海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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とうとう40話目。
なのだが、矛盾を認識してしまうこの頃。
自分のやってきたことが矛盾まみれだということを再認識しました。
なのでタイトルの如く主人公の過去の矛盾の回想も交えつつも真木に引導を渡しました。
カザリはお仲間に加える予定です。
少し展開が強引ですみません。
それではじっくりとお楽しみください。


第40話 矛盾まみれ

「ふむ、カザリ君達が帰ってこない…。そしてその際のあの強大な気配…。ということは我々は逆に嵌められたということですね…。」

真夜中、緑に覆われたとある一軒家で真木清人はそう独白する、詳細は分かりきってはいなかったものの、少なくとも作戦は失敗したこと、カザリ達が帰ってこないということは理解できた。

 

「彼らのコアメダルは彼ら自身と共に全て消滅していた…。おまけに作戦の成り行きを観察する為に送ったカンドロイドが全て潰されていた…。困りましたね、メダルの器とすべき存在が現時点で私と敵対しているアンク君以外は悉く消え失せた以上、これでは世界を美しい内に終わらせるという私の目的がこれでは達せられない…。」

そう嘆く真木、智史に前と同じく深層心理や思考までも見透かされていることを知らずに。そして彼を奈落へと叩き落とし、無様な最期を遂げさせてやろうと智史が目論んでいることも知らずにーー

 

 

ーーほぼ同時刻、クスクシエ

 

 

『真木清人。

元鴻上生体研究所所長、35歳。今はグリード達を束ねる司令塔というべき存在。

思想は『人が醜く変わる前に世界を終わらせる』

そのような思想を持つに至った背景は幼少時に両親を失い、母親代わりとして姉・仁美によって育てられた経歴にある。

彼女は母の代役として彼に愛情を注いだものの、時は経ち結婚を間近に控えるようになってから彼女は豹変した。

弟を疎ましく思った彼女から彼は疎外されるようになってしまった。

彼女の変化に傷ついた彼は、 彼女の眠る部屋に火を放ち殺害してしまう。

彼女を殺害して以降、彼女の教えである「人の人生は終わる事で完成する」を教訓に彼、真木清人は「醜く変わる前に世界は終わらせなければならない」と考えるようになった。』

まあそうだな、「物事は終わりを迎えて初めて完成する」という考えは『進化の終わりは死』という哲学とどこかで通じる。だが私は敢えて『未完成』のままでいよう。何故なら私自身が体も、心も、自分がしたことの中に報いを受けるべき重い業が含まれているという事を知りながら死ぬ事を望もうとしないからだ。

それにしても、だ、『終末は幸せではない』という言葉が気になるな、確かにその言葉は私のような『生』に執着し希望がまだあるものには通じるかもしれん、だが先に希望が無く、ただ絶望のみを味わされるものにはその言葉は通じるのだろうか?

多分、通じないだろうな、そこに希望が無いと仮定した場合、死ぬ事が絶望から逃れる唯一の手段となり果てる、つまり幸せとなる唯一の手段となるのだから。

それに見方次第では終末を容赦無く与えることは喜びとも受け取れるかもしれぬ、例えば憎むべき他人を己の手で殺した時に味わう一瞬の清々しい思いとかで。勿論それによって他人を不幸にしているところもあるが、な。

さて、真木にどういう最期を遂げさせてやろうか考えよう、真木は姉・仁美以外との女性との接触が皆無だった為に女性耐性が皆無だったな、それを裏付けるかのようにメズールに触られるだけでアヘ顔になった記録がある。ならば断末魔を迎える時にグラビアアイドルに無数抱かれるという幻想を見せ、絶頂を迎えさせてぶち殺すという策略で行こう。

 

そう心の中で独白する智史、彼は真木清人という人間並びに「物事は終わりを迎えて完成する」という考えについて考察していた。

 

