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夜が明け、マミは学校へ行く準備をしていた。
「どうしたんだい、いつもより少し準備が早いようだけど」
「今日は少し早めに、学校に行こうと思って」
マミはいつも起きる時間より、30分早く起きてしまっていた。
「そうかい。何か用事でもあるのかい?」
キュウべえがマミに聞く。
「そうじゃないの。ただ少し、そんな気分なだけ」
「珍しいこともあるんだね。それじゃあ、僕は少し出かけてくるよ」
そういってキュウべえはマミの家を出る。
「…結局、あの後ヴァンさん戻ってこなかったわね」
カバンを持ち、マミは家を出る。
いつも通る通学路を歩いていると、公園の近くで小さな人だかりが出来ていた。
「何かしら?」
その人だかりを覗いてみると、そこにはベンチで寝ているタキシードの男が居た。
「えっ、ヴァンさん!?」
マミは驚き、近寄った。
「ちょっと貴女この人の知り合い?なら悪いけど知っているようだったら彼の家に連れて行ってあげて頂戴」
「あらそうなの?助かったわ~」
近くに居たご婦人がマミに声をかける。
「え、あ、その…」
そして引き取り人が来たと思ったのか、その人だかりはたちまち消えていく。
「…………」
そして一人残されたマミは、仕方なくヴァンを起こした。
「ちょっとヴァンさん、起きて!」
「ん、んぁ?お、くるくるじゃねぇか。どうしたこんな朝早く」
「貴方がそこで寝ていたから仕方なく起こしてあげたのよ」
「そうか、そりゃ悪かったな」
その時、ヴァンのお腹が鳴った。
マミはため息をつく。
「はぁ…うちでご飯食べる?」
「お、すまねぇな。助かる」
マミはヴァンを連れ、来た道を戻った。
家に戻ると、マミは準備をし始めた。
「昨日の残り物でいいかしら?」
「ああ」
数分後、マミは暖めたカレーを持ってきた。
「はい、どうぞ。一応、貴方に合わせて調味料も持ってきたわ」
「おお、分かってんじゃねえか」
そういうとヴァンは七味、タバスコ、ジョロキア、キムチ、胡椒をドバドバかけた。
「うわぁ…」
マミは思わず引いた。昨日はケーキだったからまだしも、このとても赤々しい危ないカレーは正直見ていられない。
それを気にも留めず、ヴァンはカレーにありついた。
「辛ーーーーーーーーい!!!」
「そ、それじゃあ、私学校行ってくるから。鍵そこにあるから閉めて頂戴ね」
そういうと、マミは逃げるように家を出た。匂いだけでも辛いのだ。
「ん、いってらっしゃい」
数分後、食べ終わったヴァンは特にやることがないのでそのまま家を出た。鍵をかけずに家を出たので、後にマミに怒られることをヴァンは知らない。
暇そうにうろついていると疲れたので、今朝までいた公園のベンチに腰をかけた。
しばらくそこでボーッとしていると、キュウべえがやって来た。
「やあ、ヴァン。暇そうにしているね」
「何だ、お前か。何しに来た」
「いや、まどかたちの学校があまりにも暇だからね。抜けてきたんだ」
「へぇ」
興味なさそうに返す。
「その反応はさすがに酷いな。僕は君に素晴らしい事を教えに来たんだ」
「素晴らしい事?興味ないね」
「いや、君にもメリットのあることだよ」
キュウべえはヴァンの横に座る。
「ヴァン。君は、エレナが鉤爪の男に殺されたといっていたね」
「それがどうかしたのか」
「僕と魔法少女を増やす手伝いをしてくれないか。そして、その少女にエレナを生き返らせてくれとお願いするんだ」
「……!」
「そうすれば、僕の目的も捗し、君も得をする。すばらしい案だとは思わないかい?」
「やだね。そんな誘い、お断りだ」
ヴァンはあっさりと提案を切り捨てた。
「理由を聞かせてくれるかい?」
「簡単だ。エレナは死んだんだ。あいつが殺したんだ。死んだやつはな、絶対に生き返らないんだ!しまいにゃ、あいつと同じようなこと言いやがって!」
「何故だい?そんな願い、僕ならばたやすいものだよ。好きだった人ともう一度やり直すことが出来る。これ以上ない幸せじゃないか」
しかし、ヴァンの考えは変わりはしなかった。
「…お前は何も分かっちゃいない。そうやって生き返ったとしても、そいつはエレナじゃない。エレナの姿をした偽者だ。そしてエレナは今俺の中に一緒にいる。だから無理だ。奇跡だろうと魔法だろうと、俺とエレナを引き離すことだけは」
キュウべえは首を傾げる。
「わけがわからないな。一体、何が君をそこまで意思を固くしているんだい?」
ヴァンはその問いに関して、こう答える。
「愛、かな」
キュウべえはヴァンへの説得が無理と感じ、引き下がる。
