ここまで意外と早かったような気がします。
それでは最終話どうぞ始まります!
一人の少女は悪夢を見ていた。
友が死ぬ、終わらない悪夢を。
その夢が覚めた時、彼女は自分の夢を取り戻した。
一人の男が、復讐を終え新たな旅をする。
その過程で様々な人達と出会い、かつて全てを投げ打ってきた日常を経験する。
二人の因果は、時空を越え両者を引き合わせ、そして元に戻ろうとしていた。
始まったものは必ず終わる。
どんな物語も、いつかは終わりを迎える。
少女たちはその終わりのどこに辿り着くのか。
ここは少女達の希望が絶望に抗う叛逆の星……地球。
GUN×SWORD ✖ 魔法少女まどか☆マギカ
バカが見滝原にやってくる
The Final タキシードは見滝原に舞う
月が地球に落ちるまでまだ時間はあるが、流体は既に空を覆っていた。
ワルプルギスの夜は倒れた。
雨は止み、本来なら晴れているのだが、流体のおかげでそれが実感できないでいた。
「でも止めるって、どうやって……」
さやかが頭を悩ます。
今度はワルプルギスの夜とは違い、月が相手だ。
「いくらダンでもあれをぶっ壊せってのは無理だ」
「でも他に方法は……」
「いいえ、あります」
織莉子の言葉に、みんなが注目した。
「視たのかい、あんた?」
「途中までですが」
途中までとは何なのか、ほむらが聞く。
「ダンを宇宙に飛ばすのです。そこまでしか視えませんが、方法はこれしかないでしょう」
「織莉子が言うなら絶対だね」
そこで一つ補足が付け足される。
「しかし、どうやら一人魔法少女の同行が必要なようです」
織莉子の視る未来には、その少女が誰なのかわかっていた。
「暁美ほむら、あなたです」
ほむらが名指しで呼ばれる。
「ほむら?キョーコじゃなくって?」
「あたしはゴメンだね、下で対策してる方がマシだ」
杏子は宇宙という未知の空間に自信が無かった。
その為、呼ばれなかった事にホッとした。
「でもほむらちゃん、魔法が……」
時間停止も使えず、武器も使い果たしたほむらに出来ることは何も無い。
「何故私なの?それなら巴さんのほうが良いわ」
「そう見えているのよ。それが正しいかどうかは分からないけど」
こうして月を止めるための作戦会議が開かれた。
「この中で、まだ魔法が使えるものは?」
「あたしなら、まだいけるな」
「私もだよ」
杏子とキリカが手を挙げる。
「私も少しだけなら」
マミも手を挙げる。
「あたしは……役に立ちませんよね………」
さやかも挙げようとしたが、回復魔法が主な彼女は引き下がる。
それと同時に、ゆまが手を挙げた。
「はい!ゆま出来るよ!」
この瞬間、ほむらは最高の作戦が思い浮かんだ。
「皆、聞いて!」
ほむらの言う作戦とはこうだ。
まずダンを帰還形態にし、サテライトベースへと飛ばす。ほむらはダンの中へ。
次に成層圏まで上昇したら、ゆまがメイスでダンに衝撃波を加え、軌道を逸らす。
そのままゆまは落下。さやかが彼女を受け止め、キリカは落下速度を軽減し、マミと杏子はそれをサポートする。
軌道の逸れたダンはそのまま流体へ、というものだった。
「どうかしら?」
「今取れる手で最良の方法かしら……」
「おい、ちょっと待て」
ヴァンが止める。
「ダンの中にほむほむを入れると邪魔だ。外にしろ」
「ヴァンさん、宇宙には空気がないんだよ?」
「それに生身で出ると危険なのよ」
過去にされたジョシュアの説明をすっかり忘れ、首を傾げるヴァンに皆は呆れる。
「とにかく、こいつを絶対に入れなきゃなんねぇのか?」
「ええ、無理を承知でお願いするわ」
「あたしからも頼む!」
「私からもお願い、ヴァンさん」
皆の頼みに渋々了承する。
「……わかった、やってみる」
するとわあっと歓声が上がる。
「おい、時間ないだろ。さっさとしろ」
皆それぞれ準備に取り掛かる中、まどかは織莉子に向かって声を掛けた……。
ダンを変形させ、ほむらはダンの中へと入る。
そこには既にヴァンが待機していた。
恐らく、一つのオリジナルのヨロイに人が入るのはミハエルに続いて二組目だろう。
アレを数えていいのかは疑問だが。
「ダンの中はこうなっているのね」
ほむらは辺りを見回す。
まだダンは起動していないので、流体は青い。
(これで周りが見えるのかしら?)