「さあ、カザリ達を更なる絶望に叩き落とすとしようか、ふっ、タカオを甚振り、恐怖と絶望のどん底に叩き落とした思い出が何処かで蘇るな、最終的な目的は彼らを改心させることなのだが。彼らの希望という希望を潰し、唯一の希望である存在さえ無力と思い知らしめることでやってみるとしよう。失敗すれば後味悪けれど、葬ればいいだけのことだ。まあそうならないように出来る限りの努力はしよう。」

そして智史は青いクラインフィールドで箱を3つ形成すると、そこにカザリ達を放り込んでいくーー

 

 

「うっ、ここは、何処なんだ…。少なくともまだ死んではいないみたいだけど…。はっ⁉︎」

「いい様だな、カザリ。他の2人と揃って仲良く見せ物に出来るな。」

「くっ、僕は、僕らグリードは見せ物じゃないよ…。」

「あれぇ、生きてる…。ここ、何処だぁ〜?」

「ガ、ガメル⁉︎それにメズールまで…‼︎」

「メズ〜ルぅ、メズ〜ルぅ、大丈夫ぅ?」

「が、ガメル…。よかった…。この光景、この扱い…。ボウヤの仕業ね…?」

「ああ。」

智史に倒されて此処へと連れ込まれたカザリ達が次々と目を覚ます、智史は拷問に等しい行為が出来ると思い、嬉しそうに微笑む。

 

「くくく、さて、始めるとしよう、お遊びを。」

「な、何をするつもりなの…⁉︎」

「ふふふ、ここを抜け出せるか自我が崩壊し自滅するまでコアメダルやセルメダルをぶち込むというお遊びだよ。要するに器に力が収まりきらなくなる前に脱出できるかというものだ。」

そして智史はコアメダルやセルメダルを次々と生成して投げ込んでいく、まるで木偶を扱うかのように。

 

「まずは完全体になる分+コアメダル7枚。そしてセルメダル500枚。」

「がぁぁぁぁぁぁぁ!メズール、力が、力が…‼︎」

「力が、力が滾っている…‼︎」

コアメダルやセルメダルを投げ込まれたメズールとガメルは力が滾ってくるのを感じる、そしてクラインフィールドでできた箱を破ろうと必死に抗う。しかし触れるたびにセルメダルが飛び散り、エネルギーが吸収され彼のものと化してしまい、そしてクラインフィールドは強度を増していく。そのような2人に対してカザリは相手が違い過ぎるということを自覚してしまったのか、何故か抗おうとしない。

 

「如何した、怯えたか?」

「いや…。この後の展開が何となく読めてきてね…。僕らを暴走寸前に追いやり更に追い詰め、『もう私からは逃れられない』ということを僕の体の芯まで焼き付けたいんでしょ…?」

「ほう、あまりの実力差に恐怖し、絶望し、いや恐怖と絶望のあまりに諦めたか、私に抗うという行為を。」

「まあそうだね…。あんなに実力差があり過ぎたら、もう抗う気力が一つも湧かない、所詮、全部無意味なんだって…。」

「ふっ、これでお前は楽しく甚振って悲鳴と命乞いを聞きながら殺す価値が激減したーー言い換えれば我が目的を達したな。さて、後の2人だ。あの2人を更なる絶望のどん底へ誘ってやろう。コアメダル10枚、セルメダル1500枚追加。」

そして智史は懸命にここから脱出しようと足掻く2人に更にコアメダルとセルメダルを生成して投げつける。これで彼らが保持するコアメダルは26枚になってしまった。基本グリードはコアメダルやセルメダルが多ければ多い程、その力は増大する、しかし智史が指摘している通り、力を扱う器に限界がある以上、その器の容量を超えてしまったら確実に力を制御しきれなくなる=現代の言葉で言う『暴走』のような状態に陥ってしまう。現に2人は力を御しきれなくなりつつあり、苦しまみれな様子が目立ちつつあった。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ…、メズ〜ルぅ、苦しいよお…。」

「力が、力が、抑えきれない…‼︎これ以上コアメダルやセルメダルを投げ入れられたら…‼︎」

「暴走の一歩手前だな。予想通り面白いことになってきている。」

智史は事前のシミュレーションによる予想が当たったと喜ぶ、そこにアンクが現れる。

 

