一時間クオリティ。
「もう、終わるのか」
ユグドラシル――その昔、一世を風靡したオンラインゲーム。
しかし、その人気も今は昔。
盛者必衰、オンラインゲーム『ユグドラシル』は今日でサービスを終了しようとしていた。
「お前たちともお別れか……楽しかった、ああ、楽しかったなぁ……」
自らが作り出した機械龍を愛おしそうに見つめ、『彼』は呟く。
『彼』は、ちょっと、というか大分風変わりなプレイヤーだった。
『彼』のギルドは『彼』ひとりしかいなかったのだ。
「サイバー・ドラゴン」シリーズ。
オンラインゲーム『ユグドラシル』が最後の人気取りとして打ち出した特殊なNPC。
『ユグドラシル』は典型的なファンタジー世界をベースにしたDMMORPGである。
そんな中突然現れたサイバーチックな機械龍たち。
ファンタジーな世界観に思いっきり喧嘩を売ったその外観は賛否両論だった。
ある者は『ユグドラシル』の世界観が壊れると憤慨し、ある者はこういうのもありじゃね? と気楽に構えた。
……『ユグドラシル』の運営としてはある種のカンフル剤として投入したのであろう。
落ちてきた人気を取り戻す秘策。
当人たちは恐らくそう考えていた。
コレが、もし見た目がカッコいいだけで今までの戦闘のこなせるNPCと大差なかったら、あそこまで荒れなかっただろう。
……「サイバー・ドラゴン」シリーズは強かった。
否、強すぎたのだ。
オンラインゲームの末期に登場しがちなインフレし過ぎた強キャラ。
ゲームの寿命そのものを縮める、劇薬。
「サイバー・ドラゴン」シリーズはそんな存在だった。
ある者はこう言った「まるで竹槍で戦車と戦っているようだ」と。
またある者はこう言った「完全に別ゲー、『サイバー・ドラゴン』ていうゲームだコレ」と。
通常の戦闘が出来るNPCのMAXレベルは100、となっている。
だがこの「サイバードラゴン」たちにレベル上限はない。
というか、レベルの概念すらない。
装備品の質によって戦闘能力が上下する、そう言う設定になっていた。
生き物でない機械だからレベルが無い、運営曰くそう言うことらしいが……
逆に言えば、課金しまくれば時間をかけずとも強くなれる、そういうことだった。
実際、プレイヤーキャラのレベルが1にも関わらず大量の「サイバー・ドラゴン」を使っただけで、当時の最高ランクのギルドの拠点をたった一人で殲滅するという事件が起こった。
この最高ランクのギルド拠点がたった一人によって壊滅させれるという「サイバー・ドラゴン事件」は多くのプレイヤーを夢から覚まさせた。
ああ、そうか、これは所詮ゲームだった、と。
運営のさじ加減一つでどうとでもなる、ゲームなのだ、と。
なにゲームごときに本気になっていたんだろう、と。
この事件は『ユグドラシル』のゲームとしての寿命をかなり縮めた。
サービス終了、その直接の原因ではないが要因の一つであることは間違いないだろう。
「サイバー・ドラゴン、プロト・サイバー・ドラゴン、サイバードラゴン・ツヴァイ、サイバー・ドラゴン・ドライ」
自分の拠点に並べた、頼もしい……頼もしすぎた相棒たち。
それらをゆっくり読み上げて行く。
「トゥーン・サイバー・ドラゴン、サイバー・ドラゴン・コア、サイバー・バリア・ドラゴン、サイバー・レーザー・ドラゴン……」
あのバリアであそこのギルド長の攻撃を無力化させたときは最高だった。
あのレーザーで焼き払ったときはココロが震えた。
「サイバー・ツイン・ドラゴン、キメラテック・オーバー・ドラゴン、キメラテック・フォートレス・ドラゴン、キメラテック・ランページ・ドラゴン、サイバー・エルタニン……」
合体機能で合体させた愛機たち。
どれも一騎当千の強さ。
「サイバー・ドラゴン・ノヴァ、サイバー・ドラゴン・インフィニティ……」
強制合体機能、強制一体化機能とスキル無効化の力で多くのプレイヤーを絶望へと叩き込んだものだ。
「そして……我が魂、パワボンリミ解、『サイバー・エンド・ドラゴン』!!!」
最高まで強化した、三つ首の機械龍。
『彼』のお気に入りだった。
「……でも、もうお別れなんだな」
そう、もう『ユグドラシル』は終わる。
そうなれば、「サイバー・ドラゴン」たちともお別れだ。
「そろそろ十二時か……ギリギリまでここでこいつらと一緒に――」
いたいな、『彼』がそう言い切る前に、『彼』と「サイバー・ドラゴン」たちはこの世から姿を消した。
「……なんだか妙なことになったぞ?」
続きません。
というわけで、名前ネタでした。