「いいな〜ほむらの奴。ダンに乗ってみたい〜!」
外ではさやかがぶつくさ文句を言っていた。
「もう、遊びじゃないのよ?」
「だって、巨大ロボに乗るって魔法少女に次ぐロマンですよ!?しかも剣だからあたしとピッタリですし!」
「はいはい、さっさと持ち場に着きな。それにあんただとダンを大破させそうだっての」
「なんだと杏子〜!」
「いい加減にしないと怒るわよ!」
その様子を自分の持ち場からキリカと織莉子は見ていた。
「全く呑気だよ。失敗したら、アイツの思い通りになるっていうのに…」
「でもリラックスは大切よ?」
「それにしてもリラックスしすぎだと思うよ?あぁ〜織莉子…私も不安だからキミの愛を頂戴?」
「ふふ、大丈夫よ。あなたなら出来るわ」
途中で離脱するゆまは、ダンの肩に掴まっていた。
「ゆま、頑張るからね!」
「おう、しっかりやれよ!」
杏子からの返事があり、にぱっと笑うゆま。
そして作戦開始の時が来た。
ダンを起動させ、帰還形態へと変形させる。
するとダンは飛び、そのままサテライトベースへと昇る。
その速度は意外にも速く、外で掴まっているゆまは思わず冷や汗が出る。
「うう……キョーコ…………」
杏子の姿を一目見ようとふと下を見るが、そこに杏子の姿は既に無く、地面が見えるだけであった。
「ひいぃぃ……」
腰が抜けるゆま。とその時杏子からテレパシーが入る。
(終わったら、何処へでも好きな所連れてってやるよ!)
その瞬間、抜けていた腰は治り、ゼロに等しかったやる気がMAXになった。
「ゆま……ゆま、頑張るからぁぁぁぁぁぁ!!」
大きな声で叫ぶそれは地上の杏子を苦笑させていた。
「ったく、単純だな……」
それを隣で見ていたさやかがあることに気付く。
「あれ、まどかは……?」
「ん、そういや見ねぇな。おいマミ、何か知らないか?」
聞かれたマミの頬は、少し引き攣っていた。
「もう、皆気付くの早すぎよ……」
「えぇ〜っ!?まどかがダンと一緒に!?」
目を丸くさせ驚くさやか。
現在まどかは、本人の必死な説得により、マミのリボンでダンに付いて行っていた。
それを了承したのは織莉子である。
「すみません。でも彼女が、一般人の同行は問題ないですよね、と聞いてきたものですから……」
水晶玉を見せる織莉子。
「……本当に何も怒らないんだな?」
「少なくとも途中で落下したり、気付かれないなんて事はありません」
「そろそろ、千歳さんが気付くはずだわ……」
一方そのゆまは、ダンの装甲の隙間に入っているまどかを見つけた。
『ほむら!隙間にまどかがいる!』
テレパシーで伝えると、ほむらから驚いた声が返ってくる。
『何ですって!?』
中でほむらはヴァンにまどかを中に入れるように言うと、
「無茶言うなよ……」
と返ってくる。
とはいえ、ヴァンは逆にカイジの時に脱出してるから出来なくは無いのだが。
「もうすぐ成層圏よ!魔法少女ならまだしも、一般人はとても耐えられないわ!」
鬼気迫る顔でヴァンに詰め寄る。
「わかった、わかった!だから暴れるなって…!」
ハッチを開ける。
すると中にゆまに連れられたまどかと強風が入ってくる。
即ハッチを閉じるヴァン。
「本当に気付いてくれた…!」
そんなまどかに駆け寄るほむら。
「あなたは!何でいつもそうやって無茶をするの!?」
「ごめんねほむらちゃん。心配かけちゃって……」
「何で付いてきたんだ。危ないだろ」
「ごめんなさいヴァンさん!」
必死に頭を下げるまどか。
やはり、世界線が違ってもこういうところは鹿目まどかなのだ。
「でも、あそこで別れたら、もうヴァンさんに会えないような気がしたから……」
そういうまどかの声はどこか悲しそうであった。
「…………」
「そろそろ時間よ。とにかく、もうまどかを帰している時間はないから、このまま行くしかないわ!」
「……ああ。んじゃ頼んだぞ」
外部スピーカーでゆまに向けて言うヴァン。
