バカが見滝原にやってくる   作:クルクル舞朱雀

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お待たせしました!

試験を挟んでいたので、投稿するのが遅れてしまいました。申し訳ありません。

…まだ終わりません。あと、あと少しだけ続きます。


それでは、Episode19始まります!


Episode19

ここは、別世界のマザー。別称、地球。

平和に暮らしている者達の裏側で、まだ幼き少女達が願い、傷付き、涙する。

 

この町、見滝原でも友の無事を願い、傷付いていく少女が一人。

 

そんな傷だらけの願いが集まる町に一人の男がやって来る。

 

少女はその男に願いを託し、目を閉じる。

この悪夢を打ち払ってくれる事を信じて。

 

 

 

 

 

 

Episode19 夢の終わり

 

 

 

 

 

数十分前、ヴァン、杏子が閉じ込められている結界内。

 

 

 

「ダメだな〜。結界が強すぎて穴が開けらんねぇ。外ではもう始まってるってのに…」

「こっちもだ。ダンも呼べなくて困ってる」

 

以前ダンを呼べたのは、魔女の作る結界に綻びがあった為、無理矢理結界をこじ開けていたからであった。

しかし、完全に閉じられてしまった今では、杏子のみの力でこじ開けるのは不可能であった。

 

「何かでっけー魔力さえあればなー。結界も緩むかもしれねぇのに」

 

そんな杏子の声に呼応したかのように、結界内が振動し、結界が緩くなる。

 

「随分でっかい衝撃だな」

「それ程強いってことだろ、ワルプルギスの夜は。まぁこれで、結界も緩くなったな」

「そうだな。んじゃ、始めるか!」

 

結界が緩くなり、ダンが呼べる状況となる。

蛮刀を取り出し、帽子の輪っかをクルリと反対方向に回す。そして、Vの字に空を斬る。

すると、結界にヒビが入り、ダンが落ちてくる。それもビルと一緒に。

 

「うおっと、危ねえ!」

「ビルが降ってくるってどうなってんだ…」

 

急いでダンを武器形態に切り替え、それに乗じヴァンと杏子の二人はダンに掴まる。

 

「へぇ、これがダンか」

「よし、行くぞ」

 

ダンが変形し空に上がる。

変形中は人型より幅を取るので結界に引っかかる。

なので杏子が槍を振るい、その引っかかっている部分を壊す。

 

「おりゃあ!」

 

結界を破壊し、引っかかっている部分が無くなり、ダンは再び上昇を始める。

結界を出た所で、二人は近くの瓦礫に飛び移る。

 

当たりを見回すと、最後に見た見滝原の町とは見る影無い悲惨な光景が広がっていた。

 

「どういう事だおい……」

「何だこりゃ……」

 

奥の方でゆっくりと進むワルプルギスの夜が見えた。

 

「あれが、ワルプルギスの夜…」

「結構でけぇな」

「こうしちゃいらんねぇ、急ぐぞ!」

 

杏子は瓦礫から瓦礫へ飛び移る。

 

「あ、おい待てって」

 

ヴァンも続こうとするが、足場が崩壊し、落ちてしまう。

 

「うおっ!」

 

なんとか着地するが、杏子と逸れてしまった。

 

「不味いな。急がねぇと」

 

その場を離れようとした時、ヴァンは瓦礫の上にある物を見つけた。

 

手紙であった。それも真新しい状態で。

 

「何だこりゃ」

 

その手紙には“ヴァン”と書いてあった。

開けてみると、差出人は織莉子からであった。

 

「あいつの…?」

 

“貴方がこれを読んでいるという事は、どうやら最後の予知は当たったようですね。そこで貴方にお願いがあります。私はもう魔力がありません。しかし、私は視てしまったのです。暁美ほむらが死ぬ未来を。彼女が死んでしまえば、最悪の事態が起こります。それを回避するために、このポイントへ向かってください。そこで”

