海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー 作:satos389a
フィンブルヴィンテルとの決戦をもってアルペジオ編は終わるなと思います。
とはいってもいきなり決戦だとつまらないと思ったのでその前に食事シーンを挟むことで雰囲気を盛り上げてみようかなと思いました。
それではじっくりとお楽しみください。
「そうか、余が植え付けた「災厄」があやつの手を借りた小虫共によって刈り取られたか…。」
「申し訳ございません、奴から放たれた航空機によって我が方の軍勢は悉く駆逐され、おまけに貴方様の「人形」の洗脳が奴によって2つも解かれてしまいました…。」
「まあよい…。あやつは並の小虫とは大違いだ、この結果は当然の結果といえよう…。何か言いたいことはあるか?」
「はっ、奴をどうやって仕留めればいいのか聞きたいことがありまして…。」
「ふっ、容易いことよ。潰されたら潰された以上の駒を揃えて押し潰せばいいだけのこと。策を弄して不和を招こうにもその前に奴に妨害されるか始末されるかで面倒よ。」
「なるほど、ですが小虫共も同じようなことをして奴に木っ端微塵にされていますが…。」
「それは『質』の問題よ。いくら『数』を揃えても『質』が劣っていれば負けることもあり得る。『質』と『数』のバランスが取れてこそ戦力は戦力たりうるのだ。」
そう答えるフィンブルヴィンテル。彼はリヴァイアサンに自身が滅ぼされる定めが迫りつつあるということを一切顔にも口にも出さずに堂々と答えた。
「そこまで言われるのならこの後貴方様がやられることは問うまでもありますまい。」
「そうだ、余は奴と同じく並の小虫とは違うのだ。今からそのことを見せつけてくれよう。さあ打ち震えるがいい小虫共、そして余の血肉となる定めを受け入れろ…‼︎」
フィンブルヴィンテルはそう答える、そしてこれまでにない禍々しい気配が次々と現れ始めるーー
ーー同時刻、ビスケー湾内
ーーザァァァァァァァ
ーーザァァァ
湾内に向かって突き進んでいく船団があった、彼らは様々な光る「模様」を輝かせ普通の船とは異なる異彩な雰囲気を醸し出しながら航行する。そして彼らは陸地に横を晒すようにして散開する。
「撃ち方始め!」
ーードォン!
ーードドオン!
ーーパシュゥゥゥゥン!
ーーシャァァァァァ!
ーードガァァァン!
ーーズグァァァァァァン!
その言葉とともに彼らは一斉に攻撃を放っていく、瞬く間に夜空は多種多様な「光」で埋め尽くされ、地上に運びっていた植物達は薙ぎ払われ、そこに「光」の業火が生じていく。
「超重力砲、撃てぇっ!」
ーーパシィン!
ーーズゴォォォォン!
そして一部の船が船の形を変えてまで強烈な攻撃を放つ、跡形もないぐらいに薙ぎ払うのかのように。それによって地上からあらゆるものが消え去った、そして今度は別の船の群れが陸にのし上げるのかのように突き進んでいくーー
ーー同時刻、ビスケー湾浜辺
ーーガンッ!
ーーガンッ!
ーーウィィィィィィ!
「進め、進めぇ!奴らに遅れをとるなよ!」
「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」
揚陸艇のハッチが開き、そこから米軍の兵士がゾロゾロと飛び出してくる。それと同時に空からも米軍が次々と降ってくる。
彼らは遂にヨーロッパに上陸した、彼らは日本や霧から技術供与を受けた兵器で身を固めていた、本来なら国産でやりたかったところだがそれだと今日までに十分な規模を揃えられないことから断念された。
「こちらブラボー、敵の生き残りを発見!」
「了解した、そちらに支援に向かう。」
「敵航空部隊の反応認められず、やはり奴の仕業か?」
「そのようだな、だが警戒は怠るなよ。」
進撃はリヴァイアサン=智史が事前に「手入れ」をしていたこともあり極めて順調に進んでいった、生き残った化け物達が時折抵抗してくる、それによって何人かが手傷を負う。
「くそっ、チャーリーがやられた!」
「舐めやがって…。これ迄のツケを味わいやがれ!」
ーーシャァァァァァ!
