェクトゲームを飾った、とはいっても智史に一部傷つけられた状態だったのでこれは当たり前だったと言えよう。
「敵艦隊、壊滅しました。」
「よし、ヤマト殿との作戦会議の内容どおりに地中海に進むぞ!あの忌々しい植物共を焼き払うという手柄を彼に独り占めにされては堪らん!」
そう告げる浦上大将。彼らと群像達はヤマトとの事前の作戦会議で「例の植物をヨーロッパから駆逐殲滅する」という内容を決め、そのための作戦を実行する為に地中海へと進撃するのだったーー
ーーカナリア諸島西300㎞沖合
ーーふう、予測内の結末で終わりましたか。それにしても随分とロマンまみれな兵器を生み出しましたな、ドリドリ感が伝わってきますわい。
え、アラハバキ?いや違うよ?でも根っこまで行かなきゃならないし手動で突入とはねえ…、小型潜水艇?まあ今の状態で遠隔操作で正確には命中させられる状態とは言えないし、大きくしたら運搬にも時間は掛かるし、おまけに「人」がそこにいなければ「ロマン」は感じられないからねえ…。第一うちがこいつらになるべくうちの手を借りぬように仕向けましたからねえ…。大人の都合は大変よ…。
そう心の中で呟く智史、実際に彼の発言通り、植物達が大繁殖しまくっているヨーロッパの環境は彼らの現在の技術的視点でみれば非常によろしくないものだった、というのもこれまでの戦闘関連データで学習進化し、強烈な物理的進化により「コア」に致命傷を与えるには通常の攻撃方法では強力な「防壁」に阻まれて全く叶わず、掘削能力を持つドリルを用いて突入するしか方法が無くなってしまった、無人でやろうにも植物側が強力な電波ジャミングや光学妨害を行うようになっただけでなく、強力な溶解液も散布するようになった為に遠隔操作しようにもアンテナは溶けるわ通信効かないわで悲惨であり、更に人工頭脳による直接操作での作戦も考えられたものの、智史から送られてきたデータの内容に「小型の触手で侵入して起爆装置を解除後、自動排除してしまう可能性大」ということが書かれていたことから、洗脳されてコントロールプログラムを書き換えられたらどうなるんだというリスクによって兵器としてあまり信頼できなくなってしまったこと、あと大人の事情である利害関係の調整によって、結局群像達やメンタルモデル達が植物の「コア」まで爆弾を運んで行って起爆するというものとなってしまった。
因みに植物に「コア」が何であるのかというと、生命としての完成形と洗練を目指したが為に核は1つとなって機能を集約し、合理的かつ戦略的に進化するようになったことと関連がある。勿論1つなので守備は前述の如く非常に堅いのだが。
そして作戦内容はというと、群像達とメンタルモデル達を乗せたドリル潜地艇を大型のロケットブースターによってコア近くまで運び投下し、切り離された潜地艇はコアまで潜行後、彼らを乗せた脱出艇を切り離して自爆するというものだった。最も本人達はこの新兵器も含めた作戦内容を理解した上で決定し、知っていたが…。
ーーふう、まるで爆弾三勇士じゃん…。まあ、決死隊のようではないからいいか。私の手助け一切抜きと指定し、彼らの状態も繊細に把握した上での成功率は68%か…。失敗するリスクも考慮してバックアップはきちんと取っておくか、失敗したら色々と困るからね。あと邪魔も嫌いだから飛行場全部耕してネズミも全部殺しちゃいましょうか♪
智史は何処かで罪悪感を感じながらそう呟く、と言っても簡単にバックアップと後始末が出来るだけの物理的、精神的余裕が有り余っている状態に既になっていたのだが…。
それはともあれ、リヴァイアサンは攻撃隊をヨーロッパ各地にばら撒きながら北海にいるルフトシュピーゲルングの元へと突き進んでいくーー
霧の超兵器 超巨大航空戦艦ムスペルヘイムの独白ーー
ーーここは、何処だろう…。
私はフィンブルヴィンテルによって己の意識が世界が暗闇と混沌に閉ざされた後、ずっと暗闇と混沌の海の濁流に巻き込まれ、溺れながら彷徨い続けていた。
