海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作は原作5、6話を参考にしつつ書いてみました、そのせいで話が非常に長くなってます。
コンゴウがヨタロウにされてしまいます。
そして、智史が蒔絵を助け出します。
また彼の圧倒的な力によって上陰達の置かれている環境がかなり改善されます。
それでは読みたい方だけお楽しみください。


第8話 蒔絵とヨタロウと刑部藤十郎、そして交渉

「うちに仲間を殺されて怒り狂うヒエイが霧の生徒会と超兵器を複数連れて来たか、今度は調べ上げた通り、航空機対策が念入りに施されているな、しかも短期決戦を挑む気か、こいつら。だが、させん。餅には餅屋というようにこちらも更に強力な艦載機で迎え撃ってやろう。今の状態でも十分に余裕で勝てるが奴らに更に惨めな最期を遂げさせるためにもっともっと己を磨き、強化しよう。だが、ヒエイもある意味可哀想だよな、うちのせいで大事なものを失ったんだから…。」

そう言い、前から進めていた対策に基づく強化のペースを更に上げる智史。実際に霧はこれまでのリヴァイアサンの戦闘パターンから対策を出しつつあった。だが彼の強化は対策を遥かに上回る速度で行われた、もう太陽系100個など余裕で滅ぼせるほど強くなっているのに、だ。そしてそれはもはや霧を嬲り殺しにする為の強化の域に入りつつあった。彼女らにしてみればもはや悪魔が自分たちを嬲り殺しにしていく為にする強化に他ならない。しかも彼は自分を強化する元を更に強化してペースをどんどん上げているのである、とっくに彼は文字通りの米帝を通り越したチート状態になりつつあった。

 

「それにしてもタカオが群像に恋する動機はうちが全部潰しちゃったからな、しかも奴はうちに怯えてピクピクしてやがる、そうだ、もっともっと強化ペースを上げて強くなってますます怯えさせてやろう。」

そう言い、タカオの反応をみて更に怯えさせる為にますます己を磨く智史。彼女にしてみれば彼は化け物同然だった、しかもますます強くなろうとしているのだ、この状態はもはやイジメを更にエスカレートさせようという動きに他ならない。彼は彼女をたっぷりと甚振るのが病みつきになってしまった。

 

「ひぃっ!もうやめてぇぇぇぇ!」

「さぁ〜て、タカオ。お前をたっぷりと弄んでやろう。そして私の楽しみとしてとこしえに愛でてやろう。ヒュウガはイセがたっぷりと愛でているからな。」

そして彼女は彼の玩具として弄ばれる、もちろんヒュウガは彼の“玩具”達と一緒にイセに愛でられていた…。

 

さて、キリシマ達はそろそろお目覚めかな、そして政府の奴らーー特に北良寛と上陰龍二郎、この2人に連絡を入れておこう、“あなた方と交渉がしたい、今日の21時、刑部邸にてお待ちしている”、とな…。

 

そして彼はスマートフォンのスイッチを入れると2人に電話を掛けるーー

 

 

ーーほぼ同時刻

 

プルルルルルル…プルルルルルル…

 

自室の電話が突然鳴り響くことに驚く北。彼の電話は非常に重要な時にしか繋がらないように設定してあり、余程のことがなければ鳴り響くことはないはずだった。

「私だ、一体誰かね?」

「いきなりお掛けして申し訳ない、北良寛殿。私は霧の究極超兵器超巨大戦艦リヴァイアサンのメンタルモデル、海神智史という者です。」

「なっ…、君は、あの究極超兵器のメンタルモデルだというのか⁉︎」

「セキュリティが幾つかあったようですが悉く無力化させて貰いました。さて、あなたにお願いがあります、あなた方と交渉がしたい。内容は今は亡き刑部藤十郎博士のご子息、蒔絵の身柄の引き渡しとそれに伴う条件についてです。今日の21時、刑部邸にてお待ちしています。なお刑部邸にはこちらから向かいましょう。以上ですーー」

 

プーッ、プーッ、プーッ…

 

そして電話が切れる。

彼、海神智史から電話が来ることは北にしてみれば衝撃的だった、そしてこれは彼とコンタクトを持つ機会になると判断した北は行動を開始する、少し遅れて上陰にも智史からの電話があり、彼らは智史が約束した時間帯に交渉を始めるべく動き始めた。彼らにしてみれば二度とない貴重な機会なのだ、これを断れば智史に何をされるのかは言うまでもない。