「任せてよ!」
メイスを構えるゆま。
その先端に衝撃の魔法を込める。
ちらっと周りを見渡すと、超高高度から見る青い星が目の前に広がっていた。
「綺麗……」
と同時に寒さも襲ってきた。
今までダンの流体部分に寄りかかっていたので、凍えることはなかった。
「早く済ませようっと!」
そして杏子に褒めてもらうんだ、と思いながら魔法を更に込める。
「行くよっ!」
ダンの装甲を横向きに思いっきりぶっ叩く。
その衝撃波により、目の前のサテライトベースから軌道が逸れた。
そしてゆまは地上へと落下していく。
時折魔法を出して速度を抑えながら……。
軌道が逸れたダンは、帰還のプログラムにエラーが発生し、変形が解除される。
初めての宇宙に感動を覚えるまどか。
ダンに繋がっていないほむらとまどかの二人は、ヴァンの周りをふわふわ浮かんでいた。
「おい、じっとしてろ。邪魔だ」
「はーい……」
サテライトベースを無視し、ダンを進ませるが、もう既に流体は目の前にまで迫っていた。
このままでは流体が落ち、それに導かれるように月まで落ちて、キュウべえ思い通りになってしまう。
「どうするの?」
まどかが聞く。
「方法は一つしかないわ」
「ああ……」
ヴァンがダンに命令したことはただ一つ。
「突っ込む!」
ダンの装甲の隙間から青い粒子を出し、そのセリフ通り流体へと突っ込んだ。
ゆまは空中から杏子の姿を確認した。
それは杏子たちも同じで、ゆまの姿を確認していた。
最後の力を振り絞り、ゆまは衝撃波を放ち落下速度を遅くした。
「それじゃあやろうか」
キリカの魔法でさらにスピードを遅くする。
ビルの上で待機していたさやかは、クラウチングスタートで走り始め、加速魔法をかけ跳んだ。
「うおぉぉりゃぁああああ!!」
向かう先はもちろんゆま。空中で見事キャッチする。
下ではマミと杏子がリボンの網と結界で二人を安全に着地する準備をしていた。
「レガーレ・ヴァスタアリア!」
「そらよ!縛鎖結界!」
リボンの網で二人を受け止め、結界でその衝撃を緩和した。
「っとと!大丈夫?怪我はない?」
着地し、ゆまに聞くさやか。
「大丈夫だったけど……寒い」
ガタガタ震えるゆまを、杏子が優しく抱きしめる。
「よくやったな。後はあいつらに任せようぜ」
「うん……」
その安心感からか、ゆまは目を閉じスースーと寝息を立てた。
流体の塊へと突っ込んだダンは視界が悪い上に流体の性質により、機体の装甲に異常が見られた。
「あんまり長くは居られねぇぞ。本当にこの方法であってんのか!」
「恐らく……」
曖昧な答えを返すほむら。
このままでは機体が危ないので、床に触れ、ダンに魔力を通す。
すると、以前のさやかのバットのように魔力でのコーティングがされる。
これにより多少は丈夫になるが、それでも長くは持たないだろう。
もたもたすれば三人に死が訪れる。
「ヴァ、ヴァンさんどうしよう!?」
「知るか!俺に聞くな!」
「まだよ、まだこんなところで終われない!」
「おいほむほむ!何か魔法無いのか!」
ヴァンが聞くが、ほむらは首を横に振る。
そして今もダンのボディは悲鳴を上げている。
「うーん、一回戻って直してる時間は無いし……」
ヴァンの頭には、計画が成功し、キュウべえが喜ぶとても間抜けな想像をしていた。
カチンとキレるヴァン。
「このやろ……!…………んあっ!?」
ヴァンが叫びかけた時、ヴァンの頭に懐かしい声と記憶が響いてきた。
(もう……そうやってすぐあなたは怒るんだから……。怒るんじゃないの。ほら、深呼吸して?吸って……吐いて……吸って……吐いて……)
エレナの声だ。
恐らくエレナと出会い、ダンに乗り始めたあたりの記憶だろうか。
その記憶の通り、深呼吸する。
「すぅぅ……はぁぁ……」
「ヴァンさん!?」
「どうしたの……?」
二人が心配するが、ヴァンからは呼吸しか返ってこない。
