一年に一度、その日は訪れる。
御坂美琴にも同じように訪れる。
小さな幸せの一日が。

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駄文です。ダメな方は回れ右推奨。
上琴要素が若干あります。ダメな方は回(ry


美琴の幸せな一日

 桜の花弁は既に散り、所謂葉桜へと変化を遂げた。そんな五月二日、快晴の広がる心地の良い日曜日のこと、御坂美琴の朝もまた清々しいものだった。

 とは言い難い。

 盛大な雷撃音によって少女の甲高い悲鳴が炸裂する。

「お…おでぇだばぁ…」

「黒子アンタねぇ…」

「た、ただのスキンシップですのにぃ…」

 全身を電撃に貫かれているというのにここまで喋られるというのは、もはや人間離れしているとしか思えない。しかし、そんなおかしな出来事を当たり前だと思えるようになってしまったことは、恐ろしい話である。

「そ、れに、本日はお姉様にとって特別な日ですもの。今日ならば許してくれると思いましてよ?」

「そんな風に言われたところで許容できる訳無いでしょ」

 素っ気無く言い放ったものの、美琴は自分の心が高揚しているのを実感していた。

 そう、今日という日は一年に一度しかない特別な日。

(私の、誕生日…!)

 小さな幸福、少し非凡な時間に誘う。それは、美琴にとってはとても素敵で掛け替えのない大切な時間なのだ。

「ま、お姉様のお誕生日はこの私、白井黒子に全てお任せあれ。一から百まで完璧で、お姉様に相応しいものに仕上げて差し上げますの」

「ありがと。後、その下心は隠しなさい」

「黒子はお姉様を祝福したい一心ですのよ!?そんな、そんな下心等これっぽっちもあったりなかったりですの!!」

「あったりなかったりって…」

 苦笑いを浮かべながら制服を準備する。休日とはいえ校則により制服を着なければならない不満はあるものの、そんなことよりも、一刻も早く町へ繰り出したかった。

きっと、何か良いことがある。

そんなささやかな期待は心で踊り、微笑みとなって世界に飛んでいく。

街路樹は優しく揺れていた。

 

 

 

「不幸だ…」

 その日も彼は朝から呟く。

『ですからね、上条ちゃんは単位ギリギリで進級したって訳なのでして、結局今年も補習しないと来年はねぇぞって訳なのですよ!!』

 電話相手は今年も担任になった月詠小萌。生徒を可愛がるその心構えは大変素晴らしいのだが、今の上条にとっては全くの逆効果であった。

「あの、先生…?来週ではダメでしょうか…?今日はちょっと用事があるんですが…」

『むー…ダメ、と言いたい所なのですが、上条ちゃんがそこまで言うのも珍しいのです。今回に限り要件を聞いてあげるのですよ?』

「実はですね…」

 

 

 

 時は少し経った昼下がり、美琴は第七学区にある病院に来ていた。と言うのも、今日は彼女の誕生日であるが、それは彼女『だけ』の誕生日ではないからだ。

「つまり、お姉様は私達の誕生日を祝いに来たのですね、とミサカは確認を取ります」

「まぁ、単純に言えばそうなるわね」

 中庭にあるベンチに全く同じ容姿の少女が二人座っている。それは何とも奇怪な光景に思えるが、それも繰り返される日々の中、当たり前になってきたことだ。現に、中から二人を眺める患者やナースは、皆微笑ましそうに眺めるだけなのだ。

「ところで、他の子たちはどうしたのよ」

「皆外出しております、とミサカはご都合主義的にお姉様と二人きりになったことを密かにドヤ顔し、他のミサカにこれでもかと自慢します。へっ」

「…何人か全力で戻って来そうで怖いんだけど」

「安心してください。最年長ミサカであるミサカ10032号がお姉様をお守りします、とミサカはここに宣言します」

 ビシッ!!とベンチから立ち上がり決めポーズをした妹を、とりあえずスルーすることにした。そんな現状を恥じらいだのか、無表情のまま頬を赤らめ、チョコンと座ってしまった。

「こほん。それより、どうしてお姉様の誕生日がミサカ達に適応されるのですか、とミサカは最もな疑問を浮かべます」

「何となくよ。私がそうしたいだけ」

 ベンチの背もたれに背中を預け、空を仰ぎながら美琴は呟いた。

「アンタ達が嫌って言うのなら、私はアンタ達が望む日に誕生日を祝いたいなって思うわ。まぁ、プレゼントを持ってきて言う言葉じゃないけどね」

「…ミサカは」

「ん?」

「ミサカは、いえミサカは皆拒むことはしません、とミサカは確信しています」

 少し下を向いた瓜二つの妹は小さく言った。彼女達にも彼女達それぞれの意志があって、気持ちがある。

 例え、ネットワークで統率されていても個人個人に思いがある。

「それでも、ミサカは、あの人に救われたあの日もまた誕生日なのです、とミサカは思います」

「…なるほどね。そう言うなら、今の私もまた、あの日が誕生日なのかな…」

「叶うのなら、あの日にもう一度、誕生の祝福をしていただきたいのです、とミサカは儚い思いを吐露します」

「決まってるわよ。勿論、その時はあのバカも…ね」

 二人の間にささやかな風が流れる。緩やかに、時が流れていた。

 