 

彼女の魔力が限界だったのか、そこで文は途切れていた。

分かることは一つ。このままではほむらが死んでしまうという事。

そしてメッセージの下に、ポイントが描かれていた。

 

ダンと同じ高さのビル。

 

当たりを見回すと、一つだけ該当するものがあった。

 

「あれか?」

 

斜めになって崩れかけているビル。

よく見ると、そこには傷だらけのほむらが居るのが見えた。

 

「こいつの視たのが本当なら、マズいだろこれ…」

 

ヴァンは急ぐことにした。

 

 

 

 

そして現在、ダンとワルプルギスの夜は向かい合っていた。

 

「まさか間に合うとはね。彼の前に常識は通用しないようだ」

 

「つぇあああ!」

 

ダンが大刀を使い、袈裟斬りを放つ。

しかし、その斬撃が強力な結界によって阻まれ、弾かれる。

ワルプルギスの夜はまだキュウべえの肉と銃弾が取れておらず、本調子になれない。

 

それでも、最低限の反撃はでき、火炎弾を発射する。

それを見て、ステップで回避するダン。

すかさず、大刀を投げる。

真っ直ぐに飛んでいくが、やはり結界に阻まれる。が、それだけで終わらず、空中で大刀を拾い、からの唐竹割り、踵落とし、殴りつけるの連打。

 

うっとおしく感じたのか、衝撃波でダンを吹き飛ばす。

 

「ちっ!」

 

ダンの装甲は魔法少女の防御力よりも上な為、その程度では傷ひとつ付かない。

しかしビルを飛ばし、追撃するワルプルギスの夜。倒れていた為、躱す事が出来ず受けてしまう。

 

ところが、大刀の切っ先で受け止め、ワルプルギスの夜に押し返す。

 

「おらぁ!」

 

押し返したビルは、結界に阻まれ粉々になる。

 

「ちょっと硬すぎんだろ」

「キャハハハ!キャーハハハハハ!」

「何笑ってんだこの野郎!バカにしてんのか!!」

 

近寄る使い魔を蹴り飛ばし、ワルプルギスの夜に肉迫するダン。

もはや使い魔程度では、ダンの相手にすらならない。

だが、ワルプルギスの夜の持つ膨大な魔力で生み出す結界は、今までの魔女とは段違いでダンの攻撃すら防いでしまう。

 

大刀と小刀に分離し、二刀流になるダン。

 

「つぇぇああああ!!」

 

大刀で二回斬りつけ、小刀で刺す。そして、右脚で蹴り、大刀で再び斬りつけ、小刀で斬りつける。

反撃を許さず、回転斬りで強引に押し出し、変形するダン。

 

「キャハハハ!」

 

全速力で背中に付いている大刀で突撃する。

 

その全速力の突撃は、ワルプルギスの夜を吹っ飛ばした。

 

「おっしゃあ!」

 

さやかがガッツポーズをする。

 

「これが、ダンか…。織莉子の視た、白い巨人…」

「倒したの?」

「いや、まだだ」

「え?」

 

砂埃が消えると、そこにはボロボロだがまだ戦えるだろうワルプルギスの夜の姿があった。

 

「…!!あれだけ攻撃したってのに…」

「何て頑丈なの…!?」

「ゆ、ゆまもう限界……」

 

ワルプルギスの夜が百八十度回転する。要するに、逆さまになり始めた。いや、元に戻り始めた。

さらに、先程吹っ飛ばした事でキュウべえの肉と銃弾が取れてしまった。

 

「これは少し不味いよ。君らは彼女を怒らせたみたいだ」

「キュウべえ、どういう事?」

 

マミが説明を求める。

 

「元々ワルプルギスの夜はあれが正位置だったんだ。今までの姿は遊びとしか思ってなかったという事さ」

「あれが本気じゃないって言うの!?」

「そうさ。しかしヴァンのヨロイ、ダンの存在がワルプルギスの夜を本気にさせたんだろう。これまでとは一切の常識が通用しないよ。気をつけて」

 