「この交渉で奴から譲歩を得られれば、私の野望は実現に近づくことになる。何としても交渉を成立させるぞ。」

そう呟く上陰。彼にはアメリカにいる同志と共にある計画を進めていた…。

 

 

「さて、交渉のアポイントは取った、後はキリシマ達がシナリオ通りに動いてくれるだけだ。」

「智史くんったら相変わらず力に対しては貪欲ね、デザインチャイルドを手に入れてその思考ルーチンと知識を手に入れて更に強くなろうとするなんて。それにしてもアタゴちゃんから聞いたわ、タカオを玩具にして遊んでいるって。流石に可哀想だからもう終わりにしてあげたら?」

「そうだな、琴乃。蒔絵からは思考ルーチンと知識を手に入れてそれらは己を更に研磨するための砥石として使う。だがまだ彼女は幼すぎる、そして運命を仕組まれたが故に残酷な運命に遭っているということも。彼女をこのままにしておくのはあまりに酷だ、彼女が私の脅威にならない限りは彼女をこの運命から救い出したかった、だからだ。」

「うふふ、あなたったら自分の気持ちに正直ね、でもそれ故に残酷なところもあるわね。場合によっては気配りも必要よ?」

「そうだな、だが私はあえて悪に生きよう、たとえ今が駄目でも最終的には彼女が明るい未来に生きらればいい、それでいい…。」

「私はそんなあなたにどこまでもついていくわ、だってあなたの手で1人の人間が救われるんだから…。」

そう会話する二人。この後彼がタカオを玩具にして遊ぶという光景はなくなった、そして彼は蒔絵の未来について考えていた、その姿はリヴァイアサンが未来を創造しようと言わんばかりの雰囲気を僅かながらも醸し出していた…。

 

 

ーーそしてその頃、横須賀では。

 

 

「コントロールより入電、これより振動弾頭の積み込みを始めるそうです。作業終了予定は2000。」

「わかった。」

 

横須賀の地下ドックにいる401と群像達。彼らは昨日の爆発の正体が未だに理解できなかった。重厚感のある音を立ててシャッターが開く、そして兵士に囲まれて振動弾頭を乗せた車両が進んでいく、その様子を見守るかのように上陰が401を見ていた。

 

モニターに振動弾頭の画像が出る、

「あれが振動弾頭…。」

「侵食魚雷よりも強力という触れ込みですからね、我々が届けるのを、アメリカさんも心待ちでしょう。」

「一発逆転兵器ってかな。そんなすげぇ兵器よく作ったなぁ。でもよ、あいつには全く効かなそうだな、だってあらゆる攻撃全部無効化して吸収しちまうからなぁ。何って言うんだっけ、これ?チート?」

杏平の予想通り、今のリヴァイアサン=海神智史には侵食魚雷、超重力砲、高威力兵器はもちろんのこと、振動弾頭すら効かない。その材質の原子を共振させて破壊しようにもそのエネルギーが吸収されて逆に強化に回されてしまうのだ。智史はあらゆる攻撃を無力化して吸収、自己強化できるように己を磨き、死角という死角を次々と潰していったのだ。

「しっかし、侵食魚雷は弾切れのままかぁ、あいつ俺たちを助けてくれて401を修理してくれたからな、どうせならいっそあいつから武器弾薬を調達するかぁ?何れにせよこりゃ硫黄島の基地に戻る必要があるな。」

彼から全ての武器弾薬を調達できないかと愚痴を呟く杏平。

 

「?あの子は…。イオナ、あの子を覚えているか?」

モニターに映った1人の少女に不思議がった群像がイオナに話しかける、だがイオナには分からなかった、ただ何かが起ころうとしていることは感じていた…。

 

 

海がよく見渡せる刑部邸の正門前に車が止まる、そして1人の幼女ーー蒔絵が降りてくる。彼女は振動弾頭搭載の件を済ませてここに戻ってきたのだった。

「お客様はまだお休みです」

「ありがとう、誰にも行ってないよね?」

「はい」

彼女は家に入る、そして1人の方がいる部屋の方へ入っていった。既に目を覚ましていたようだ、

「…?お前は、誰だ?」

「私は刑部蒔絵。あんたは?」

「キリシマだ。」

「何キリシマさん?」

「キリシマだ。」

「ふ〜ん。」

「ところで蒔絵、私をここに連れてきたのはお前か?」

「そうだよ。」

「ならもう1人もいるはずだ、まだ寝ているはずだが。」

 

 

ーー大戦艦キリシマの独白ーー

 

ーー智史、お前の思うがままに事が進んでしまったな。お前には未来さえ自在に操ってしまう力があるのか?