ーードガァァァン!
しかしそれは元々圧倒的に開いていた戦力差を埋めるには至らない、しかもそれは生存本能による抵抗であって戦略を念頭に置いた組織的抵抗ではなかった。そして更に言うとそれは彼らアメリカ軍兵士達の東海岸でのトラウマから来る復讐という感情を更に強め、攻撃を更に激化させ、容赦ないものにさせるだけにしかならなかった。
「ギュィ、キュィィィィィ!」
「逃すかよ、クソッタレ共!」
「1匹残らず地獄に叩き落としてやらあ!」
ーーガガガガガガガガ!
ーーパパパパパ!
ーードォォォォン!
「ギュィィィィィ‼︎」
彼らアメリカ軍が侵攻していった各地で命乞いの悲鳴と断末魔、怒声と罵りが容赦なく木霊し、その跡には化け物たちの死体の山がゴロゴロと転がっていた。彼らには化け物達に対する同情や慈愛など微塵も無い。ましてや前述のように憎しみ一色なのだ。なのでアメリカ軍の彼らに対する処置は殺戮と蹂躙一色と言ってよく、四肢や内臓、眼球や脳味噌まで無理やりもぎ取られた上で陵辱されたような光景もあった。
「人間」には様々な「感情」がある。喜び、怒り、悲しみ、恐怖、嫌み、軽蔑…。正も負もある状態なのだ。だがそれらが生まれる理由は周りの環境によるものである。今回の徹底的な殺戮劇の理由は化け物達が彼らに対する「負」を、ぶつけたことに起因するものだった、もしこのようなファクターが無ければあんな極端な行動など無かったのかもしれない。
ーーそしてビスケー湾上
「彼らを見ていると、何か、可哀想ね…。私達を破壊しようとしている敵だというのに。」
「そうですね、この様を見ていると何か心に訴えてくるようなものがあります…。」
「でも私達霧や人類、そして地球の敵となる以上、殺さない訳にはいかない…。ごめんなさい…。」
偵察機から送られてきた画像を見てそう会話するヤマトとネブラスカ。いくら醜くとも単にフィンブルヴィンテルの命に従っただけで殺されなくてはならないという点は彼女達にしてみれば哀れに見える部分もあった、しかし同情あれど情けを掛ける訳にはいかない、仮にそうすればややこしい事態を生み出すということが分かりきっているが故に。
「各海域への艦隊配備は順調に進んでいます。事前にリヴァイアサン、いや智史さんが敵艦隊を徹底的に駆除したことが大きいですね。」
「ヨーロッパ各沿岸での植物の駆除も順調です、あの作戦が成功した後に植物の生命反応が大幅に低下しています。」
「そう、でも念には念を入れておかなくきゃ。油断して足元を掬われたら智史さんやみんなに会わせる顔が無いわ。」
「そこまで言われなくとも…。でも引き続き警戒する事に越した事はありませんね…。」
ヤマトが発言した通り、この事態は1つでもしくじれば終結が先延びになりかねないものだった、智史から「借り」を借りた上で負けた、しくじったとなったら恥の上塗りとなる事態となる事は目に見えていた、故に彼女達は真剣に事に取り組んでいるのだ。
「リヴァイアサンから入電、「“これより貴艦隊と合流する”」と。」
「分かったわ、恐らく敵が片付いたから戻ってきたのね。」
その報告通りにリヴァイアサンの船影がゆっくりと視界に映り始める、そしてそれは距離が縮まるに連れて徐々に具体性を増していく、艦首にムサシと智史がいるという様子まで分かるほどに。
「ムサシ‼︎」
「お姉ちゃん!」
お互いの顔を見た事で安堵し、喜ぶヤマト姉妹。
「済まないなヤマト、散々に振り回して。」
「いいのよ、むしろあなたがそうしてくれなくちゃこんなにことが上手く運ぶのはなかったわ。ところでムサシ、フィンブルヴィンテルによって「生み出された」あの「霧」達は智史さんによって救われたのね?」