次の瞬間、ヴァンの操るダンが衝撃波で吹き飛ばされる。

 

「うおっ!」

「ヴァンさん!」

 

先程とはまるで威力が違い、ダンの肩のパーツが破壊されていた。

息を次ぐ間もなく、火炎弾を撃ちこまれ辛くもこれを避けるダン。

しかし、その後ろにはガスタンクがあり、大爆発を起こし、巻き込まれてしまう。

 

「てめぇ、よくも!」

 

杏子がワルプルギスの夜に挑むが暴風を起こしているので近付けずにいる。

 

「く、そぅ……」

 

ビルの付属の看板が飛んできて杏子に直撃する。

 

「があっ!」

「杏子!」

「キョーコが!」

 

空中に投げ出された杏子は無防備な状態だった。

そんな杏子に慈悲も無く、火炎弾を放つワルプルギスの夜。

その火炎弾は杏子に直撃する直前に二つに裂かれ、消滅した。

 

「ちっ、派手にやりやがって」

 

爆発から脱出したダンの仕業だった。

杏子をさやかたちの方向に投げ渡す。

 

「おい、もう少し丁寧に扱え!」

「無茶言うな」

 

ダンの体制を立て直し、武器形態に変形し攻撃に向かう。

変形中の大刀ですれ違いざまに斬りかかる。往復し、何度も攻撃するがまるで効いている様子がない。

 

「…前より硬くなってんのか」

 

ダンを上昇させ、超高高度からVの字に斬りかかる。

 

「うぇああ!」

 

流石に結界では防ぎきれなかったようで、歯車が少し欠け、ひび割れる。

だが、本気のワルプルギスの夜は対応も早く、ダンが着地した所を、ダンよりも巨大な体でのしかかる。

 

背中から潰されているダンは防御も受け身も取ることが出来ない。

 

「ちょっと、あの体勢は不味いんじゃない!?」

 

挙句の果てにダンに乗っかった状態で、ワルプルギスの夜は回転を始めた。

歯車にすり潰されるように装甲が削られていく。

少し止まったかと思えば、ゼロ距離で衝撃波を放ち、内部構造にダメージを与えていく。

いくら装甲が硬いといえど、ゼロ距離では限界がある。

 

「ぐあぁ!!」

「ヴァンさん!」

 

助けに行こうとも、衝撃波を放ちながら回転しているワルプルギスの夜に近付く方法など無かった。

ダンの背中の大刀が折れる。左腕の関節がダメになり、動かなくなる。

 

「キャハハハ!キャハハハ!」

「あの大きなロボットでも勝てないの…?」

 

ゆまが呟く。

 

「見てるだけしか出来ねぇってのかよ、くそ!」

 

悔しそうに掌を握る杏子。

 

「おい、ヴァン!そんな奴に負けんじゃねぇ!ぶっ飛ばしちまえ!」

「そうだよ!あのお菓子の魔女を倒した時のようにやっちゃってよ!」

「あれを倒せるのはあなたしか居ないのよ!お願い、立ってヴァンさん!」

「ヴァンさん!」

「ヴァン、あいつを倒せるのはあんただけだ」

「痛いならゆまが治すよ!」

「……ああ、聞こえてるよ」

 

小さく呟くヴァン。

ダンと一体化しているヴァンはダンが破壊されると死んでしまう。

正に絶体絶命のピンチであった。

 

「こいつを倒せば、あの白猫もでかい顔出来ねぇんだろ…けど、ちょっとこいつ重いんだよ…」

 

意識が途切れそうになる度に気合で持ちこたえる。

ヴァンの周りの流体が白から青に変わる。

 

「どうやら、ここまでの様だね。でもその底力は流石というべきだ」

「まだよ!まだヴァンさんは負けていないわ!」

 