奴の言う通りに私は蒔絵に回収された、ハルナと一緒に。

そして私と蒔絵はハルナがまだ寝ている部屋へと入っていく。ハルナはまだ寝ていた、そして彼女が寝ているベッドの近くにはあの大きなコートが床に置かれていた。そして蒔絵は部屋に入ると明かりをつける、そしてハルナが寝ているベッドの上に飛び乗るとハルナの様子を見ようと近づいていくーー

 

「蒔絵、よせ!」

「えっ?」

 

ドオォォォォン!

「うっ、うわあぁぁっ!」

 

蒔絵はハルナの顔を触ろうとした、それでハルナが飛び起きるのを危惧した私は彼女を止めようとした、だが既に遅く、彼女がハルナの顔を触ろうとした次の瞬間、彼女の目の前でハルナは飛び起きた、布団を吹き飛ばして。しかし、コートが無いのに気がついたハルナはヘナヘナと萎むようにベッドに倒れこんでしまった。その事に彼女は驚きつつもあのコートを両手に持ってハルナに近づいていく。

 

「ううっ、あっ、そのコート…返して…。」

「えっ、これやっぱりあんたの?」

ハルナは手を蒔絵が持っているコートに手を伸ばし取ろうとする、蒔絵はそれを振り払うのかのようにコートを右へ左へと振り回す。

「シク…シク…シク…。シク…シク…シク…。」

コートが取れない事にすね泣きをするハルナ。流石に可哀想なのか蒔絵は彼女にコートを被せる。

「あ…ありがとう…」

 

「シャキーン」

コートを着せた瞬間に雰囲気がガラリと変わるハルナ。蒔絵はその様子を見て驚く。

「え〜っと、私は刑部蒔絵。あんたは?」

「ハルナ」

「何ハルナさん?」

「ハルナ」

「ふ〜ん、二人とも変わった名前だね。あ、そうだハルナ、これ落ちてたんだけど、あんたの?」

「そうだ」

「これ金属みたいな触感だけどすごく軽いね!」

そして蒔絵はハルナにコンゴウのコアを渡す。

 

ーーコンゴウ、無事か?

ーーああ、奴の言った通りに蒔絵に回収された。しかし、この状況は何だ?意味がわからん。奴は私達を好きなように出来るというのか?

 

「何だ?」

「うわあぁぁっ!」

「2人とも突然止まっちゃってさ、何してるのかわかんなかったからだよ〜。」

「考え事をしていた。」

「ふ〜ん。あんた達何か訳ありそうだししばらくここに居なよ?それにしてもハルナさ、何でコートの下は下着姿なの?」

「我々はミサイルから切り離されてそのままここの敷地に落ちてきた、その際にコートと下着以外の衣服はクラッシャブルストラクチャーとして使用した。」

「クラッシャブル何ちゃら?」

「クラッシャブルストラクチャー」

「ふ〜ん。でもそのスタイルはまずいんじゃ?」

「まずい?」

「キリシマの方はまだいいけどさ、コートの下は下着ってスタイルはちょっとまずいんじゃない?」

蒔絵にそう指摘されたハルナはコートのファスナーを下ろし、コートを左右に開く。

 

 

ーー智史、お前はハルナをからかいつつも私には“このスタイルでいろ”と。そういうつもりでこうしたのか?