ヤマトが見つめる方向の先にはルフトとムスペルヘイムがいた、彼女達は少し申し訳なさそうな顔をしてその様子を見守っていた。
「そう、彼女達はリヴァイアサンによって洗脳を解かれたわ。まあそこに至るまでの際の処遇は本人に任せっきりだったから彼に抗議する理由も無いけど。あ、来たのねリヴァイアサン。」
「お話中突然割り込んですまんな。ルフト、ムスペルヘイム、彼女がムサシの姉、超戦艦ヤマトだ。」
智史は引き連れてきた2人にヤマトを紹介する、何の紹介もなしに会話を進めるのは会話の雰囲気が悪くなるからだ。
「あれが、ムサシ様の姉君…。」
「そうだ、ヤマト、2人をフィンブルヴィンテルの「操り人形」だからといって冷遇しないでくれ、2人にフィンブルヴィンテルのような意志は無い、ただ主であったムサシの命に忠実に従っていたということだけだ。」
「宜しく…、お願いします…。」
不安と緊張気味にヤマトに話しかけるルフト、ムサシとの間には信頼関係は構築できているのでまだマシな方だが、ヤマトにはそれが無い。故にどういう反応をされるのかを恐れてしまっているのだ。
「ルフトとムスペルヘイムね?2人とも、宜しく。」
「は…はい…‼︎」
しかしその懸念は杞憂に終わる、ヤマトは2人を受け入れるのかのように挨拶する。
「ムサシ、あなたが2人を生み出さなければあの2人との出会いは無かった、あまり自分を責めなくていいわ。」
「ありがとう、お姉ちゃん…。」
勿論これは2人に明確な悪意が無いということが分かりきった上で成り立っている会話だが。
そんな明るい雰囲気がその場を支配する、しかし次の瞬間にそれはーー
「…な、何なの⁉︎この気配は⁉︎」
「…ヤツよ、ヤツの気配よ…‼︎それも今までに無い程禍々しい…‼︎」
ーーフィンブルヴィンテルめ、己が全力をもって私を屠るために動くか、兵を無数生み出して。まあスケールも把握済みだし全て想定内だがな…。だが念は入れておこう、更に強くなって己が望むシナリオ通りにきちんと終わるように。
突如として襲ってくる禍々しい気配に驚き戦慄する智史を除く皆。
「お姉ちゃん、フィンブルヴィンテルから通信が!」
ーーブゥンッ‼︎
「“余の話が聞こえているかな、虫けら共?”」
「フ…フィンブルヴィンテル‼︎奴め、一体何をするつもりなんだ!」
「“あの野獣の手を借りたとはいえ、貴様等は虫けらにしては良く粘ったな、大したものよ。だがそれもここまで。
この光景を見るがいい。”」
その言葉と共にモニターが切り替わる、そこには何と無数の巨大な艦影があった、しかもどこかで見覚えがあるようなものばかりの。
「なぁっ…‼︎私の…、コピーだと…⁉︎」
「お姉様や私の偽物を作るなんて…!」
ーー想定内に終わっているとはいえやはり見ると胸糞悪いな、これまで私が倒したモノの二番煎じを大量に作った挙句に私のコピーまで作るとは。気色悪い…。
画像に映された光景は智史のことをよく知らない者達にしてみれば唖然とするものだった、なんと智史がこれまで倒した超兵器達と自分の姿を模した艨艟の群れが海を埋め尽くしていたのだ。智史のことをよく知らない2人ーールフトとムスペルヘイムを唖然とさせるには必要十分すぎた。
「“どうだ虫けら共よ。貴様等がいくら余の手駒を倒しても、余はそれ以上の数を揃え、更なる絶望をもって応えてやる用意ができているぞ?これを見てとくと絶望し、震え上がるがいい。今すぐやってもいいがそれでは恐怖を刻みつけて殺すには不十分よ、今から7日後に貴様等をこの手駒共で蹴散らし、食い尽くしてやろう。”」
ーー私との間にこれ程の差が開いていようと平然とこれ程のことを言うとは、大したものだ。その魂胆は賞賛に値する。だが思い知れ、貴様の行動は全て私の想定内だと…。