「どうやら君の勧誘は無理そうだ。そろそろお昼だから、僕は戻るとするよ」
「そうか、それじゃあな」
キュウべえは戻っていく。
ヴァンは休憩を終え、再びうろつき始める。
ヴァンは河原に着いて、見滝原を見渡しながら歩く。すると歩いているときにガシャンと音がした。
「にーちゃ、おとした!」
声が聞こえ、振り向くとそこには幼い子供が立っていた。
その子供が自分に差し出しているものは、宇宙にダンを直しに行く前に皆で撮った写真だった。どうやら、拾ってくれたらしい。
「ん?ああ、ありがとな」
そういい受け取る。
「ところでお前、こんなところで何してんだ。一人か?」
「おさんぽ!ぱぱと!」
すると子供の後ろから、男性がやってくる。
「タツヤーーーー!」
「ぱぱ!」
どうやら彼の父親のようだ。
「どうもすみません。うちの子が迷惑をお掛けして…」
「いや、こちらこそ。どうやら写真を拾ってくれたらしいんで」
珍しく、丁寧語を話すヴァン。この瞬間をまどか達が見ていたら、きっと発狂するだろう。
「そうだったんですか。偉いぞタツヤ」
褒められて照れる子供。どうやらタツヤという名前らしい。
「それじゃ、俺はこのへんで」
親子の時間を邪魔しちゃなんなので、ヴァンは去ろうとする。
「ばいばーい!」
後ろからタツヤの声がする。
「ああ」
ヴァンは振り向くことなく手を振る。
(子供、か…)
気がつけば夕方。ヴァンは原っぱの上で寝ていた。
その時、ヴァンの頭の中に声が聞こえた。
(ヴァン、聞こえるかい。ヴァン)
キュウべえの声だ。
「何だ。うるさい」
(ちょっと町の廃墟に来てほしいんだ。今すぐに)
「何でだ」
(マミ達が魔女退治に出かけるんだ。君もそれに同行してほしいんだ)
「俺は今忙しいんだ」
「寝ているだけじゃないか」
急に耳元で声がした。キュウべえだ。
「うわ!この野郎、急に話しかけんな!」
「それについては謝るけど、今すぐ来てほしいんだ。場所は僕が案内する」
「何で俺もなんだ」
「まどか達を危険な目に遭わせないようにするためだよ。君もご飯をくれた恩人を無闇に死なせたくはないだろう?」
流石にヴァンもそこまで人でなしではないので、ついていく事にする。
「ちっ、さっさと行くぞ」
「それじゃ、こっちだ。付いてきて!」
ヴァンたちは魔女の結界へ向かった。
一方その頃、マミ達は魔女の結界に入ろうとしていた。
「今日こそ逃がさないわよ」
マミは結界を開いた。そしてさやかが持っているバットに触れ、魔力の篭ったバットに変化させた。
「わわ!」
「凄ーい!」
「気休めだけど、これで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の傍を離れないでね」
「はい!」
二人は元気に返事をする。
そして三人は結界の中へ入る。
その後ろにほむらは見ていた。
結界の中、途中に現れた使い魔をマミはマスケット銃で撃ちぬいた。
「そういえばキュウべえは?」
「何か準備があるからと言っていたわ」
「何を準備してるんだろうね」
「さあ?」
そんな話をしながら奥へと進む。
三人の前にまた使い魔が現れた。今度は2方向からだ。
「うわぁ!来るな、来るな!」
さやかがバットを振り回す。
何とかそれを乗り越えると、マミが質問してくる。
「どう、怖い?」
「な、何てことねぇって!」
さやかが声を張る。
周りの使い魔を蹴散らしたあとマミは優雅に微笑む。
(怖いけど、でも…)
マミは扉の前にいた使い魔をたくさん展開したマスケット銃で一掃する。
どうやらここがボスの一歩手前のようだ。
その扉をくぐると、奥には魔女がいた。
薔薇園の魔女、ゲルトルート。今回のターゲットだ。
「見て、あれが魔女よ」
「うわぁ、グロい…」
「あんなのと…戦うんですか?」
まどかが不安になり、心配する。
「大丈夫、負けるもんですか!」
しかし流石ベテランの魔法少女。この程度では怖気つかなかった。
マミはまどか達の周りに絶対領域を張った。
「下がってて」
それだけ言うと、マミは魔女の前に降り立った。
ゲルトルートは、マミに向かってソファを投げた。それを銃で破壊する。
マミは沢山の銃を出し、相手に一発ずつ正確に当てていく。
「何だ、特に心配なさそうじゃねぇか」
「そのようだね」
まどかたちの後ろからヴァンとキュウべえがやってくる。
「ヴァンさん、キュウべえ!」
「ったく、お前らが危ないって言うからこんな気持ち悪いところに入ったってのに、これじゃ徒労じゃねぇか」
「ヴァン、君も見ていくといい。あれが魔女だ」
「気持ち悪いな。まぁ、それより…」
ヴァンは来た道を振り返る。そこには、10体を超える使い魔がいた。
