海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作は鋼鉄の咆哮2 ウォーシップコマンダーと鋼鉄の咆哮 ウォーシップコマンダーの世界を巡ります。
色々と詰め込んだせいで文章が少し雑です。
しかしアレスとグルーガーの扱いが雑どころか色々と弄られ拷問されで滅茶苦茶です。
ウィルシア海軍も結構酷い目に遭ってます。
テュランヌスという軍事組織がなぜ生まれたのかについて自分なりに考えながらその背景を描いてみました。
それでは今作もお楽しみください。


第53話 鋼鉄の世界巡り その3

エリアg-01に該当する海域ーー

 

「こんな狭いところに船を突っ込むなんて、智史、何考えてんだ?まさか、ここにもナマモノが居ると?」

「それにしては、船の気配があまりないわね、空母が何隻かバラバラになって航行してるけど…。」

「ふっ、居るぞ…。この後目に耳に入ってくるようにして現れる…。」

リヴァイアサンはトンボの形をした湾が広がっている場所にワープホールを開いて出た、長さが2㎞以上もある巨大な船体を動かすにはかなり窮屈な大きさだった、またそこは特に重要な拠点や大きな港湾施設など無く、それに伴い艦艇や輸送船はほとんど見かけない。強いて言えば空母が一見襲う価値など無いよう見えた、しかしリヴァイアサンごと海神智史はそこに現れた、彼がここに訪れるだけの理由があったのは当然の事である、程なく、それを示すかのようにして人間が聞いてみれば気を悪くするようなお馴染みのあの音が漂い始めた。

 

「ん?なんだか気味の悪い音が辺りに響いてるぞ?」

「あれは…、ぷっ、サシバエだな。あとトンボまで飛んでいる。懐かしいなぁ…、と一瞬浸ってしまうところだが、トンボやハエがこんなにデカい訳がない。もしあったとしたらこの世界は余程デカくなる必要性に恵まれていると言っていい、しかし情報から推測するにこの必要性は大してなさそうだ。しかもこれらはナマモノ兵器の一種ということが判明している、現にこいつらは巣穴からではなく飛行場や空母の滑走路から続々と飛び立っているからな、従ってこれは我々を攻撃する予定と捉えていい。」

「空を飛ぶナマモノも居たのか…。んで、どうする?」

「くくく、襲ってくるならば一匹残らず叩き落としてやる。」

「おい、お前ナマモノ収集するとか言っておきながら今度は全部撃墜かよ…。まさか、また新しいものでも披露する気か?」

ズイカクは智史の気まぐれさに溜息を吐くが智史にしてみればそれは楽しいことを探しているだけなのである、そしてそれに応えるようにしてリヴァイアサンの甲板上のバイナルが急激に輝きを増していく、そして次の瞬間である、バイナルからプラズマジェットのような無数の細く青白い光筋が一瞼の間の衝撃波と甲高い音と同時に一斉に放たれた、それは群がっていたトンボやサシバエ達を一瞬で粒子レベルで分解し、次々と真っ二つにしていく。

 

「ふん、この光が脅威である事を知り避けるようになったか、だが単純に光を空に向かって伸ばしているだけではないぞ、一匹残らず薙ぎ払ってくれよう。」

これを見たサシバエ、トンボ達はビームから逃れるようにして散開して変則的な回避行動を取る、それは極めて高性能なミサイルでさえも命中を許さない程だった、しかし、膨大な演算能力を活かした目標周辺の環境並びに目標のステータスも念頭に入れて徹底的に演算した極めて緻密な座標計算に基づくゴジラも顔負けのハード、ソフト共に非の打ち所さえ見つける事さえ出来ないほどの見事な荷電粒子ビームの軌道制御による精密狙撃の前ではそんな回避行動など無意味だった、何とその座標計算のデータに基づきビームが綺麗に並列した状態で一斉に向きを変えたり、レンズで光を散らすかのように複数に拡散したりして襲いかかってきたのだ、それも一瞼の余裕さえない程の間に。しかもそれは甲板のバイナルだけでなく舷側のバイナルからも向きに応じて放たれ始めた。

それは洗練に洗練を極めた、圧倒的なまでに力ある者にしか許されぬ一種の見事な芸術だったとしか言いようが無い。

サシバエやトンボ達は、彼等自身複数を悉く刺し貫いても全く威力が落ちず、しかもそれを易々と両断する恐るべき弾速と貫通性、破壊力を併せ持った変化自在に、しかし正確無比に無数襲い来る殺戮光線の前に、面白いように次々と両断されて叩き落とされていく、その際に彼等の哀れな最期、そしてリヴァイアサンごと智史の圧倒的な存在感を彩るかのように燃え上がった彼等自身の骸が青い海へとボトボトと落ちていった。

 

「これは、シン・ゴジラ(ゴジラ2016)が行なった背鰭の間から数十本の熱線を拡散放射した技をベースにして新たに会得した能力だ。あの技はインパクトがあったからな、だから真似してみた。たまたまサシバエといったナマモノが飛んで来たから今回のやつを披露したくなった、それだけだ。」

「艦の表面から一瞬芸術のように見えてしまう見事に統率された動きのレーザー・ファランクス…。やりたい放題とはまさにこの事だな…。」

「ここまでやれるんなら、備え付けてある対空火器の意味無いと思うけど…。」

あ、こりゃ少々まずいな…。まあいいけど。

智史は時間の壁を次々と突っ切った情報収集を今も絶え間無く行なっていた、自己進化による情報の収集範囲を広め、一つあたりの情報の深度を深めていきながら。そして彼はシン・ゴジラという映画を見てしまった、元々彼はゴジラ映画には興味のある方だったが、このお陰なのだろうか、シン・ゴジラの存在感、そして何よりもシン・ゴジラの熱線放射シーンに強い感銘を受け、今回の能力を会得するに至ってしまったのだ。

 

「しかしお前は色々と詳しいなあ。私の知らないものもひょっとしたらまだまだ知ってたりする、いや新しく知っているかもしれない。」

「そうかもな。さて、飛行場の格納庫を漁るか。まだ飛んでないトンボやサシバエが何機か残っているからな。」

そしてこの後無数の航空機やヘリの群れが上空や飛行甲板に生成され続々と飛び立っていった、当然のように彼等はトンボやサシバエを捕まえて帰還して来た、トンボやサシバエ達があった場所からは濛々と炎が立ち上り、黒煙が天に噴き上がっていた、何をされたのかは言うまでもない、彼の行動に対し当たり前のように抵抗したことがこれらの原因である事は確かだが。

 