そして通信は切れる、それを見て震えるルフトとムスペルヘイム。しかし智史とヤマト姉妹は少し違っていた。
「超兵器は上位クラスが20、中堅クラスが300、尖兵クラスが600、それ以外の艦は合計で3000か…。まさに最後に相応しい超兵器と艨艟共のバーゲンセールだな…。そしてこの奴等を始末できるのは私しかおるまい。なら私が全部始末してやろう。」
「冗談かリヴァイアサン⁉︎あんな艨艟共を貴艦1隻でだと⁉︎冗談にしても程がある!」
「そうよ、ムスペルが言う通りあんなのにあなたが勝てる筈も無いわ‼︎」
「落ち着いて二人共。彼はあなた達やフィンブルヴィンテルとは格段に格が違うわ。」
「しかしムサシ様‼︎これでは勝ち目が…‼︎」
「確かに数や雰囲気ではそう言う風には見えるわ、だからと言って彼を甘く見てない?彼の恐ろしさを私は身をもって味わされた。」
「………。」
「智史さん、あの化け物達を始末できるのは貴方しかいない。でも忘れないで、貴方にその「戦果」を全部くれる気など私達には無い。無理しないぐらいで1つや2つ、頂こうかしら?」
「ふっ、ここまで成長するとはなヤマト。今のお前は「総旗艦」の名に恥さないな。行こうか、決戦の地へ。」
「ふふふ、大事なことを忘れてない?」
「“私達のことも忘れるなぁ〜‼︎”」
「“智史、あなたがそう言うなら私もついて行く。あなたが私達に「自分の足で地に立て」と突きつけられたからには貴方の独り占めは許さない。もししたら…、全力でぶっ飛ばす。”」
「アシガラ、イオナ…。」
「“智史さん、あなたに全部独り占めにされたら私が戦った価値が無くなってしまいます、だからあなたが断っても断固として付いて行かせていただきます!”」
「“あなた1人で『ヒーローショー』なんてズルイですよ、私も出演します!”」
「サクラ…、タカオ…。」
「“智史さん、折角のフィニッシュだというのに締めがあなた1人なのは何か寂しくない?役者が揃ってこそ大団円だというのに。”」
「“これが最後の戦い…、ならばその締め、私にも手伝わせてください!”」
「モンタナ、オウミまで…。皆揃って締めに加わりたいのか…。いいだろう、だが駆除は…。言うまでもないか」
そう言う智史、実際にそう言ってまでフィンブルヴィンテルとの決戦に参加する者達はあまり多くはなく、それを考慮するに仮に彼らが抜けても化け物共の完全駆除には差し支えは無い規模で収まっていた、万が一支障が出たとしても自分が最終的に始末すればいいだけのことである、それだけ智史は慎重、いや臆病なぐらいに自己強化を異常なペースで推し進めた上で『フィンブルヴィンテル一味を完膚なきまでに撃滅する』という結末となるようにシナリオを描いてきたのだ。彼の『課題』といえば群像達といった役者達をフルに使いながら、フィンブルヴィンテルをどう倒そうかということぐらいだった。
ーーふふふ、サクラがいた世界では何重にも合体した超重力砲を撃ったという実例があったのか…。ならばフィンブルヴィンテルへの『トドメの一撃』としてこいつを使ってやろう、イオナや群像もそこに加えて…。まあ妄想に終わるかもしれんが…。
そう考える智史、そこにーー
「智史くんニヤニヤして嬉しそうね。ショーをどうやって締めくくろうか考えてたの?」
「ああ、色々試行錯誤していたよ、様々な『欲求』が入り混じって居たからな…。やはり『感情』は時に合理性を奪うか…。最初から『感情』を捨てていればあっさりと終わったのだが、私自身がそれを捨てられなかった、いや捨てようとしなかっただけなのかもな…。」
「そんなことないわ。智史くんが最初から『心』を捨てていたらこんなに楽しいことは無かったじゃない。それに自分が『バカ』だということに気がつき、隠そうとせずに素直に認められる人は殆ど居ないわ。寧ろカッコいいって思っちゃうぐらい。」