 

実はハルナはコートの下に衣服を付けて居たのだ、それに対してキリシマは衣服と下着以外は何もつけていない、もし2人ともこのまま落下したら2人とも下着姿になってしまう。智史のこのことに関する見方ではハルナの方は面白いからいいが、キリシマの方は普段身につけている衣服と相まって彼にはカッコよくも色っぽくも見えるので、そんなキリシマが下着姿になり、自分の中のキリシマのイメージが崩されてしまうのを忌み嫌った彼は打ち上げの際にキリシマに普段の衣服の上にクラッシャブルストラクチャーを着るようにしておいたのだ。

 

 

「人類服飾史のデータを送る。ハルナ、今のままだと外に出て活動するのはまずいぞ。」

「こちらも同様の結論を得た。蒔絵、どうすればまずくない?」

「うちには着ない服がいっぱいあるんだ、それあげるよ!」

「刑部蒔絵、お前はなぜ、我々を助けてくれる?」

「そうね、これも何かの縁だし!」

「縁?」

「そ!縁の意味、知らないの?」

「縁…。」

そしてハルナの周りにサークルが出現する、

「人と人とのつながり、運命的な巡り合わせ、タグ添付、分類、記録。」

「ハルナって、国語辞典みたいな喋り方するね。なんか機械みたいっていうか…。」

「いや、そんなことはない。」

「ま、いっか!でもこういうのってなんか楽しいね!」

タンスから洋服を何着か出してハルナの元に持ってくる蒔絵。だが私達はまだ知らなかった、奴はもちろんのことだがそれ以外の何者かが私達を監視しているということにーー。

 

 

「え〜っと、え〜っと〜。」

「これかな〜?」

「いや、これでもないな〜?」

「それとも、こっちかな〜?」

「いや、これも捨てがたい…。」

ハルナは蒔絵に次々と洋服の試着をさせられていた、服が変わるたびに彼女の恥じらいは強くなっていく。

「う〜ん、はっ、」

「もう…、堪忍してつかあさいぃ〜。」

そう言いコートを着ようとするハルナ。

「まーだ!お洋服変えたら、髪型も変えないと〜!」

「うぇっ!」

蒔絵はコートを取ろうとする彼女の足を引っ張り、化粧台へと連れて行く。

「こんなのとか!」

「こういうのとか〜?」

「これもいいなぁ〜!」

蒔絵は嫌がる彼女の髪型を次々と変えていく。そしてブラシを置き、

「ハルハルはね、もっとおしゃれにした方がいいと思うんだよねっ!そうそう、明日一緒にお買い物しに行こうよ、外出てかいいか聞いとくからさ、ねっ!」

 

ーーコンコン。

 

扉が開きメイドが1人入ってくる。

「お嬢様、検査のお時間です。」

「は〜い、今行く〜。」

「ハルハル、お洋服ゆっくり選らんどいてね!」

そういうと彼女は部屋を出ていく。

 

そしてベッドのコートが引きずられーー

「シャキーン」

「ふふふ、ハルハル、気に入られたな、ハルハル?」

「キリシマか。随分と彼女に気に入られてしまった」

「気に入られたようだな、ハルナ。しかし二人とも、このめんどくさい状況をどうにかしてくれないか?智史が私に元の躯体になるだけのナノマテリアルを与えようとしない今、このままだと身動きがとれん。」

「ああ、そうだった。奴からの任務のことか、了解した。」

そして私は奴から渡された“プレゼント”を開きコンゴウのコアを近くにあったクマのぬいぐるみに少量のナノマテリアルと共に詰め込みぬいぐるみの色を紫に染め、そしてポワポワの形をした髪のカツラをつける。

 

そして部屋の中で紫色の光が一瞬光る、そして扉が開く、そこから紫のクマが立った状態で現れた。

 

 

 

ーーそしてその頃、硫黄島では。

 

 

「ふふふ、ハルナはネタキャラとして大いに使えるな、さて、蒔絵が作った化粧の延長線として私も奴を色々と弄んでみよう。」

そう嬉しそうに呟く智史。彼はハルナを徹底的に弄ぶつもりでいた、彼女の髪型をアフロ、モヒカン、シングルドリルにした時の彼女の反応を妄想した彼は笑いが止まらない。更に彼女の髪型をドリルにし、しかも硬化ワックスでドリルの髪型の強度を金属加工用のドリルの強度を遥かに上回るものにして彼女の頭をコンクリートの壁にねじ込み更にグラビティジェネレーターや体の一部に強固な拘束具を使うことによって彼女をアートにし、彼女とそのアートを見た人の反応を見て面白がろうと実際にそのプランを進めていたのだ。