「おっと、ナーウィシアの主力さんはまだ来てない状態だったな。ならば彼等の行く先で盛大に悪さをしまくってやるか、ふふふ…。」

そして智史は何かをひらめいたかのように嬉しそうにニンマリと笑った、彼は次の場所ーーg-02のエリアへとリヴァイアサンを走らせるーー

 

 

程なくして、g-02に該当する海域

 

「おお、おつかいのエリアだ。」

「おつかいって、何を?」

「簡潔に言うと中心の港から周りの港を巡ってカレーの材料を買って回るというミッションがナーウィシア海軍の上層部から与えられたエリアなんだ。おつかいとはこのミッションのことを指す。」

「なるほどねぇ〜。でもカレーの材料わざわざ港巡らなくても他の場所で幾らでも調達できるじゃない。」

「そうだな。ならば、ウィルシアもナーウィシアも関係なく、皆平等にぶっ潰してやるとするか。」

そして艦載機が続々と飛び立ち飛んでいたサシバエといったナマモノ航空機達を「鴨撃ち」感覚であっという間に空から蹴散らすと青空を埋め尽くしていった、彼等から放たれた落し物はみるみるうちに鋼鉄の死の雨を形成していく、次々と黒煙が吹き上がり水柱が立つ。

 

「な、何なんだこいつらは‼︎」

「なんで、なんでこっちの対空火器を沢山食らっても平気な顔で飛んでられるんだよ‼︎」

「メーデー、メーデー、こちらウィルシア東洋第九艦隊、現在未確認の敵の猛攻を受けつつあり、ぎゃっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁ‼︎」

敵は激しく抵抗するものの、護衛の任を務める航空機達が「鴨撃ち」と揶揄されたほどに呆気なく落とされて制空権を奪われてしまった為に迎撃は十分に効果を発揮できなかった。これらの悪条件のオンパレードのような出来事も全てにおいて彼、海神智史が優れ過ぎてしまっているからこそ起きたことである。そしてお返しとばかりに徹底した蹂躙が襲いくる。哀れ、奮戦虚しく彼等は一隻、また一隻と海の藻屑と消えていった。

勿論カレーの材料、あと烏龍茶は港湾施設群を次々と廃墟に変えた際にごそっと略奪したのであった。そしてナマモノもいつもの様に連れ去られた…。

 

「お、お偉いさん方はわざわざカレーを作るためにこんなお使いもどきを下っ端の艦隊に…。これ歩兵でも別にいいんじゃ?」

「そうだろうな。しかし、具材の質が随分といい。恐らくは…、高級レストランで出されるような海軍カレーでも食べようとしていたのだろうな。もしここでしか取れないような食材だったら艦隊を動かしてでも取ろうという理由にも多少納得が行く。そんな彼等には悪いがこの具材は頂いていこう。さあ、料理してみるとするか。」

「そうだな、折角だから海軍カレーでも食べようか。」

「そしてついでに遊覧のエリアも根こそぎ荒らしてしまえ。」

用をさっさと済ませた智史は間断もなく行動を続行する、この後ナーウィシア海軍の上層部が近日スワン型の遊覧船ーー遊覧船を使う時点で既にアホ全開なのだがーーで視察するであろうエリアーーg-03エリアへと突っ走る、ここには無数の砲台並びに潜水艦に駆逐艦と巡洋艦、レーザー兵器を搭載したアヒルが何匹かいたのだが、

 

「潜水艦?砲台?ふん、ナマモノ狩りを邪魔するのならば一匹残らず滅殺してやろう…。」

 

その一言と共にまたまた始まった、圧倒的量質差にモノを言わせた一貫して容赦の無い凄まじい航空攻撃の前に彼等はリヴァイアサンの姿を一度も拝むどころか満足に抵抗も出来ず、あるものは大地に鋼鉄の内臓を曝し、またあるものは無数の鋼鉄の銛を撃ち込まれて四散していった。

そして港湾施設も徹底して狙われ、要塞と艦艇を狩り尽くした鋼鉄の鳥達が順次群がり荷物を落として行く、そして落とされる荷物の量質が当然の如く、尋常ではなかった為に瞬く間に港湾施設は火の海に蹂躙されていった。

 

「超兵器の試験場と軍艦島は1発で焦土にしてくれる、わざわざ手間かけて攻撃する必要も微塵も感じない。」

g-03の遊覧エリアを悉く廃墟に変えても智史の欲望は完全に満たされていない。しかしg-04、g-05ーーそれぞれ敵兵器の試験場と軍艦島のエリアーーは態々航空機を飛ばし、手間暇かけてまで満たせるものなど無かったことから、特殊弾頭ミサイルとレールガンで一気呵成に壮大な規模で吹き飛ばし、焼き尽くす事とした。

ある程度近づいてから彼は敵兵器の試験場には特殊弾頭ミサイルと、軍艦島にはレールガンの一閃を叩き込んだ、天地を揺るがし、海を吹き飛ばし空の色が変わり果ててしまう程の巨大な爆発が巻き起こりそれらを根こそぎ吹き飛ばしていく、それが過ぎ去った後には直径が数十キロはあろうかという巨大なクレーターがぽっかりと口を開いていた。

 

「さあ、男のロマン漂う海へと行くとするか…。」

そして両者を綺麗さっぱりと消し飛ばした張本人はg-06エリアへと進路を取るーー

 

 

ーーほぼ同時刻、g-02エリア海域

 

「む、酷い…。」

「い、一体何がここでおきたんだ…?」

「わ、分かりません…。こんな光景なんか見たことがありませんから…。」

これは、智史の凄まじいまでの猛攻を受けて廃墟と化したg-02の海域ーーコンビニのエリアーーを目撃したナーウィシア主力部隊の様子である、彼等はこの海域の基地からの壊滅直前に放たれた救援要請を聞きつけて急行してきたのだが、そこに到着した彼等の目の前に広がるのは只々凄惨な光景であった、それは彼等を愕然とさせるのには十分な価値を持っていた。

 

「通信の内容から推測するに、敵艦はこれまで見たことのないものと推測されます、そしてそこにいないとなると恐らくは別の海域に移動している可能性があるかと。」

参謀の1人がそう予測を告げる、その予測は的中していたが、細かい面までは言い当てていなかった。そんな彼等をよそに智史は欲望のままに暴れ続けるーー

 

 

ーーg-06エリアに該当する海域

 

「あちこち忙しなく動き回るなあ…。ん?艦影の反応あり、たくさんいるな…。しかもおふざけではなく真っ当にガチなやつらばかりだ…。そして何か通信が入ってきたぞ?」

「おや、この世界のハリマからだ。どれどれ、通信を生で開いてみるか。」

そう言い智史は通信を開いてみる、内容は

 

「“我が名はハリマ

超兵器には珍しく巨砲主義を貫くナイスガイ

漢を語るに言葉は不要

夕日を背に殴り合いができればそれで十分!

