バカが見滝原にやってくる   作:クルクル舞朱雀

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お待たせしました!

全話中最多の文字数でした。

まさか一万文字超えるとは思いませんでした。(空白含め)

それでは、Episode18始まります!


Episode18 絶望の中で掴んだ光

ワルプルギスの夜襲来当日。

ヴァンと、杏子を除く全ての魔法少女が揃っていた。

 

「結局ヴァンさんと佐倉さん、見つからなかったわね…」

 

マミが呟く。

 

「仕方ないよ。あの後使い魔の反応が完全に消えたんだし」

 

普通なら、使い魔の微弱な魔力もソウルジェムなら感知でき、後を追う事が出来たのだが、今回は完全に消えてしまったのだ。

 

「ねえ、これってやっぱりヴァンさんか杏子のどっちかが使い魔をやっつけちゃったって事だよね?」

「それ以外に考えられないわ」

 

ほむらも、この大事な時にヴァンと杏子がいない事に頭を悩ませていた。

事実、彼女達の推測は当たっていた。

 

 

時は遡り五日前、二人が結界に連れ込まれた後の事である。

 

「うおっ!」

「痛ってぇ…!」

 

二人が起き上がると、先程まで魔女を狩っていた空間に戻っていた。

 

「ケケケケケ!」

 

近くには笑う使い魔。

そのふざけた笑いに、ヴァンと杏子の怒りはMAXに達した。

 

「てんめぇ…!」

「この野郎……!」

 

 

「「ここから出られなくなっちまったじゃねぇか!!」」

 

 

蛮刀と槍を同時に振り、使い魔をバラバラにする。

本当はもう少し待てば、迎えが来てここから出られたのだが。

 

「あ、やべ…」

 

その事を思い出した杏子は冷や汗を流す。

 

「どうした?」

「い、いや、何でもない」

「そうか。まあ、それよりどうすんだ?この後」

「本当に出られなくなっちまったからな…」

「…何か食いもんあるか?」

「食いもんね…これならあるけど?」

 

そう言って取り出したのはお口で溶けて手で溶けないマーベルチョコだった。

 

「…まああるだけマシか」

「一人一食五粒だぞ」

「マジかよ…」

 

 

 

 

そして現在。空は黒い雲で覆われ、間から薄っすらと紺色の雲が見える。

 

「織莉子、どうだい?」

「駄目ね。全く視えないわ」

「キョーコ、助からないの?」

「可能性は絶望的よ」

「そんな……」

「それでもやるしか無いわ」

「やあ、調子はどうだい?」

 

その時彼女達にとって、とても憎たらしい声が聞こえた。

その正体はキュウべえだった。

 

「インキュベーター!」

「ヴァンと佐倉杏子がいないようだね。彼らが居れば、ワルプルギスの夜を倒せるかもしれないというのに」

「言われなくても分かっているわ」

「でもこれで、鹿目まどかを勧誘する可能性も再び上がったわけだ」

「そんな事、私がさせないわ」

 

キュウべえを睨みつけるほむら。

 

「まあ僕としてはヴァンが居ても居なくても計画には大助かりさ」

「何を、企んでいるの?」

 

その時、その場にいた全員が膨大な魔力を感じ取った。

 

「これは…!」

「来るわよ……!」

「嘘でしょ…!?想像してたのより遥かにヤバイんだけど!」

「来るまで後一分ってとこかしら」

「皆、所定の場所に着いて!」

 

皆は急いで配置に着く。

 

「暁美ほむら、一つ言っておくよ」

「…何かしら」

「鹿目まどかがあそこまでの素質を持つのは、君のお陰なんだ」

「何ですって?」

「言葉の通りさ。魔法少女の潜在能力は背負い込んだ因果の量で決まるんだ。君が時間を巻き戻す度に、まどかは強力な魔法少女になっていったんだ」

「……っ!」

 

目を見開くほむら。

そしてワルプルギスの夜が来るまで、あと四十秒。

 

「君は鹿目まどかの安否を理由にし何度も時間を巻き戻してきた。その結果、幾つもの平行世界を螺旋状に束ねてしまった。鹿目まどかを中心にしてね。そして、全ての因果線が今の時間軸のまどかに集中してしまった。だから、彼女の異常な魔力係数もあり得てしまうのさ」

 

ピョコッと音を立て感情のこもっていない笑みを浮かべるキュウべえ。

 

「お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

「…………」

 

ほむらは、直前にして心が崩れかける。が、何とか踏みとどまる。

 

(まだよ…!まどかを魔法少女にさせなければいいだけの話。何としてもここで終わりにしてみせる!)