「智史、これは何なんだ?」

「陵辱プレイだよ、更なる絶望を与える為の。」

「酷えな、コアメダルも相当量が入っており、その分威力を増した攻撃を受けても破ける気配さえ一つもない檻とは。このままじゃ檻が破ける前にこいつらの自我が崩壊しちまうぜ。」

「まあな。だが入れ過ぎて自我が崩壊するのもちと己好みでは無い結末なのでな。いい頃合いになってきたし、今度は知世子さんの所へと追い立てるとしよう、屠殺場へ強制的に行かされる家畜のように。」

「(知世子?ああ、あいつの肝の太さを見抜いていたのか。)」

「(だから私は敢えて汚れ役を背負うんだよ、洗脳もしくは破壊という気不味い手段を使うことを避けながらこいつらを満たされぬ欲望から解き放つ為にも。)」

「(なるほど、お前の目的はこいつらを陵辱し蹂躙することではなく、こいつらに満足というものを与え、人間共と共生できるようにするということなのか。)」

「(そういうこと。まあ偽善に等しい行動だけどね。(元の世界で見たことだけど、こいつらの最期なんか悲しかったから。))」

そして智史はクラインフィールドの箱を消滅させる、3人は解放されるが直ぐに智史が凄まじい狂気と殺意を込めた眼差しでメズールとガメルを追い立てるように迫ってくる。

 

「こ、来ないで…‼︎」

「メズール、メズ〜ルぅ…、こいつ、怖いよ…。た、助けて…‼︎」

恐怖のあまり2人は貪欲に欲望を求めることなど頭から消し飛んでしまう。懸命に2人は抗うも智史はケロリとしていた。物理的限界があるということも考慮しても全ての攻撃が吸収され更に己を高める力の一部になっていく様は彼らにしてみればもはや悪夢だった、何せ力の差がどんどん開いていくという絶望的現実がここにあるのだから。

そして2人は必死に逃げる、そして狙い通りに知世子の所へと追い込まれる。

 

「ん〜、騒がしいわね〜、って、何⁉︎」

「た、助けてぇ、助けてぇ…‼︎」

「こ、こいつが、俺やメズールを、殺そうと…‼︎」

知世子に必死に助けを求めるガメルとメズール、人質を取ることなど頭の隅から消し飛んでいた。人質を取っても次の瞬間には殺されているという末路が目が合った時に映ってしまったからだ。

 

「智史君、剣を構えてるけど、これはどういうこと?」

「彼らはグリードです、殺さなければならないと判断しここへ来ました。」

そして智史は2人を強制的に怪人態から人間態へと強制的に変異させる。

 

「彼らは人間の欲望を糧とする極悪非道な種族です、おまけに彼らは人間に成り済ませます。だからこそ余計に極悪非道なことがやり易いのです。」

そして智史は2人に止めを刺さんと言わんばかりに迫ってくる。

 

「た…、た…、た…、助けてぇぇぇ!」

「いっ、嫌ぁぁぁぁ!こ、来ないで…‼︎」

2人は恐怖のあまり苦しみながら涙を流して知世子に縋り付く、そこにもうグリードとしての狡猾さはもう無い、ただ一方的に惨殺されることを恐れ泣き喚くのみの姿がそこにあった。

 

「2人とも、下がってて。」

知世子が2人の気持ちを察したのかーーそれこそが智史の思惑通りの展開であったのだがーー2人を後ろに下げる、そして圧倒的な殺意と恐怖にめげることなく智史に説教を開始する。

 

「智史君ね、私達人間に敵対している怪人と同じ種族だからっていう理由で彼らを斬り殺そうというの?」

「ええ。それに彼らには前科があります、人を傷つけ苦しめたという罪が。」

「そういうところもあるかもしれないわね、でも人間にも『罪』はあるわよ、おまけに彼らは私達人間の為にならぬことを考えておらず、ただ単に助けを求めている。それをただ単に『人間の為にならない種族』という一方的偏見に満ちた理由で斬り殺そうなんて、どうにかしてるわ‼︎もし彼らを斬り殺すなら、その前に私を斬り殺してからにして‼︎」