さぁ、存分に漢の魂をぶつけ合いましょう‼︎”」

 

以上のものだった。

要約すると『漢のロマンに満たされた環境の中で威勢良く殴り合おうぜ‼︎』というものだった、漢のロマンがどんなものなのか分からないズイカクは少し困惑するのに対し、智史は心に響くものがあったのか、乗り気だった。

 

「漢の…、魂?」

「漢の、ロマンか…。この艦は純粋な大艦巨砲主義の塊ではなく、現代兵器をブラッシュアップして塗り固めている超巨大戦艦と究極超兵器の名を冠した航空戦艦なんだがな…。

まあいい、夕日を背に盛大に殴り合ってやる!」

「とはいっても、大した勝負にもならないと思うわ。」

「そうだよな…。これより強いナマモノの群れを軽くボコって捕まえているし、そもそもこいつのスペックが分かっちゃってるからな…。」

ハリマとの撃ち合いに乗り気な智史の様子を突っ込む琴乃とズイカク、そしてハリマの呼びかけに応えるようにしてリヴァイアサンは態々とハリマの主砲の射程距離に進入しようとする、ハリマは自分の呼びかけに応えてくれたことに感謝するかのように連れていた艦船を後退させて主砲を放ち始めた。

 

「これが…、漢の拳…‼︎凄い命中率だ、熱意が伝わってくる…!ならばその熱意に応えてこちらも漢の魂を打ち込もう‼︎」

 

ーーキュォォン!

 

ーーズッゴォォォン!

 

ハリマの砲弾はリヴァイアサン自体が大きい事も相まって吸い込まれるように命中する、躊躇いなどそれらにはなかった、寧ろ大艦巨砲主義の権化たる自分の魂を全力で叩きつけているように見えた。そんな彼の気持ちに智史は正直に応えてしまう、躊躇いなど忘れて漢の魂を叩きつけ返さんとばかりに気合を入れ、砲塔レールガンを一閃したところ、ハリマは1発で沈んでしまった、その際に巨大な水柱が天に向かって立ち上る。

 

「圧倒的に強すぎるからワンパンで終わってしまった…。嗚呼…。まあよい、ワンパンとはいえ勝利して真の海の漢になったし、勿論ロマンの分かる超兵器を殴り倒して友情が僅かながら芽生えたからな。レースのエリアを突っ切ってもう一つのエリアへ行くぞ、とはいっても見かけたものがまたいるからなあ…。」

かくして呆気なく殴り合いは終わった、智史はこのエリアに見切りをつけるとさっさと次のエリアへと向かって行く、The Justice Ray Part4というヴィルベルヴィント戦で使われた曲を脳内再生して嬉しそうに微笑みながらーー

 

 

「何だと、我が軍の港湾施設を焼き尽くした元凶を発見しただと?」

「はい、憶測ですが、敵艦隊に囲まれて孤立無援だった友軍艦がそう報告してきました。少なくともウィルシア帝国海軍のどの艦のデータにも当てはまらないのは事実です。」

「憶測だと?だったらウィルシア帝国が新たに建造した最新鋭艦の可能性があるぞ?」

「だとしたらウィルシア帝国海軍に被害など一つも出ていないと考えますが。あの未確認艦は我々の港湾施設だけでなくウィルシア帝国海軍の艦船を積極的に次々と沈めています。」

「つまり、ウィルシア帝国海軍に所属する艦でもないと…。」

「はい、多分この艦こそが我々の港湾施設を焼き尽くした元凶と類推していいでしょう。それにしても個人的にはこの出来事にはある意味感謝したいですよ、カレーの材料を集める為に態々と艦を動かせとか…。海軍としての誇りを損なうようなあんな馬鹿馬鹿しい任務を上層部は与えたんです。」

「冗談はそこまでにしておけ、幾ら上層部が馬鹿の群れだから憎いといって、何者かによって我々に犠牲が出たのは確かだ。」

先のg-02エリアの友軍基地の跡に駆けつけて少し経った後にg-03エリアのウィルシア軍施設が壊滅したとの報告が入ったナーウィシア主力艦隊の旗艦のCICの様子である、艦長はこの事件に対し海軍軍人としてのプライドを潰されずに済んだので本音で歓迎していた、それを含めるかのように愚痴を呟く、それを艦隊司令はある程度は内心で共感しながらもかといって私情を優先する事を許さずに彼を諌める、そこに、通信士が駆け寄ってくる。

「報告!友軍遊覧船の前線視察先のウィルシア軍施設、悉く壊滅している模様‼︎何者かによる襲撃を受けたものと推測されます!」

「これもこの艦の仕業でしょうか?」

「ヤツ以外の可能性は?」

「偵察部隊からの映像、モニターに出します!」

その報告を視覚で納得させるようにしてモニターに映像が映される、

 

「これまた、酷いな…。」

「酷い有様ですねえ…。皮肉な事ですけれどこのお陰で我々が馬鹿上層部の遊覧船による前線視察という馬鹿げた任務の手間が大いに省けますよ。あ、そうだ、敵艦の様子は?」

「いえ、一隻も確認されず。恐らくは襲撃の際にまとめて沈められた模様。」

「ますます気楽だ、おおっと、不謹慎でしたかな。」

艦長は例の未確認艦ーーリヴァイアサンごと智史が自分達よりもウィルシア軍を頻繁に狙っているのではと考えていた、だからといって当然自分達に味方する勢力ではないという事は承知していたので楽観視など一つもせず、警戒は相変わらず緩めなかったが。

そして彼の予想通りウィルシア側はもっとえらいことーー情報が錯綜し混乱状態となり、味方基地や艦隊が次々と壊滅させられているという情報が末端の兵士達にも流れて士気に影響が広がっていた。

そして、当のウィルシア軍側はーー

 

「おい、我が軍の兵器試験場が何者かの攻撃で跡形もなく消え去ったらしいぞ。」

「あ、ああ。通信を盗み聞きしたらそうらしいぜ。噂によると軍艦島の港湾施設も消しとばされたんだと。」

「敵の物資を船諸共沈めようと向かった空母艦隊やナマモノ艦隊も音信途絶したらしい、“いきなり無数の航空機に襲われた”とかって…。」

「ナーウィシアのヤツ、何か隠し持っているーーシッ、士官が来るぞ!」

兵達の間に味方の基地が壊滅したという噂は徐々に広まっていた、彼らは当初被害が一つ二つだった頃は嘘だろうと思い半信半疑でいたもののそれが複数入って来るにつれてそれは事実なのではないかという確信に切り替わっていった、それに伴い僅かながらも士気に影響が出始めていた。