「ふっ…。自分の願望と本音が一致しない『バカ』であることを認めながら自分の願望を実現させるとしようか、そのぐらい柔軟でないとダメだ…。」
「智史さん、琴乃さん。お話中ごめんなさい。私から提案が有るんだけど…。」
「ヤマトか、ふっ、最終決戦前にとびきり豪華で陽気で情熱的な『パーティー』を催して士気を盛大に上げようという訳か、ふふふ、悪くないな…。だが念は入れておこう、一応タイムリミットまで時間があるとはいえ、ヤツがそれを守ってくれるという『確証』は無いからな。」
「ありがとう、ならマミヤ、智史さん達と一緒に早速取り掛かりましょう。」
「了解いたしました、ヤマト様。」
「マミヤ、お姉ちゃん、私も手伝っていい?」
「ムサシ⁉︎…ふふふ、しょうがない子ね。」
「蒔絵達やヒュウガ達も入りたそうだな、折角だから彼らもそこに入れてあげようか。あと明日決戦ならばその間の時間も無駄には出来んな、ヤマト、着いた艦やそこにいる艦に漸次『明日』に向けた戦闘準備をさせるよう、補給部隊に伝えておいてくれ。」
そう会話する智史達、この後智史はパーティーのための料理を作りながら前からやっていたリアルタイムレベルでの警戒を一層強化して鉾を研いで待ち構えていたものの、彼らが自分達と合流する時になっても動きは無かった。しかしそうだからと言ってフィンブルヴィンテル一味が動かないという絶対的確証は無い、運命を『完全』にコントロール下に置かない限りは。まあフィンブルヴィンテルに『動く』意思が現時点では無いということは事細かに把握してはいたし、そもそももう既に多次元世界の時系列を歪めるわぶち壊すわのとんでもない域に到達しながら更に貪欲に力を求めていた状態なので本人がその気になれば余裕で彼らの『運命』も全部コントロール出来るのだが…。
それはさておきとして。
「ズイカク、こっちはどうだ?」
「順調だ、しかしこれだとお前の艦の中の魚が殆ど無くなるぞ?まあいいか、魚は生ものだからな。」
「ヤマト、料理の腕は少しは上がったようだな、やはり日々の隙間にマミヤと共に料理の練習をしていたのが効いたな。」
「そうね、ハワイやここに来る間に料理をちょくちょくとマミヤから教えてもらったから、上手くなっちゃった。」
「私も自分の手作り料理という形でこの戦いに関われるのは嬉しいです、琴乃様、サラダの調子は?」
「順調よ、やはり自分で作る料理によってみんなの士気が上がるということを考えるとやる気になっちゃう。」
「そうか、琴乃。ところでムサシ、ハンバーグを焼くときは中火で焼け、弱火だとハンバーグの中まで火が通らないし、強火だと表面が焦げてしまうからな。」
「分かったわ、料理というものは作る機会があまり無かったから少し大変ね…。でもフィンブルヴィンテルに一矢を報いる為の気合を入れることを考えるとこんなことでくじける気なんか無いわ。」
「ハルハル、キリシマ。レアチーズケーキはね、材料を適切に調合した上で焼かないと出来ないよ〜?」
「わかっている、要するにレシピ通りに焼けばいいだけのことなのだな。」
「私は直接は関われないか、めんどくさい…。まあいか仕方ないことなのだが。」
智史達はそう言いながら料理を完成させていく、パーティーはバイキング形式で行われることとなり、リヴァイアサンの航空機格納庫内で行われることとなった。その事については主催者であるヤマトが事前に伝えてくれたようだ。
そして招かれた『客』達が次々と彼らの元へと到着する。
「ヤマトがフィンブルヴィンテルとの戦いの為の気合を入れる為のパーティーに出てくる料理、どういう味なんだろう〜‼︎」