「…ふっ、わかりました、ですがその選択、後悔しないように。(これで良い、実に期待通りの展開だった。)」

そして智史は諦めたかのように背を後にして去っていく、同時に凄まじい殺意も消えていった。

 

「あ…、ありがとう…。」

「あいつを、引かせてくれたんだ…、ありがとう…。」

「いいのよ、二人共。ところで、名前は?」

「私は、メズール…。」

「俺は、ガメル…。」

「そう。またあの人が来たら、私が守ってあげるからね。」

「ありがとう、あ、あれ…?苦しみが引いてる…。コアメダルやセルメダルを抜かれたから…?」

「私も…。あ、あれ…?私はグリード故に愛に満たされないというのに、どうして…?」

「メズ〜ルぅ、どうかしたの?」

「どうしてなんだろう…。私は、私は、あいつから守ってくれたこの人間への愛で今、満たされている…。」

「お、俺も…。こいつから守ってくれた人間になんか暖かさを感じた…。」

 

「敢えて汚れ役を負ったみたいね、智史くん。あの2人を幸せにしたかったから?」

「ま、そうだな。あの2人に愛というものを知らせて満足と幸せというものを得させたかったが為に敢えて2人を恐怖のどん底に叩き落した。」

「そうよね、口ばっかでことが解決するなら2人に愛を得させることなど容易いことだからね。」

「あの〜、僕のこと忘れてない?」

「あ、そうだったな。お前を現時刻をもって解放しよう、殺されるも、生きるも自由だ。」

「所詮逆らってもあっという間に殺されるだろうから、少なくとも君には逆らわないことにしよう、君に逆らうことの無常さを知らせる為にドクターのところへ行くよ。」

「そうか、なら行ってこい。」

カザリの言葉が本気だということを智史は見抜く、しかし己の本意と己がしたことの本質の矛盾をカザリの様子から見出していた。

 

 

人は、いや私はなぜ矛盾するのだろうか?

特に深く考えることなく、己が欲望のままに動き回ったのはこの矛盾とやらが次々と生まれる原因になってしまったかもしれない。現にマミヤのこと、タカオや一部の霧、蒔絵、群像達、そして今のカザリの様子を推察するにそうだということが伺える。私はカザリに『優しさ』を覚えて欲しかったのに、それに基づいてやった行為はそれと相反していたからだ。

だがそれは人の心にも言える、様々な感情、欲望が混沌となって矛盾を生み出しているからだ。そして私は人が持つものと同じがままに『人』を捨てようとはしなかった、他人を理解しようともしなかった。

ではかつて上陰達にやったように矛盾をなくす為に『人』を捨てて適切な判断をするだけの存在になってしまえば矛盾は消えるのか?矛盾は大いに減りはするだろう、だが無くなるとは言い切れない。

そもそも『全ては力で出来ている』という理論から推察するに『力』のぶつかり合いに規則性はあるのか?いや、多分無いだろう。無数の力のぶつかり合いが生まれた事象が混沌そのものだ。

『人』を捨てようとしない私の中にも『混沌』は渦巻いているだろう、心も『力』によって定まった形もなく変わり続けるだから私は、いや『人』は矛盾の塊なのだ。それに矛盾を生み出している『欲望』が無ければ私はここにはいない。だから矛盾とは縁が切れぬ。

しかし矛盾という事象自体が悪いとは言い切れないな、寧ろ矛盾というものを受け入れてしまえば私の心は軽くなるかもしれない、私が自分が望んでいることと自分がやっていることの本質の違いに悩むのは矛盾している自分自身を受け入れようとしないせいなのかもしれない。