ヴァンはうつ伏せで倒れ動かなくなっている。

その時、ヴァンの頭にこれまでのことが蘇る。

 

復讐を終え、行く宛もなく旅するヴァン。

そこで間違えてまどか達の学校に侵入し、まどか達と知り合ったこと。

 

当初は無愛想な態度を取り、皆を警戒させていたほむら。

名前を覚えて貰えず、とてもショックを受けていた事。

 

今まで一人で見滝原を守ってきたマミ。

あまりにも自由し過ぎて、時にはガチ切れさせた事もあった。

 

ヴァンと同レベルのバカ、さやか。

恭介に素直になれず、ヴァンに相談してきた事。

 

いつも何かお菓子を持っている杏子。

最初こそ攻撃されていたが、共に結界に閉じ込められた時は世話をしてもらった事。

 

まどかの命を狙っていた織莉子。

あまり交流は無かったが、名前を覚えた時はそれなりの笑顔を見せた。

 

織莉子が人生全てなキリカ。

味に極端な所、冴えているのに意外とバカな所、愛する者がいる所などヴァンに似ている所もあった。

 

杏子と一緒いたゆま。

まだ幼すぎて危険なところもあった。

だが、チビはチビなりに頑張っていて、素直で真っ直ぐだった事は好感が持てた。

 

そして、何気にかなり迷惑をかけたまどか。

子供にしては妙に大人で、大人にしてはまだ幼い少女。そういう所は少しウェンディに似ていた。

 

 

この一ヶ月の思い出が次々フラッシュバックされる。

 

(おいおい、またかよ…。不味いってこれ…俺死にかけてるじゃねぇか……)

 

 

(お願いだから、私にも貴女を救わせてよ!何で貴女ばかりそうやって全て背負おうとするの!?私は…)

 

(ほむほむ…)

 

(後は……頼んだわよ、ヴァン…)

 

ほむらの悲痛な叫びを思い出すヴァン。

その背後で不気味に微笑むキュウべえを見る。

 

迫り来る死。あのムカつく小動物に何も出来ないで死ぬ。

そう思うと心底苛ついた。

 

もう少し生きてみるかと立ち直ってから結構経ち、今ここにいる。

何もせずにフラフラ歩いて生きている。

マミに仕事と飯を提供してもらい、今も戦っている。

しかし、それは全てキュウべえの掌の上だった。

ヴァンは騙されたり、操られたりされるのは嫌いだ。だから、キュウべえが気に食わない。

だったら、あいつの確信を潰してやろう。

あいつを徹底的に叩きのめしてやろう。

ついでにこの魔女も邪魔だから片付けよう。

 

そう思った時、ヴァンの頭の中に一人の女性が見え、微笑んだ。まだあなたは生きているわ、と…。

 

 

 

 

 

「エレナアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

 

カッと目を見開き、大声を上げるヴァン。

その瞬間、ヴァンの周りの流体が再び白へと変わる。

 

ダンが起動し、強力なエネルギーを発生するとワルプルギスの夜を吹き飛ばす。

 

「えっ!?」

 

少女達の顔が驚きに包まれる。

 

突如ワルプルギスの夜が吹っ飛ばされたのだ。

そして、立ち上がるダンの周りには謎のエネルギーが発生し、小さなクレーターが出来る。

 

「このエネルギーは…」

 

キュウべえも驚いているようで、何が起きたか理解出来ていない。

 

「君は一体…何をしたんだ…?魔女が生まれる時よりも圧倒的に多いエネルギー量。何が原因でそうなっているんだい…?」

「愛、かな」

 

愛。その感情だけで、第二次性長期の少女達の希望と絶望の相転移を軽々と超えたのだ。

 

(このエネルギーがあれば、きっと宇宙の寿命を伸ばすことは簡単だ。となると計画を変更する必要がある…)

 