「あと十秒!」

 

さやかの声が聞こえ、時間が近づく。

 

 

10、

 

「恭介、あたしやるよ!」

 

9、

 

8、

 

「ゆまが何でも治すからね!」

 

7、

 

「私と織莉子の世界にアレは邪魔だ」

 

6、

 

5 、

 

「貴女との約束、必ず守るわ。佐倉杏子さん」

 

4、

 

3、

 

「この町の誰一人として、死なせはしないわ!」

 

2、

 

1、

 

「今日こそ、決着をつけてやる!」

 

0。

 

舞台が開演した。

 

「キャハハハ!!」

 

遂に姿を現した舞台装置の魔女、通称、ワルプルギスの夜。

その甲高い笑い声だけで、周りにとてつもないプレッシャーを与える。

 

「怯まないで、先制攻撃で行くわ!」

 

マミが巨大な銃を構える。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

巨大な銃から放たれた弾はワルプルギスの夜に直撃したかのように思えたが、強力な結界によって防がれてしまった。

 

「やっぱり、一筋縄では行かないわね」

「皆!続けていくよ!!」

 

さやかたちも攻撃を始めた。

 

 

 

見滝原中学校の体育館に、見滝原の住人が避難している。

その中にまどかの姿もあった。

 

「パパー、きょうはキャンプー?キャンプなんー?」

「そうだよ〜。今日は皆でキャンプだー!」

「風が強くなってきた……」

 

まどかは窓の外を心配そうに見る。

住人が避難し、誰もいない町でほむら達はワルプルギスの夜と戦っている。

 

「ちょっとトイレ行ってくるね!」

 

まどかは居ても立っても居られなくなり走り出す。

すると、廊下の所にキュウべえが居た。

 

「始まったよ。彼女達はワルプルギスの夜と戦っている。今はまだ善戦しているけど、いつどうなるかは分からない」

「キュウべえ……」

「でもヴァン達が居ない状況では彼女達が勝つ可能性は低いだろう」

「そんな…!」

「それ程ワルプルギスの夜は手強い相手ってことさ。でもまどか、君ならワルプルギスの夜を簡単に倒すことが出来る。さあ、僕と契約して、魔法少女になってよ!」

「…言ったよね?もうあなた達の言う通りになんかならないって」

 

まどかははっきりと否定の意思を告げる。

 

「良いのかい?このままでは彼女達に勝ち目が無い。君は友達を見捨てるというのかい?」

「私が戦って魔女になったら、それこそほむらちゃん達を見捨てる事になっちゃう。それにヴァンさんは絶対に来るよ」

「何故、そう言い切れるんだい?」

「ヴァンさんはね、ぶっきらぼうでやる気が無くて、そんでもって味覚が変で、とってもバカだけど……絶対に物事を中途半端に投げ出さないの。今までそうだったから…。だから、ヴァンさんは来るよ」

「わけがわからないよ」

「わからなくていいよ。私は、私にしか出来ない事をやるから!」

 

キュウべえの勧誘を振り切り、廊下を走る。そして外に出ようとするまどか。

しかし、扉の前にはまどかの母、詢子が立っていた。

 

「ママ…」

「何処へ行こうっていうんだ?外は風が強い。危ないだろ」

「お願いママ。外へ行かせて!私やらなくちゃいけない事があるの」

「やらなくちゃいけない事って何だ?言ってみろ」

「それは……」

 

素直に魔法少女の事なんて言っても信じてくれる筈もなく、まどかは言葉に詰まってしまう。

 

「…友達が外で頑張っているから、私はそのサポートをやるの!」

「それって前に言ってた、凄く大きくてとても危険な事のことか?」

 