ルフト様とはあの時以来まだ会えていない、しかしルフト様から離れてしまった状態になったことは分かった。
自分の肉体を他人のいいようにされる気分はいい気がしない、それに加えて自分を破壊の尖兵として、手駒として扱えるようにフィンブルヴィンテルが自分を生み出したとしたら、とても許せる気がしない。
ーーよくも自分を破滅を生み出し、世界を滅びの闇に沈めるために生み出してくれたな。
と。
私はフィンブルヴィンテルの操り人形として生み出された訳ではないと言いたかった、しかし現実はそうだと言わんばかりの悲惨さだった。足掻いて出口を探そうにも混沌と暗闇の濁流は私がこの世界から出ることを拒否すると言わんばかりに堅牢だった、おまけに目に見えるものは混沌と暗闇の海と空ばかりで、出口というものなど1つもないぐらいに真っ暗で絶望まみれだった。
そうこうしているうちにルフト様からかなり離されてしまっていたようだ、そして絶対的な「終末」ーーリヴァイアサンが迫っていることも分かった。
人間の言葉でいう「黙示録」に出てくる海の化け物の名を冠したあの「霧」ならざる霧は私の「仲間」を次々と喰らい海の藻屑へと変え、ルフト様の姉方であられ破片を取り込まれたヴォルケン様を軽く屠った、だとしたらあの霧はフィンブルヴィンテルに対抗する「希望」なのかもしれない、だが私がこの「世界」から抜けられていない上、フィンブルヴィンテルの「人形」にされている以上、彼に敵と判断されて殺されてしまうかもしれない。
ーー鬼が出るか蛇が出るか、か…。
私は死を覚悟した、そして「終末」は訪れる。リヴァイアサンが振るう圧倒的な「力」によって私の「船体」は軽く細切れにされ、私がいた「世界」の混沌と暗闇の濁流までもが悲鳴と唸りをあげて荒れ狂い、私は更に深く飲み込まれていく、そこで私の「意識」は一度途切れた。
ーーう…、うう…。ここは…?
再び目がさめると暗闇と混沌の濁流の海は消え失せていた、代わりに突如として1つの光が暗闇の中に指す。
ーーこの世界が、終わるということなのか…?
そしてその光は強さを増していき、暗闇を消し去っていき、私はその光に飲み込まれていく。
「う、うう…。」
「目覚めたか、ムスペルヘイム。」
「ここは…、世界が違う、破片の気配がしない…。リヴァイアサン、貴艦が破片を取り除いたのか?」
「そうだ。破片は握りつぶして破砕した。」
「そういえば、ルフト様は…?ルフト様はどうされたのだ?」
「まだ「死んで」はいない、マスターシップの破片を埋め込まれてフィンブルヴィンテルの操り人形だがな。今本艦は彼女に向けて侵攻中だ。」
「ルフト様を…、どうするつもりだ…?」
「殺しはしない、だがタダで済ますと保証もしない。」
「私と同じく、破片を取り除くのか?」
「そうだ。」
「私を…、連れて行ってくれないか…?」
「いいだろう、ただ今は無理はするな、少し休め。」
「すまない…。」
目が覚めたらリヴァイアサンのメンタルモデルが目の前にいた、男だということはこれまでの戦闘データから判明していた。やはり目の前で見ると貫禄が桁違いだ、一見普通に見えるのだがフィンブルヴィンテルを鎧袖一触で屠れるという余裕と威厳がある。そればかりか圧倒的な力を背景として世界を我が物にして思う存分に振り回しているという雰囲気さえ感じた。
「リヴァイアサン、艦載機が帰ってきたようだな。」
「ああ、各地の敵飛行場を耕しに行ってきた爆撃部隊とチョロチョロと動き回っているネズミ共を駆除しに行った攻撃部隊だ。」
「羨ましい限りだ、貴艦によっていつも統率され、それでいて数質共に大きく勝り、おまけに貴艦と「生」を共にしているが故に常に進化し続けているのだからな。ヴォルケン様をはじめとした貴艦と相対した敵が悉く負けてしまうわけだ…。」
「まあこれだけの力を手にするにはかなりの代償を消費したがな、だが代償以上の対価は手に入れている。その対価を引き換えとして私は更なる対価と力を得て、至高へと登りつめるのだ。しかし残念だった、貴艦によって生成された航空隊を一度見てみたかった…。」