だったら自分が矛盾している存在であることを隠さずに素直に明かしてしまえば私が矛盾に苦しむことは無くなる。勿論自分の為にならぬ悪しき矛盾は消していくべきだが。

さて、カザリは真木のところに向かったな、多分あのままだと意識の入ったコアメダルを半壊させられ残りのコアメダルは破壊されているだろう。ならばその前にそれを阻止するとしようか、自分が矛盾しているということを明かしながら。

 

「智史くん、何を考えてたの?」

「ああ、過去の事を思い出しながら矛盾について考えていた。何も考えず長期的に見れば単なる足手まといになるであろう欲望のままに動くのはまずいと考えた。」

「そうね、自分の欲望に素直なことはいい事だけど、かといって無計画に動くのもちょっとまずいわね。」

「そうだな、悪しき矛盾を生み出す無計画な行動はなるべく避けねばならぬ。だが琴乃、『人』の心は『力』で出来ている、そして『力』のぶつかり合いには規則性は無い、だから心は形もなく変わり続けて矛盾が生まれる。つまり欲望ある限り『人』は矛盾から逃れられぬかもしれぬ。私は欲望のままに動くからな、だから今後も矛盾を生み出し続けるかもしれん。」

「そうね、自分の『心』の矛盾と向き合いながら今後の事を考えましょう。」

「さて、カザリは真木のところに行った、恐らく殺されるだろう。行こうか。」

そして智史達は真木の所へと向かっていく、後を追っているという事がバレないように気配を消してーー

 

 

ーー再び、緑に覆われた一軒家

 

 

「カザリ君、帰ってきたようですね。あの存在に何をされたのですか?」

「色々とされたよ…。まるでこちらが非力すぎるということを改めて認識させられるようなものばかりだった。オーズならまだしも相手の格がヤバすぎるよ。まるでこちらの様子を見通していたかのように平然と対処してきただけでなく完全体にさせてもらった上での一方的な蹂躙…。とにかく、相手が違いすぎるよ。僕らやドクターが敵う代物じゃない。」

「では、コアメダルやセルメダルを大量に入れた上で戦えばいいではないですか。」

「無理。さっきも言っている通り、相手がヤバすぎる。それにコアメダルやセルメダルを大量に入れて対抗しようとしても相手に勝つ前にこちらが自滅ーー暴走してしまうよ。僕は暴走が一番嫌いでね、勝てない相手に必死に対抗しようとして自滅するぐらいなら素直に降伏したほうがマシさ。ドクターも降伏した方がいいかもよ?」

「なら、もう君に用はありませんね、さようなら。」

「ド、ドクター⁉︎何言ってるの?」

「私が望む『世界の終末』の為の暴走を君がしようとしないからです。」

そう言い終えると真木はグリード・ギルに変化しカザリの首根っこを掴み持ち上げる。そしてカザリの体に手を突っ込み、コアメダルを抜き取ろうとしたーー

 

 

ーーガガガガガガガガァン!

 

「ぐふぅっ‼︎」

「⁉︎…やっぱり気配を消して現れた、か…。」

銃声が轟きギルは大量のセルメダルを撒き散らして大きく後退する、見ると智史がG36(現在のドイツ軍に採用されている5.56mmアサルトライフル、勿論本家より能力を底上げして使用)を構えてそこに立っていた。

 

「でも何でだ?何で僕を助けようと?」

「さあな。私は矛盾まみれな存在だ。今お前を助けようと思っても次の瞬間には殺そうと気分がコロリと変わってしまうかもしれない。その時は悪く思うな。」

「はいはい。僕の命などお好きなように。」

 

「あなたがカザリ君達を襲ったあの存在なのですね?」

「ああそうだが。私は霧の究極超兵器 超巨大戦艦リヴァイアサンのメンタルモデル、海神智史だ。」

「自己紹介ありがとう。では聞きます、何故私の夢である『世界の終末』を妨害しようとするのですか?」

「さあな。ただお前のやることには好感が全く持てなかったからこうして妨害していることは確かだ。もう相手を殺すのには大した理由はいるまい?」

 

ーーガガガガガガガガァン!