「すぅぅ……はぁぁ…………これでいいのか、エレナ?」
(そうよ、それで良いの。ダンはオリジナル7の中でも最高なんだから。あなたが信じてあげて……)
声が聞こえなくなった。
「……ありがとな、エレナ。ようやく頭がスッキリした!」
流体の中で、ダンの目が赤く光る。
「……邪魔だあぁぁぁぁぁぁ!!!」
ほむらたちの目の前に、【Over Magica】の文字が表示される。
「オーバー……マギカ……?」
ダンから発するオーバーフロウ。
そして先程のほむらの魔力が重なり、オーバーマギカとなった。
そのエネルギーは、ダンの周りの流体だけでなく、その後ろにある地球全てを照らす。
どす黒かった流体は白へと変わり、ヴァン、まどか、ほむらの三人を包んだ。
その様子はマミ達からも見ることが出来た。
「……っ!ソウルジェムの濁りが浄化されていく……!」
「どうなってんだ。グリーフシードを使ってねぇのに!」
この現象は見滝原だけでなく、全世界の魔法少女に起こっていた。
〜〜アフリカ〜〜
「あ…………」
草むらに倒れていた魔法少女は勝手にソウルジェムの濁りが浄化され、困惑していた。
〜〜とある魔法少女の集団〜〜
「これは……!?」
「奇跡かな……?」
「温かい……」
空を見上げると、黒い雲が白く染まっていくのが確認できる。
まさに超常現象と言えるものだった。
他にも、アメリカ、中国、ロシア、イギリスなど様々な魔法少女の絶望が愛に包まれた……。
光に包まれた三人は、不思議な空間に居た。
ダンの中でもなく、流体の中でもない。
白く温かい場所に三人と一匹は居た。
「これは……どうなっているんだ……?」
どこかで観察していたキュウべえは、この現象に巻き込まれて混乱していた。
「ヴァン、君は一体何をしたんだい?さっきのエネルギーは、今まで君が出した物とは比べ物にもならないほど大きかった。何をすれば、あれ程のエネルギーを出せるんだい?」
「エレナの声が聴こえた」
キュウべえの予想とは少し違う答えが返ってきた。
「いや、聴こえたんじゃない。思い出したんだ。ダンに乗り始めたあたりの頃を。んで少し深呼吸したら、こうなった」
「どういうことだい?わけがわからないよ」
「少し考えたら理解出来るはずよ。その力も愛なのよ。ただ、その愛が魔法と合わさっただけ」
しかし、キュウべえには釈然としない部分があった。
「感情エネルギーが魔力と合わさってオーバーフロウ以上のエネルギーを出す。そんな事、魔法少女でもない人間が耐えられるとは思えないなぁ」
「キュウべえは勘違いしてるよ」
まどかは全てを理解し、告げる。
「その感情が絶望だったらそうなるかもしれない。でもヴァンさんのエネルギーの元は愛なんだよ。愛はね、どんなことでも乗り越えちゃうんだよ?ほむらちゃんだってそう……」
「まどか、あなた……」
「うん」
頷くまどか。
「ほむらちゃんの魔力が流体に合わさってこの空間になった時、ほむらちゃんの今までの記憶が入ってきたんだ……」
まどかはそっとキュウべえに触れる。
「キュウべえにだって、わかるはずだよ。ほむらちゃんの頑張ってきた記憶が……」
「これは……」
キュウべえの中にも、オーバーマギカとなって流体に記憶された、ほむらの今までが入ってきた。
その中に、ほむらの原動力に愛のような感情の反応があった。
その反応は、ほむらだけではない。ワルプルギスの夜の時のさやかにも見られた。
(ふむ……魔法少女としてまだ未熟な彼女があそこまで戦えたのは、これによるものだったのか)
全て見終えると、ふぅとため息をついた。
「なる程、理解した。愛によるエネルギーを持つものはヴァンだけではないなんてね……盲点だったよ」
「それを聞いてどうするの?」
「これからは、第二次性長期の少女の愛の増幅をターゲットにしようかなと思うよ。とはいえ、これはまだ検討の域を出ない。それでもヴァン、暁美ほむら。君達には敬意を表するよ」