「アシガラ、はしゃがないの。そのパーティーは総旗艦様だけではなくて智史さんや元旗艦代理さんもそこに加わって作られたんだから。」
「硫黄島でのあの人の料理美味しかったな〜、頭多少変なところあるけど根や料理はまともだから。どんなのが出てくるんだろう?」
「あいつやマミヤはともかくヤマトやムサシも料理を作るだと。どういう味なんだろうなぁ、イオナ?」
「分からない、でもフィンブルヴィンテルとの決戦に向けての気合が入るならどんな味でもいい。」
「そうか、イオナ。俺はこのパーティーの後にリヴァイアサンにある浴場に入ってゆっくり英気を養いたい。」
「艦長がそう言われるのは、ちょっと意外ですね。まあこういう日が来るのは横須賀を抜けて以来のことですからね、自分もそうしたい気持ちです。」
「イオナ、群像、もうすぐパーティー会場だよ。美味そうな匂いがプンプンと漂ってくるのがわかるでしょ?」
「どんな料理が並んでいるんだろう、楽しいなぁ〜!」
「そういう事ばかり考えずに作った奴らの気持ちや苦労も考えろ!」
彼らはそう会話しながらパーティー会場に入って来る、そしてそこに並んでいる料理に視線を奪われる。
「うわぁ〜、美味しそう〜‼︎智史、ヤマト、マミヤ、早速かぶりついていい?」
「構いませんアシガラ様。私はあなたのこの顔を見る為に智史様やヤマト様方と共にこの料理を作らせて頂きました。」
「他の者も遠慮するな、どんどん食って飲め。遠慮してると気合は入らんし英気も養われぬぞ?」
「彼がそう言っているならアシガラに続いて私達もそうしましょう。」
「はい、モンタナ様。」
智史にそう促された彼らは次々とバイキングの料理を皿に取って、そして美味しそうに食べていく。その光景は色々な感情が入り乱れて混沌となってはいたもののそこには決して負の感情など無い、むしろその時を楽しんでいるという感情一色だった。
「これが鳥の丸焼きかぁ〜‼︎旨えなぁ〜!」
「豚肉のワイン煮か…。どれどれ……、…⁉︎こ…これは…!美味い、美味すぎる…‼︎」
「サラダの具材…、とてもしゃりしゃりして美味しい…。」
「やはり『一流』クラスが揃って作った料理はまるで訳が違うわ、なんでも生成できるチート野郎といい、後方支援の一役を担うマミヤといい…。」
「どれどれ…。う、うまい…!」
「これぞ決戦への気合を入れるに相応しい料理よ!」
「提督、これ美味しいですね。」
「サクラ、明日の為に今を楽しもう、今はそれが大事だ。」
「美味しい、これうめぇ〜!」
「よこせ、よこせぇ〜‼︎」
「ヒュウガちゃん、これは私と智史ちゃんの特製よ。さあ、食べて♪」
「うえっ…‼︎」
「マミヤ、智史さん、ありがとう。」
「いえモンタナ様、これがこの決戦の役に立つならこのぐらいの苦労など苦にもなりません。」
「ならマミヤ、貴艦も私と一緒に食べろ。無理しないでくれ。」
モンタナにこの程度の料理など苦にもならないと告げるマミヤ、その彼女にもパーティーに交わる権利はあると告げ強引に食べされるノースカロライナ。
「ムスペル、ルフト、一緒に食べましょう。」
「しかしムサシ様…。」
「いいのよ、彼もお姉ちゃんも構わないって顔で語ってるわ。」
「は、はい…。」
当初はその雰囲気に交れなかったルフトやムスペルもムサシに促されるままに料理を口にする、そしてあまりの美味しさに箸がどんどん進んでしまい、それに伴ってその雰囲気に次第に溶け込んでいくのだった。
そして『宴』は高ぶりと共に進む、料理が皿から大分消えた頃、智史と群像、杏平、像の男組はリヴァイアサンの男浴場に一足早く浸かっていた。
「ふ〜、やっぱり風呂に浸かるのって最高だわ〜。」
「色々な風呂がありますね、風呂の質比べもしたいぐらいに。」
「そして雰囲気が随分とロマンチックだな、これはどういう狙いで?」