「後悔はよしてくれ、リヴァイアサン。今はルフト様とフィンブルヴィンテルのことに専念しよう。」
ーー地中海
「うわぁ…、まるで魔神の剛腕が叩きつけられたみたいじゃねえか…。」
「地形がこちらの地形データとはまるで異なっていますね。おまけに全て更地という…。」
「なんか…、綺麗さっぱりになっちゃったみたいですね…。エジプトのピラミッドも吹き飛ばすなんて…。」
「一度見てみたかったな…。だが植物が蔓延し始めたという事実を考えるとある程度は仕方が無かろう。」
「しかし考えなさすぎでしょ、地球さえ滅ばなければ滅茶苦茶に吹き飛ばしていいって考えてなくない?」
「智史は私達や人類が滅ばないように配慮していること以外は特に考えていないのかもしれない、智史はフィンブルヴィンテル一味との戦闘を楽しくインパクトのあるものに仕立てたいと考えていると私は思う。」
「特撮やパニック映画ごっこじゃあるまいし、そこら辺もう少し考えろや、オイ。お前が変に暴れるだけ世界が滅茶苦茶になってくじゃねえか。」
「でも「自分達の手でなるべく解決してみせろ」という考えのことも考えるとある意味納得できますね…。」
「そうだな、実際に彼の行動によって俺達にプレッシャーが掛かっているのも事実だ…。」
そう会話する群像達。実際に智史の行動によって「1つでもいいからこの大戦にて大事なことを自分達で成し遂げなければならない」というプレッシャーが劇的に強まっていた。
「艦長、大戦艦アイオワより通信。クレタ島西300㎞にて新兵器を引き渡すとのこと。」
「あの新兵器か…。というか特攻兵器だよな、これ…。」
「一応生還を期してはいるから最初から全滅を期すというわけではない…。」
「あいつにやらせた方が1番楽な気がするけど、それだと俺達の見せ場がなくなるってことじゃねえか…。ひでえ貧乏くじ引かされたな…。」
「まあ愚痴る理由はない、本艦は日本艦隊並びにオウミ艦隊と共にアイオワ艦隊に合流した後、メインクルーを降ろす。全速前進!」
そして401は連合軍と共にアイオワ達の所へと突き進んでいく。もちろん智史はこれをきちんと見ていたーー
ーー同時刻、ドーバー海峡
ふふふ、いよいよ男のロマンに満ちた作戦の開幕か…。実にロマンだ…。用を片付けてからじっくりと鑑賞しますか…。とはいっても戦争は戦争だからすぐに行動は取れるようにしておこう…。
そう呟く智史、そして時は訪れる。
「敵艦隊捕捉、旗艦はルフトシュピーゲルングと確認。機関出力上昇、メインスラスターへの動力供給を拡大。」
ルフトシュピーゲルングを中心とした敵艦隊を捕捉したリヴァイアサン。メインスラスターが唸り、リヴァイアサンの船足を早めていく、それに伴い空に暗雲が立ち込め、たちまち雷光が次々と閃き豪雨が降り注ぎ、海が激しく畝る強烈な嵐がリヴァイアサンを中心として北海全域を覆うように引き起こされる、敵艦はその嵐の前に激しく翻弄され、まるで木の葉のように漂ってしまう。だがそんな嵐を引き起こしてもリヴァイアサンの艦橋に立っていた智史は平然と立っていた、そしてリヴァイアサンは激しく畝る海に船体を煽られることなく、まるで海龍の如く平然と切り裂いて進撃していく。
「ギュィィィィィ!」
ーーガァァァァァン!
ーージュゥゥゥゥゥゥ!
「ガァァァァァァァ!」
敵の大型戦艦クラスが複数、ルフトシュピーゲルングに真っ直ぐに突っ込んでいくリヴァイアサンを身を犠牲にしてでも止めようとするもその体格差や全てのスペックで圧倒されていたことから逆に軽く弾かれ、肉塊となって吹き飛ぶ、そればかりか触れただけで激しく溶け、焼け、燃え上り、触れた敵艦のパーツは一撃で焼け飛んでいた。
「全ては力だ、貴様らもその定から逃れられぬと知れ。」
ーーズゴォォォォォォ!
ーーパシィィィィン!
ーーボガァァァァン!
ーーグワァァァァン!
