「ようこそ、死地へと赴く勇気は君にあるか?」
一階の用具室の前で言峰が此方を待っていた。
殺し合いの場へ...私は行く。
勿論だと頷く。
「細やかだが幸福を祈ろう。君が再びこの校舎へ戻れることを・・・。」
言峰が退くと、その後ろにはエレベーターがあった。
そうか、このエレベーターを動かすためにキートリガーを集める訳か・・・。
二つのキートリガーを左右にはめ、エレベーターのロックを解除する。
するとエレベーターの扉が消え、中に入れるようになった。
「若き闘士よ————————存分に殺し会え。」
エレベーターに入ると、扉は閉まり、下へと降りて行く。
...そして、このエレベーターの中にはシンジとそのサーヴァントも乗っていた。
「なんだよ岸波、お前逃げなかったのか?ほんと、真面目だよねぇ。」
透明な壁の向こうにシンジは居る。
その表情は今から殺し合うと言うのに何処か楽しそうだった。
「あのさ、岸波。お前どうせ僕に勝てやしないんだから棄権しても良かったんだぜ。そうすれば、僕もお前を見逃すことだってできたんだ。」
・・・確かに、私は魔術やその全てにおいてシンジに勝っている訳ではない。
だけど、だけど...そんなの、やって見なければ分からないじゃないか・・・。
「・・・・・・はっ。お前ってホントに馬鹿だよね。凡人が如何に努力しても天才に届くわけないのにさ。それに僕は誰にも負けないだ。僕も天才だけど、僕のサーヴァントは無敵だからね。」
「.........さっきから、黙って聞いていれば良く吠えるな、ワカメ頭。弾を装填出来るほどの魔力持ってないだろお前?折角、白野が立ち上がって立ち向かおうとしてるんだ。邪魔はしないでほしいな。と言うかもう黙れ、僕と白野の空間を汚すな。」
余程シンジが言った台詞が気に障ったのか、サモナーの顔に青筋が出ている。
それと、お前こそ黙りなさい。
そんな神聖化しなくていいから。
「ぶー...白野は連れないな。それと、僕は別にそのワカメが言った台詞に苛立ってる訳じゃなくて、そいつが男だから苛ついているんだよ。最悪だ...全く持って初戦がこんな雑魚だとは、本当に最悪だ...。」
やれやれと、それはそれは深いため息をつくサモナー。
シンジが怒って反論しているが、もうサモナーはシンジを見てはいない。
いや興味はもう無くなったと言うべきか。
ポケットの中からカードを出し、枚数を数えている。
そして、軽い振動と共にエレベーターが止まった。
終着点まで来たのだ...。
「もういい。ふざけたサーヴァント事消してやるよ。圧倒的な実力を思い知ればいい!」
ハッハッハ・・・!!!、と笑いながらエレベーターを出るシンジ。
その様子をサモナーは呆れながら見ていた。
「マスター、あんな小者に僕の宝具は使いたくない。正直男が相手だなんて殺る気が削がれた...。軽く遊ぶだけじゃダメっすか?」
何を言ってるんだよ...。
そんなに男が嫌なのか?そんなに嫌なら私も男に成りたかったな...。
「いや君は男女関係ないよ。個人的にあいつが気に入らないだけだから。」
何故シンジをそこまで毛嫌いするのか聞きたかったが、ブザーが鳴り早く降りろと指示をされた。
この聖杯戦争でピーキーかつ予測不能で、謎が多いサーヴァントはサモナーの他に居ると...胃が痛くなりそうだ。
「へえ、思ったよりも豪華な闘技場だね。」
エレベーターから出る。
闘技場と言われるくらいなので、コロッセオをイメージしていたが、そうでは無かった。
此処はまるで船の墓場。
木片や巨大な船が漂う海の中。
「お前の墓場に丁度良いじゃないか、ライダー。」
「はっ。アタシは死に場所なんてどこでもいいのさ。人間死ぬ時は皆一緒なんだ、贅沢なんて要らないよ。」
「流石、大海賊なだけはあるね。」
そう。マイルームにてサモナーと情報を纏め、答えを出した。
まさかと思ったが、もう間違いはない。
その名は————————
「
生きたまま地球を一周し、イギリスを導いた人類最初の偉人。
そして、『太陽の沈まぬ国』と言われたスペインの無敵船隊を、たった八隻の船で落とした大海賊。
男だと知られていたが、まさか女性だったとは・・・本当に驚いた。
「有名人は有名すぎて辛いねぇ・・・そう言うあんたこそ、正体は大体分かったよ。」
「はあっ!?何で言わなかったんだよライザー!?あいつの真名、一体何だよ?!」
それは私も物凄く気になる。
期待の眼差しを込めてライダーを見つめるが、
「そいつは自分で知らなきゃ意味がねぇよ」
と、言われてしまった。
「いやあ、初戦から大物に当たるなんてラッキーじゃないか。」
「どこがラッキーなんだよ!?良いからあいつの真名が教えろよ!」
シンジはまだ諦めてはいないらしく、サモナーの真名を聞き出そうとする。
「そいつはこの戦いで分かる、さっ・・・!!!!」
ライダーが突然発砲してきた。
弾をカードではじき返すサモナー。その表情は何処か楽しそうだ。
「良いぞ!流石何度も戦っただけは有るじゃないか!僕の正体に気付いたせめてもの祝杯だ、大物を召喚してやるよ!!!」
サモナーの周りをグルグルと周っているカードを二枚抜き取り、天高く上げる。
「此処に誓いを立てよう!