「ふっ、空間に『高級感』と『気品』を出すことでこの空間が私やお前たちの『日常』と異なる価値観を持つことを示したかったからだ。」
「俺にしてみればちょっとやり過ぎだな…。ここに居ていいのかという思いが心で疼いているんだが…。」
「まあそう言うな、遠慮なくこのひと時を楽しめ。ところで群像、色々と振り回してすまなかったな。」
「ふっ、ここに至るまでの俺と君の間での出来事か…。君に振り回され遊ばれたとはいえ、君は俺達を『駒』として見ることなくそれどころか俺達を『独り立ち』させる手伝いをしてくれた。あと少しでこの世界を揺るがしている『大戦』は終わる、そこまで俺達を導き、かつ霧と人類が和解し合う未来の切欠を作ってくれたのは君だ、ありがとう。」
「ふっ、まさかこういうセリフが出るとはな…。まあいい、だが『戦』はこの『大戦』が終わったあとも終わらんぞ、私がお前に『手出し』を止めさせられたせいで人間の『本質』が変わらないことが確定したからな。」
「分かっている、俺達の『戦い』はまだ終わらない、たとえ散り散りとなろうとも…。」
「そうですね、彼が人間を『人間』で無くすという行為を止めた以上、我々は戦わねばならない定めにありますからね…。」
彼らは様々な湯船に浸かりながら此れ迄の出来事、そしてこれからの出来事について考えながらそう話をする。
「コーヒー牛乳だ、風呂上がりに一杯飲むか?」
「ああ、俺にもくれ。」
「どうぞ。」
杏平が智史の手元にあったコーヒー牛乳の瓶を手に取り、蓋を開けて飲む。
「か〜っ‼︎やはり風呂上がりの後のコーヒー牛乳はうめぇな〜!」
「そうか。だがのぼせるなよ、毛穴が今開きっぱなしな状態だからな。」
「今のままだと風邪ひくって言いてえんだろ?ハイハイ、分かってるよ。」
そして彼らは更衣室内でタオルで体を拭いたあと、少しそこで耳かき、ドライヤーをやりながら休むことにした。
「琴乃、イオナ、これから風呂に入るのか?」
「そう、群像は今どうしてる?」
「今男用更衣室で休憩中だ、さっきまで風呂に入ってたからな」
「なるほど、ところで風呂ってどういう感じ?私は霧のメンタルモデル、風呂に入ったことが一度もない…。」
「風呂というものは命を洗濯する場所だ、霧も人間も隔てなくな。」
「智史くん、言ってることは間違ってないけどイオナちゃんは感触について尋ねているのよ?」
「人によって感じ方は違う、それは霧にも言える。イオナ、入るなら入れ。戸惑ってばかりでは何も始まらぬ。」
「分かった、ありがとう。」
そしてイオナと琴乃は女浴場に入っていく、あとに続いてヒエイ達、蒔絵達も女浴場に入っていった。やがて賑やかな声や雰囲気が智史の心に伝わってくる。
「ほらほらこっち向いてぇ〜!」
「きゃぁっ!」
「く、くすぐったい…。」
「あったけぇ…‼︎これが風呂か…!」
「色々なものが材料として使われてるけど、なぜ?」
「401、これは智史や私達が作った風呂だ。」
「智史が…?なるほど、だからこういう雰囲気なんだ。」
「智史、イオナはどうしてる?」
「琴乃やいおり、静やヒエイ達と一緒に風呂に入っている最中だ。だがこいつらが入っているのは男子禁制の『空間』だぞ?スケベなことを行動に移すなよ?」
「わ…、分かっている…。」
智史にそうからかわれて思わず照れる群像。そして風呂から皆上がるとそれぞれの寝床についていく、明日の為に。
智史はそんな様子を見ながらフィンブルヴィンテル一味の奇襲に備える。
「智史ちゃん、こんな時間に一人監視の任務を遂行してるなんてなんか大変ね。」
「イセ、ヒュウガか。こんな時間に来るとは何様だ?」
「別に。あんたはここに至るまでに私たちを好き勝手に振り回してはくれたけど、もしあんたが居なかったらここまで来る前にあいつの手先にイオナ姉様共々食われて終わりだったわ。」