「ギュィィィィィ!」
リヴァイアサンはミラーリングシステムを起動し、海を切り裂いて無数のワープホールを出現させる、そしてそこから大量の黒い重力子の濁流が吹き出し、巨大な重力子の津波となって襲いかかってくる敵艦を次々と飲み込み、破砕していく。そして敵艦を飲み込み、食らいつくした黒い重力子の「世界」は爆発でも起きたかのように急激に膨張し、雲や空、海や大地を捲り飛ばして巨大な津波を発生させる。
「これで終わりではないぞ、デザートを食べてくれ。」
そして止めと言わんばかりに艦内放射がリヴァイアサンから放たれ、重力子の「世界」を中から吹き飛ばし、切り裂いていく。これによって「津波」はさらに威力と勢いを増してルフトシュピーゲルングに襲いかかる、その「津波」に巻き込まれたルフトシュピーゲルングは一撃でズタボロに焼き尽くされ、上部構造物をはじめとした破片を撒き散らしながら押し流されてしまう。
「リヴァイアサン、ルフト様を助けるつもりでは無かったのか⁉︎」
「破片が自身を防御しようとフィールドを集中することを想定、それを逆用して威力を加減した。問題はない。」
そして「津波」は北海にとどまらずイギリスの陸地やヨーロッパ大陸にも襲いかかり、植物をはじめとしたあらゆるものを次々と吹き飛ばし、抉り飛ばしてしまう。
流石に地球を滅ぼすのはまずいな。だが許せ、群像、ヤマト。自身を満足させるために派手にやらせてもらうぞ。
そう呟く智史、実際自分の欲望と考えに基づいて戦果を上げまくっていることが皮肉にも彼らの活躍の場がなくなってしまっている事態を加速させていた。まあ助けておいて興味がなくなったら殺すというやり方は全くやる気になれず、また好きなように群像達を振り回していることに対する罪悪感、自己嫌悪もあったが。
ともあれこの後智史によって熱エネルギーは減衰させられ、爆発は収束したものの、自分の「重み」をまざまざと見せつけるために完全には減衰させなかった。そしてそれは智史の「存在感」を見せつける「道具」として群像達に姿を現す。
「すげえ揺れだな、オイ。」
「地殻が海諸共吹き飛んだようです…。」
「すごい巨大な波…。エネルギーを減衰させていたとしてもあまりにもすごい…。」
「だがヴォルケンクラッツァーの妹であるルフトシュピーゲルングの反応は消失。波動砲で撃たれるというリスクは無くなったか…。悔しいがリヴァイアサンがやっていることは曲がりなりにも我々の為になっている…。」
あっけないものだ、ヴォルケン姉妹とサシで戦うという機会はもう終わったか…。しかし、ヴォルケン姉妹を始めとしたライバルがこの世界から居なくなったことで「対」が消えたか…。圧倒的な強さの引き換えは、そうか、孤高か…。
ーー私は、「1人」なのだな…。
そしてその虚しさを埋める為に私は外へ向かおうとする…。
ある意味そうかもしれんな、さてこれは終わりとして、ルフトの「破片」を取り除こうか。
あたり一帯の敵を「津波」と「濁流」で完全に消し去ったリヴァイアサンは「津波」によって形を大きく変えられたスカンジナビア半島の沿岸に叩きつけられ、船体が2つに折れてズタボロに焼き尽くされた残骸を撒き散らし機能を完全に停止して沈黙したルフトシュピーゲルングに向かっていく、先程の天変地異の影響で波高が乱上下していたもののリヴァイアサンはこれを意に貸さずに突き進む。
「着いたぞ、ムスペルヘイム、行こうか。」
「ああ、ルフト様をお助けせねば‼︎」
「私は船体の方の「破片」を壊しに行こう、貴艦はメンタルモデルの方の「破片」を破壊してくれ。」
「智史くん、私もついていっていい?」
「ああ、蒔絵達も一緒に連れて行くとしよう、ただし船体の方はこんがりと焼けてるからお前達は耐熱服が必要だな。」
ルフトシュピーゲルングの近くに着いたリヴァイアサン、智史はムスペルヘイムに破片を壊す為の特殊なナイフと手袋を授けた、そして智史達は船体に残っている「破片」を壊しに、ムスペルヘイムはルフトの元へと歩き始める。
ふっ、まさに廃墟だな…。まるで焼け落ちて陥落した城塞のような骸だ…。それなら骸一つ残さずに四散したヴォルケンの方がマシだったか…。