「さて…そろそろ行こうか、かなり早いが約束の時間に遅れるよりはずっといい。琴乃、ズイカク、お前達も私にはついて行きたさそうだな。一緒に来るか?」

そして彼はリヴァイアサンとイセとアタゴをお留守番にして、リヴァイアサンの左舷飛行甲板に、エヴァンゲリオンに登場する機体、近接航空支援用垂直離着陸対地攻撃機 YAGR-3B(本家よりスペックが格段に強化されている、もはや本家の形をした別物と考えてよい)を1機を瞬時に生み出すと彼女らと共に乗り込む。

「私は航空機を運用したことはよくあるが、他人の航空機に乗ることは初めてだなぁ、それもお前が生み出した機体に。乗るのが楽しみだ」

「私も飛行機に一度も乗ったことがない。これが初めてだから楽しみよ。」

「そうか、二人とも空を飛ぶのがどういうものなのか楽しくて仕方がないのか。では行くぞ、横須賀へ!」

そして彼らを乗せたYAGR-3Bはリヴァイアサンを飛び立つと信じがたい速度で横須賀の方へと飛んで行ったーー

 

 

ーーそれとほぼ同時に。

 

紫のクマがキリシマ達の部屋から出ると人がいないか確認する、

「問題ない、行けるぞ。」

そして紫のクマは二人を連れて歩き出す。

「どうだ、コンゴウ?調子は?」

「…慣れん、めんどくさい…。しかし、この屋敷は何だ?」

「生体反応、なし」

ハルナが生体反応がを調べる、しかし生体反応が検出されなかった。

「ここだけじゃない、大きな建物だというのに生体反応が少ない…。」

「この屋敷はどうなっているというんだ?」

 

「お客様。」

後ろからの声に気がつき、慌てて人形のフリをし、倒れこむコンゴウ。

「お嬢様がお待ちです。食堂へご案内します。」

そう言い立ち去っていくメイド。二人は彼女の後についていこうとする、

「おい、待ってくれ。人前で歩くわけにはいかん、めんどくさい…。」

そしてキリシマはハルナと共にコンゴウを抱えて食堂へ入っていく。

「あれ、キリシマ。その子持ってるけどもしかして気に入った?」

「あぁ、そいつか?気に入らなかった訳でも、ないな…。」

恥じらいつつも蒔絵の質問に答えるキリシマ。

「あ、そうだ」

彼女は何かを思いつく、そしてメイドがクマの人形となったコンゴウを料理が並んだ席に座らせる。

「みんなで一緒に食べよう!うひひ、なんかこういうのって楽しいなぁ、誰かとご飯ってさぁ!」

「他に人間はいないのか?」

「この屋敷にいるのは私以外にメイドさんだけ。お母様は知らないし、お父様も死んじゃった。だからご飯を食べるのはいつも私一人だけなんだ。」

彼女の発言に少し驚くキリシマとハルナ。

「さぁ、食べよ!いっぱい作って貰ったからたくさん食べてね!」

そう彼女に言われた二人は食べ物をフォークに刺して観察する。

「それは何だ?」

「お薬。飲むの忘れると大変だからいつも出しとくの。」

 

二人は彼女がメイドに呼ばれた光景を思い出す、食べ物をフォークで刺したまま。

 

「あれ、二人とも、もしかしてにんじん嫌い?」

「いや…そんなことはないが…。」

「いや、その…」

「ダメでしょ〜?にんじん食べないと大きくなれませんよ〜?はい、ヨタロウ。」

そういうと彼女はコンゴウの口元ににんじんを刺したフォークを突き出す。

 

ーーそうか、こいつはヨタロウというのか。

そう考えるコンゴウ、そしてにんじんを思わず食べようとしたその時だった、突如として巨大な轟音が鳴り響く、3人と1匹はその音にびっくりし、メイドが何があったのか慌てて外に出る。

 

そして刑部邸の外ではーー

「さーて、刑部邸に着いた着いたっと。」

「なんて滅茶苦茶な速さなんだ、硫黄島からここまで5分もかからなかったぞ。ところで琴乃、なんで智史はここを選んだんだ?」

「智史くんがここで政府の人達と話がしたいって言ってたからよ。もちろん彼にくっついてね。」

そう言いYAGR-3Bから降りる智史と琴乃とズイカク。

「お客様、こんなお時間にいきなり来られるのは困ります。」

「すみません、このことを知らずにいきなり来てしまって。ここに用がありまして…。」

「お嬢様に会いに来られたのですか?」

「彼女にも用はあります。だが他に二人が彼女と一緒です、あの二人は私が彼女のために送った遣いですから。」

「わかりました、ご案内します。」

そうして智史達はメイドの後をついていくーー

 