首を縦に振るまどか。

 

「あたし前に言ったよな?無理に背伸びすると身を滅ぼすぞ、あんたにはあんたにしか出来ない事があるって」

「うん」

「その忠告を無視してでもか?」

「ううん、違うよ。無視じゃない。私だけにしか出来ない事なの」

「私達大人だっているんだぞ?」

「こればっかりは絶対に、私じゃなきゃ出来ないの。大丈夫、絶対にちゃんと帰ってくるから、安心して?」

 

そう言ってまどかは笑う。

 

「……本当に絶対に帰ってくるんだよな?」

「うん」

「なら、指切りだ」

「わかった」

 

そう言って二人は指切りをする。

 

「それじゃあ、行ってくるね」

「ああ、気を付けなよ」

 

まどかは小さな鞄を持ち、避難所を出た。

 

 

 

ワルプルギスの夜は勢いを止めることなく進んでいく。

 

「不味い、このままじゃ避難所まで危険が及んじゃう!」

「私がリボンで食い止めるわ!」

 

マミがリボンでワルプルギスの夜を拘束する。

 

「レガーレ・ヴァスタアリア!」

 

しかし、拘束時間は十秒にも満たず、ワルプルギスの夜の周りから発する炎がリボンを焼き尽くす。

 

「それだけあれば十分よ」

 

ほむらは一瞬でロケットランチャーを大量に出し、構える。そして、時止めの魔法を発動させる。

予め、マミからリボンを巻きつけてもらい、マミも時間停止の空間の中でも行動可能にする。

 

「ここは私に任せなさい!」

 

一発ロケットランチャーを放ち、投げ捨てる。砲弾は停まったままである。そしてまた一発撃っては投げ捨てる。それを何十回も繰り返す。

 

「私も行くわ!」

 

空中に跳び、巨大な大砲と、大量のマスット銃を出す。

 

「ボンバルダメント&パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!!」

 

華麗に着地し、地上からさらに追撃をする。

 

「ダンサ・デル・マジックブレッド&ティロ・ボンバディーロ!」

 

時間停止を解除し、ワルプルギスの夜に大量の弾幕が襲う。

 

「これならどうかしら?」

「まだよ!追撃の手を緩めては駄目!」

「オッケー、んじゃ行くよ!」

 

さやかとキリカはワルプルギスの夜に肉薄する。

 

「てぇぇぇぇいやぁぁぁ!!」

 

高高度から一気に剣を振り下ろすが結界と体格の差もあり、剣が折れる。

 

「嘘っ!?」

「遅い遅い遅い遅い!」

 

キリカは背後から連続で斬りかかる。

 

「そこに居たら衝撃波が来るわ!」

 

織莉子の指示があり、その場から二人は離脱する。

そして指示通り、衝撃波が飛んで来て周りの建物を破壊していく。

 

「危なかったぁ…」

「大丈夫?怪我してない?」

「あんまりダメージを与えられていないな…どうする?」

「結界を突破する程の火力が必要ね」

「なら、これでどう?」

 

ほむらが潜水艦を用意し、そこからハープーン対艦ミサイルを発射する。

 

「潜水艦って、何処にあったのそんなもん…」

 

ミサイルはワルプルギスの夜の歯車の部分に直撃し、バランスを崩す。

しかし、傷付いているようには見えない。

 

「ダ、ダメージ無し?」

「少しは効いていると思うわ」

 

そして、石油の沢山入ったタンクローリーを橋に乗り上げて走らせ、ワルプルギスの夜にぶつける直前に運転席から飛び降り、タンクの部分に銃弾を放つ。

 

大爆発を起こし、その爆風にほむらは吹き飛ばされるが、さやかにより助けられる。

 

「ありがとう」

「これぐらい当然よって…凄い爆発なんだけど…」

「これで倒せたとは思えないわ」

「ええ!?これでもダメなの?」

 

ほむらの言う通り、ワルプルギスの夜は特に目立たぬ損傷で爆風から姿を現した。

 

「来るわよ…」

 