予想以上の答えが返ってきた。
それだけ、愛によるエネルギーは現在のシステムより効率が良いのだろう。
「魔法少女のシステムは今一度見直す必要がある。今暫くはお別れが必要かな」
そう言い帰ろうとするキュウべえ。それをヴァンが止める。
「おい待て。今外はどうなってるんだ。止まったのか」
「いや、止まってはいないよ。今も地球に向けて落下しているさ」
それを聞き、焦るほむらとまどか。
しかし、この不思議な空間からは出る方法がわからない。
「どうにか止める方法はないの?」
「出来るなら止めて欲しくはないんだけど、どうしてもと言うならば方法はなくはない」
期待の眼差しで見つめるまどか。
「その代わり、恐らくヴァンとは二度と会えなくなるかもしれないけど、それでもいいのかい?」
「っ!?」
驚くまどか。
ほむらは、何となく分かっていたような顔をする。
「確証はないけどね。けど、彼が帰ることによりこの現象を止められるのは確実だ」
「なら、それでいいだろ」
「ヴァンさん!?」
「方法を教えろ。さっさと終わらせる」
戸惑うまどかを無視し、話を進める。
「簡単さ。ヴァンは暁美ほむらの魔法によりこの世界にやって来た。その逆をやればいい」
「でももう私には魔法を使えないわ。……っ!まさかまた遡行しろと言うんじゃ……!」
「そうじゃないさ。この時間軸での君の魔法は時間停止だけじゃない。彼を帰す魔法が使える筈さ。その盾を動かすことでね」
疑問が生まれるほむら。
「なぜ私が出来るの?」
「以前言ったよね?彼は君の願いによって呼ばれたって。君の願いは遂に叶った。だから彼はようやく帰れるという事さ。そしてヴァンが帰ると同時に、彼の世界の物は全て元に戻る。ヨロイも流体もね」
それを聞いて、ヴァンは決める。
「よし決まりだ。それで行こう!」
「貴方がそれで良いなら問題はないけど、巴さんはどうするの?」
「……あーーー………悪いが諦めてくれって言っておいてくれ」
「わかったわ」
早速始めようと盾に手をかけた時、まどかが止める。
「待って!」
まどかはヴァンに近付く。
そして自身の特徴であるリボンを外し、彼に差し伸べる。
「これ持って行って」
突然目の前に差し出されたリボンに戸惑うヴァン。
「おい、良いのか。気に入ってんだろそれ」
「うん。でもこれを持ってれば、ヴァンさん私達のこと忘れないかなって」
まどかは笑顔だった。
「入れておくね」
そう言い、内ポケットにリボンを入れる。
髪を下ろしたまどかは笑顔で見送る。
「それじゃ、行くわよ」
「ああ、世話になったな、ほむら」
思わず目を見開くほむら。
そして静かにフフッと微笑む。
「世話になったのはこっちの方よ。……ありがとう、ヴァンさん」
盾を稼動させ、ほむらに課せられた最後の魔法が発動する。
すると、ヴァンとほむらたちの距離が徐々に離れていく。
やがて、白い光が再びその場を照らした。
気がつくと、ほむらたちは見滝原の町にいた。隣にはまどかがいる。
「帰っちゃったね……」
まどかが呟く。
「ええ、そうね……」
「鹿目さん!暁美さん!」
マミの声がした。振り返ると、これまで支えてくれた人達がこちらへと走ってきていた。
「どうなってのよ。空が流体で完全に覆われたと思ったら、急に光ってソウルジェムの濁りが浄化されるし……」
混乱するさやか。
その時、杏子が驚いた声を上げる。
「おい見ろ!ソウルジェムに白い濁りが出来てるぞ!」
「白?黒じゃなくて?」
他のソウルジェムも同じく、白く濁っていた。いや、薄くピンクも混じっているだろうか。
「どういうこと?しかも黒く濁る気配もない……」
「それが恐らく愛のエネルギーの象徴だろう」
キュウべえが現れる。
「暫くお別れじゃなかったの?」
「この騒ぎだからね。説明する必要があるみたいだ」
「どういうことよ?」
「やってくれたね彼は。多分無自覚だろうけど」
