私とサモナーはマイルームで相手のサーヴァントの情報を整理していた。
七日間与えられた猶予はあっという間に過ぎて行き・・・遂に殺し合う日が来てしまった。
私はまだ聖杯戦争に参加しているという自覚が無いし、覚悟も無い。
そんな私の初戦が友人として接していたシンジ...。
彼には何か望みがあるのだろうか?
「まあ人は唯一願いを持つ生き物だ。何かしらの望みがあるんだろうよ。」
サモナーがシャボン玉を作って遊んでいる。
あのさ、今から私殺し合いの場に行くんだよね?
なんか緊張感が無い気が済んですが?
「殺し合いに緊張感なんて持ってってどうするのマスター。殺し合いに緊張は不必要だ。必要なのは寛大な気持ちだよ。もっと楽でいいんだよ。」
そんな事言われてもな・・・・・・。
アリーナでサーヴァント同士の戦いを見たわけだし、本気で殺り合うのなら凄まじい戦いになる筈だ。
命が懸っているのに呑気ではいられない。
「うーん・・・。別に君の言葉一つで何とでもなるんだけど...それは君次第って所かな。僕と白野は正式な主従関係を結んでいないから
そうだ・・・!!!
サモナーこんな時だけど
この前話してくれなかったでしょ。一体何なの?
「そう言えばそうだったね。
具体的にはどのようなもので?
「まず令呪は刺青みたいな赤い痣が手の甲に付与される。まあ正式な契約を結んだらの話だけどね...。令呪は全部で3画あり、全ての令呪を失ったマスターは強制的に失格とされ電脳死される。」
あのさ......私令呪無いんだけど?!
失格でも無いし死んでも無いよ?!もしかして私幽霊になったとか!?
...私の両手の甲を見てもそんな痣は無い。
「大丈夫だよマスター。僕がその令呪の役割を持ってるし、そのお陰で失格にもなってない。良かったね白野」
うん全然よくない。
何してんだよこのサーヴァント。
破天荒にも程があるでしょうに・・・。
何でこいつ聖杯戦争に参加させたんだよ...。
「マスターそう気落ちしないでよ。令呪はその名の通りサーヴァントに呪いの様な命令を出すことが出来るんだ。僕に勝手なことするな、とか聖杯戦争が終わるまで一切喋るな!、とかね。」
............おいこら。
そんな便利なモノどうして私には無いんだよっ!?
理不尽だ!不公平だ!
今から言峰の所に行って令呪貰いたいよ!!!
「いやもう遅いから、諦めなよマスター。君の命令なら3度と言わず何度でも従うからさ」
じゃあもう喋るな。
「あ、そろそろ時間だから行こうよマスター」
———————こんのくそがあああぁぁぁああああ!!!
命令だ!これはもう命令だから!!!
「ほらほら殺し合いの場に行くよマスター。意思疎通は会話から始めないと駄目だからその命令は聞けません」
もういやだ...こんなサーヴァント返したいよ...。
ムーンセル助けて...。
「全部の戦いが終わればムーンセルも助けてくれんじゃないかな?」
私の背を押すサモナーの表情は分からないが、声色からして嬉しそうだ。
ホント、何でこんなのがサーヴァントなんでしょうかね?
「そうだマスター。一応教会に行くかい?」
ん?何で教会?
あそこは立ち入り禁止じゃなかったっけ?
それに教会に行っても何も無かった気がするけどなあ・・・。
「あそこは魂の改竄が出来る場所になったんだ。もう立ち入り禁止じゃなくなったよ。」
魂の改竄?