全ての生物の根源よ、私は此処に誓いを立てる。
右手には黄金の杯を、左手には英知の結晶を。
そして、今目覚めるは忘れられた天災、嵐である!!!」
「ライダー!詠唱を止めさせろ!!!」
シンジの指示でライダーはサモナーを攻撃するが、その攻撃は、サモナーを取り囲む謎の竜巻によって防がれた。
「何だいありゃ!?」
「そんなの僕だって知るか!!!」
「誓いは今、交わされた。
召喚————————
サモナーを取り囲む竜巻が一つとなり、巨大な嵐となり、その姿を現す。
額に一角が生え、巨大な砲と一体化している巨体なクジラ・・・!
決闘場を押しつぶすかのような重量と、威圧感。
「標的はライダー、放て!!!」
サモナーが手を振りかざせば、その砲弾がライダーに向かって発射される。
サーヴァント一騎にそれはやり過ぎなんじゃ!?
「何言ってるんだよマスター。相手のクラスが何か忘れたわけじゃないだろう?」
爆音と騒音の中、周りの船が炎上する。
これほどの威力がある攻撃を避けられると言うのか?
「なに、相手は
そんな事・・・!
『砲撃、用意!撃てえ!!!』
灼熱の炎と黒煙の中、要塞クジラに向かって砲撃が放たれる。
その声は間違いなく、
「ははははは!!!良いぞライダー!あんな図体だけのデカブツなんて撃ち落とせ!!!」
煙を引き裂き、黄金の船が現れる。
あの船は、そうだ。
ライダーの宝具・・・!!!
しかし、要塞クジラと比べると小型船に見える。
交わせるはずもない攻撃をどうやって...!?
「その答えはとても明白だよ、白野。あいつは生きたまま世界を一周成し遂げた伝説の大海賊。ありとあらゆる困難を切り開いたあの女には、『不可能を実現可能にする』事が出来る。だから、要塞クジラの砲撃も
え?ナニソレ?
チ、チート・・・?
初戦から、私達チートと戦ってるの?!
「いや、あのスキルは敵が自分よりも強ければその効果を発揮するんだ。相手が要塞クジラだから、しょうがないよね。」
いーやぁぁぁああぁあぁあ!!!!
何してくれてんのこのサーヴァント!?
態と敵を強くさせる様な事しないでくれよっ!
私達負けちゃうよ?!ホントに負けちゃうよ!?
サモナーのコートの襟を掴んで思いっ切り揺さぶる。
ホントに心臓潰してやろうかな、こいつ。
「
これが落ち着いてられるという状況か?
やっぱり心臓潰す。
「あーっはっはっは!やっぱりお前は天才である僕に勝てる筈も無かったんだ!ライダー、宝具を使え!」
「はいよ。じゃあここらで花火を打ち上げるとしようじゃないか!」
ハッ!?しまった!
相手の宝具が発動される!
「野郎共、
ライダーの掛け声と共に、歓声を上げながら煙から出て来る戦艦。
合計は・・・全部で八隻!?
「あたしの名前はテメロッソ・エル・ドラゴ! 太陽を落とした女ってな!」
その宝具の名は、
当時、無敵を誇っていたスペインを打ち破った戦艦達...!!!
まずい、ライダーのチートスキルとあの戦艦の攻撃をまともに食らう訳には...!
「迎え撃て、要塞クジラ!!!」
って、おいおいおいおいおい!!!
サモナーさん、また何言ってるの?!
あの攻撃を受けたら私達きっと死ぬ!いや死ぬ!絶対に死ぬ!!!
「大丈夫だよ白野。あの宝具は一回ぽっきりの攻撃だ。未熟者マスターのお陰で2回目は来ないって事だよ。」
あの、それどちらのマスターの事を言ってるのかな?
私か?それともシンジ?
「空気を読んで、ワカメのマスター。」
よし。それなら許そう。
「さあ、派手に逝っちまいな!!!」
光り輝く黄金の船体の砲撃が、私達に襲い掛かる・・・!!!
次で決着。