再び、智史のG36が火を噴く、そして大量のセルメダルがまたしても飛び散る、そして弾体がコアメダルを直撃して亀裂を入れる。

 

「くうっ、私のコアメダルに亀裂を入れるとは…。中々やりますね…。」

「(今のは本気じゃない。本気を出してたらドクターは跡形もなく吹っ飛んでた。恐らく、ガメルやメズールを甚振ったあの時と同じようにジワジワと追い詰めるつもりだろう。)」

「でも、私が直接侵攻してきたあなたに対して何の策も講じていないと思いましたか?」

ギルはそう言う、するとアンキロサウルスヤミーが琴乃とズイカクを人質に取るようにして現れる。

 

「動くんじゃねえ、この野郎共!」

「これ以上私を攻撃しようとすれば彼にこの2人を殺させます。如何にあなたでも私の言いなりになるしかないでしょうね。」

「笑止。それで上手くいったつもりか?」

智史はそう言い放つ、するとアンキロサウルスヤミーの体が突如として動かなくなる、そして次の瞬間智史の目の前に強制転移させられた。

 

「な、何っ⁉︎」

「感謝するぞ、これで貴様をますます殺る気になれた。」

「あ〜ぁ…。こりゃ終わったね…。」

カザリはもはや諦めムードでこの状況を語るしかなかった、そして智史が憤怒を込めた銃弾をアンキロサウルスヤミーとギルに雨霰と撃ち込む、大量の火花とセルメダルが飛び散る、アンキロサウルスヤミーはこれに耐えきれず爆発を起こして四散し、ギルは激しく吹っ飛んだ。辛うじてギルは立ち上がるものの、先ほどの攻撃で既にヒビが入っていたコアメダル一枚が破砕されただけでなく、残る全てのコアメダルに深刻なダメージを受けた為にセルメダルが絶え間なく零れ落ち、足元がおぼつかない様子だった。だがそれだけではない、立ち上がったギルの様子から狼狽えのようなものが映っていた。

 

「あ、あああ…、あああああ…。」

「?キヨちゃんか?ああ、お前と同化していたからな、大ダメージを与えて強制分離させた上で、頭を銃弾で吹っ飛ばしたことを手始めにして跡形もなく蜂の巣にして木っ端微塵にしてやったよ。」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎あぁぁぁ‼︎あぁぁぁぁ‼︎」

「あいつなんでころっと様子が変わったんだ?頭を智史に思いっきりぶん殴られたからか?」

「いや、彼が言っていたあのお人形を跡形も無く破砕されたからだよ。あのお人形はドクターにしてみれば大切なものなんだ。」

「成る程…。ところで、お前、魚好きそうだな。」

「僕が『猫』の素質を持っているのを見抜いていたのかい?」

「ああ。猫=魚好き、という一種の先入観が成り立ってしまったからな。」

そう会話するカザリとズイカク、キヨちゃんを吹き飛ばされて喚く真木の様子を傍観しながら。

 

「さて、ついでに貴様が宝として飾っている世界の終末の壁画、この家に眠る思い出とともに跡形も無く焼き尽くしてやろう。」

「やめて、やめてぇぇぇ‼︎それ大事なものだから!」

智史はGM-01改ギガント(仮面ライダーG4専用装備)を瞬時に生成するとそのままぶっ放す、放たれたミサイルは世界の終末の壁画に着弾し、巨大な爆発を次々と引き起こした、壁画は凄まじい衝撃波と熱線に襲われ、一瞬にして焼き尽くされる、一軒家が跡形もなく吹き飛び、焼け落ちる。そしてその余波でギルは更なるダメージを負い、ギルは人間態=真木の姿に逆戻りしてしまった。

 

「あああ…、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ…‼︎」

「どうだ、思い出が焼け落ちた気分は?…とはいっても、これでは満足な回答は得られないか…。まあよい。アヘ面を晒して逝くという他人にしてみれば無様な最期を遂げさせてやるとしよう。」