ワルプルギスの夜が呼び出した無数の使い魔が、ほむら達に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

もうどれくらい時間が経っただろうか。

ワルプルギスの夜にあまり大したダメージを与えられずに、戦線を維持するのが精一杯で疲労ばかり溜まっていく。

 

「魔力が足りない…あと少しだけ足りない」

「頑張って美樹さん、まだ倒れては駄目よ!」

「武器も残り少ないわ」

「二十秒後にここら一帯に火炎弾が飛んでくるわ、急いで!」

「またなの?そろそろ盾物無くなっちゃうよ」

「変な略し方しないの」

 

そう言い、その場から離れる。

 

「くっ!」

「マミさん!」

「火傷も任せて!」

 

ゆまがマミの火傷も治していく。

 

「何か策は無いのかしら?このままではジリ貧だわ」

「そうね…弱点が歯車なのは解っているのだけれど…あの結界が邪魔ね」

「ほむらちゃん!」

 

その時、まどかがやって来た。

 

「まどか!?どうして…!」

「ヴァンさんは!?」

「まだ来ないわ…それより何でここに来たの!?」

「ヴァンさんと杏子ちゃんが来たらこれを渡さないと」

 

持っていた小さな鞄から出したのは弁当だった。

 

「きっと二人共お腹空いてるだろうから…。ほら、私に出来ることってこれぐらいしか無いし」

「まどか…」

「大丈夫。私、ほむらちゃん達を信じてるから。魔法少女にはならないよ」

「ふふ…。信頼されている以上、負けるわけにはいかないわね!」

「……皆、私が切り込むわ。さやか達は使い魔の方をお願い」

「別に良いけど…。何かあるの?」

 

ほむらは盾から自作の爆弾を取り出す。

 

「これを奴の間近で爆発させるわ。勿論、弱点目掛けてね」

「行けるの?」

「打てる策は全て打っておいたほうがいいわ。私もサポートします」

 

 

織莉子が賛成する。

 

「んじゃあ、その作戦に掛けてみますか!」

「そうね…あまりグズグズしていられないものね!」

「ゆまもサポートするから安心していいよ!」

「御託は良いからとっととやるよ」

「まどか、あそこなら安全よ。そこに居て」

「うん、わかった」

 

ほむらはワルプルギスの夜目掛けて突っ込んだ。

ほむらの行く手を阻むように使い魔が邪魔をする。しかし、その使い魔をマミ、さやか、キリカの三人が相手をする。

 

「ほむらの邪魔はさせないよ!」

「ありがとう、皆…」

(ワルプルギスの夜には一定のパターンがある…まず最初に使い魔を遊撃隊にする事。そしてそれが突破されたら…)

 

ワルプルギスの夜から巨大な火炎弾が飛んでくる。

 

(火炎弾を飛ばしてくる!)

 

その火炎弾はゆまの衝撃波でかき消す。

 

「やぁ!!」

 

(その行動の次は、ビルを操り、飛ばしてくる!だけど周りはビルだらけ。どこから来るかは…)

 

「九時の方向、斜め四十度から中型の建物が来るわ!」

 

(美国織莉子が教えてくれる!)

 

織莉子の予知通り、九時の方向、斜め四十度から建物が飛んでくる。

ほむらはそれを、体を半身にして最小限の動きで避ける。

 

(あとはこのパターンを繰り返すだけ!)

 

この方法を使い、ある程度近づくとワルプルギスの夜が距離を取る。

 

「逃さないっ!」

 

この隙を逃すかと無理に近づくほむら。しかし、それがいけなかった。

追いかけて来るほむらを追い払うように衝撃波を放つワルプルギスの夜。

 

あまりの不意打ちに回避行動を取れず、防御してしまう。

 

「っ!」

「暁美さん!」

 

マミは一瞬ほむらに気を取られ、後ろの使い魔の気配に気付けなかった。

そして、使い魔に回転蹴りを食らってしまう。

 

「ううっ!」

「マミさん!」

「バカッ!よそ見するな!」

 

キリカの警告も虚しく、さやかは使い魔の魔法攻撃に当たってしまう。

 

「しまっ……くっ!」

「ゆまが治すよ!」

 