 

「おい、貴様ら。あの噂を信じてはいないだろうな。」

「サー、信じていないであります!」

「よろしい、そんな噂を信じたら我が艦の士気、下手をすれば致命傷に繋がる。そうだったら2度と信じるんじゃーー」

そう士官が言おうとした直後、突如として警報が鳴り響く、

 

「敵性未確認艦を捕捉、総員戦闘配置につけ、繰り返す、総員戦闘配置につけ!対艦戦用意!」

「敵が来たのか…。日頃から積んで来た訓練の成果を見せろ!噂などをほざいて仲間の足を引きずるんじゃない!」

敵性未確認艦ーーリヴァイアサンごと海神智史が発見したという警報が鳴り響く中、士官はそう発破を掛けた、しかし、それが彼のこの世での最後の言葉となった。直後に何かがリヴァイアサンから彼らの艦隊に撃ち込まれブラックホールとなって艦隊を飲み込み、一瞬にして彼らも諸共塵に変えたからである。それは数秒も経たぬうちに終わった、まさに瞬殺であった。

 

「これでモグラ叩きのエリアの奴らは始末完了っと。さて、もう直ぐ頭合わせの場所かな。見つかったけれど気にしない気にしない。いつも通りにマイペースに暴れよう。」

智史はその様を見届けるとニッコリと笑いながらアラハバキ2が待ち構えている水路に侵入する。

 

「“ドリルといえばアラハバキ

アラハバキといえばドリル

そうドリルなアイツが帰ってきました

しかも今度は二本立て

ドリルが2倍、ロマンも2倍、まさにドリドリ

思う存分ドリドリを堪能してください‼︎”」

「外見は同じヤツだけど中身が完全に狂ってるなあ…。ハリマのヤツよりも更に度を増している…。」

「頭と頭を合わせて真剣勝負を所望、か。面白い、ガチンコで吹っ飛ばしてやる。来い…!」

アラハバキ2は自慢のツインドリルとソーを回転させて突っ込んでくる、これに応えるかのようにリヴァイアサンはスラスターを全速で吹かしてラムアタックでも仕掛けるようにして突っ込む。

結論言うならば、当然これも激突した瞬間にリヴァイアサンごと智史の圧勝で終わった、構成素材の強度を始めとしたあらゆる差が懸絶していた事もあるがそもそも大きさやスピードが違い過ぎたのだ、強烈なラムアタックを受けたアラハバキ2は自慢のツインドリルをあらぬ方向に捻じ曲げられ一瞬でひしゃげる、そしてその勢いのまま押されに押されて陸地に盛大に叩きつけられ押し潰された次の瞬間、完膚なきまでにスクラップとなってしまった、中身が飛び散り弾薬が次々と誘爆したのか多彩な巨大花火が地上に花開き大地を色染めていく。

 

「あっさりと潰れたか…、だがこれで終わり…、ではないな、不思議時空が漂い始めた。まだ終わったわけではないと言っているかのように。ウィルシア軍超兵器、ヴォルケンクラッツァー2とやらがその元凶だ、ヤツは下らん事ーーこの世界の征服でも考えてるな。」

「ヴォルケンクラッツァー“2”って…。直訳すると『摩天楼“2号”』とかだよな…。何かネーミングが安っぽい…。そして世界征服して…、何の為になるんだ?この世界を自分なりとはいえ平和にするつもりでやってるならまだしも…。」

「恐らくヤツの頭を支配しているのは餓鬼の発想だろう、『世界征服しました、はいおしまい』っていう感じの。」

「こんなヤツまで敵軍にいるのかよ…。アラハバキ2といいハリマといい敵軍もどうかしてるぞ。」

「そうそう。敵も味方も度を逸したギャグ満載の展開…、しかしこれが鋼鉄の咆哮の世界の魅力の一つなのよ。」

アラハバキ2をそんな感じで沈めた直後、不思議時空が漂い始めた、まるでアラハバキ2を沈めたその時を待ちわびていたかのように。

智史はその元凶の考えに半分白けながらも元凶を断つべくg-10のエリアに進撃する。

 

 

ーーエリアg-10に該当する海域

 

「“ふはははは、我はヴォルケンクラッツァー2!我を倒さない限り、この先へは進ません!”」

「“この先”とは、何だ?未来か?」

「う〜ん、何だろう?ヴォルケンクラッツァー2の後ろのことの様に一見聞こえるけど、実際は智史くんが指摘した言葉の通りかな?」

「だといいんだがな。悪の戦闘員とやらはチャッチャと駆逐してやる。しかし、攻撃方法も出尽くした感があるな、面倒くさいから機関砲の弾を適当にばらまいてやる。」

悪の戦闘員、もといヴォルケンクラッツァー2配下の艦隊がヴォルケンクラッツァー2までの進路を阻むようにしてリヴァイアサンの前に立ち塞がるが、適当な攻撃という名の周りの地形を易々と作り変えてしまう程の威力を持った熾烈な夕立の様な機関砲の猛射で一瞬にして全艦が蜂の巣となってしまい、骸を晒してあっさりと沈黙してしまった。

そして燃え盛りながら後は沈むだけの彼らを横目にリヴァイアサンはさっさと進んでいく。

 

「“ふはははは 我はヴォルケンクラッツァー2

我が配下を退け、よくぞここまで辿り着いた

貴様の力の限りをもって挑んでくるがよい

最後に立っていた者が世界を制するのだ!”」

「こんなにあっさりと部下が沈んでもなお、よくこんな感じで言えるとは。その精神は大したものだ。そしてこの世界だけを制する、それだけで満足のつもりか。その頭の中身を是非とも拝見願いたいものだ。」

「“我をコケにしているつもりか…⁉︎”」

「ああ如何にも。そして貴様の世界征服という行為の評価はその行為が終わった後の行動で決まるのだよ。今のままだと後ですごい苦労をするな、もし世界征服を為した後に自己中心とはいえ、全てのものとはいえなくとも、大多数の他者のためにもなる世界の平和を築く為の実力や方策があるのならばその世界征服には賛成しても良いが。」

ウルトラマンもそんな感じだったがな。まあそいつらは私自身の欲望を満たす為にぶち殺したからそう言ってる自分自身が馬鹿臭いのだが。

 

「“黙れぇぇぇ!貴様にそう言われる理由は無い!”」

 

ーーバシュゥゥン!