そして智史はキングラウザーを構え、一軒家の廃墟の中でセルメダルを撒き散らしながら錯乱し泣き喚く真木に対してキングラウザーを振り下ろす、その斬撃により真木の体から一際と多いセルメダルが噴き出す、真木の体は断末魔の秒読みを奏で始める。そして言葉通りの結末が真木に襲いかかる。

 

「…はっ‼︎」

真木は幻想を見ていた、この世界のグラビアアイドルを筆頭とする無数の美女に囲まれるという幻想を。彼女らは真木の体に触れてくる、女性経験があまり無い真木は彼女らに触られただけで呆気なくアヘ面になってしまう。

そして彼女らは真木の服を脱がし始め、非常にヤバイ行為をし始める、それらにより真木はますます気持ちよくなり、アヘた態度もますます増大していく。そしてアヘと快楽が絶頂に達した時、真木清人=グリード・ギルのコアメダルが全て砕け散り、それと同時に真木の肉体は大量のセルメダルを撒き散らして跡形も無く消滅した。

 

「グリード化を推し進めたが故に訪れたグリードの宿命的な末路を避けられなかったか…。実に皮肉なものだ、人間の部分を残していれば仮にコアメダルを全部叩き壊されても生き残れたかもしれないのに。まあ人間・グリード両方とも耐えきれぬ一撃を喰らったのではもうそれも示しようがないか。」

「終わっちゃったみたいだね、ドクター。素直に降伏すればよかったのに。」

「それは無いだろうな、あいつの目的は言ってのとおり、『世界の終末』なのだから。」

智史とカザリはそう会話する、綺麗に焼け落ちた一軒家の廃墟の中で。

 

「智史くん、またしてもやり過ぎだよ〜。」

「家焼き尽くすとか、随分と派手なことを…。これって人が寄ってくるんじゃ?」

あ、そうだったな。ならさっさとトンズラだ。

「カザリ、お前はどうするんだ?…それは聞くことでは無かったか。まあいい、付いてきたいならば付いてくるがいい、好きにしろ」

智史達は一軒家の焼け跡からさっさと去っていく、そしてクスクシエに行く。

 

「知世子さん達にお別れを告げてからここを去ることにしよう。お別れ無しなんか無礼すぎる。」

 

智史はクスクシエのドアを開けて入る、見るとメズールとガメルが2人揃って接客をやっていた。

 

「(原作の末路よりはマシだが、これで良かったのだろうか?いや、2人がいいのならそれでいいということにしておこう。)」

「あら、智史君じゃない、昨日はダメでしょ、あんな不機嫌なこと言って。」

「いえ、あれはお芝居です。」

「え?」

「私はグリードであるあの2人を『助けたかった』からこそ、あのような暴挙の如き芝居を行いました。というのもグリードという生物は欲望を糧とする存在です、しかしそれ故に人間のような『愛』を持とうとしませんでした。口だけで『愛』を知らしめようとしてもあまり心に響くことは無いので思い切った暴挙に出たというわけです。偽善と捉えて結構です、全ては私がした独善的行為なのですから。本来ならこのまま隠しておこうかと思いましたがこれでお別れなので何も話さずなのはまずいなと考えました。これも独善と捉えて結構です。では、これにて。」

「い、いったいどういうことなの…⁉︎」

智史の口から飛び出した奇天烈な発言に知世子の頭は完全に混乱してしまう、しかし彼を見てまたしても酷い目に遭うのかと怯えるガメルとメズールに対し彼は更に話をする、

 

「2人とも許さなくていい、怯えてもいい、私はお前達に『幸せ』という偏見的価値を押し付けた。それだけだ。」

「え、えっ…?」

「知世子さん、比奈さん、映司君、アンク、ありがとうございました。」

そして智史は去っていく。その発言の意味をアンクが補足するように言う、

 

「要するにこいつは自分なりにこいつらを幸せにしようとしたかったんじゃねえのか?全く、さっぱりしすぎてるぜ。」

 

と。

 