ゆまが持ち場を離れ、治療に行こうとすると目の前に象の使い魔が立ち塞がる。

 

「させないわ!」

 

織莉子がすかさず瓦礫を掴み、使い魔に向かって投げる。

その瓦礫は見事に使い魔に命中し、使い魔は消滅する。

 

「大丈夫かしら?」

「う、うん。でも皆が…」

 

見事に連携は崩され、向こうへの援護も難しくなってしまった。

 

「貴女はキリカと一緒に彼女達を守ってあげなさい。特に巴マミが重傷よ」

 

さやかは素の回復量が段違いなので何とか戦線に復帰出来ているが、マミは運悪く背中に直撃してしまったので戦闘不能に陥ってしまっている。

 

「わかった!」

 

ゆまはさやか達の元へ向かうが、織莉子は大量の使い魔に囲まれてしまった。

 

「さて、暁美ほむらに指示をしながら、どこまで耐えられるかしら……」

 

ほむらは体制を立て直し、先程の状況を整理する。

 

「巴さんが戦闘不能…美国織莉子は孤立してしまった。辛うじて呉キリカとさやかが頑張っているけど使い魔は増える一方…。時間の問題ね」

 

再びワルプルギスの夜を見据える。

 

「急がなくちゃ…!」

 

行動を再開するほむら。

そして再び、使い魔が道を塞ぐ。

 

「邪魔しないで」

 

ガトリングガンとハンドガンを出し、左右に一斉射する。

 

「左右九十度から十五階建てのビルが二つ来るわ!」

 

織莉子の指示を頼りに、時間停止を使わずに避けていく。が、遂に織莉子からの連絡が途絶えてしまう。

 

「っ!織莉子!」

 

キリカが駆けつけると、織莉子のソウルジェムが真っ黒に染まりかけていた。

ここまで、仲間全員に魔法を使い指示を出してきたのだ。当然である。

 

「グリーフシードは?」

「さっきゆまに使ったのがラスト…キリカ、あんたは?」

「半分くらい溜まってるね。まあ、何とか持たせてみるさ」

「ごめんなさい。肝心な所で…」

「大丈夫、織莉子は私が護るから」

「残りがあたしとキリカとゆまとほむらの四人。マミさんが復活までまだ時間が掛かる」

「さらにこっちは自衛だけで精一杯、か」

「ほむらお姉ちゃん、頼んだよ!」

 

そして、指示が無くなったほむらは時間停止を使わざるを得なくなった。

 

「流石にキツイ……けど!」

 

目の前に迫るビルを長さ3mを超える対戦車用ライフルで照準を定める。

 

「デリート!」

 

上手く中心を狙って数発撃ち、破壊する。

援護は望めない。今さやか達は仲間と自分を守るので精一杯である。

 

「時間がない…!」

 

連続で時間停止を使用し、砂時計の残りもあと僅かである。

そして、その焦りがほむらの冷静さを奪っていく。

火炎弾を盾で防ぎ、使い魔をマシンガンで蹴散らすといつの間にか目の前にビルが迫っていた。

 

「いつの間に…!」

 

盾で防ごうとするが、サイズが違いすぎるため潰されそうになる。

 

「くうっ……!」

 

ワルプルギスの夜まであと少し。しかしその少しが届かない。

 

(こんな所で終わってたまるもんですか……!)

 

どんなに攻撃しても効かない。それはまるで悪夢を見ているようだった。

キッとワルプルギスの夜を睨むほむら。

その近くではビルが浮いたり落ちたりしている。

ワルプルギスの夜にとって、ほむら達は遊び相手程度にしか思っていなかった。

 

「キャハハハハハ!」

 

そのワルプルギスの夜の近くに、ほむらはビルに紛れ落ちていくものを見た。

 

「あれは…!」

 

そう口にした瞬間、ほむらはビルの下敷きになった。

 

「ほむらお姉ちゃん!」

「不味いね…もう魔法は使えない……」

「駄目だ……勝てない…」

 

さやかの心が折れようとした時、声は聞こえた。

 

「それは正義の味方の言うセリフじゃねぇな」

 

顔を上げると、そこには杏子が居た。

 