急に吹き飛ばされたワルプルギスの夜は、ダンに危険を感じ、最大魔力を込めた火炎弾を放つ。

 

躱さず、爆発に包まれるダン。

しかし、その爆発の中で大刀を上げる。

すると上げた大刀は爆発の炎を、いや、魔力を吸収するように纏う。

その結果、巨大な刃を作り上げた。

 

「何が起きてるの……?」

「ダンにあんな事が…」

 

オーバーフロウ。

エンドレス・イリュージョンにて、鉤爪の男のバースデイと対峙した時に起きた現象。

ダンに乗る為に体を改造したヴァン。しかし、元々ヴァンには改造をしなくても乗れたのだった。

マザーの技術と新たな可能性の融合。

それが今再び発生したのだ。

 

それだけではない。その二つに、さらにワルプルギスの夜の持つ魔力まで融合したのだ。

これにより、ようやくワルプルギスの夜に通じる攻撃が出来た。

 

「でぇぇあああああ!!!」

 

ダンはその巨大な刃を振り下ろす。

結界で防ぐワルプルギスの夜だが、その質量に耐え切れず地面に叩きつけられる。

 

「キャハ……ハハハ!」

 

 

もう一度振り下ろそうとするが、結界と衝撃波により止められる。そして、結界を纏った回転により、巨大な刃が折られる。

ダンは使い物にならなくなった刃を捨て、大刀一つで突きを放つ。

 

「つぇあああ!!」

 

先程までなら結界にすぐ弾かれてしまっていたのだが、力は拮抗している。

衝撃波を放とうとするワルプルギスの夜。すぐ様、ダンはその範囲から離れる。

先程までダンがいた場所が衝撃波により破壊される。

 

ワルプルギスの夜はビル複数操り、ダンに向けて飛ばす。

それに対しダンはビルの周りを回りながら避け、ワルプルギスの夜に近づいていく。

 

「てめぇ!この!死ねぇ!!」

 

ワルプルギスの夜は結界を二重にする事で攻撃を防いでいく。

 

「ヴァンさん!」

 

マミがダンに近づき、巨大な銃、ボンバルダメントを出す。

 

「これなら行ける筈よ!」

 

ダンはボンバルダメントを左手で持ち、ワルプルギスの夜に狙いを定める。

 

「喰らいな!」

 

発射。

飛び出す魔弾は、歯車へと向かい命中する。

ダンの大刀に集中し過ぎて、結界を貼るのが遅れたのだ。

 

「ならあたしも!」

「ヴァン、使え!」

 

さやかと杏子は巨大な剣を複数と巨大な槍を出しダンに投げる。

それらを受け取るダン。

ダンはさやかの技、シューティングスターの様に投げるが、剣はブーメランの様に回転しワルプルギスの夜へと飛んでいく。

 

「…ちっ、上手くいかねぇな」

 

大刀を投げるのなら得意だが、片手剣をダーツの矢みたいに飛ばすような器用な真似は苦手だ。

真っ直ぐ飛ぶのもあるが、殆どがくるくる回転してしまっている。

 

杏子の槍を持ち、大刀との二つの武器で突っ込むダン。

 

既に、さやかの剣は全て弾かれてしまっていた。その内の一つは空中に舞う。

 

「あーあ、酷い扱い方……」

 

ワルプルギスの夜に槍で突き刺す。

魔法少女の武器は比較的ダメージを与えやすい。

なので杏子の槍は、ワルプルギスの夜にダメージをしっかりと与えていた。

その与えた場所を、大刀で追撃する。

 

これ以上攻撃をさせまいと、衝撃波でダンを吹き飛ばす。が、受け身をしっかりと取り、大事には至らなかった。

 

「悪いが、とっとと終わらせる!」

 

立ち上がったダンは大刀をくるくると大いに回転させ、パシっと柄の部分を持つ。

そして、ダンの体から青い粒子が噴出される。

左腕はもう使えない。右腕のみで構え、ワルプルギスの夜に近付く。

 