ーーバシュゥゥン!

 

そうか、未熟な己を認められないか。ならば頭を冷やせ、そして未熟さを噛み締めろ、己はまだ世界征服という行為を成すのに相応しくない器だという事を骨の髄まで味わいながら。

リヴァイアサンごと海神智史が自分の配下をあっさりと蹴散らしたのを見てもヴォルケンクラッツァー2は威厳あるように振る舞う、それを見た智史は世界征服を為した後きちんと事を解決するだけの方策や実力が無ければその世界征服は単なる愚策でしか無いーーつまり、後始末をきちんと出来るだけの方策や実力が無ければその世界征服は単に苦労を増やすだけだと指摘した、しかしその指摘に逆上したヴォルケンクラッツァー2は艦首の波動砲を乱射して来た。

 

「消えろ」

 

ーーキュォォン!

ーーズドォォォォン!

 

「“そ、そんな…、我が人生に一片の……ぐふっ…。”」

だがそれは当然リヴァイアサンには全く効いていない、次々と吸収されてこれまでと同じ展開に終わる、まるでヴォルケンクラッツァー2が世界征服という行為を成すのに相応しくない小さな器であるという事を冷徹に示すのかのように。逆にリヴァイアサンの砲塔レールガンから光弾が放たれる、それはヴォルケンクラッツァー2の波動砲の光を軽々と押し切ってこの世界の最強クラスに近いと言われた装甲をいとも易々と貫き船体を深々と抉る、船体は二つにかち割れ巨大な水柱がその際に天に立ち昇る。

ヴォルケンクラッツァー2は何かを言おうとした、しかしそれが最後まで出る事は無く、真っ二つとなった彼は力尽きたかのように海の底に吸い込まれていった。

 

「これで、終わったか。しかしナーウィシアの奴らが私に勘付いたのかこっちに向かって来ているな。簡単に蹴散らせるが、かといって話し合い、接触にでも発展したら面倒くさい。もうナマモノも十分に掻っ攫った事だし、次の鋼鉄の世界へ行くとしよう。」

「人見知り?ひょっとしてコンゴウが乗り移ったの?」

「さあな。ただコンゴウの口癖も頻繁に使うのは宜しくないのは確かだ。」

ナーウィシア勢はウィルシア軍や自分達にも被害を与えたリヴァイアサンの存在にいよいよと勘付いたのか、リヴァイアサンが居るエリアg-10の海域へと向かって来ていた、しかし智史はわざわざ彼らと会うだけの必要性を見いだせず、寧ろ面倒くささを感じたのか、彼らがこの海域に到達する前にさっさとワープホールを展開して鋼鉄の咆哮 ウォーシップコマンダーーー軍事組織テュランヌスとレジスタンスが世界の覇権を巡り熾烈な戦いを繰り広げている世界へと進撃する。

 

 

「未確認艦が駐在すると思われる海域に到着しました!って、あれ?おかしいですね、反応が無いんですけど…。」

「また取り逃がしたのか、それとも、異世界へと消えたのか…?」

程なくしてナーウィシアの艦隊が到着したものの先に示した通り、既にリヴァイアサンは去って行った後であった。

結局、彼らは未確認艦ごとリヴァイアサンは何者なのかを理解出来ぬまま、ただ未練を抱え込んでポカンとするしかなかった。

さて軍事組織テュランヌスとレジスタンス、二者は己が思い描く世界の為、世界の覇権を握る為、そしてそれを阻む者を退ける為に熾烈な戦いを繰り広げていたのだが、皮肉にもその際に産み落とされた業の数々は世界を我が物顔に暴れ回り食い散らす凶悪たる破壊神を呼び寄せたのだった。

更にタチの悪いことに彼は両者の事は知れど特にどちらかに味方しようとも考えてもいない、興味もない。疲弊させあって制圧しようとも微塵も考えようとしない。

ただ彼の頭の中にあるのはナマモノやおふざけ兵器の強奪の事だけであった、それも単に悪さをするための。

彼が鋼鉄の咆哮 ウォーシップコマンダーの世界に行った後一体何がこの世界で起きたのかをアレスの独白を交えて説明しようーー

 

 

軍事組織テュランヌス総帥、アレスの独白ーー

 

 

こ、これは何の悪ふざけだ?

私の目の前で起きている光景は何なのだ?

私は、私は時代に選ばれた存在だ、

なのに、なのに、なぜこんなことが起きている⁉︎

私はかつて一介の科学者だった、昔の偉人達のように末代まで語り継がれるような功績を残し、人間の新しい未来を切り開けるようなモノを作りたいと願って新しいテクノロジーの開発を進めていた。

しかし政府はその研究成果を恐れ警戒した、そして自分のものにせんと各国の政府も含め我先にと手を出して来た、私の研究は新たなパワーバランス構築の材料としてしか彼らの頭の中には無かったのだろう。

そして大衆は愚かにも自分の国の政府の策略で思うように踊らされ私は社会の敵と化していた、幾ら私が平和のためだと言っても大衆は政府の事を鵜呑みにして耳を貸さない、娘も家族も私の研究成果に関する醜い奪い合いと争いで命を落とした。

 

私は、嘆き悲しんだ。そして、悟った。大衆は結局愚かな存在でしか無いのだと。そして自分が食われる事を恐れ只々強者に付き従おうとするだけのモノでしか無いのだと。そして政府は自分たちの事をメインとしているだけで、皆が手を取り合おうという未来は全く考えようとしていないのだと。

 

ーーならば、造り替えてやろうではないか。この世界を。

 

幸いにして私の研究成果は先の如く応用してしまえば世界を造り替えうる力を持っていた、そしてそれを応用して造り替えうる手段はまだ私の下にある、何故なら各国の政府が私の研究成果を新たなパワーバランスのキーとして欲しているという状況は裏を返せば政府による金銭的な支援、受けられやすいし、コネも築きやすいという事だ。それを生かせば世界を造り替える程の力を持つ軍事組織は創れる、私の望んだ世界を創るための。

何、彼らは踏み台として利用し尽くして用が済んだら使い捨てればいい。皮肉な事だが時代は私をこの世界を造り替えるのに相応しいと選んでくれたのだ。

そして私は各国政府の権力者と間を渡るようにして接触しその研究成果を武器として研究成果を開示するのと引き換えに豊富な資金と莫大な兵力を徐々に得ていった。そしてそれを元手に研究成果をさらに発展させ、この世界の技術水準を遥かに超越した技術の塊、それによって圧倒的な力を持った破壊の化身というべき鋼鉄の化物ーー超兵器の開発に乗り出した。