「杏子!?あんたどうやって出たの?それにヴァンさんは…?」

「あいつの御陰さ」

 

そう言ってワルプルギスの夜を指す。

 

「あいつの馬鹿げた魔力が結界にひびを入れたのさ。まあそれだけじゃないんだが…。ヴァンの奴は…何処に居るんだ?あいつ…」

「一緒じゃないの?」

「途中ではぐれちまったみてーだな。ま、それよりさっさと片付けちまうぞ」

 

杏子は懐からグリーフシードを出し、さやかとキリカに使い穢れを浄化した。

 

「サンキュ杏子」

「礼を言っとくよ」

「そんなもんは後だ。行くぞ!」

 

杏子が来たことによって、さやか達の心は安定した。

 

「ほむらのところに行かせんな!」

「わかってる!」

 

さやかは剣を二本持ち、杏子のタイミングに合わせ剣を振るう。

 

「はあぁぁぁ!」

「でやぁぁぁ!!」

 

キリカはゆまと共に、衝撃波で吹き飛ばしてきた使い魔を鉤爪で斬り刻む。

 

「…………」

「えいっ!」

 

 

ほむらはビルの瓦礫から何とか脱出したが、満身創痍な状態だった。

近くに落ちていた手榴弾を拾い立ち上がる。

既に左腕は折れ、右足には瓦礫の破片が刺さり、息も絶え絶えな状況だった。

 

「はぁ……はぁ……」

(時間を止められるのは、あと一分くらいかしら……)

 

残った武器はハンドガンといくつかのマガジン、手榴弾のみであった。

時間を止め、ほむらは賭けに出る。

左足の脚力のみでワルプルギスの夜の懐に近付く。

 

息を大きく吸い、吐く。

そして弱点である大きな歯車に向けて手榴弾を起動させ、投げ入れる。

 

時を動かせば、手榴弾は爆発し大ダメージを与えることが出来る。

そう思っていると、砂時計の砂が落ち切り、時間停止の魔法が解除される。これでもう時間停止は使えなくなった。

 

「これで、終わりよ」

 

しかし、いつまで経っても手榴弾は爆発しない。ただ、ワルプルギスの夜の笑い声が続くだけである。

 

「そんなっ!?一体何故…!」

 

原因を探り、思い返すとビルの下敷きになった時、手榴弾を手放してしまったことを思い出す。

そしてそれを拾った時、手榴弾は水溜りの中にあった。

そう、手榴弾は水分に触れた事で起爆不可能となってしまったのだ。

 

「ここまで来て…!」

 

近くにいるほむらを無視し、ワルプルギスの夜は避難所の方へ向かう。

もう、遊び相手にすらならなくなってしまったのだろう。

 

「行かせない!」

 

しかし、ほむらはまだ諦めていなかった。

ハンドガンを持ち、歯車の部分を執拗に狙い撃つ。

 

「止まりなさい!止まれ!」

 

しかし、ワルプルギスの夜は止まらない。

フラフラになりながら銃を撃ち続けるほむらを風が吹き飛ばす。

 

「ああっ!!」

 

それでもほむらは立ち上がり、撃ち続ける。

弾が切れ、すかさずマガジンを交換し、予備の弾丸を入れる。

 

「諦めない、私は絶対にお前を倒してみせる!じゃないと私は前に進めない!」

 

涙を流しながら、撃つほむら。

血が目に入り、狙いが定まらなくなる。

 

「諦めたらどうだい?暁美ほむら」

 

気が付くとキュウべえが隣りに居た。

 

「もうわかっただろう。君達ではワルプルギスの夜には勝てない。やはり鹿目まどかではないと駄目なんだ」

「黙れ!」

「ならもう一度、繰り返せばいいじゃないか。君は何故そんなにこの時間軸に拘るんだい?」

「私は決めたの。この周で終わりにする、これ以上まどかに因果を背負わせない!」

「理解できないなぁ。君は今までそうやって繰り返して来たじゃないか。鹿目まどかの死から逃げ続けて」

「っ!!?」

 

ほむらは思わず銃を落としてしまう。

 

