戦場において、誇りなどと言う信念は、捨てておけ。
騎士の誓いや戦いなど、あの男の前ではただのお飾り。
男はジッ、と身を潜め、獲物が動くのを待っている。
獲物は気付かない。
森と一体化した狩人に、気付くはずは無い。
だが、狩人も気付かない。
全ての森が、味方だとは限らない...。
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「白野、左に曲がって!」
ひ、左に!?
道が無いんですけど!?
「見えないだけであって、実際は道あるから曲がるんだ!」
見えないアリーナを全速力で駆け抜ける。
なぜ、私達がこんなにも急いでいるかだって?
そんなもの、私だって聞きたいくらいだ。
「まだだ!まだ追ってきてる!走ってマスター!」
そう...私達がアリーナに入ると同時に、奇襲を仕掛けた敵サーヴァント。
つまり、ダン・ブラックモアのサーヴァントだ。
姿は見せず、迅速に獲物を追い詰める。
狩人...姿無き狩人。
差し詰め、獲物は私達という訳か。
「今度は真っ直ぐ!」
当然、道は無い。
しかし、此処で立ち止まってしまえば襲ってくるのは死、のみ。
恐れている場合では無い・・・!
「姿を見せずに、マスターを集中的に狙ってる辺り、卑怯がモットーのサーヴァントだろうね。良い趣味してる。」
か、感心してる場合じゃない!
相手はまだ私達・・・じゃなくて、私狙ってるの?!
「そうだよ、マスターを始末すれば、自動的にサーヴァントも消える。相手は其れを狙って白野に攻撃をし続けてるんだよ。」
知らなかった・・・。
でも、私そんな攻撃喰らってないよ?
もしかして、私もう死んでる?
気付かぬ間に死んでました、とか言う落ちではないよね?
「大丈夫。僕が居る限り、君は死ぬ事は無い。僕も、岸波白野と共に在り続ける限り消える事は無い。これぞ正しく、究極の偕老同穴!」
言わないから。
其れよりも、全力で走れ。
相手のサーヴァントまだいるんでしょ?
「そうだね。・・・・・・白野白野、ちょっとだけ後ろに下がって。」
そう言ったサモナーは、私を軽く押す。
そんな力強く押された訳ではないが、数歩後ろへ下がる。
何故サモナーが私を下がらせたのか、それは直ぐに分かった。
私が居たその場所に、矢が降って来たからである。
・・・もしも、サモナーが押さなければ、私は致命傷を負っていただろう。
しかし、矢が降って来たと言う事は、相手サーヴァントのクラスは恐らく
それも、見事な弓の使い手だろう。
「・・・・・・うん。その様子だと、相手サーヴァントのクラスが分かったみたいだね。順調順調、その調子で成長してくれよ、マスター。」
・・・サモナー、もしかして、相手サーヴァントのクラス分かってたの?
「だって、さっきから毒矢放ってるんだよ。本当に良い趣味してる。お陰で、一回死んだ。」
す、スイマセン。
............わ、ワンモアプリーズ。
良く聞こえなかった。
「それがさ、白野に当たらない様に、飛んでくる矢を叩き落としてたんだけど、うっかり心臓に刺さってね、これが痛いのなんの!僕じゃなかったら毒で死んでるよ。」
そ、そうなんだ・・・。
何と言うか、サモナー死に過ぎじゃない?
一回戦の本戦前も死んだよね?
そんなに死に続けるサーヴァントって・・・サモナー以外居ないよ?
「それは嬉しい。僕みたいなのが他にもいたら大変だっ、て・・・・・・」
サモナーの雰囲気がガラリと変わった。
苦虫を噛み潰したような表情にも見える。
「あいつ・・・ここに結界を張るつもりか。徹底的に殺しにかかって来てるな・・・」
眉間に皺を寄せながら、サモナーは持っていたカードを一枚引き抜く。
何も描かれていない裏表白紙のカードを、一体どうするのか?
「なに、やられたらやり返す。目には目を歯には歯を、って言うだろ?卑怯なら卑怯で返さないと気が済まない。獲物の立場が、実際にどちらなのか教えてやらなきゃな。」
サモナーがそう言うと、手に持っていた白紙のカードが淡く光を放つ。
一瞬だけ、閃光が瞬くと、カードでは無く...それは
「弓は矢が無ければ意味をなさず、矢は弓が無ければ飛びはしない。」
サモナーが手にしているのは矢の無い弓。
だが、その弓は見たことも無い形状をしている。
あの、サモナー。
貴方のクラスって本当はアーチャーだったの?
「いいや。僕は希少価値が高いサモナーだよ。この弓も、召喚しただけに過ぎない。」
弓も召喚できるの?!
どうりで、どの文献にも載っては居なさそうな形してるものね。
でも、どうして弓なの?それに、矢が無いじゃないか。
「相手が弓なら此方も弓にしたまでの事。そして、この弓は矢が無いわけじゃないんだ。ちょっと特殊な弓でね、まあ直ぐに分かるよ。」
サモナーは弓を上に向け、弦を引き絞る。
ただそれだけだと言うのに、弓の先端が蒼に輝き、矢が出来上がる。
細く、触れただけで壊れそうな矢を放つ。
驚いたのは其処からだ。
その矢はまるで、流星の様に輝きを増し、アリーナ全体に降り注ぐ。
「マスターを狙ったんだ、此方も狙わせてもらうけど・・・いつまで防ぎきれるかな。急いでマスターの元に戻らないと・・・・・・ほんとに殺すよ?」
待てい。
誰に話しかけてるのか知らないけど、物騒な事はしないで欲しい。
それと、もう攻撃止めていいから。
流れ星や流星群の比じゃないからね?
「・・・やり返さないの?もしも、僕が居なかったら、君は死んでいたかもしれないんだよ。」
不服そうな顔をするな。
今生きているから其れで良い。
兎に角、攻撃を止めて。
これ以上続けるのなら、私は相手のサーヴァントに殺されたって文句は無い。
「・・・・・・・・・・・・・・・分かった。」
サモナーは渋々・・・いや、嫌々と言った様子で弓をカードに戻した。
其れだけで、アリーナに降り注いでいた光の矢は、泡の如く消えて行く。
チラリとサモナーを見れば、まだ納得がいっていない様子で、何処かを見ている。
「・・・いいかい。次に僕のマスターを狙うような真似をしたら、主人が生き残れないと思っていい。」
サモナーが誰に対して行っているのか直ぐに分かる。
恐らくだが、相手のサーヴァントが直ぐ近くに居るのだろう。
「なに、お前が正面から来るのなら正面から戦ってやるよ。」
サモナーの攻撃で、アリーナは崩壊寸前。
アリーナが崩れて行くその時、——————緑の衣を着た狩人を見た。
森の狩人よ、忘れてはいけない。
思い出せ。
自身の終わりを思い出せ。
射貫かれた、その瞬間を・・・
モンハンやってたら忘れてた。