因みに組織の名前はラテン語で“暴君”を意味する言葉ーーテュランヌスと命名した、圧倒的というべき暴力の権化を複数持っている事や、そもそも各国政府は“賢君”たろうと必死に醜い部分を綺麗事で隠しているのだ、ならばあえて“暴君”となりてその醜い部分を彼ら諸共始末しようという事からこの名が相応しいと考えたからだ。

その組織の設立者はもちろん私だ、目立たぬように準備は着々と進めた。そして準備は整う、復讐は始まった、本性を現すようにして私はテュランヌス初代総帥と高々に名乗った。

まずはかつて自分の研究成果を利用しようと自分の望みを妨害した欲まみれの権力者共を国家機関と共に用済みとばかりに粛清し、自分が新たな国主となって国を治めた、そして愚民どもを監視下、統治下に置き、反乱する者は次々と強制労働、粛清、果てには都市や国ごと跡形も無く焼き尽くすという手法で見せしめとしてより支配を強固にしていった。愚民は所詮君主たる者、この私に怯え従っていればいいだけなのだ、何もしなくてもいい、むしろ厄介だ。

しかし、当然というべきか、それを見た者達、特に政府の下で与えられたモノでしかない自由を謳歌し欲にまみれていた者達、私の理想を理解しようとせぬ者達は反乱を引き起こした。ある者は私の理想をゲリラの如く妨害し、またある者は私の研究成果を盗み応用し私の手元にある超兵器と同じ物ーー組織の名を冠した最強兵器を破壊しようという動きまでーーを製作してまで抵抗した。

今私と彼らは部分的には拮抗している、しかし私は世界を操り動かすモノを創り出した時代に選ばれし者だ。現に私は彼らのコピー品のそれ以上のモノを創り出して全体的に彼らを徐々に押し込んでいる。

 

ーーこのまま行けば私が世界を制するのは確実だ。

 

しかし好事魔多し。それを示すかのようにそう思った矢先に、冷や水を差すような事態が勃発する。

 

「総帥、緊急電です!たった今ゴーダ司令直轄の艦隊がレジスタンスの艦隊と交戦中に正体不明の敵に襲われ壊滅しました!」

「シンガポールの艦隊基地、敵の攻撃により殺られました…‼︎」

「何だと⁉︎あそこは私が開発した特殊兵器がある‼︎レジスタンスの奴らでも容易くは手は出せん程に防御を敷き、艦隊も置いていた筈!」

「“無数の敵航空機、襲来。我が基地の設備や軍備では悉く歯が立たず、逆に敵の紅蓮の業火の如き猛攻の前に次々と全てが焦土と帰しつつあり。艦隊もまた鯱の群れに食い荒らされる鯨の如く蹂躙され海の藻屑となりつつあり。我に頼れる友軍無し、至急救援を”という電文を最後に音信不通になりました…。」

「生存者からの報告によると総帥の作られた特殊兵器は悉く略奪された模様です、なんと許しがたい事か‼︎」

突如として正体不明の敵が現れたという報告が私の元に寄せられてきた、初めはふざけているのかと思い無視しようとしたものの、本当にふざけているとしか思えない勢いで次々と我々の艦隊が海の藻屑へと変わっていく、私の作った超兵器を含めた艦隊も一瞬にしてミンチにされたという報を聞いた時には自分の思い上がりというべき考えがあるということを僅かながら悟らされてショックを受けた。

それでも今座乗している最強の超兵器、そして私の傑作というべきこの超巨大航空戦艦、テュランヌスまでも負けているという事が確定したわけではない。沈められたのは皆テュランヌスよりも先に造られ、しかしどうしてもテュランヌスよりスペックの劣る艦だ。

 

私は時代に選ばれし者だ、テュランヌスが負けるわけがない、木っ端微塵にしてくれるーー

 

そう私は意気込んで正体不明の敵を粉砕してやろうとリベンジを目論む、しかしこれらはこれから始まる悪夢の前兆でしかなかった。

 

「前方に艦影確認、次々と我が軍の艦隊や施設を破壊した敵艦と特徴が一致、距離7万8000!」

「敵艦、照準を定めてきている模様!」

 

程なくして私のリベンジの機会は訪れた、同時にこの敵がどんな外見をしているのかも分かった。我々が鹵獲したマレ・ブラッタのようなシンプルな形状をしながらも巨大な飛行甲板が後部に広がっている事から敵艦は航空戦艦と断定できた。

 

ーー恐ろしくでかい、このテュランヌスが小舟に見えてしまう程に。しかし大きさに惑わされはせん。私の作ったこの艦は最強なのだ、こんなヤツなど張りぼて同然に木っ端微塵にしてくれる。

 

そして私の艦隊は攻撃を開始しようとした、しかしそれを見計らうようにして敵艦から何か飛び出してくる。それはこのテュランヌスの前甲板に堂々と着地して船を軽く揺るがす。

それは黒々テカテカと鈍い輝きを放った全高は軽く3mはある大きな人型の戦闘機械だった、我々もこれに近いモノを試作していたが、こんなに大きくはない。

その戦闘機械はクルリと首の部分を一回転させて周りを見つめる、そして身構えると両腕に取り付けてあった銃を我々に向けて定めた。

 

ーーええい、所詮はブリキの人形もどきだ!木っ端微塵にしてくれるわ!

 

私は本能に駆られたのか、その戦闘機械を攻撃するように命ずる、そして、悪夢の如き一方的な蹂躙が始まった。

 

「○△△△△△△△‼︎××□□□□□□□‼︎」

 

ーーガガガガガガガガ‼︎

 

その戦闘機械は火蓋が切られたのと同時に何かが吹っ切れたのだろうか、狂ったように笑いながら両腕の銃を周りの艦に向けて凄まじい勢いで乱射した、そして大きさの割には威力が可笑しい、たった数十発撃ち込まれただけでミシガン級が分厚い鋼鉄の装甲諸共ミシンのようにぶち抜かれて跡形もなくミンチになってしまうのだから。あっという間に周りの艦は狂喜に満ちた笑い声と共に次々と火達磨となり、そして海の波間へと消えていく。

 

「撃て、撃てぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

ーーズドォン!

ーードカァン!

 

「あぁ〜ん?」

「ひ、ヒイッ!」

 

ーーバキイン!

 

「どわぁ〜‼︎」

 

ーーボカシャァァン!