智史達はルフトシュピーゲルングの船体の残骸に足を踏み入れる、計算通りに中まで徹底的に焼けていたので、凄まじい熱気がまだ残っていたものの、智史は耐熱服を着なくともそれなど意にも介さない、彼は「常識」外なのだから。
「智史くん、温度どれぐらい?」
「摂氏1800℃。これでもだいぶマシだ。」
「マシって…。脱いだら火傷どころか一発で死んじゃうよ…。」
「ナノマテリアルはこの程度の温度では溶けないが…、それでもかなりの高温だな…。」
「そうか、蛇足として付け足しておくが、ここの温度はさっきまでは1億5000万℃だったぞ?」
「すげぇ…。ズタボロにされるのもなんとなく分かる気がする…。」
「そしてそれによって船内が歩きづらくなっているぞ…。」
「ああ、所々大穴は空いてデコボコが出来たな、まあいいではないか、この方が探検隊ごっこができて楽しい。」
「そうだね、ここの中なんか美しくていいな〜!冒険だ〜!」
そう呟く智史、実際に「津波」が襲いかかった際の温度が前述の如くあまりの高温で船体の素材が溶けて蒸発してしまうほどだったため、船体の強度が大幅に低下してしまい船体の大半が自重に耐えきれずに所々が湾曲したり溶け落ちたりして足場が洞窟並に悪くなり、あちこちに日光が差し込み、もはや朽ち果てていく廃墟といっていい程の惨状と化していた。しかしそれがかえって自然美と廃墟美を醸し出して、一種の「非日常」的な空間が生まれたのだった。
「ここなんかドキドキするね、何が起こるのか分からないという緊張からそうなるのかな?」
「まあそうかもしれないな、だがその「緊張」が距離を縮める要素にもなる。」
「歩きにくいな、めんどくさい…。元の体と比べると小回りは効くようにはなったがやはりデメリットも無いわけではないか…。」
「きゃぁっ⁉︎」
「気をつけろ、蒔絵。」
そう会話しつつ、智史達は奥へ奥へと進んでいく。途中大きな空洞や急斜面や壁があったものの、面白おかしく突破していく。智史は「破片」の位置を把握した上でそこに向かっていたものの、そうしなくても「破片」から溢れ出す邪悪な気配が彼らに行くべき方向を悟らせる。
「…しかし随分と広いな、どれ程の大きさなんだ?」
「元が2㎞以上はある巨艦だからな、真っ二つになって破片を撒き散らしても十分すぎる大きさだ。」
「すぐ近くみたい、もう少しだよ!」
ーーバンッ!
ーーズガァァァァァン!
あったか、本来の「場所」から外れても存在しようとはな…。
智史達は遂にマスターシップの破片が見つけた。破片は本来の「位置」から外れてはいたものの、フィールドを展開して破壊エネルギーを減殺していたことで健在であった。
「くっ、智史によって削られたとはいえ、何で禍々しさだ…!」
「おのれ、これでも食らえ!」
あまりにも邪悪な気配に殺気立ったキリシマが侵食球をぶつけるものの、全く効果がない。それでも殴りかかろうとするも拳がフィールドにわずかに触れたところで智史に止められる、フィールドに触れたキリシマの拳の先はナノマテリアルが欠損し、緑の正六角形が露わとなっていた。智史がすぐに修復してくれたお陰で元にはなったが、2人が生物的に「人」とは言えないことが改めて分かる。
「キリシマ、落ち着け。これはお前達のような普通の霧では始末できる代物ではない。」
「すまない、思わず殺気立ってしまった…。」
「その光景を見ると智史くんがやったことの「凄み」がわかるわね…。」
智史の説得によって落ち着きを取り戻したキリシマは一旦後ろに下がり、今度は智史が破片に近づく。自分たちを容赦なく断罪する死神ーーリヴァイアサンごと智史の気配を察したのか、破片が発しているオーラが変わる、邪悪な気配からまるで迫り来る圧倒的な暴力に怯え、恐怖するオーラに変わっていく。
「コンゴウ…。破片が…、怯えている…。」
「それほどの光景を生み出すだけの力を智史は私達にまざまざと見せつけてきた。当然の結果だ、めんどくさい…。」
そう会話する蒔絵とコンゴウ。2人は智史がしてきたことの凄まじさと重みを身でもって散々に味わされたのでこの事象は当然の結果だと考えた。
おい、そんなに逃げたいか?私から、迫り来る死の恐怖から逃げたいのか?