「智史⁉︎何故いきなりここに来た⁉︎」

「ここに来る理由を伝えなくてすまんな、キリシマ。これから少し後に政府の奴らと交渉をする。」

「「なっ⁉︎」」

そう驚くハルナとキリシマ。彼の発言は彼女達にしてみれば蒼天の霹靂だった。

「人間達と交渉をするのか、お前は⁉︎」

「そうだ。さてと、あのぬいぐるみにピーマンを食べさせてみよう」

そう驚く2人を尻目に彼はコンゴウにピーマンを食べさせようとする、彼女はピーマンが嫌いだった、彼がピーマンを自分に食べさせようとするのを見た彼女はピーマンを食べまいとついに暴れ始めた。

「コンゴウ…ぬいぐるみは自分から動くものではない…。」

智史を除いた皆がその光景に唖然としてしまった、唖然としつつ話しかけるハルナ。

「…分かっている」

 

ーーくっ、こうも早く、しかも奴の手によってバレるとは、こうなったら仕方あるまい…。

「許せ、蒔絵!」

 

彼女は蒔絵を殺そうと飛びかかる、しかしーー

「すげえっ!」

蒔絵はそんな彼女を恐れず逆に嬉しそうに抱きついた、そして彼女のあちこちを弄る。

「すげえ、すげえ、すげえっ!ねぇ、これハルハル達が作ったの?」

「そ、そうだが…。」

「やっぱりっ!いつの間に〜?もしかしてハルハル達ってロボット博士?私みたいな秘密のお仕事関係者?」

「あ…まあそうだ…」

「やっぱりっ!おかしな子だなと思ってたんだよね〜!そっか〜私と同じか〜。」

そう会話する3人。それを智史が遮る。

「お話中にすまない、蒔絵。私は霧の究極超兵器、超巨大戦艦リヴァイアサンのメンタルモデル、海神智史だ。彼女らは私がお前に会わせるために送った遣いだ。彼女らを泊めてくれたお礼だ、この人形、お前にやろう。」

「リヴァイアサン?あなた、あちこちで霧をやっつけてくれているあの超兵器のメンタルモデル⁉︎まさか私に会いに来てくれたの⁉︎ありがとう!一度あなたに会ってみたかったんだ、偉い人達があなたを殺すために送った軍人さん達がみんなやっつけられちゃったから気になってたんだ!」

「ま…まあ、ありがとう…。」

蒔絵が自分に嬉しそうに話しかけてくるのに照れながら少し引いてしまう智史。

 

「ヨタロウ、お前はいいぞ!自分の足で立って歩ける自由を手に入れたんだからな!」

「(よかったな、ヨタロウ。蒔絵に気に入られて。)」

「(ーーくっ、余計な世話をかけるな、智史!)」

他人事のようにコンゴウをヨタロウと呼び、心の中で話す智史。それを嫌がるコンゴウは彼に悪態をつく。

 

「すまん、蒔絵。私はこの屋敷に来るのが初めてだ、だからあちこち気になってしょうがない。この屋敷の中を散策してもいいか?」

「うん!ここに来るの初めてだから気になっちゃうよね!」

「ありがとう。」

彼は蒔絵とそう話をすると部屋の外に出る、そして外で待っていた琴乃を連れて散策を開始する。

「智史くんったら好奇心旺盛ね、確かにここにずっといるのもあなたにしてみれば苦痛以外の何者でもないしね。しかし、あなたの本当の目的って蒔絵ちゃんの生みの親、刑部藤十郎博士に会うことでしょ?」

「そうだな、琴乃。ここの屋敷の装飾は個人的にはに美しい、だから刑部藤十郎がいる部屋までの途中の部屋のやつは見て楽しもう。」

彼はそう呟く、そして刑部邸のセキュリティをハッキングして一瞬で己のコントロール下に置くと刑部藤十郎がいる部屋へと進んでいく。

「随分と地下深くにあるわね、なんか理由があるのかしら?」

「恐らく蒔絵に感づかれたくない理由があるのだろう、政府の戸籍のデータを調べたところ彼は公式には自殺したことになっている。だが、彼の生体反応はある、恐らく表面上は自殺したと見せかけて人目に入らない地下深くの場所に移動し、そこから彼女を監視していたのだろう。実際監視カメラのデータを調べてみるにその傾向が強い。」