なんぞそれ、初めて聞いたけどサモナーさん。
「忘れてました(てへ)」
心臓潰されるのと心臓を握り潰されるのどちらか好きな結末を選べ。
「どっちも一緒だし!!!?と言うか結末って僕死ぬ設定ですかっ!?」
当り前だ。
何が「忘れてました(てへ)」、だ。
そんな重要な場所があるのなら早く教えろよ。
今から行くよ教会に。
「わ、分かりました...」
マイルームから退出し、階段を下りて、保健室側の廊下を進み教会へ繋がっている扉を開く。
何故か月海原学園に教会があるのか不思議だったが、聖杯戦争に関係していたとは驚きだ。
ギィィイ...、と重々しい教会の扉を押し開く。
今思えば、教会へ足を踏み入れたのはこれが初めてだった。
そこは薄暗く、外の喧騒から遮断されていた。
この場所だけ、世界から切り離されているかのような印象を受ける。
並んだ長椅子には誰も座っていない。
しかし、正面に目をやると、鮮やかな赤と青色が目に飛び込んでくる。
赤髪の女性と青髪の女性。
「ん?見ない顔だな。君も魂の
「初めまして、私は青崎青子。そっちの偉そうな女は青崎橙子。よろしくね」
赤髪の女性が青崎青子、青髪でタバコ...ではないようだが、それらしきものを銜えて居るのが青崎橙子。
ご丁寧な自己紹介どうもありがとう。そしてすいません。
私も悪いんですけど、うちのサーヴァントが忘れんぼで、今まで教会に来た事が無いです。
そう正直に話すと、驚いたように相手が話しかけてきた。
「驚いたわ。今の今まで魂の改竄を知らないマスターが居たなんてね。って事はやっぱり貴女、素人中の素人なのね。」
「魂の改竄とは...簡単に言ってしまえば、君の魂を隣に居るサーヴァン......ト、に」
足を組んで座っている青崎橙子が私の隣に居るサーヴァントを見ると、有り得ないものを見ているかのような驚いた表情へと変化させる。
「君の・・・!!!君の隣に居るそいつは、本当に
その意味が分からず首を傾げていると、青崎青子も驚いた表情でサモナーを凝視している。
「うそでしょ・・・?!貴女の隣のそいつ、サーヴァントなんて安いものじゃない!どう見ても
は?ムーンセルがオーバーヒートになる?
それって大事...ですよね。
「当り前だ。君は固有結界と言う魔術を知っているか?
強力な魔術を以って、術者の周りの空間を、全く別の空間に作り替える秘術。
固有結界の維持には膨大な熱量を要し、サーヴァントの強力な魔力を以ってしても、維持するのは長くて数分が限界。学園、アリーナ、そして、マスター同士が決する決闘場。
この全てが、聖杯がその桁外れな魔力を元に作り出した、個別の固有結界で、これほどの規模の固有結界を長期間、しかも複数同時に維持し続ける事は不可能だ。
聖杯の魔力の規模がどれほど凄まじいか、理解できるだろう。」
青崎橙子の話を聞いて、隣に居るサモナーを見る。
私の視線に気づいたのか、サモナーはドヤ顔で微笑む。
「凄いでしょ白野。僕がバーサーカーじゃなくて良かったね。もしも、サモナーじゃなくてバーサーカーだったら、月の聖杯戦争は終わってたね」
と。サラッと言いました。
その発言にドン引きする私と、顔が引きつっている青崎青子と青崎橙子。
サモナーが言った事が間違いではないのであろう。
「あ、貴女の隣のそいつに、魂の改竄なんて出来ないわ」
「...いや、別の意味で魂の改竄をすればいい」
青崎橙子が、何か閃いたのか、何かの
その様子をあっけらかんと見るしかなかった。
そして一分も経たぬ内にその術式は完成した。
「青子、私が作ったこの
「何よこれ?」
「魂の改竄とはマスターとサーヴァントの
「それで、これを一体何に使えって言うのよ?」
「分からないか?魂を改竄するのではなく、魂を
その台詞に驚いた。
改竄ではなく解体、つまり分解させるという事だ。
しかしそんな事をしてしまえばサモナーは消滅してしまうのではないか?
「いいえ、そいつは消滅なんてしないでしょうね。寧ろ消滅することが出来たら私達も苦労しないわ。」
「確かにな。」
ば、馬鹿な・・・・・・!?
そんなにも重たいのかこいつは?!
削っても削っても底が無いと言うのか!?
「まあこれは地道な作業と気力が必要ね。貴女も時間があればちょくちょく顔を見せなさいよ。じゃないと、そいつの所為で聖杯戦争どころじゃなくなるわよ?」
青崎青子が嘘を言っている筈もなく、私は力強く縦に頷くことしか出来なかった。
これ以上聖杯戦争を掻き乱してどうするんだよサモナー...お前一辺死んでみたらどうなんだ?
「いやだなぁ~僕は君といる限り死んでも立ち上がるよ。だって其れこそが君の
なに訳の分からない事言ってるんだ?
さっさとbit単位まで分解されればいいのにね。
青子さん出来ますか?