危機を感じたワルプルギスの夜は火炎弾を数発出す。

ダンはそれを半身で避けていき、徐々に接近していく。

範囲内に入ると、ワルプルギスの夜より高く飛び上がるダン。

 

足掻きとして、ワルプルギスの夜は火炎弾を放つ。

しかしその足掻きは、ダンの直前にして消え去った。

 

「キャハハハ?」

 

ボロボロになった巨大なさやかの剣がダンの前に落ちていく。

 

ダンの目が赤く光り、右腕に流体が走る。

そして大刀を逆さにし、右腕に固定する。

 

「行けーーー!ヴァンさーーーん!!」

 

 

さやかが声の限り叫ぶ。

目を瞑り、勝利を願うまどか。

その横で、ほむらは目を開いていた。

 

「……ヴァン」

 

 

 

 

 

「チェーーーストォォォ!!!」

 

 

 

 

 

満面の笑顔でワルプルギスの夜に向かい、大刀を振るう。

その刃は、ワルプルギスの夜のひび割れた歯車に綺麗に入る。

 

「キャーハハハハ……ハハ………」

 

大刀にスッと真っ二つに裂かれるワルプルギスの夜から、光が溢れ出る。その光が戦場全域を照らした。

 

 

 

 

シャリン。

 

 

 

 

光が収まる頃にはワルプルギスの夜が消えていた。

 

その場に残ったのは、ボロボロのダンだけだった。

 

「倒したんだよね…?」

「ええ、倒したわ。あのワルプルギスの夜を……」

 

今、ようやく悪夢が終わったのだ。

 

「ったく、手間掛けさせてよ。本当疲れたぜ」

「まあ良いじゃん杏子。終わったんだし

さ」

「そうだな。これであの世にいるほむらの奴も報われるってもんだ」

「いや、死んでないから…」

「そうよ、勝手に殺さないで」

 

ほむらが歩いてくる。

 

「ほむらちゃん。もう大丈夫なの?」

「ええ。何とかね」

 

杏子の持ってるグリーフシードで皆のソウルジェムを浄化していく。

 

「織莉子も使いな」

 

動けない織莉子にグリーフシードを渡す。

キリカが受け取り、浄化していく。

 

「キリカ、ごめんなさい」

「謝る必要はないよ。好きでやってるんだから」

 

「ヴァンさんは?」

 

ふと見ると、ヴァンは既にダンから降りており、ダンをサテライトベースへと戻していた。

しかし疲れているのか、どうも足下がおぼつかない。

そしてそのままヴァンは倒れた。

 

「ヴァンさん!」

 

慌てて皆が近寄る。

織莉子は、ゆまとキリカに支えられて歩く。

 

倒れたヴァンの周りには、彼を保護するように正八面体の結界がヴァンを包んでいた。

 

「何、これ……」

「どうなってるの!これも魔女の影響なの!?」

 

すると、ヴァンを包んだ結界は小さくなり、ソウルジェムのサイズになる。

 

すると突如黒い渦が発生し、見滝原全域、いや、それ以上に広がっていく。

その結界に吸い込まれる様に、少女達は渦の中に消えた。

 

 




あの時私は何が起きたか理解出来ませんでした。

気が付けばいつもと変わらない、けど少し何かが違う日常を私達は過ごしていたんです。

あの賑やかな見滝原の町に、酒場がある事に違和感を感じなかった…。

ヴァンさんもいつも通りで、けど何かが物足りなくて…。

杏子ちゃんとさやかちゃんが見滝原の英雄って…?

ほむらちゃんが大人しくて、マミさんは皆のお母さんのような存在で…。

あれ?ゆまちゃんと呉さんと美国さんは…?

…もしかしたら皆、少し安息のひと時が欲しかったのかもしれません。





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