駄目だな。
強者こそが弱者の運命を決するのは自然の摂理である以上、貴様の運命を決めるのは私だ。
貴様がしたことはフィンブルヴィンテルの指示に基づいているにせよ、それを行う貴様自身が世界を破壊する「フィンブルヴィンテル」だ。そして私は「平和」な世界を築くには「フィンブルヴィンテル」を徹底的に討ち滅ぼすのが1番現実的だと考えている。
以上の理由をもって貴様を処刑する。フィンブルヴィンテル本体に伝えておけ、「“貴様が滅殺される時はもう間近だ”」となーー
智史はそう言い放つ、そして右手にクラインフィールドの巨剣を発生させると破片に深々と突き立てる、そしてそのまま外郭を突き破る勢いで破片を外に放り飛ばす。破片は悲鳴を一瞬あげたのち、凄まじい爆発と共に大空に四散した。
破片が抹殺される最期の瞬間、一瞬恐怖に怯え泣く人の顔らしきものが見えたようだがそれは定かではない、だがそれは破片を抹殺したという現実を変えるファクターにはならない。
「用は終わった、蒔絵、何か拾っていきたいものはあるか?」
「そうだね、この船の破片を拾いたい!どういう作りなのか自分で見極めたいから!」
「そうか。」
そして智史は蒔絵の為にルフトシュピーゲルングの船体の破片を持って帰ることにした、その頃ーー
ーーズガァァァァァン!
「ムサシ様、どうやらリヴァイアサンが破片を破壊したようです。」
「この爆発の際にルフトに取り憑いている破片の気配をすぐ近くに感じたわ、すごく怯えているような…。」
「だとしたらすぐそばに居るはずです、お助けせねば!」
そして慌てて瓦礫の中を掻い潜ってルフトの元へと向かう2人。当初はムスペルヘイム一人だったものの後からムサシがどういう訳か付いてきたので2人でルフトを探すこととなったのだった。
「ルフト様、ルフト様‼︎」
「居たわ、ここよ!」
2人はルフトを見つける、彼女はリヴァイアサンか引き起こした「津波」によって吹き飛ばされて地面に半分埋まっていたものの、皮肉にも「破片」が自身を守る為にフィールドを展開したお陰でメンタルモデルやユニオンコアには損傷は見られなかった。
「ルフト、ルフト!」
「危険ですムサシ様!あなた方のような「普通」の霧が触れたら一発で滅びます!」
「それでも私は彼女に謝りたい、助けたい!私が彼を滅ぼす為にあんな悪魔を使ってあなた達を生み出し、そしてあんなことになってしまった…。…その罪滅ぼしがしたい!」
「ムサシ様…。」
一瞬で彼女の真意を理解するムスペルヘイム、リヴァイアサンごと海神智史を滅ぼす為に「悪魔」を使って自分達を生み出してしまった「罪科」を前にして良心の呵責に耐えきれなかった彼女の後悔と悲しみが痛いほど伝わってきた。しかし危険なものは危険だ、ムスペルヘイムは彼女を制止すると智史から預かったナイフと手袋を使って彼女の破片を取り除くように進言する。
「ありがとう、ムスペルヘイム…。」
ナイフと手袋を彼女の手から取るムサシ、そして破片をルフトのユニオンコアの「器」に入っていた破片をルフトのメンタルモデルを切り裂いてナイフを使って強引に取り除く。
あの化け物達を易々と殲滅した「実績」を背景としている智史が作ったものなら確実性があるという彼女の予測はある意味で的中した。
「破片は取り除けたわ…。」
「よかった…。」
「恐らく疲れてるようだから今は寝させてあげましょう。船の方でじっくりと話は聞けばいいだけのことだから。」
破片が取り除かれた後、ルフトの血相が変わった、禍々しい青紫から人を思わせる温かみのある肌色へと変わったのだ、同時にメンタルモデルに備わっている自己再生能力の影響なのか、傷口も塞がる。これを見て2人は安心する。
「フィンブルヴィンテル、次にこうなるのはあなたのような悪魔よ…。」
そしてムサシは破片に止めと言わんばかりにナイフを思いっきり突き立てる、断末魔が一瞬轟くと破片は砕け散って消えた。
ーーババババババババ!