 

 

その頃。

「ミサカも今日が誕生日なのだって、ミサカはミサカはとりあえず暴れてみたり!!プレゼント買って~!!」

「…はァ…面倒臭ェ…」

 

 

 

 気付けば日が傾いていた。特に理由も無く街を彷徨っていたら、意外と知人に出会うもので、あらゆるプレゼントが入った袋を下げた美琴は帰路に着いていた。何気ない幸せも、後数時間で元に戻る。そう考えると少し切なかった。

 夕刻の街を走る影が一つあった。ツンツン頭のその少年上条は朝からずっと学園都市を走っている。目的は一つだけなのに、己の不幸故に達成されない。折角補習も先延ばしにした意味が無くなってきた現実に、少々ブルーになっていた。

 しかし、そんな瞬間は唐突に訪れる。

「「あ」」

 何てことの無いT字路を曲がった時に、二人はバッタリ遭遇した。

 そして、沈黙が訪れる。

「……えっと…」

「…何か言いなさいよ…」

「その…こんばんは?」

「…」

 微妙な間が二人をもどかしくさせる。何か言わなければと思いつつ、その言葉が出てこない。カラスが一羽、呆けた声で鳴いた。

「そ、そうだ!!その荷物持つぞ!」

「え、別に良いわよ。アンタも荷物あるし」

「遠慮すんなって。ほら」

 少しばかり強引に荷物を受け取り、美琴の隣に立つ上条。仕方ないので美琴はそのまま学生寮に連れていくことにした。

「あ、アンタはこんなことしていて良い訳?晩御飯とか作らないといけないんじゃ…」

「心配すんな。何とかなるから…」

「何とかなりそうにない声ね…」

 それっきりだった。それ以上会話が広がることは無い。しかし、先程とは違い何処か心地良い沈黙で、二人の間の空間も心なしか狭まり、無意識に歩調も合う。周りに人気は無く、気付けば二人きり。美琴は、ただこの空間に全てを委ねていたかった。

 それは、儚い幻想。全てのことには終わりがある。

「ほら御坂、着いたぞ」

「ふぇ?え、あ、あぁ…」

 唐突な終わりに悲しさを覚える。気が抜けた美琴の姿に上条は呆気にとられるが、彼の仕事はここまで。自分の持っていた持ち物を全て美琴に渡す。

 夕日の端はビルの隙間に消えていた。

「じゃあな御坂。また会う時まで」

「うん、またね…気を付けなさいよ」

 その一言に、背中を向けた彼は左手を上げて答えた。

 

 

 

 夜。夕飯も何もかも終わって一段落着き、美琴はプレゼントに目を向けた。

「開けるか…」

 綺麗な包み紙を丁寧に開けると、多種多様なプレゼント。中には手紙があるものまで。クスリとしたりウルッとしたりしながら、色々なプレゼントを大事に見ていった。

 そして、最後のプレゼントを開けよう、と思ったが美琴にはその大きめの袋を受け取った心当たりが無い。

「…何だこれ?」

 大きさの割に重さが無い。そんな袋についての記憶を強引に掘り返してみると、ある一つの結論に至る。

「あのバカの持ってた袋、よね?」

 中身を見てみたら、『御坂へ』とか綺麗とは言えない字で書いてある。もしやプレゼントなのか、とか何とか思いながら、美琴は袋を開けてみた。

 

 精一杯の字で書いた『ハッピーバースデー ミコト』と書かれたカードと、手作りのゲコ太のぬいぐるみが入っていた。

 

 

 

「それで、とうまは面と向かって渡すのが恥ずかしかったって訳なんだね」

「その通りで…」

「…でもまぁ、ちゃんと渡せたのなら良かったのかも。折角作ったのに無駄にならずにすんだんだね」

「そうだな。喜んでくれてるかは分からないけど、俺の感謝が伝わっていれば良いんだが」

「…とうまは短髪の心を理解できてないかも」

「は?」

「何でもない。とうま、晩御飯早く!!」

「…相変わらずお気楽ですねぇ、インデックスさんは…」

 

 

 

「…ありがと」

 そう呟いた美琴はベッドに入る。

 幸せな夢が見れる。

 そんな甘く、麗しい期待を胸に。

「大好きだよ。バカ」




伝えたくてもどかしい。
面と向かうと恥ずかしい。
でも、伝えたらきっと何かが変わる。
そんなのんびりでも、きっと前に進む。
それが、淡い思いなのかもしれません。

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