 

勿論56㎝、61㎝といった大口径砲、超怪力線、エレクトロンレーザーはその戦闘機械に次々と命中していたもののまるで太刀打ちできず、狂気の乱射は終わらない。逆にその攻撃を撃ち込まれて気が付いた、いや怨みを叩きつける対象を見つけられたのが嬉しかったのか、狂気は収まるどころか益々暴走する、テュランヌスの砲塔が根元から引き千切られて戦艦の一隻に叩きつけられる、その戦艦は一撃で真っ二つとなる、そして先の狂気が銃弾、ミサイルとなって彼らに叩きつけられ、その船体を更にズタズタに引き裂いていく。

 

「うわ〜はははははは‼︎ひゃ〜はははははは‼︎」

 

ーーズドォン!

ーードガァン!

 

ーーば、馬鹿な…、こんな事があろうか…⁉︎味方が次々と…対して奴は凄まじい力を放って狂ってる、まさに狂える鬼だ…‼︎

 

やがてこのテュランヌスを取り巻いていた護衛は殆どが水底に消え、残った艦も紅蓮の業火に包まれ今にも沈もうとしていた、すると奴はそれらに向けていた狂気に満ちた矛先をこちらに向けてきた、今度は銃ではなく、大型のグレネード?のようなモノを乱射してきたがこれもまた強烈だった、一撃一撃が撃ち込まれる旅にテュランヌスの飛行甲板は紙のように破片となって捲れ飛び、艦首に誇らしく鎮座していた巨大な大砲やVLSもレーザージェネレーターも次々と巨大な爆発によって吹っ飛び紅蓮に包まれた醜い鉄塊へとみるみるうちに変わっていく。

 

「ば…、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なテュランヌスが…。こうも簡単に…。」

そのグレネード?の発射の速度は先の銃よりは遅かったもののそれが攻撃の強烈さと相まってかえって圧倒的な恐怖を煽り立てる、そう、まるで一瞬には殺さずにジワジワと苦しめて殺すような。思うがままに一方的に振るわれるその圧倒的な力の前に、ヨーロッパの全兵力を凌駕する攻撃力を持ったこの最強の艦は今ややりたい放題に蹂躙され、そしてそれには誰も手も足も太刀打ちも出来なかった。勿論私は何も出来ずにそんな無茶苦茶な現実を無理矢理見せつけられ、押し付けられて恐怖するしかなかった。

 

ーー鋼鉄の狂鬼。

 

その言葉が奴には相応しいのかもしれない、狂気のままに圧倒的な力を存分に叩きつけているのだから。奴はパンチを放つ、当然これも威力が桁違いなのだろうか、それが叩きつけられる度に面白いようにテュランヌスの巨大な船体が紙細工でも潰すように滅茶滅茶にひしゃげる、船の肝たるキールもこれでは折れ曲がったと言っていい。私の傑作は形無しだ。

 

ーードゴォン!

 

「○△△△△△△△△△△‼︎(みぃ〜つけた〜ぁぁぁぁぁ〜‼︎)」

そしてとうとう奴はこのテュランヌスの全てをスクラップに変えて終わりが近いと見たのか、その証拠とばかりに目を爛々と輝かせ艦橋の壁を破壊して私の所にやってきた。

 

「く、来るな、来るなぁぁぁぁ!」

 

私は手元にあった銃を乱射した、その程度では全く致命傷にはならないとしても、こんな悪夢からは逃れたい、逃れたかった。

しかし奴は大口径砲やエレクトロンレーザーといった高威力兵器を食らっても無傷でピンピンしていたのだ、当然のようにそれは全く効いていない。

 

ーーガシィ!

 

「□□□××××××。(つぅ〜かまぁ〜えたぁ〜。くっくっくっくっく…‼︎)」

そして奴は私を捕まえてテュランヌスから離れる、テュランヌスが散々に嬲られてもはや引き裂かれた紙細工のようにスクラップ同然になったのが空から見て一目瞭然だった。

 

「×××××○○‼︎(ひゃ〜はっはっは‼︎皆殺しじゃ〜‼︎)」

 

ーーズガガガガガガガ!

 

奴はトドメとばかりにスクラップ同然となった姿のテュランヌスを八つ裂きにして跡形もなく水底に消してやると言わんばかりに銃を乱射する、これまでより大きな爆発と水柱が無数立ち上ってテュランヌスだったモノがあちこちに飛び散る。

こうして悪夢の如き一方的なワンサイドゲームは我が艦隊の全滅というお先真っ暗な感じで幕を閉じた。そしてこの後私という総帥を失ったテュランヌスは奴の為すがまま、容易く蹂躙されその全てを失って滅び、残されたものもいつ終わるかわからない地獄絵図を味わされるいう悲惨な末路を辿るという私の夢、野望とその努力が根本から否定され紙屑以下にされるという悪夢を徹底して脳裏に焼き付けられた。しかし私に対する悪夢はまだ終わらない、寧ろ家畜以下の酷い扱いが新たに待ち受けていた。

 

ーーカキィン!

ーーズゴッ!

 

「うぐうっ!」

 

「とらぁ!もう一丁!」

 

ーーカキィン!

ーードカッ!

 

「ゲボッ!」

 

あの後私は反テュランヌスの組織の一つの長を務めながらも権力をより多く手にしようと超兵器の開発を進めようとし反対派の将官と対立して左遷され、その反対派の将官に対し恨みを募らせこのテュランヌスを乗っ取ろうと私に近づき私に代わって総帥の座を乗っ取ろうとしたクルーガーとやらと一緒に私は奴ーーあの戦闘機械の中に入っていた男に慰み物として打ち出された野球ボールを打ち返して顔や股間に命中させたらホームランというこれまた酷いルールの下に一方的に弄ばれていた、体が動くならまだしも、体を動かせないように徹底的に拘束させられ、しかも顔あるいは股間を丸出しにさせられた状態で奴が打ち返した野球ボールを浴びせられ続けている。

その野球ボールの威力はかなり身に来る、既に私の顔は何発も直撃を食らって骨が砕けたのか、原型留めない程に歪んだ、もはや化け物同然だ、これでは合わせる顔もない程に。

 

「ゆ、許してくれ、許してくれ、許してくださいぃぃぃぃぃぃ‼︎」

「嫌だな。貴様は私にしてみればとても都合のいいサンドバックだ。嬲って嬲って嬲り尽くしてくれるわ。」

 

ーーグイッ!