「ムスペルヘイム、リヴァイアサンは私達を心配したの?」
「そのようですね、恐らく2人がかりで何も使わずに船体の方まで連れて行かせるのはちょっと気後れすると考えたのでしょう。」
「ふふふ、彼ってお節介なところもあるのね。でも私達を心配してせっかく来てくれたんだから断ったらちょっと可哀想ね。乗りましょうムスペルヘイム、ルフトと一緒に。」
「はい。」
こうしてムサシとムスペルヘイムは正気には戻ったものの疲れてまだ眠っているルフトを連れて、自分達を迎えに来た智史が乗っている大型輸送ヘリCH-53Kキングスタリオンに乗り込む、そしてヘリはリヴァイアサンの方へと飛んでいく。多くの「仲間」を殺すという残酷な定めに抗う形でルフトやムスペルヘイムを救えたこともあってか、智史とかつて彼に救われたムサシとムスペルヘイムの雰囲気は少し明るい。偽善や自己満足なのかもしれないが、それでもいいと彼らは考えていた。
さて、事は済みましたっと。後は群像達主演の「特撮映画」を鑑賞するとしますか、バックアップを構えながら、ね。
そして智史は地中海の方を静かに見つめるーー
地中海、同アドリア海
「敵軍の迎撃、確認されません。」
「こちらもです、レーダーに敵影を確認できません。」
「光学、熱反応、音波反応をはじめとした各種探索機器に反応は確認されていません。」
「時折確認できたとしても敵の死体ばっかり…。リヴァイアサンのヤツが敵を一掃してくれたことは戦略的に有難いこととは分かっていますが個人的には植物掃除以外は何も活躍できなくて不満ばかりです…。」
「まあそうだな、私も悔しい。だがヤツのお陰で作戦がスムーズに進んでいるのも確かだ、これでしくじったら末代まで残る恥が出来上がるだろうな。総員気を引き締めろ、千早艦長達とヒエイ達の様子は?」
「全員が船を降り、有人操作掘削弾頭「裂天」をセットしたロケットブースター発射台に移動したとのこと。船の操艦バックアップを現在取っています。」
「そうか…。千早艦長…、後は頼みましたよ。」
そう会話する大戦艦アイオワと大型巡洋艦グアム。彼らは植物による妨害網を排除しつつここまで来たのだ、植物の全掃除など智史にしてみれば容易いのだがそれまでやられると彼らの舞台がなくなることを危惧した智史はあえて掃除しないことで彼らに慰め程度とはいえ、舞台を残したのだ。
「大戦艦アイオワ殿より報告、「天を裂く鉾は今放たれん」とのこと!」
「群像さん…、ヒエイ…、気を付けて…。」
ヒュウガ達スキズブラズニルや他の仲間と共に米軍を載せた船団を引き連れてヨーロッパに向かっていたヤマトはこの電文を読んで作戦の成功を祈る。
今まさに、智史が楽しみにしている「特撮映画」を具現化した作戦がいよいよ開幕しようとしていたーー
おまけ
今作の兵器紹介
有人操作削岩弾頭「裂天」
解説
智史や他の情報機関から提供されたデータを基にしてヒュウガが作り上げた兵器。
名前は「天さえ切り裂いてしまう」という揶揄から命名された。
有人操作といっても今回の場合は単に人間だけで操作突入しようにも植物に妨害されてコアから狙いを外されやすいとのことからメンタルモデルを複数、弾頭誘導、護衛並びに植物の妨害排除として乗り込ませる必要性があった。
遠隔操作でやろうにも万難を排して確実にやるには智史ぐらいの演算能力が無ければ困難という結論が出るほどの難しさだったことが主な理由だった。
また、弾頭後部には脱出艇が装備されており、目的地点に到達した後に脱出艇を切り離して起爆するという算段である。
なお、起爆スイッチが押されてから起爆するまでの時間は全員生存することを前提とした上で妨害されるリスクを極力減らす為に180秒ーー3分となっている。
因みに起爆装置はアナログ式でEMPはピクリとも通用しない。
(クラインフィールドによる弾頭護衛が被撃墜のリスクを抑えられるというコンセプトが入っている、因みにこのようなコンセプトの元ネタはTV版原作12話のサブレッションSSMの中にいたイオナが襲い来るコンゴウのミサイルをクラインフィールドで防御したというシーンから来ている。)