「いいから説明して!」
「これから先、ソウルジェムが黒く濁ることはないという事さ。その愛がある限りはね。その気になれば、グリーフシード無しでの活動が可能になるだろう」
「え?それ本当!」
「そうだよ。しかも君達だけじゃない。全ての魔法少女がそうさ。しかもその白い濁りは、多ければ多いほど魔法の力も増す。ただ、愛が無くなり、絶望が勝ればその後は察しの通りさ」
「じゃあ私は問題なさそうだね」
キリカが胸を張る。
「でも何で……?」
「ヴァンの感情エネルギーさ。彼のオーバーマギカが魔法少女に影響を与えたんだ。システムの見直しが早まったね」
「あの光はそうだったの……」
そこでキリカが気付く。
「ところで彼はどこへ行ったんだい?まだ帰ってきてないようだけど」
「そういえばそうね。ヴァンさん、どうしたんだろう……」
「あ、あはは……」
まどかの乾いた笑いが虚しく響く。
「巴さん、その事なんだけど……」
「何ですって!?」
全てを聞いたマミは激しく怒っていた。
「何で勝手に帰っちゃうのよ!一緒にこの町を守るって約束したじゃない!」
生気が抜け、ガックリうなだれるマミ。
「せっかく良いパートナーを見つけたと思ったのに……」
「意外と気に入ってたんだ、あのコンビ」
「織莉子、巴マミは大丈夫かい?魔女化したりしない?」
「大丈夫、の筈よ……」
「まだ十回も組んでないのよ!?」
「パートナーが必要なのかい?ならこれからも僕が担当するよ?」
「ふざけないで!」
そう言ってどこかへ走っていくマミ。
「本気だったんだけどなぁ」
「その前にあなたはやることがあるでしょう」
ほむらに指摘される。
空は晴れ、青く澄み渡っていた。
マミはその空を見上げて呟く。
「バカ……ヴァンさんのバカ……」
しかしその言葉がヴァンに届く事はない。
思い出すのは、ゲルトルートを相手にしているときに、使い魔からまどか達を守っていたこと、シャルロッテに食べられそうになった時に、ダンが救ってくれたこと。
思えば、あの時からどこか惹かれていたのかもしれない。
この人となら最高のパートナーになれそうだと。
とはいえ、マミだってもう子供ではない。
ヴァンの事情だって理解してはいる。
しかし、だからといって何も言わないで帰ってしまうのはとても悲しかった。
「いつか、また会えるわよね……?」
その問いに答える者は誰もいなかった。
ヴァンは目を覚ますと、最後に寝泊まりした廃墟の町にいた。
となると今までのは夢だったのか。
そう考えながら起き上がると、懐から赤いリボンが落ちた。まどかのリボンだ。
「あ……」
その時、ヴァンの腹が鳴る。
あっちの世界で食べた物は美味しかったが、今手元には何も無い。
リボンを拾い、そのまま黙ってヴァンは食べ物を求め、歩き始めた。
そして……。
『あれから七年後、ワルプルギスの夜襲来により時に破壊された見滝原の町は、大分復興しました。世間一般にはスーパーセルと呼ばれてたけど……』
『あの後私達、皆にバレないようにこっそりと避難所に戻りました。仁美ちゃんたちには凄く心配されちゃった。……どうやら皆、ヴァンさんの記憶の世界の事は覚えてないみたい』
『私は今、見滝原の小学校で先生をしています。唯一わかる国語の担当です』
『さやかちゃんはあれから必死にマネージャーの勉強して上条君を支えてたっけ……』
『杏子ちゃんは魔法が戻ってきて、それをきっかけに占い師をしてるみたい。親父とは違う事をしてみたいって言ってた』
『そしてほむらちゃんは今世界を飛び回って世界中の魔法少女達を支援してるんだっって。凄いなぁ、ほむらちゃん』
『ゆまちゃんは今年で中学二年生だっけ?あの子見てると時の流れが早く感じるなぁ』
『美国さんと呉さんは中学校卒業後何処かへ行っちゃった……。二人だけの世界を作るとか何とか言ってた。そしてマミさんは………』
その時まどかは下から誰かに呼ばれた。