 

彼の言った通り、この屋敷にはあちこちに大量の監視カメラが設置されていた、そして屋敷の中にそのデータを映し出すモニター室のような部屋が確認されたのだ。

 

「ここか。」

そう彼が言うと扉が開く、そして刑部藤十郎はいた、まるで死人の形相でベッドに横になって。

「…よく来たな、私がここの主だ…。」

「お前が刑部藤十郎か。まあいい、振動弾頭に関するデータはとっくに入手済だ。そのデータによるとそれを作ったのはお前ではなく、お前が生み出した生命ーーデザインチャイルド、刑部蒔絵だな。」

「…そうだ…。…私はかつて霧に対抗するための兵器を必死に開発していた、だがそれは失敗の連続だった…。そこで私は己の限界を悟った。そして私はあるプロジェクトを立ち上げた、人が成し得ないないのなら成し得るものを。超常的な才能を持つ人間を作り上げればいい、と。デザインチャイルド開発で生み出された命は109、そのうち成長したのは7、3年を超えて生存したのは1…。」

「それがデザインチャイルド開発の最後の1人、蒔絵ちゃんね…。」

「…結果として蒔絵は期待以上の仕事を成し遂げてくれた、だが国家は冷淡だった、いや、彼女の力を恐れたのだ、霧と同じようにね。彼女はこの屋敷に私とともに幽閉され、彼らの管理下で生かされることとなった、そして彼女は周りとの人間の接触を禁じられたのだ…。」

「彼女も私と同じく世間に忌み嫌われたのか、極めて異質な存在として…。」

「…それでも私は、蒔絵と一緒に居られた、それだけで私は幸せだったよ…。あの子が笑ってくれればそれでいい。私はその子を娘として愛してしまったんだ…。だが、ある日、政府から通達があった、内容は“彼女に代わるデザインチャイルドを作製せよ”と。彼らは蒔絵を古いコンピューターを扱うのかのように蒔絵の廃棄を決めた。このままだとこの子は殺されてしまう、そう考えた私は事故死に見せかけてデザインチャイルド開発のデータとともに表舞台から姿をくらますことで彼女を唯一の存在にした…。」

「つまり奴らにしてみれば蒔絵は振動弾頭の調整に必要だから生かしているわけで、その仕事がおわったらもう用済み、と言わんばかりに彼女を殺処分か…。奴らには良心はないみたいだな、私が奴らだったら最後まで彼女の面倒を見るが。それにしても、死を偽ってまで生きていたのは、お前が話した内容から推察するに彼女の笑顔を見守り続けたかったからか?」

「…そういうことだ、そして私は見ての通り、もう長くはない。そこで一つ、君たちに頼みたいことがある。」

「頼みとは、何だ?」

「…蒔絵と彼女達を…守ってほしい…。」

「何故彼女達と関わりを持っていないのにそう言えるの?」

「…見ていてわかるからだ。君と彼女たちが一緒にいてくれただけであの子はたくさん笑ってくれた、それで十分だ…。頼む…。」

「…了解した。」

そして2人は藤十郎がいる部屋を去る。

「(何としても蒔絵は守り抜く、場合によっては横須賀共々奴らを焼き払うことも辞さん。)」

元の世界でこの一連の出来事の背景をインターネットで知っていた智史。しかしこの世界に直接関わっていくことで藤十郎の蒔絵への思いの重さを改めて痛感した。交渉が決裂した場合のことも考え、彼は横須賀共々彼らを殲滅する前提で交渉に臨む。そして彼が指定した交渉の時間が近づく。政府の車が刑部邸の目の前に停車する、そしてそこから北良寛、上陰龍二郎を始めとした政府関係者が屋敷に入っていくーー

 

 

ーー上陰龍二郎の独白ーー

 

ーー彼は一体何者なのだろうか?