「私を褒める、か…。ふっ、悪くないな。それでこの戦いが終わった後、お前達はどうするのだ?」
「さあね…。でもイオナ姉様や総旗艦、群像達と一緒にあんたがやる予定だった『世界造り』に積極的に関わっていくことは確かだわ…。」
「私もヒュウガちゃんについてくわ、智史ちゃんはどうするの?」
「私は外に出る、更なる強者を一方的な迄に打ち倒して陵辱する為に。」
「なるほどね…。でもそれ以外の理由で外に出るのもアリなんじゃない?ほら、旅行しながらとか。」
「ふっ、お前にそう言われるとはな…。まあそれも悪くないだろう、戦って殺してばっかりではつまらんかもしれないからな。他の世界を見ることで教養も深められていいかもしれん。そしてこの世界に残って幸せな日を過ごすという手もあるがそれだと鉾を研ぎ盾を磨く機会が減るし次の強者が出てくる時を待たなければならなくなってしまう。だからだ。」
海風が吹いて冷え込む夜の中で明日に『決戦』に向けた準備は3人が会話している間の中でも粛々と、しかし急ピッチで進んでいく、ある艦は弾薬を供給し、またある艦は欠損ヶ所の修復、新装備の装着に追われていた。そして夜は開けて『決戦』の時が来た、『決戦』に向けて智史を除いた皆の緊張が高まっていく。
「皆さん、遂に悪魔、フィンブルヴィンテルとの決戦の時が来ました。緊張しているでしょう、しくじったら滅ぼされておしまいの戦いーー背水の戦いなのですから。こんな話があります、かつて日露戦争でバルチック艦隊が日本本土近くに攻め寄せてきた時、その時日本を守っていた連合艦隊の司令長官、東郷平八郎は「皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ」という意味合いのZ旗を掲げて全艦隊に檄を飛ばし、そして彼の艦隊は死力を尽くしてバルチック艦隊を打ち破りました。
この海戦の勝因はともかくとして、この言葉の背景には「この戦いで自分達が負けたら日本は終わる」という危機感があります。実際に私達が負けたら私達も終わってしまいます、一人でも欠ければ私達の敗北の定めは免れないかもしれません。
でも私達は未来に進まねばなりません、そして私達が未来に進むためにはこの使命を乗り越え、勝利するしかありません。そして私達の双肩には霧と人類の運命、いえこの惑星の運命が掛かっています!」
ヤマトがそう呟く、するとヤマトの船体の後部マストにZ旗が掲揚された。
「東郷長官があの日そうされて滅びの定めに打ち勝ったように私たちもこの滅びの定めを打ち砕きましょう。
『未来の地球の興廃はこの一戦にあり、各員一層奮励努力せよ!』」
ーーふっ、立派な演説だ。実際の主役は私になるシナリオだが、このショーの締めにお前たちを加えるという関係上、こういう演説も悪くない。むしろ心に響いてくる感じだ。
そう心の中でこっそりと呟く智史、そしてヤマトのその檄が艦隊の全員に響いたのか、あちこちから気合を込めた叫び声が轟く、そして艦隊はフィンブルヴィンテルの元に向けて進撃を開始する。
遂に智史も含めたヤマト達とフィンブルヴィンテル一味との最終決戦が始まろうとしていたーー
おまけ
決戦艦隊の陣容について
旗艦 超戦艦ヤマト
構成
究極超兵器 超巨大戦艦リヴァイアサン
超兵器 超巨大航空戦艦オウミ
イージスミサイル超戦艦 信長
超戦艦 ヤマト
大戦艦 モンタナ ヒエイ ノースカロライナ ネブラスカ イリノイ ヴァーモント ニューハンプシャー ルイジアナ
航空母艦 10隻
重巡洋艦 タカオ ミョウコウ ナチ アシガラ ハグロ その他8隻
軽巡洋艦 18隻
潜水艦 イ401 以下14隻