「おーいまどか!あんたそろそろ先輩との約束の時間だろ、早くしなよ!」
「わぁっ!?もうこんな時間!」
母、詢子の声だった。
『そうなんです!今日はマミさんのカフェの試食会なんです!その日に皆が久しぶりに集まって会う予定なんです!』
そこまで書くと続きは後でと付箋を貼り、まどかは急いで家を飛び出した。
「行ってきまーす!」
七年経っても足の遅さは変わらず、時々生徒達にも馬鹿にされる。
マミの店は隣町の風見野だ。
家族と過ごしたマンションとさよならをし、本格的に店を一軒建て、そこにマミは住んでいる。
今度、近々オープンする予定だ。
何とか風見野行きのバスに乗れて、一息つく。
(今日、ヴァンさんも居ればいいのになぁ)
まあ無理か、と笑いながら外の景色を見る。
やがて風見野の町が見えてきた。
『次は〜風見野三丁目、風見野三丁目』
マミの店がある場所だ。まどかはそこで降りる。
そこから約五分程歩くと、マミの店が見えてきた。
時間は約束の三分前。何とか間に合ったようだ。
戸を押し、中に入る。
「いらっしゃい!鹿目さん!」
マミが笑顔のエプロン姿で出迎える。
その姿に、思わずまどかは見惚れる。
「こ、こんにちは〜!」
「まどか〜、遅えぞ!」
「久しぶりね、まどか」
「もうこっちは揃ってるよ!」
「キミは相変わらずノロマだな」
「キリカ、そんな事言わないの。お久しぶりですね」
「まどかさん、お久しぶりです」
既に皆は揃っていて、まどかは最後の一人だった。
「ゆまちゃん、大きくなったね!」
「はい!色々とです!じゃあキョーコ、始めよう!」
「ったく、あたしだけは呼び捨てかよ!?」
こうして、かつてこの町を守った少女たちの同窓会が始まった。
マミがロールケーキを持ってくる。
「さあ、感想を聞かせてくれるかしら?」
皆、一口ずつ口に入れる。
「マミさん、すっごく美味しいです!」
「ん〜!イケんじゃんこれ!マミ問題ねぇよ」
「甘さがクドくないクリームにしっとりとした生地。素晴らしいわ」
「ありがとう。それじゃあ今度はこっちを食べてくれる?」
そう言って出したケーキは一見ごく普通のケーキだった。
それをさやかとキリカが口に入れる。
「「辛ーーーーーーーい!!!」」
「フフッ。それはね?ヴァンさんの為に作ったケーキなの。彼このぐらいが好みだったなぁって」
「まさか、これを店に出すんですか……?」
水を飲み、涙目になったさやかが聞いてくる。
「挑戦者求むってね!一ピース八百円よ!」
「高い……」
その時であった。ドアが開き、男性と女性の二人組が店に入ってきた。
「あ、すみません。このカフェまだオープンしてないんです………よ………」
マミの声が小さくなる。
「すみません、一番安い料理と水一杯、それと調味料ありったけ……」
「こらヴァン!扉にオープンは近日中って書いてるでしょ!あ、すみません、すぐ出ていきますので……」
一人は知らない女性だが、もう一人は知っていた。
懐かしい声、全身黒ずくめの男。
その場にいた全ての少女が声を失う。
その中で何とかマミは、声を出すことが出来た。
「え……?」
「あ……?」
―――――シャリン。
これにて、バカが見滝原にやってくる は終わりです。
ここまで書いてこられたのは皆様のお陰です。
本当にありがとうございました!
自分でも成長したかどうか怪しいこの処女作でしたが、皆様の暇潰しにでもなれたのなら幸いです。
大変恐縮なのですが、出来ればこの作品のどこが良かったか、駄目だったか、改善するべき所など、教えてくれませんでしょうか?
自分でもある程度は判るのですが、やはり読者の皆様に指摘されないと気付かないことがあると思います。
ですので、もし宜しければ感想欄にこの作品の感想をお願いします!
どんな感想でも受け止めます!
それでは御拝読、ありがとうございました!
またどこかで会えたら。