彼はこちらからデザインチャイルド、刑部蒔絵に関する交渉を提案してきた。彼は彼女の身柄を確保したいようだ、だがこちらとしては彼女を手放すのは大きなリスクを伴う、彼女の超常的な才能が彼に悪用されたら我々は確実に滅ぼされるかもしれないのだ。かといって彼の提案を断っても我々に明日はない、良くても静かに滅びを待つだけ、悪ければ彼の逆鱗に触れてしまい、場合によっては我々は横須賀共々彼に焼き尽くされてしまうのかもしれないのだ。

何としても交渉を成立させて活路を開きたい我々は背水の陣で彼が指定した交渉に臨むのだった。

 

「お忙しい中ご苦労様です、上陰龍二郎次官補殿。私は霧の究極超兵器、超巨大戦艦リヴァイアサンのメンタルモデル、海神智史と言います。」

彼はそう私に話しかける。彼は一見すると地味な服を着たマニアじみた一面を持った一般人のようだった、しかし交渉が始まるな否や、彼の雰囲気は一変し圧倒的な威圧感を放ち始めた。

「まず要件を言いましょう、刑部蒔絵の身柄をこちらに引き渡して頂きたい。もちろんタダでとは言いません、代わりに技術提供とそれに関する建築物とマニュアルをタダ同然でこちらに提供致します。」

一見するとその提案は無茶苦茶に思えた、だが彼はそんなことなど余裕で成し遂げかねないほどの貫禄を醸し出していた、彼のあまりの威圧感と存在感に、震え上がり、泣き出してしまう者が続出した。

「それ以外の選択肢は?」

「ありません。この提案にYesかNoで答えて頂きます。」

この交渉の条件を破ったり、交渉自体を蹴ったら我々に破滅以外の道はない。しぶしぶ我々は彼に言われるがままに交渉を成立させた。

 

「では、交渉成立ですね、約束通り、私の方から約束を履行致しましょう。多分ここで約束を履行してもそうだとは信じてくれないでしょうから外に出てご覧ください。」

彼の言われるがままに我々は外に出る、そして彼は指を鳴らす、すると愕然とする光景が出現した。なんと横須賀の周辺に巨大な時空の歪みが出現し、そこから重機と資材が次々と現れてくる。そして彼らは平然と塀の外で建築物を片っ端から造り始めたのだ、それらは瞬く間に出来上がっていく、兵器工場、兵器研究施設、医療研究施設、超高層マンション、病院、学校、ショッピングモール、上下水道、潮力発電所、核融合発電所、鉄工場、金属加工工場、各種港湾施設、超大型ドック、飛行場、線路、道路、食物生産工場、果てには元素分離による資源生産工場まで…。まさに今の我々が必要としていたものがその場に一時間も経たないうちに無数に現出してしまったのだ、しかもそれをどう運用、管理するのかというマニュアル付きで。彼にしてみればそれは朝飯前のようだったが、我々はこの光景をただ見守ることしかできなかった。

 

「では、約束通り彼女の身柄はこちらでお預かりします、私の方は約束を履行しましたので」

そして彼はその仲間とともに彼女を連れて行く、彼女は彼らと楽しそうに話していた。

 

「それでは、これにて。」

そして彼らを乗せたVTOLは屋敷を飛び立ち、瞬く間に地平線の方へと消えてしまった。彼が何を考えていたのかは分からない、しかし彼との交渉が成立したことで我々の未来に活路が開いたことは確かだった。

 

 

 

ーーそして刑部邸の地下では。

 

 

「蒔絵…。人形として生み出されたお前に、あろうことか私は愛情を抱いてしまった…。お前は今人類を滅ぼしうる存在と心を通わせようとしている…。霧を滅ぼすために生み出されたものが霧と交わるとは…。皮肉な定めだ。だが、それでもいい、お前が彼らと共に育もうとしている思いが世界を変えるのだから…。」

藤十郎が彼女との思い出をモニターに出してそう呟く。のちに彼女は智史達と共に世界を変える戦いに関わっていくことになる、だが彼はそうなる定めを知らぬまま、息を静かに引き取った…。




今回の人物紹介

クマコンゴウ
智史がキリシマ達に事前にくまのぬいぐるみのヨタロウをベースに改修するように伝え、彼女らを行動させた結果生み出された存在。
その容姿は霧くまsに出てくるコンゴウ版ヨタロウと瓜二つ。
原作では、メンタルモデルを失いコアだけになったキリシマがヨタロウになるのだが、彼女のその姿を忌み嫌った彼はその代役としてコンゴウを選び、コンゴウをコアだけにしてヨタロウにしてしまうという風にヨタロウの中身を変えてしまった。
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