「アンク…、お、お兄ちゃん⁉︎」

「比奈、智史君は、そこに居るのか?」

「えっ⁉︎お兄ちゃん海神さんのことを、なんで…‼︎」

「あいつは俺が寄生していた時は記憶を共有していたからな。」

慎吾が目覚めたようだ、そのことに驚く比奈、その訳をアンクは素直に話す。

 

「あと映司のヤツにも顔合わせておけ。(やれやれ、智史の奴が現れてすこし踏んだり蹴ったりで振り回されたが、こういう光景も悪くはねえ。楽しませてもらうとしよう。)」

 

 

「そうか、行ってしまったか…。」

「はい、真木博士撃破後にさっさと行ってしまうとは、予想もしていませんでした。」

鴻上ファウンデーション会長室で鴻上はエリカとそう会話をする、智史達がこの世界から出て行くことは想定していたがまさかこんなに早くだとは思いもしなかったようだ。

 

「しかし、グリードの2人が彼によって変わるとは…。新たな誕生を遂げたに相応しい!ハッピーバースデー!」

 

 

太平洋上、リヴァイアサン右舷ーー

 

「カネ、あんま使わずに終わったな。」

「ああ、使ったとしても半分は行かなかった。」

「海、綺麗ね。智史くん、ズイカク、もうすぐこの世界と別れるし、釣りでも始める?」

「賛成!智史、やるか?」

「ああ。」

そして3人は釣り用具を一斉に揃え釣りを始める、目的を失っていたカザリの目にその光景が飛び込んだ、カザリは彼らに今やっている行為はなんなのかということを尋ねる。

 

「ねえ、今やっているのって、何?」

「釣り。魚を手にいれるために行う行為だよ。」

「ふぅ〜ん、成る程。目的ないから、これ参加していい?」

「構わん。」

智史はカザリの為に釣り道具を生成する、そしてズイカクと彼と共に教えて貰いながら、カザリは釣りを始めた。

 

「一匹釣れた。カツオだ。」

「あ、イワシ釣れた。」

「こちらはズイカクのよりも大きいのを釣れたわ。」

「何か、釣れたけど、これは、何?」

「こりゃまあまあ普通の大きさのカツオだな。折角だからある程度釣り上げたら食してみるとしよう。」

「え?僕グリードだから味なんか分からないよ、って、あ、完全体に『してもらった』から人間でいう五感のようなものが復活したんだった。」

「ならば結構。たっぷりと味わせてやる。」

「えぇ〜…。(汗)」

このあと彼らは釣りを繰り返し、何匹も何匹も釣り上げた。

 

「ほら、カツオの竜田揚げだ。食ってみろ。」

「仕方ない…。んじゃあ食べてみるか!」

カザリは勇気を振り絞って竜田揚げを口に頬張る、そして

 

「な、なんだこの感覚は…。口の中で込み上げてくる、とろけてくるような感覚は…。」

「それは『美味い』という味だ。」

「なるほど、これが、『美味い』か…。」

カザリは味覚というものを初めて認識した、以降カザリは釣りに徐々に目覚めていくようになる。

 

「さて、次の世界へ行くとしよう。すこし気まぐれで遅れたが、ウルトラマンの世界だ。多人数で悪を甚振るなど、見方を変えれば周りとは異なる集団に馴染めぬものを集団でリンチしているも同然だ。正義と悪の定義など、それぞれ異なるというのに。まあ私も自分の価値観を押し付けているところはあるけどな。

表面上はチートラマンとの戦闘での更なる自己研鑽とこれまで積み上げてきた鍛錬の再認識、そして彼等を倒す事で得られる己が最強の存在であるという定義を得る事が目的だが、実質的にはそれだけではなく、奴等を蹂躙し、世界共々討ち滅ぼすことも目的であると言ってもいいだろう。」

そしてリヴァイアサンは次元横断システムを解放すると次の世界ーーウルトラマンの世界へと飛んでいく。

彼の侵攻を遅らせる要素は彼の気まぐれぐらいだった、そして彼らは『力』は自分自身の運命さえも歪め破壊してしまう一面さえ持ち合わせているということを思い知ることとなるーー

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