「何度繰り返してきたんだい?鹿目まどかという少女一人を救うために。一体何度逃げてきたんだい?」

「……そうよ。私は何度も繰り返し逃げてきた。でもまどかは私の友達なのよ!諦められるわけないじゃない……!」

 

ほむらはキュウべえの耳を掴む。

 

「私は決めたの。絶対にまどかを守る!そして私は前に進む!」

 

キュウべえをワルプルギスの夜の歯車に向けて投げつける。

 

「きゅぷ!」

「それが私の想いよ」

 

歯車にぶつかったキュウべえをハンドガンで撃ち抜くほむら。

しかし、脇からもう一体キュウべえが現れる。

 

「意味がないことを知っているだろう?拳銃程度じゃ、あれを倒すことは出来ない」

「いいえ、これでいいのよ」

「どういうことだい?」

「あれを見なさい」

 

ほむらが指を指す方向を見ると、そこには様子のおかしいワルプルギスの夜があった。

 

「一体何をしたというんだい?」

 

わけがわからないと言うキュウべえ。

よく見ると、ワルプルギスの夜の大きな歯車と小さな歯車の間に銃弾が挟まっている。しかも、キュウべえの死体がそれらの間に絡まり、銃弾が取れなくなっている。

 

「これは……」

「後は……」

 

しかし、血を流しすぎて足場から落下してしまうほむら。その顔はどこかようやく安堵したかのようだった。

 

「嫌!ほむらちゃん!」

 

まどかはそれを見て悲鳴を上げる。

 

「ほむら!」

「ほむらお姉ちゃん!」

「マズい、あそこからじゃ助けられない!」

「おい、諦めんな!ほむら!」

 

 

「頼んだわよ」

 

そのセリフは杏子達に向けて言ったものではなかった。

 

 

 

「ヴァン」

 

 

 

「ああ、任せな」

 

落ちてくるほむらを受け止める全身黒ずくめの男。

帽子には輪っかが付いており、この町には珍しい高身長。そして腰にある自由自在な蛮刀を持つ、その男の名はヴァン。

 

今ようやく、やって来た。

 

「あんまほむほむを虐めんなよ。危うくこいつが…」

 

 

 

「死んじまうとこだったじゃねぇか!!」

 

 

 

蛮刀をVの字に空を切り、ダンを呼ぶヴァン。

空からダンがやってくる。

 

 

ダンが降りてきて、ワルプルギスの夜はそれに注目する。

ヴァンは、杏子達にほむらを預ける。

 

「ゆま、頼む」

「ゆまに任せて!」

「ほむらちゃん!」

 

まどかが心配し駆けつける。

 

「大丈夫だ。少し気絶しているだけだ」

「そっか、良かった……。あっ、ヴァンさん!お弁当!」

 

まどかがヴァンに弁当を差し出す。

 

「後で良い。今はこいつを何とかするんだろ?」

「ええ、そうよ」

 

マミが起きてくる。

 

「マミさん、大丈夫なんですか?」

「ええ、お陰様でね。ありがとう、千歳さん」

「えっへん」

「帰って来たら食うから、そんなに落ち込むな」

「うん…わかった。杏子ちゃんの分もあるけど食べる?」

「んじゃ、貰っとく」

 

ヴァンは足場を伝い、ダンに乗る。

そして蛮刀を突き立てる。

 

「ウェイクアップ、ダン」

 

立ち上がるダンを見て、フラフラしながら少し引くワルプルギスの夜。

ダンは大刀を持ち、ワルプルギスの夜に向かって構える。

 

「さーて、さっさと終わらせるか!」

 

今、見滝原にて、白の巨人と黒の魔女がぶつかろうとしていた。




「あの時のヴァンさんはかっこ良かったです。颯爽と現れてほむらちゃんを助けたあのシーンは絶対に忘れられません」

「でも、まだ終わってはいないんです。ほむらちゃんの最大の障害、ワルプルギスの夜を倒すまではほむらちゃんの悪夢は終わらないんです。だから…」

「あんたが邪魔なら、力ずくで押し通る!…って感じなのかな?え?そうです。ヴァンさんが言いそうな事です。…もしかして、言ってるかもしれませんね」




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