「そこで隙を狙ってこそこそしているお前らのほうが100倍気持ち悪い!」
そういってヴァンは蛮刀を抜く。
髭タンポポ様な使い魔、アントニーは鋏を使い襲ってくる。
もう一種の使い魔、アーデルベルトは容赦なく頭突きをしてくる。
しかしヴァンは、鋏を蛮刀でいなし、縦に真っ二つに切る。
「つぇぇあ!」
頭突きしてきたアーデルベルトを突きで受け止める。そして蛮刀を変形させ、使い魔を包んだ後、ボウリングのように投げ飛ばし、吹っ飛ばす。
まとめて飛ばされた使い魔8体を横に切り飛ばす。
「どっちも凄い…」
まどかは二人の戦いに感嘆する。
(魔法少女の力を持たないヴァンが何故使い魔を倒せるのだろう?何か持っている武器に秘密があるのかな)
キュウべえはヴァンの武器に注目する。
「見て、マミさんが!」
さやかが指摘し、気がつくとマミはゲルトルートの蔦に捕まっていた。
「マミさん!」
しかし、余裕の表情を見せるマミ。
「大丈夫」
地面に出来た銃跡から、沢山のリボンが出てくる。
そして、そのリボンはゲルトルートを拘束する。
「未来の後輩に、あんまり格好悪いとこ見せられないものね!」
一気に形勢逆転。マミは巨大な銃を使い、ゲルトルートに照準を合わせる。
「さあ、終わりだ。髭タンポポ」
残った1体。ヴァンは壁際に追い詰めた。
ヴァンは剣を高く上げ、一気に振り下ろす。
マミはその引き金を引く。
「ティロ・フィナーレ!!」
「チェーーーーーストォォォ!!!」
その弾はゲルトルートの体に直撃した。
その刃は使い魔の体を二つにした。
「眠れ、この薔薇園の上で」
シャリン。
ヴァンの帽子の輪が鳴った。
使い魔とゲルトルートは霧散して消えていった。
そして、結界が解除され、元の景色に戻っていく。
マミは落ちた小さな物体に近づく。
「何だそれは」
「これはグリーフシード。魔女の卵よ。運が良ければ時々持ち歩いている時があるの」
「た、卵…」
「大丈夫。その状態では安全だよ。むしろ役に立つ貴重なものだ」
キュウべえが説明する。
「わたしのソウルジェム、夕べより少し色が濁っているでしょう?」
「そういえば確かに…」
マミはソウルジェムとグリーフシードを近づける。
すると、ソウルジェムの汚れがグリーフシードに吸収される。
「あっ、綺麗になった」
「へぇ、便利だな。それ」
「ね?これで消耗した魔力も元通り。前に話した魔女退治の見返りっていうのがこれ」
マミはグリーフシードを暗闇へと投げる。
パシッと受け取る音がした。そこにはほむらがいた。
「あと一度くらいは使えるわ。貴女にあげる。暁美ほむらさん」
「あいつ!ほむほむ!」
「少し黙って、みっきー」
「う……」
「それとも、人と分け合うんじゃ不服かしら」
「貴女の獲物よ。あなただけの物にすればいい」
そういうとほむらはグリーフシードを投げ返した。
「おい、いいのか。もらえるもんは貰っとけ」
「別にいいわ。それと貴方には関係ない」
「お前はレイか…」
「そう…それが貴方の答えね」
ほむらはその場を去った。
「くぅ~!やっぱ感じ悪いやつ!」
「仲良く出来ればいいのに…」
「お互いそう思えれば、ね」
「違うね。あいつはそんな奴じゃない」
「え?」
ヴァン以外全員驚く。
「あいつはただの不器用なだけだ」
「ちょ、ちょっと、ヴァンさん。あんたあいつの事を」
「あいつは俺だってよく分からんが馬鹿だ」
「あんたには言われたくないわ…」
「まあとにかく魔女は倒せたんですしいいじゃないですか」
「そうね。でもまずはこの女の人をどうにかしなきゃ」
「俺は先に帰るぞ」
「ええ、どうぞ。って、また野宿するつもり!?」
マミは今朝のことを思い出す。
「ああ」
「駄目!ヴァンさんはそうやって周りに迷惑をかけて…」
「すみません…」
「ヴァンさんが謝った!」
「マミさん凄い…」
「さすがはマミだ」
まどか達はヴァンが謝ったことにあんぐりしている。
「とにかく、ヴァンさんは私の部屋に住んでいいから。じゃないとまた今朝みたいなことが…」
「わかった、わかった。お前の家の前で待てばいいんだろ」
「そうよ。すぐに戻るから」
こうしてヴァンは家の前で待っていて、近所の人に不審者と勘違いされるのだが、何とかマミのおかげで逃れることが出来たのである。
「あ、鍵開きっぱなし…」
ヴァン「鍵なんて知らん」
マミ「そこにあるっていったでしょう!?」
QB「この先大丈夫かなぁ」
次回はリアルで試験が近いので12月中旬の投稿になります。
楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんが、どうか今後とも「バカが見滝原にやってくる」をよろしくお願いします。