 

「あがあがあががががががが‼︎」

 

またグルーガーの方も悲惨だった、彼の股間は奴の遊戯のせいで『壊されて』しまったのか、血が垂れて小便と糞が止まらずにダダ漏れと悲惨なことになっている、また脳を野球ボールで盛大に打たれたショックか、ひどく錯乱している。当初は傲慢そうにしていた彼は今では悲鳴と嗚咽を上げ必死に許しを懇願している状態だ、しかし当然奴はそれを見て喜び許すどころかその戯れをより一層と苛烈にしていく。奴は笑いながら彼に対し首締めを行い彼が苦しみ悶える顔を見てますます喜ぶ。

やがてグルーガーの体からは活力が徐々に失われていった、助けを叫ぶ気力も失われていく。私もそうだった、こんなに殴られては抵抗する力が無い。

 

「ここまでは実にいい気味だ。しかし残念ながらトドメだ。そろそろ悲鳴と叫喚を叫ぶ気力が貴様らには無くなってきたみたいだからこちらが飽きてきたわ。貴様らの尻から異物を存分にぶち込んだ上でロケットで打ち上げ、醜い花火にしてやろう。」

 

奴は戯れのせいで活力が無くなってきたそんな我々を見て、終いにしてやろうと呟く。そしてその言葉通りに奴は鋼鉄のパイプを我々の壊れた股間にぶち込むや否やそこから砕石が混じったコンクリートを腹にたっぷりと詰め込んでいった。やがて腹にコンクリートがかなり入ってきたのか腹がどんどん膨らむ、吐き気がする、そして我慢出来なくなって吐いた、その吐いたモノの正体は食べカスや糞と共に混じったコンクリートだった、コンクリートをどんどん入れられているせいか何度も何度も吐き気を催して吐く、奴はそれを見て笑い転げた。

 

「じゃあな、冥土の土産として醜い花火として散った事を黄泉にいる者達に誇るがいい。」

 

ーーカチッ!

ーーズドォォォォォォォ!

 

ーーやっと、解放されたかーー

私もグルーガーも、散々に嬲られたせいか口が動かない、言葉が出ない。それでも私は色々な意味を込めて呟く、奴の戯れから解放された嬉しさ、一生が終わってしまうという寂しさ、努力が悉く破壊され否定された虚しさなどーー

私の一生は、奴が私とグルーガーを強引にくくりつけて打ち上げられたロケットの爆発と共に終わったーー

 

 

ーーロケット爆発直後、リヴァイアサン後部飛行甲板

 

「智史くん、やっぱりちょっとやり過ぎじゃない?グルーガーって人、最初はこっちを見下したりして嫌いだったけど、アレスと一緒に智史くんにボロボロになるまで散々にバッティングで弄られてるの見ると段々気の毒に見えてきたわ。」

「悪党にはこのぐらいやるのがふさわしいし個人的にはこれが一番スカッとすると私は考えたのだが。琴乃、やはり私は壊れすぎていて最低だな、何かを始めると終わるまで徹底的になってしまう、お前のアドバイスを一つも省みようともせず、ましてや中途半端があってもいいと考えようともしない。」

「別に全部省みようとしていないと言いたい訳ではないわ。頼み事も役割もちゃんとやってくれてるじゃない。ただやっぱりハッキリと白黒付け過ぎてやり過ぎるのはちょっとまずいかな?」

「そうだな、色々ハッキリした方がいいと事を進め過ぎてるせいで数多の世界が壊されたり滅ぶという酷い惨劇が複数起きているからな。まあそれでもいい、もし滅ぶのならば、滅ぶべくして滅ぶ時が来た、ただそれだけの事よ。」

「ここまで深く考えられる様になったのは常に生き残る為やより自分を成長させる為に情報を掻き集めているお陰かしらね。」

「そうかもな。自分は最低だ、外と比べるとまだ弱い方だ、いつかより強い者に仕返しされると無意識に自罰的になってしまっているからこそ無意識に強くなろうという願望が芽生えてしまっている。その願望も手伝って私はここまでも、これからも強くなれるのかもしれないな。今の自罰的な性格もあまり悪くはないのかもしれない。」

「そうね、自分の弱さを知っている人こそ真の強者だと思うわ。グルーガーとアレスが智史くんに完膚無きまでに負けたのはその考えの有無なのかもしれないわね。」

「そうだな。」

智史と琴乃は日が西に傾いてきた空を見つめながらそう会話した、これまでの自分がやってきた事の背景としてある智史自身の考え方や色々と自分を成長させる為に情報を収集して練りこんだ考えを回想しながら。

 

「さて、ナマモノもおふざけ兵器も全部頂いたしテュランヌスも地面を根こそぎ吹っ飛ばすような爆撃で悉くぶっ潰して全部クレーターにしてやったからここの世界にはもう用は無いな。この世界の人間もアレスが考えているようにかなり愚かだが、そもそも憎しみとかの感情をお互いに持たないせいであまりやる気が湧かぬ。さ、次行くとしよう。」

「同じ名前の系列の世界系といっても色々と違って楽しいわね。次はどこへ行くのかしら?」

「ウォーシップガンナー2の世界へと行くとしよう、ヴァイセンベルガーとやらが性能がリヴァイアサンの約10倍(当社比)とやらのナマモノ兵器を世界各国にがっぽがっぽと輸出しようと目論んでる、『リヴァイアサン』といっても私ではなく面汚しのタツノオトシゴの方だがな、だが私の方も指していると捉え切れる以上、咬ませ犬という汚名は徹底して晴らさせてもらう、私まで同類と見做されたら困るからな。」

智史はそう言う、ヴァイセンベルガーの自慢の究極ナマモノ兵器ーーキョウフノダイオウイカの宣伝の内容が自分よりも優れていると勝手に発言しているように聞こえてしまうからか、ヴァイセンベルガーのやっていることは全く気に入らなかった。

彼は同時にこれまで通りにナマモノやおふざけ兵器の捕獲と各地の訪問も実行しようと目論みながらヴァイセンベルガーにキツイ仕置きを実行しようと企む、彼はワープホールを展開する、そしてリヴァイアサンはウォーシップガンナー2の世界へと進撃していった。

ヴァイセンベルガーは無論この事は知らずこのキョウフノダイオウイカの養殖・輸出を目論んでいたが、勿論この後智史の手により無理やり阻止され、その目論見が叶うことは無かったーー




おまけ

テュランヌスが生まれた背景の描写について

本家の鋼鉄の咆哮 ウォーシップコマンダーでは軍事組織テュランヌスが如何にして生まれたのか、アレスはどういう人物だったのかがあまり描写されていなかった。しかし因果ありきで物事は生じるという考え方から推察するにテュランヌスが生まれた背景は個人的には必要であると判断しアレスのキャラクター性と一緒に描写した。
尤も、アレスの性格、扱いは個人的考えからかなり酷いものとしているのだが。
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