「う~ん、やってみるけど私そんなに器用な方じゃないからなぁ...」
ですよね。
だってなんか青子さん、何処かの世界でビーム撃ってそうですもんね。
ああ、何か簡単に想像できる。
橙子さんはなんだか何でもできそう。
さっきのプログラムだって、あっという間に作ったあたり、凄い人なんだろうな。
「そりゃ青子よりも解体も改竄も十倍以上、上手く出来るさ。」
じゅ、十倍って。
なんだかそれは言い過ぎの様な・・・いや、あってるのか?
「あってるよマスター。赤髪の女よりもそっちの人形師の方が、何倍も上手く熟すだろうね。」
「姉貴に言われるのは百歩譲ってまだいいとして、あんたに言われる筋は無いわよっ!!!」
青崎青子を怒らせて楽しいのか、サモナーは腹を抱えて笑っている。
いやほんとこんなサーヴァントみたいな異常サーヴァントを連れて来て、すいませんでした。
サモナーもいい加減にしないと、激辛麻婆豆腐食わせるけど良いの?
「あ、はい。調子に乗ってスイマセンデシタ。どうぞ解体の程よろしくお願いします。」
深々と青崎姉妹?に土下座させる。
苦笑いをしつつ何だかんだで解体してくれる青崎青子。
解体は改竄と違って少し時間がかかるらしく、待って居て欲しいの事。
はぁ全く...これから殺し合わなければならないと言うのに、何故こんなにも疲れるのだろうか?
あぁ、言峰のムカつく笑みが見えそうだ。
『愉悦』
聞こえてきそうなので考えるのを止める。
アイツの元になった人間を見て見たいような見て見たくないような...何か、余り変わらない気がする。
教会の中で待つのも飽きたので、教会を出て直ぐ其処にあるベンチでのんびりと待つとしよう。
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空を見れば0と1の蒼い空。
...そう言えば、私の記憶が全然戻らないな。
ふと思い返せば、私の記憶は空白だ。
思い出せるのは偽りの学園生活を送っていたというだけ。
後は全く持って思い出せない。
自分が何処で生まれ、何処で生活し、何をしているのか、などさっぱりだ。
だけど、稀に何か夢を見る。
それは空が赤く染まり、大地が炎で焼かれている地獄の様な夢。
そんな夢だが、何処か見覚えのある光景で、何故か夢から目が覚めても忘れる事は無かった。
そして、もう一つ...全く知らない夢を見る。
それは、曇天の空の下・・・。
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理解とは孤独。
絆とは鎖。
もっとも信頼し、心を許せた友を、■■■■■が殺した。
気分はどうだい?
生きている心地がしないんじゃないか?
ああ、お前は愚かで残酷な人間だ。
しかしだからこそ憎しみがお前の力となる。
染めて見せろ、お前の魂で...!
無垢なる心を憎しみで染めるが良い。
後悔しろ。
泣き喚け。
己を憎め。
お前が犯した罪を、箱庭の中で泣いて悔やむが良い。
許される時など来やしない。
お前はそこで泣き続けろ。
———————曇天の空の下、少年はただひたすら涙を流し続ける。
そんな夢を、見た。
少年の姿は影のように霞んでいて認識できなかった。
それでも、涙は零れていた。
少年の瞳から溺れ落ちていた。
何かに謝り、悔やみ続けている、少年の夢。
「お待たせ...って、マスターが泣いてる?!」
解体作業が終わったのだろう。
サモナーがひょっこり帰って来た。
泣いている・・・・・・?
私が泣いているの?
そっと頬に触れると、確かに涙の様な雫が頬を伝って流れている。
「・・・・・悪夢でも見たのなら蓋をして見なかった事にすればいい。悲しい夢なんて見てもつまらないだろ。さ、本戦に行こうじゃないか。」
ベンチに座っている私に、スッと手を差し伸べるサモナー。
私は何故かその手を取るのを躊躇った。
しかし、結局はその手を取らなければ前には進めない。
「そうだ。君はまだ未完成の器。中身を満たすために戦いに行こう、白野。」
サモナーの手を取り、立ち上がる。
そうだ、岸波白野はまだ何も達成できてはいない。
こんな、こんな所では止まってはいられない。
私はまだ、死ねないのだから・・・・・・。
次くらいでシンジと戦う(予想)